【南国気分を自宅に!】アメリカデイゴ(カイコウズ)の育て方と魅力|初心者も安心の栽培術
Nature Clickz/Shutterstock.com
暑い夏にも負けずに、真っ赤な花をたっぷりと咲かせるアメリカデイゴ(カイコウズ)は、南国リゾートのようなトロピカルな雰囲気を演出してくれる花木。近年、温暖化が進む中で特に注目したいこの樹木は、暑さに大変強い特性を持ち、初心者でも比較的簡単に栽培できるのが魅力です。この記事では、あなたの庭を華やかに彩るアメリカデイゴの基本情報から、安心して育てるための詳しいコツまでを分かりやすくご紹介します。
目次
アメリカデイゴの基本情報

植物名:アメリカデイゴ
学名:Erythrina crista-galli
英名:Cockspur Coral Tree、Common Coral Treeなど
和名:カイコウズ(海紅豆)
その他の名前:アメリカデイコ、マルバデイゴ
科名:マメ科
属名:デイゴ属
原産地:南アメリカ
形態:落葉性小高木
アメリカデイゴの学名はErythrina crista-galli(エリスリナ・クリスタ・ガリ)。マメ科デイゴ属の落葉樹です。原産地は南アメリカで、アルゼンチンやウルグアイでは国花として愛されています。暑さに大変強い一方で寒さには弱く、庭植えできるのは、関東以西の太平洋側などの温暖地です。
日本に渡来したのはいつ?

アメリカデイゴが日本にもたらされたのは、江戸時代末期から明治時代にかけて。和名では海紅豆(かいこうず)と呼ばれてきました。寒さに弱いため寒冷地ではなかなか見かけませんが、温暖地ではよく育ち、鹿児島県の県木となっています。街路樹としてもポピュラーに利用されているほどです。
アメリカデイゴの花や葉の特徴

園芸分類:庭木
開花時期:7〜8月
樹高:5〜8m
耐寒性:やや弱い
耐暑性:強い
花色:赤
アメリカデイゴは自然樹高が5〜8mになる小高木です。しかし、定期的に剪定を行うことによって、適した樹高にコントロールすることができます。開花期は7〜8月で、花色は赤。直径5cmほどの花が連なり、満開時は見事です。花後に切り戻せば、シーズン中に繰り返し開花を楽しむことができます。葉は楕円形で、三出複葉が互生します。冬には葉を落とす落葉樹です。
風に揺れるアメリカデイゴ。赤い花がエキゾチックな雰囲気を漂わせます。Brester Irina/Shutterstock.com
アメリカデイゴの名前の由来と花言葉

アメリカデイゴの学名Erythrina crista-galliは、ギリシャ語で「赤い」という意味の「erythros」と「鶏冠」という意味の「crista-galli」に由来します。また和名はカイコウズ(海紅豆)とされていますが、これは本来は、ナンバンアカアズキという別の植物を指す名前です。
アメリカデイゴの花言葉は「情熱」「活力」「勇気」などです。

アメリカデイゴの仲間の種類

アメリカデイゴに似た花木が何種かあります。ここでは、代表的な種類をご紹介します。
デイゴ

原産地はインド、マレー半島などの熱帯地域。アメリカデイゴよりも寒さに弱いため、日本で庭植えにできるのは沖縄のみで、県花にもなっています。葉は卵形で、葉裏に産毛が生えているのが特徴です。開花期は3〜5月で、花色は赤。
サンゴシトウ(ヒシバデイゴ)

原産地は熱帯アメリカで、アメリカデイゴをもとに作出された交配種です。開花期は6〜9月で、花色は赤。花は径5cmほどで、あまり開かず細長いのが特徴。耐寒性はデイゴとアメリカデイゴの中間くらいです。
フイリデイゴ

デイゴの斑入り品種で、葉に黄色い斑が入ります。特徴や性質はデイゴとほぼ同じです。
アメリカデイゴの栽培12カ月カレンダー
開花時期:7〜8月
植え付け・植え替え:4月〜5月上旬
肥料:3〜4月
剪定:3月頃
アメリカデイゴの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり・風通しのよい場所を好みます。半日陰でも育ちますが、日照が不足すると花つきが悪くなるので注意してください。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】有機質に富み、水はけ・水もちがよい土壌を好みます。
耐寒性・耐暑性
アメリカデイゴは、熱帯性植物のため暑さには強い一方で、寒さにはやや弱い性質を持っています。関東以西の太平洋側など、ほとんど凍結することがない暖地であれば戸外で越冬できますが、凍結する寒冷地では鉢栽培にして、季節に応じて適した場所に移動しながら管理するとよいでしょう。
アメリカデイゴの育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付けの約2週間前に、直径・深さともに50cmほどの穴を掘り、掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、埋め戻しておきます。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の花木用培養土を利用すると手軽です。自身で用土を配合する場合は、赤玉土小粒7・腐葉土3の割合で混ぜ合わせて用いるとよいでしょう。
水やり

蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の土を狙って与えてください。
真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がって株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に行うと凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。特に開花期は水を欲しがるので、水切れしないように注意しましょう。
肥料

【地植え・鉢植えともに】
植え付け時には、元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。
アメリカデイゴは根に根粒菌がついて共生し、チッソ成分が供給されるので、頻繁に肥料を与えなくてもよく育ちます。毎年、芽吹く前の3〜4月に緩効性肥料をばらまいて中耕し、土になじませておくとよいでしょう。
注意する病害虫

【病気】
ほとんど病気の心配はありませんが、まれにすす病を発症することがあります。
すす病は、一年を通して葉や枝などに発生します。葉に発生すると表面に艶がなくなり、進行すると黒いすすが全体を覆って光合成がうまくできなくなり、樹勢が衰えてしまいます。カイガラムシ、アブラムシ、コナジラミの排泄物が原因なので、これらの害虫を寄せ付けないようにしましょう。込んでいる枝葉があれば剪定し、日当たり・風通しをよくして管理します。
【害虫】
ほとんど害虫の心配はありませんが、アブラムシやカイガラムシが発生することがあります。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することもあります。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mm。枝や幹などについて吸汁し、木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われて薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。
アメリカデイゴの詳しい育て方

苗木の選び方
園芸店やホームセンターなどで、庭のスペースに合うサイズの苗木を選びます。大木になりやすいので幼木を選び、枝葉を広げて育っていく姿を楽しむのも一案です。苗木は株元がしっかりとして勢いがあるものを。枯れ葉や枯れ枝が多いものやヒョロヒョロと間のびしているものは避けたほうが無難です。
植え付け・植え替え

植え付け・植え替えの適期は、4月〜5月上旬です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、入手したら早めに植え付けるとよいでしょう(真冬を除く)。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも1回り大きな穴を掘り、根鉢をくずして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。
地植えの場合、暖地では植えたままにしてもかまいません。熱帯性の花木のため寒さには弱いので、寒さが厳しく凍結する地域では鉢に植え替えて、暖かく日当たりがよい場所で越冬させてください。
【鉢植え】
入手した苗木の根鉢よりも1〜2回り大きな鉢を準備します。底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから花木用の培養土を半分くらいまで入れます。苗木を鉢の中に仮置きし、高さを決めたら、根鉢を軽くほぐして植え付けていきましょう。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えの場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずして小さくし、新しい培養土を使って植え直しましょう。
剪定・切り戻し

【花後の切り戻し】
花が終わったら、花のついた枝は葉を付け根から4〜5枚残して切り取りましょう。するとわきから新しい枝が伸びて、再び開花します。開花期であれば、繰り返し咲かせることが可能です。
【剪定】
アメリカデイゴは樹勢が強く、旺盛に枝葉を伸ばすので、大きくしたくなければ定期的な剪定が必須です。花芽は生育期に新しく伸びた枝にできるので、芽吹く前の3月頃が適期。枯れ枝や木の内側に向かって伸びている「逆さ枝」、垂直に立ち上がっている「立ち枝」、勢いよく伸びすぎている「徒長枝」などは根元から切り取りましょう。また、込み合っている部分があれば、日当たり・風通しがよくなるように、透かし剪定をします。樹形が乱れすぎている場合は、主枝のみ残して他の枝をすべて切り取ってもかまいません。萌芽力が強いので、再び枝を伸ばします。
増やし方

アメリカデイゴは、挿し木、種まき、根伏せで増やすことができます。ここでは、それぞれの方法についてご紹介していきます。
【挿し木】
挿し木とは、枝葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し木ができないものもありますが、アメリカデイゴは挿し木で増やせます。
アメリカデイゴの挿し木の適期は、7月頃です。新しく伸びた枝を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り、蒸散のバランスを取るために下葉は取っておきます。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。発根後は日当たり・風通しのよい場所に移動し、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じクローンになることです。
【種まき】
種まきから増やしたい場合、開花後に種子を採取しておくとよいでしょう。種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。種子は秋口に莢を採取し、翌年の種まき適期まで、紙袋などに入れて常温で保存しておきます。
アメリカデイゴの種まきの適期は、4〜5月です。3号の黒ポットに市販の培養土を入れて十分に水で湿らせた後、種を播いて軽く土をかぶせます。発芽までは明るい半日陰に置き、乾燥・過湿にならないように適度な水管理をしてください。発芽後は日当たり・風通しのよい場所で管理します。適度な大きさの苗木になるまで鉢上げしながら管理したのち、植えたい場所に定植しましょう。
【根伏せ】
根伏せとは、植物の根を切り取って地中に埋めておくことで、発芽・発根させる方法です。アメリカデイゴの根伏せの適期は、6〜7月。株まわりの土を掘って根を20cmほど切り取り、短く切ります。3号の黒ポットに市販の培養土を入れて十分に水で湿らせた後、根を寝かせて入れ、軽く覆土します。乾燥しないように管理し、しばらく待つと発根、発芽し始めます。成長とともに鉢上げしながら育てて、適度な大きさになったら植えたい場所に定植しましょう。
南国リゾートにいるような気分に! 自宅のシンボルツリーとして育ててみよう

熱帯地域に自生するアメリカデイゴは、トロピカルな風情をもつため、自宅にいながらリゾート気分を味わえます。暑さに大変強い特性があるので、温暖地なら地植えも可能。どっしりと存在感のあるシンボルツリーとしておすすめです。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
- リンク
記事をシェアする
新着記事
-
公共ガーデン

都立公園を新たな花の魅力で彩る「第3回 東京パークガーデンアワード」都立砧公園【ファイナル審査を迎え…
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテストとして注目されている「東京パークガーデンアワード」。第3回コンテストは、都立砧公園(東京都世田谷区)を舞台に2024年12月の作庭後、さまざまな植物が日々成長…
-
宿根草・多年草

毎年咲かせるラナンキュラス・ラックスの秋ケア完全ガイド|植え替え・株分け・夏越しの見…PR
春の訪れを告げる植物の中でも、近年ガーデンに欠かせない花としてファンの多い宿根草「ラナンキュラス・ラックス」。春早くから咲き始め、1株で何十輪という花が咲き、誰しもが虜になる魅力的な植物です。年々新し…
-
観光ガーデン

【秋バラが本格的に開花!】煌めくクリスマスの雰囲気を先取り「横浜イングリッシュガーデ…PR
希少なアンティークローズから最新品種まで、国内外でも屈指のコレクション数を誇る「横浜イングリッシュガーデン」は、秋に色香を増すバラも続々開花が進んでいます。11月4日(火)からは、季節を先取りしてクリス…


























