オステオスペルマムは花つきが非常によく、満開時には茎葉を覆い隠すほどに咲いて色の塊となって目に飛び込んでくるので、大変見栄えのよい草花です。品種改良が進んで花色も豊富に揃うので、選ぶ楽しみもあります。寒さに強くて初心者でも育てやすいのも長所の一つ。この記事では、そんなオステオスペルマムの特性や品種、育て方などについてご紹介していきます。
目次
オステオスペルマムって何? その特徴は?
オステオスペルマムは、どのような性質をもっているのでしょうか。そのキャラクターを知ると、植え場所や仕立て方も見えてくるので、ここではオステオスペルマムの基本情報についてご紹介していきます。
基本情報
オステオスペルマムは、キク科オステオスペルマム属の多年草。一度植え付けて環境に馴染めば越年を繰り返し、毎年開花を楽しめるコストパフォーマンスのよい植物です。ライフサイクルは、以下の通りです。3〜4月頃から生育期に入って茎葉を旺盛に伸ばし、開花期は4〜6月頃。冬には生育が止まりますが、常緑のまま越年し、再び春の訪れとともに生育し始めます。
オステオスペルマムの原産地は熱帯アフリカ、アラビアです。マイナス5℃くらいまでは耐えるので、暖地では戸外での越冬も可能。一方で真夏の高温多湿の環境を苦手としています。
特徴
オステオスペルマムは、花茎を伸ばした頂部にマーガレットに似た花を咲かせます。花色は紫、白、オレンジ、黄色、ベージュ、ピンク、複色など。花形は、一重咲きが最もポピュラーですが、花弁が多数重なる八重咲きや、一枚一枚の花弁がスプーンのような形をしているスプーン咲き。曇天の日や夕方から夜にかけては花を閉じる性質がありますが、品種改良により花を閉じないタイプも出回るようになりました。
草丈は、20〜80cmほど。生育初期に伸びた枝の先端を切り取る「摘心」をすると、下から茎が分かれて発生します。この摘心を新芽が出るたびに繰り返すと、茎の数が増えてこんもりとしたドーム状に。その分花数も増えて、たっぷりと咲かせることができます。オステオスペルマムは花つきが大変よく、茎葉を覆うように咲いて色の塊となるので、華やかな演出をすることが可能です。あえて摘心をせずにナチュラルな姿を楽しむなど、ガーデンの主役、脇役のどちらにも利用できます。
オステオスペルマムの主な品種
オステオスペルマムは、ガーデナーに人気の高い植物です。そのため改良が進んで育てやすい品種が増え、また花色も豊富に出回るようになってきました。ここでは、オステオスペルマムの主な品種について取り上げていきます。
「パッション」系
草丈は約20cmでコンパクトにまとまる草姿のため、花壇やコンテナの寄せ植えなどに取り入れやすいシリーズです。株張りがよく、花つきもよいのが特徴。パープル、ホワイト、ピンクなどの花色があります。
「ダブルファン」シリーズ
豪華なダブル咲きのシリーズです。やや花首が長い傾向で、ナチュラルな印象。シックな花色が揃い、パープル、イエロー、ライトラベンダー、ホワイトブルー、コーラル、ゴールデンがあります。
「シンフォニー」シリーズ
オステオスペルマムと近縁種のディモルフォセカとの交雑によって誕生したシリーズ。両者の長所を併せ持ち、丈夫で開花期間が長く、より豊富な花色が展開されています。シリーズには黄色の‘レモンシンフォニー’、白の‘ミルクシンフォニー’、橙の‘オレンジシンフォニー’、ペールオレンジの‘メロンシンフォニー’があります。
オステオスペルマムの育て方
ここまで、オステオスペルマムのプロフィールや特性、品種などについてご紹介してきました。ここからはガーデニングの実践編として、詳しい育て方について解説。苗の植え付けから、水やりや肥料、病害虫対策など基本的な日常管理のほか、摘心や花がら摘み、切り戻しの仕方など、オステオスペルマムをより美しく咲かせるテクニックについても触れていきます。
栽培環境
オステオスペルマムは基本的には日当たりがよく、風通しのよい場所を好みます。しかし、高温多湿に弱い性質のため、梅雨から夏にかけては西日の当たる場所を避け、雨の当たらない半日陰などで管理するとよいでしょう。地植えにしている場合は、鉢上げして風通しのよい涼しい場所で管理するのが無難です。一方で寒さには強く、マイナス5℃くらいまでなら戸外で越冬できます。霜が降りる場所では株元にバークチップなどでマルチングしておくとよいでしょう。土壌は水はけ、水もちのよい、有機質に富んだ環境を好みます。
用土
【地植え】
植え付ける1〜2週間前に、腐葉土や堆肥などの有機質資材を投入し、よく耕してふかふかの土を作っておきましょう。土壌改良資材や肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。
植え付け・植え替え
植え付けの適期は6月頃か9〜10月です 。フラワーショップで苗を購入してスタートする場合は、入手次第植え付けます。
【地植え】
土作りをしておいた場所に、ポットから苗を出して植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、30〜40cmの間隔を取っておきましょう。植え付けた後に、たっぷりと水やりします。
多年草のため、数年は植えっぱなしにしてもいいのですが、大株に育って込み合ってきたら掘り上げて植え直し、若返りを図るとよいでしょう。
【鉢植え】
鉢は、入手した苗の2回りほど大きいものを準備します。鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢に仮置きして高さを決めてから、ポットから出して植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
オステオスペルマムは生育が旺盛なので、根詰まりを防ぐために2年に1度は植え替えましょう。植え替えの適期は6月頃か9〜10月です。1~2回り大きな鉢を用意して鉢増ししてもいいですし、同じ鉢を使いたい場合は根鉢を崩して古い根を整理して植え直します。
水やり
株が蒸れるのを防ぐために、茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合は、気温の高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうことがあります。朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬に水やりする際は、夕方に水やりをすると、その後どんどん気温が下がって凍結し、植物にダメージを与えることがあります。十分気温が上がってきた昼間に行うことがポイントです。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチすることが、枯らさないポイントです。
肥料
地植え、鉢植えともに、施肥の適期は3〜5月と9〜10月です。月に1度を目安に、緩効性化成肥料を株の周囲にまいて勢いを保ちましょう。花茎が上がってきた頃から開花が終わるまで、2週間に1度を目安に液肥を与えると、次から次につぼみが上がってきます。
ビギナーの場合、緩効性化成肥料と速効性のある液肥を常備しておくのがおすすめです。植物への汎用性が高く、においがしないため扱いやすいのがメリット。開花期に与える液肥は、開花促進を目的とした成分配合の製品を選ぶのがおすすめです。
季節ごとのメンテナンス
【生育期初期の摘心】
生育が盛んになり始めた頃、茎の先端を切り取る「摘心」を繰り返すと、下からわき芽が出てこんもりとした株姿に成長し、花数も多くなります。
【開花中の花がら摘み】
オステオスペルマムは次から次へと花が咲くので、終わった花は早めに摘み取りましょう。株周りを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながります。また、いつまでも終わった花を残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなるので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【生育期中期の切り戻し】
旺盛に生育し、一通り咲いて草姿が乱れてきたら、草丈の半分くらいまでを目安に全体を刈り込む「切り戻し」をするとよいでしょう。すると株が盛り返して勢いよく生育し、再びたっぷりと咲く花姿を楽しめます。ただし、草姿が乱れていない場合には、切り戻さずそのままにしておいてもかまいません。
病害虫
【病気】
オステオスペルマムに発生しやすい病気は、灰色かび病です。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。多湿で風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなります。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込みすぎている場合は間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
オステオスペルマムにつきやすい害虫は、アブラムシ、ヨトウムシなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、茎葉について吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目にも悪いので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の殺虫粒剤を利用するのがおすすめです。
ヨトウムシは蛾の幼虫で、夜に活動して葉を食い荒らします。食欲旺盛で、一晩のうちに丸裸にされてしまうことも。葉の裏に卵が産み付けられるので、孵化直後の幼齢のうちに退治するのがポイントです。または、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するタイプの殺虫粒剤を利用してもよいでしょう。
増やし方
【種まき】
オステオスペルマムは、種まきから育てられますよ! 種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなります。
オステオスペルマムの発芽適温は20℃前後。種まきの適期は、9月中旬〜10月中旬頃です。
種まきの際は、種まき用のセルトレイに草花用にブレンドされた市販の培養土を入れ、1穴当たり1〜2粒ずつ播きます。タネが隠れる程度に土を薄くかけ、はす口をつけたジョウロで優しい水流で水やりをしましょう。新聞紙などをかけて乾燥しないように管理し、発芽して双葉が展開したら間引いて1本のみ残します。
発芽したら、日当たりがよく、風通しのよい場所で管理しましょう。本葉が2〜3枚出始めたら、黒ポットに植え替えて育苗します。10日に1度を目安に、液肥を与えると生育がよくなります。11月頃まで育苗し、ポットに根が回ってしっかりした株に育ったら、植えたい場所に定植しましょう。
【挿し芽】
オステオスペルマムの挿し芽の適期は5〜6月か9月です。若くて勢いのある新しい茎を選んで切り取ります。市販の園芸用の培養土をセルトレイなどに入れて、採取した茎を挿しておきます。直射日光の当たらない明るい場所で、水切れしないように管理を。発根したら黒ポットなどに植え替えて育成します。大きく育ったら、植えたい場所に定植しましょう。挿し芽で増やすメリットは、採取した株のクローンになることです。
オステオスペルマムの花の咲き方を楽しもう
カラフルな花色が豊富に揃い、株いっぱいに花をつけるダイナミックさが魅力のオステオスペルマムについて、基本情報や種類、育て方まで、多岐にわたって解説してきました。草丈も株幅もボリューム感がほどよく、主役にも脇役にもなって他の植物と組み合わせやすいオステオスペルマムを、ぜひガーデンやベランダに迎え入れてください。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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