オーストラリアの南東部の海岸沿いに自生する常緑小低木のクロウエアは、白やピンクの星形の花が可愛く、日本でも育てやすいオージープランツの一つです。サザンクロスとも呼ばれるクロウエアの苗は、春に流通し始め、5月から11月頃まで咲き続ける息の長い人気種。オーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、神奈川県の自宅の庭で25年間、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主、遠藤昭さんが、クロウエアの特徴と育て方をご紹介します。
目次
ミカン科とセリ科2つの「サザンクロス」

春になると毎年、数々のオージープランツが園芸店に並びます。その中でも、比較的、古くからコンスタントに人気を保っているのが、今回ご紹介するクロウエア。
「えっ? クロウエアって?」と聞き慣れない名前でピンとこない方でも、サザンクロスといえば分かるかもしれませんね。

クロウエア(学名:Crowea)は、ミカン科クロウエア属の常緑小低木で、樹高1m程度と低く茂ります。原産地はオーストラリアのクィーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州などオーストラリア大陸、南東部の海岸沿いです。南東部の原産植物は、西オーストラリア州の原産植物に比べて、日本の湿潤な気候でも育てやすい性質です。
また、ミカン科なのでバンクシアなどのヤマモガシ科の植物とは異なり、リン酸肥料に過敏でもなく、オージープランツの中では日本でも育てやすい品種です。とはいえ、やはり多肥や加湿は避けなければいけません。

クロウエアの名前は、イギリスの軍医であり植物学者であるJames Croweによって命名されました。 花弁が5枚で星形に見えることから、南半球を代表する星座=サザンクロスの名前で流通していますが、オーストラリアで「サザンクロス」といえば、輪郭が十字形で、南の星を連想させるセリ科のXanthosia rotundifolia(上写真)を指すのです。これは、インターナショナルな時代に混乱を招くので、私としては、正しく学名の「クロウエア」の名前を使用してご紹介したいと思います。
クロウエアとボロニアの違いは花で見分ける

クロウエアに似たオージープランツで、同じ時期に同じミカン科のボロニアが流通します。これもまた混乱を招くのですが、見分け方は、クロウエア(上写真)は花弁が5枚で、ボロニア(下写真)は4枚です。これだけ覚えておけば、間違えることはないでしょう。

クロウエアの原生地から育て方を学ぶ

クロウエアが野生で茂っている様子は、明るい林の中で多く見られます。土壌は、やや酸性の痩せた土地です。
こうして原生地の様子を知ることは、その植物を育てるうえで、とてもよいヒントを与えてくれます。日本でも、その原生地に近い環境にしてやると順調に育つことが多いためです。年間降水量を比較してみると、日本の半分から3分の1にあたります。

特に夏は、原生地は乾燥していることを考えると、クロウエアは、日本の蒸し暑さは苦手です。ですから梅雨時は、雨の当たらない場所で育てるとよいでしょう。冬も、現生地では霜が降りることはめったにありません。したがって、クロウエアは、冬は屋内で管理するのが無難です。
クロウエアの品種バリエーション
日本で流通しているクロウエアは、エクサラータ(Crowea exalata)と、サリグナ (Crowea saligna)、およびその交配の園芸品‘マドンナ’などがあります。

クロウエア・エクサラータは、樹高1m程度まで成長し、葉が細いのが特徴。最近人気の斑入り品種も、エクサラータ系です。

クロウエア・サリグナはやや葉が大きく、花形はエクサラータ種に似ています。秋から冬にかけて咲く花は、白からピンク色です。

‘マドンナ’は、葉が少し幅広く、花が大きな交配種。
クロウエアの楽しみ方

クロウエアは花が可愛いので、オージープランツ同士の寄せ植えにも最適。開花が始まる4月は、ちょうど季節的にムクロジ科の常緑低木のドドナエアの葉が銅色に染まっており、斑入りのクロウエアと枯れたようなシックな葉色のグラス類カレックス、白いフランネルフラワー、シクラメンと合わせると、オージーらしいワイルドな雰囲気の中で、ピンクのクロウエアの花の可愛らしさが目立ちます。

鉢に植え込む手順は、鉢底に軽石を敷き、小粒軽石:調整済ピートモス:鹿沼=5:3:2のオージー用の水はけのよい土をブレンドして使用します。そして、梅雨時には雨に当てないように注意し、夏は風通しのよい半日陰に置きます。冬は霜の当たらない南面の軒下などで育てるとよいでしょう。
クロウエアは、何といっても花期が長いのが魅力です。

そして、クロウエアは、水はけと日当たりのよい場所であれば、低木なので、数年後には1mくらいの大株に育つのも魅力です。クロウエアの大株に挑戦してみませんか?
Credit
写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -

えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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