雨上がりの奇跡! ゼフィランサス(レインリリー)が夏に咲き誇る秘密と種類・品種の魅力
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雨上がりの庭で、はっと目を引く美しい花を咲かせるゼフィランサス。その英名が「レインリリー」と呼ばれるように、雨を合図に咲き誇る姿はまさに奇跡のようです。夏の暑さにも負けずに長期間花を咲かせ続ける丈夫さで、近年ますます注目を集めています。豊富な花色に加え、八重咲き品種も登場し、その魅力は尽きません。この記事では、初心者でも育てやすいゼフィランサスが夏に咲き誇る秘密と、種類や品種を幅広くご紹介し、育て方についても栽培のプロが解説します。
目次
ゼフィランサスの基本情報

植物名:ゼフィランサス
学名:Zephyranthes
英名:レインリリー
科名:ヒガンバナ科
属名:タマスダレ属
原産地:熱帯~亜熱帯アメリカ
形態:多年草
ゼフィランサスは小型の球根植物で、中央~南アメリカの熱帯~亜熱帯地域が原産です。雨が降った後に花が咲きやすいので、近縁のハブランサスとともにレインリリーという英名があります。
同属では白い花を咲かせるタマスダレ(Zephyranthes candida)が代表種ですが、以前からよく親しまれているので、こちらもゼフィランサスの属名で流通することがあります。初夏から秋まで長期間開花し、葉は常緑です。寒さに強く放任気味でもよく育ち、空き地などで野生化していることがあります。
ピンクの花が咲くサフランモドキ(Z. grandiflora)もよく知られています。タマスダレ以外は寒さに弱い種類が多いので、霜には当てないように管理しましょう。モモイロタマスダレ(Z. taubertiana)のように寒さに強い種類や、比較的耐寒性のある品種もありますが、入手は難しいようです。
近年は流通する種類や品種が増えています。花色は、白やピンク、黄、オレンジ、赤など豊富で、八重咲きの品種もあります。
風に揺れるピンクのゼフィランサスを訪れるミツバチ。Oolite Photography/Shutterstock.com
ゼフィランサスの特徴・性質

園芸分類:球根、草花
草丈:10~30cm
開花時期:6~10月(種類・品種による)
耐寒性:強い~やや弱い(種類・品種による)
耐暑性:強い
花色:白、赤、ピンク、オレンジ、黄
花は上向きに咲き、よく目立ちます。環境適応性が高いので、日当たりが多少悪い場所でも花が咲き、暑い夏にも弱らず、よく開花します。梅雨の多湿や夏の高温乾燥にも耐えるので、初心者でも育てやすいでしょう。いろいろな場所で育てることができ、長期間花を楽しめます。
開花時期は、種類や品種、栽培環境により変わります。地植えで植えっぱなしのタマスダレは6月から長く咲き、その他の種類は夏から秋に開花することが多いです。
交配が容易で、ハブランサスとの属間交配も可能です。海外で育種が盛んに行われており、インドネシアでは赤やオレンジ、八重咲き、バイカラーなどの素晴らしい品種が多数作られ、徐々に日本でも流通するようになっています。
全草に毒があるので、ノビルやニラなどと間違って食べないようにしてください。畑などに植えると危険です。また野生化している場合もあるので、注意してください。ゼフィランサスと異なり、ノビルやニラには特有のネギ臭があります。
ゼフィランサスの種類・原種
タマスダレ Zephyranthes candida

アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ原産で、川沿いや湿地などによく自生します。6~10月まで断続的に長期間開花します。放任気味でも育ちますが、生育期間中に土壌が完全に乾燥するのは嫌います。
サフランモドキ Zephyranthes grandiflora(=Z. minuta )

メキシコ、グアテマラ原産で、比較的よく流通している種類です。ピンクの花は直径6cmほどで、他の品種よりも大きめ。寒さにはやや弱いですが、丈夫で育てやすいです。世界の熱帯では野生化しており、国内でも暖地では野生化した株が見られます。
ゼフィランサス・キトリナ Zephyranthes citrina

メキシコから中央アメリカ原産で、明るい黄色の花を咲かせます。寒さには弱いですが、実生で増やすことができます。
ゼフィランサス・ロゼア Zephyranthes rosea

コロンビア、ペルー原産で、寒さにやや弱い品種です。サフランモドキに似たピンクの花を咲かせますが、大きさはやや小さく、色も濃いです。
ゼフィランサスの園芸品種
八重咲きの品種の流通は、国内でも今後徐々に多くなると予想されるので注目です。
‘プライド・オブ・シンガポール’ Zephyranthes. ‘Pride of Singapore’

インドネシアで作出された美しい園芸品種で、よく目立つ赤色の花を咲かせます。
‘エイジャックス’ Zephyranthes ‘Ajax’

淡い黄色の花を咲かせる交配種で、19世紀に最初に作られた園芸品種とされます。タマスダレとの交配なので比較的耐寒性があり、丈夫です。
‘リリー・パイ’ Zephyranthes ‘Lily Pies’

中央が白で、花弁に淡くピンクが差す大きな花は、明るく華やかで、午後に開きます。
‘マダム・バタフライ’ Zephyranthes ‘Madam Butterfly’

八重咲きのピンクの花が美しい品種で、目を引きます。
‘フィデリティ・ チャーム’ Zephyranthes ‘Fidelity Charm’

ピンクの八重咲き品種です。緑に浮き立って、優しい印象。
‘アプリコット・キング’ Zephyranthes ‘Apricot King’

花びらが細く花形が素朴な、アプリコット色の八重咲き品種です。
ゼフィランサスの栽培12カ月カレンダー
開花時期:6~10月
植え付け・植え替え:4月中旬~5月(タマスダレは3~4月)
肥料:4月中旬~9月(タマスダレは3~4月、10月)
ゼフィランサスの栽培環境

適した環境・置き場所
日なたから半日程度日光が当たる半日陰が適します。環境適応性が高いので、明るい日陰でも育ち花を咲かせます。
生育温度
20~30℃くらいが最も生育が盛んになります。夏に暑さで弱ることもありません。
冬越し
多くの種類は熱帯から亜熱帯原産の球根植物で、寒さに強くありません。寒冷地や霜がよく降りる地域は鉢植えにして室内で越冬させます。
タマスダレは寒さに強く、霜よけなどの対策は必要ありません。
ゼフィランサスの育て方・日常の手入れ

水やり
生育期に乾燥すると花が小さくなり、生育も悪くなります。乾燥しやすい鉢植えは注意してください。
鉢植えは、表土が乾いたら水やりします。夏の晴れた日は、毎日水やりしてください。高温乾燥が厳しい時は、朝夕2回の水やりが必要な場合があります。
地植えでは、夏などに雨が降らず土壌が乾燥したら、水やりしてください。
肥料
4月中旬~9月に、肥料の3要素であるチッ素(N)・リン酸(P)・カリ(K)が等量の緩効性化成肥料を規定量与えてください。
タマスダレは3~4月に3要素が等量の緩効性化成肥料を規定量、10月は規定量の半分程度を与えてください。
病害虫
問題になる病害虫は、ほとんど発生しません。
ゼフィランサスの作業

植え付け
開花時にボリュームが出るよう、密植気味に植え付けます。植え付けの適期は、寒さに弱い多くの種類は4月中旬~5月、タマスダレは3~4月です。
地植えの場合は、3~5cm間隔、5~10cmの深さで植えます。鉢植えの場合は、5~6号鉢に7球、3cm程度の深さで植えます。作業後にたっぷり水やりしてください。
植え替え
球根が増えて混みすぎると、生育が衰えます。鉢植えは1~2年に1回、地植えは3~4年に1回くらいを目安に植え替えてください。作業の適期は、植え付けと同様です。
用土
適度に保水性があり、水はけのよい用土が適します。草花に広く使える一般的な培養土か、赤玉土小粒7と腐葉土3を混ぜた用土などを使います。
増やし方
植え替え時に分球して増やします。
ゼフィランサスの栽培ポイント

- 霜にあたると枯れる種類が多いので注意
- タマスダレは植えたままで問題ない
- 生育期の強い乾燥に注意
- 明るい日陰でも花が咲く
ゼフィランサスは花色が豊富になり、人気が高まっています。霜の降りにくい暖地なら、簡単な霜よけ程度で地植えしたまま越冬します。比較的場所を選ばず育つのも魅力です。ゼフィランサスを育てて、パステルカラーの美しい花をたくさん咲かせてください。
Credit
文 / 小川恭弘 - 園芸研究家 -

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