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雨対策を忘れずに! 梅雨時期のガーデニング事情

雨対策を忘れずに! 梅雨時期のガーデニング事情

Kichigin/shutterstock.com

雨が降り続き、庭仕事もちょっと億劫になりがちな梅雨の時期。一見植物たちは元気になりそうですが、ガーデンでは雨ならではのトラブルも発生します。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんが、雨のガーデンで遭遇したトラブルと、その解決アイデアをご紹介します。

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ドイツの夏の雨

ドイツの夏の雨
Bernd Schmidt/Shutterstock.com

雨、雨、雨。しばらくドイツで暮らしている間に、日本の梅雨のことをすっかり忘れてしまっていました。日本の梅雨とはまた少し違いますが、ドイツでも夏は大雨が降るときがあります。

バイエルンの南端にある私の故郷の小さな村では、時々村を流れる小川があふれていました。といっても頻度は2年に1度かそれより稀で、決壊場所はそのたびごとに異なっていたと思います。低い位置にある牧草地は、もっと頻繁に水に浸かっていました。

実家でも一度だけ、短時間に大量の雨が降り注ぐひどい雷雨があったとき、駐車場とその周囲まで水に浸かったことがありました。もう40年ほども前のことです。当時我が家ではジャーマンシェパードを飼っていて、駐車場に犬小屋があったのですが、そんな天気の時には家の中に連れてきていました。スージーという名前で、家ではよくダイニングルームにあるベンチの下の、一番端っこのコーナーに潜り込んでいました。雷雨が去った後も家から出ようとはしなかったので、その日は一晩一緒に過ごしたのを懐かしく思い出します。

雷雨
David Hajnal/Shutterstock.com

気温の変化が大きいため、ドイツでは夏によく雷や稲妻が発生し、時に強風や大量の雨が降ります。故郷の村ではありませんでしたが、急斜面のあるアルプスでは地滑りが発生することも。そのため、ドイツでは、住宅の造成や森林の伐採については厳しい制限が課せられています。

日本では6月下旬から7月上旬にかけて、十分以上に雨が降り注ぐので、梅雨明けの陽射しが待ち遠しいですね。

梅雨時期のガーデニング実験

バッグガーデン
Peter Turner Photography/Shutterstock.com

そんな雨続きの日々のなかですが、日本に帰国してからガーデンで種まきの実験を始めました。実験内容は、洪水対策にも用いられるサンドバッグ(土嚢)に種を播くというもの。砂の代わりにガーデン用の培養土を使い、手軽で、しかも移動できるガーデンをつくるのが目標。成功すれば、いつでもどんな場所でもつくることができる…とワクワクしています。

サンドバッグ
水害対策などに用いられるサンドバッグ。今回の種まき実験には、白いサンドバッグを使いました。Evgeniya Uvarova/Shutterstock.com

そうして始めた種まき実験。種を播いてから数日後、可愛い芽が出てきて、成長を楽しみにしていました。そんなときにやってきたのが、長く降り続く大雨です。私の種まきトライアルサンドバッグもすっかり水に浸かり、種を播いた部分まで水が来てしまいました。一度に大量の雨が降ったので、排水が追い付かなかったようです。もし救出して雨が当たらない屋根の下に移動してやらなければ、可愛い新芽たちもおぼれてしまっていたことでしょう。玄関からほんの数メートル離れただけのドアの真ん前であっても、雨による被害を過小評価してはならないという教訓を得る機会となりました。

腐葉土
photosthai/Shutterstock.com

それぞれのサンドバッグに入れた培養土は、およそ10ℓ。もちろん土だけでも重いのですが、これだけの量の土が水を含むと、動かすのも大変になります。このときは8袋を移動しなければならなかったので、背中を痛めるかもと心配になりました。

というわけで、雨対策として覚えておきたいガーデニングのマメ知識は、サンドバッグに土を入れるときは、入れすぎないように注意ということ! 今回はサンドバッグでしたが、鉢植えやコンテナでも当てはまります。濡れた状態で移動しなければならないもしもの時にも、一人で動かせる重量かを考えておきましょう。

ほかに、大雨が降っても問題のない場所で管理するという手もあります。弱い植物や極端な天候への対応のために、シェルターを準備しておくのもいいですね。人が守ってあげなければ、自然の法則にしたがい、強いものは生き残り、弱いものは枯れてしまうでしょう。ガーデニングでは、育てている植物には、弱くても生き残れるよう手をかけてあげることが必要です。

レモングラスの鉢
雨が当たるところに置いてあったレモングラスの鉢。救出するまでは排水が追い付かず、まるで水鉢のようになっていました。(*)

ガーデンへの影響

この雨で、我が家の庭には、ほかにどんな影響があったのでしょうか?

まず、庭の中で水はけがよくない場所がどこか、よく分かりました。水が引くと見えなくなってしまいそうだったので、改善すべき場所を忘れないように、雨の中で写真を撮って記録しておくことに。水はけがよい庭の重要性を改めて実感しました。ほかに玄関前の階段も雨に弱そうな箇所が見つかったので、改善策を検討していくつもりです。

ウィンドウボックス
Andrei Khristov/Shutterstock.com

雨が降った時にちょっと気を付けたいのが、泥はねのこと。以前、軒先の真下に植物を入れたウィンドウボックスを置いていたのですが、雨が降ると、屋根からの雨水が、ちょうどその中へと滴り落ちてしまうという位置でした。きれいな黄色の家の壁は、ウィンドウボックスからはねた泥水で茶色く汚れてしまい、雨の後には壁を洗わなければならなかったので、場所を移動したことがあります。

という訳で、2つめの雨対策マメ知識。植物を植えたり鉢植えを置く場合は、その周囲の環境を360°プラス上まで、よく確認しましょう。植物の生育環境のチェックはもちろんですが、壁が汚れたりしないような位置に置くといいですよ。また、植物のコンテナや鉢植えがそれほど気候などの影響を受けないシェルターエリアを作っておくのもおすすめです。

台風対策も忘れずに

台風
lavizzara/Shutterstock.com

気を付けたい極端な気候は、なにも梅雨時の大雨ばかりではありません。夏の終わりにやってくる台風と、その強風のことも考えておきましょう。

現在私が住む神奈川県の湘南地域は、太平洋側の海近くにあります。記憶にある中で一番ひどい台風は、数年前の9月、ゆっくりと移動しながら大量の塩水をガーデンに運んできました。台風が去った後すぐに、ほとんどの植物は葉を落とし、近くの竹林でさえ傷んだ葉により廃墟のように見えました。あの光景は忘れられません。

水まき
topseller/Shutterstock.com

この台風のすぐあと、経験豊かなガーデナーの中で時間と水に余裕があった人たちは、ホースを使って葉に残った塩分を洗い流していました。私が野菜や花を育てていた市民農園でも、台風の被害をよく知る人々は植物を洗っていましたが、当時塩害についての知識がなかった私の植物は多くが枯れてしまい、残ったのはほかの植物の陰になって塩害を免れたものだけでした。

そういう訳で、自分の庭をよく観察し、雨や風といったさまざまな天候時の庭の様子や、日向や日陰にうある場所などを把握しておくことが大切になります。

排水チェックを忘れずに

排水溝
Vitaliy Fox/Shutterstock.com

ここ数日の雨により、私の大好きなキョウチクトウをはじめとする木々は、多くのつぼみを落としてしまいました。それはもちろん残念ですが、こうしたときは、落ちたつぼみを掃除することも大切な作業。私は雨が降ると、外に出て道路の排水溝やマンホールをチェックすることにしています。もちろんふたを開けたりはしませんが、水をスムーズに流すため、排水溝の穴が詰まったりしないように点検しておく必要があるです。先日も水の流れを妨げていた砂や落ち葉を取り除いておきました。とても面倒な作業ですが、排水性を定期的に確認しておくのは大切なことです。雑草やゴミなどが詰まらないよう注意し、庭の花がらなども排水路をふさがないよう綺麗に掃除しておきましょう。

ドイツ流の天候対策

ミニシェルター
L. Feddes/Shutterstock.com

ドイツでも、庭やテラス、バルコニーなどのそれぞれのガーデンシチュエーションに応じて、いろいろな対策がとられています。特に普及しているのが、バルコニーに毎年ウィンドウボックスを並べるガーデナーたちが取り付けるミニルーフ。ペラルゴニウムやサフィニア、ペチュニアのボックスに取り付け、大雨や雹から花を守っています。取り外しも簡単。DIYで作る人も多い、素敵なアイデアですね。ガーデンセンターによっては既製品を販売していることもあり、1つか2つのボックスしか育てていないガーデナーにとっても、一般的なアイテムになりつつあります。ほかに、トマトを育てる際には、手作りのミニシェルターを使う人も多いです。

潅水装置
topseller/Shutterstock.com

数日留守にしてもいいよう、気温が高く乾燥した日のために庭やバルコニーガーデンに自動灌水システムを取り入れるのもおすすめです。大切な植物のため、さらに安心できる解決案としては、「ガーデンシッター」を雇うこと。日本ではまだ耳慣れないかもしれませんが、ヨーロッパではポピュラーな仕事で、ガーデンの面倒を見てくれる人を雇って、水やりや花がら摘み、虫対策などをお願いするのです。一番信頼できるのは、もちろんこのような仕事を専門にしているガーデン会社から派遣されるプロのガーデナーですが、信頼のおけるガーデニング好きの友だちにお願いすることもできます。ヨーロッパの人々は夏季に一般的に2~3週間程度の長期のバケーションを取ることが多く、その間、「緑の指」を持つ誰かに植物のお世話をお願いすることへの需要が高いのです。

この問題を解決するために、「ハウスシッター」を雇うのも一つの手です。というのは、ガーデンは家の一部で、ハウスシッターはその手入れをすることも仕事に含まれるとも考えられるから。ただしこれは一種のギャンブルで、当たるも八卦当たらぬも八卦、庭の世話までしてくれるかどうかは、担当になった方次第です。

ガーデナー
Virrage Images/Shutterstock.com

ドイツでは、短期間であれば庭の植物たちの面倒を見てくれる知り合いが数名いるのですが、日本ではまだガーデンシッターを引き受けてくれそうな人には出会っていません。こうした仕事をしているので、ガーデニングに興味がある知り合いも大勢いるのですが、みんなとても忙しいので、お願いするのもちょっと気兼ねしてしまいます。それでもやはり留守中の植物が心配なので、時々ハウスシッターとかガーデンシッターを雇いたくなります。

ガーデニングでは天候問題は大きな要素。ガーデンによって課題も、解決策も、一つひとつ異なります。そのため、時間や忍耐は必要ですが、それぞれのガーデン状況に合った解決策を探ることが重要です。大切なことは、諦めずに探せば解決策は見つかるということです。まずは梅雨明けまでの豪雨と、これから来る本格的な夏に向けて、ガーデンのチェックをしてみませんか?

Credit

ストーリー&写真(*)/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

取材/3and garden 

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