イチゴに似た整った花形で一重咲きのポテンティラ。カラフルな花色のバリエーションがあるので、選ぶ楽しみもあります。一輪一輪は短命ですが、次々と咲き継ぐので観賞期間が長いのも魅力です。この記事では、ポテンティラの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、代表的な品種、詳しい育て方、庭への取り入れ方など、さまざまに深掘りして解説します。
目次
ポテンティラの基本情報

植物名:ポテンティラ
学名:Potentilla
英名:cinquefoils
和名:キンバイ(金梅)、ロウゲ(狼牙)など
その他の名前:花イチゴ
科名:バラ科
属名:キジムシロ属(ポテンティラ属)
原産地:北半球
形態:宿根草(多年草)・一年草
ポテンティラは、バラ科キジムシロ属(ポテンティラ属)の一年草、多年草です。北半球の温帯〜亜寒帯〜寒帯に分布(一部にアンデス地方にも)しているとされ、その種類は300種以上にも及んでおり、日本にもキジムシロなど20種の自生種が確認されています。さまざまな種類があり、種類によっては草丈や性質などが異なるため、購入する際にはラベルなどで基本情報をしっかり確認しておくとよいでしょう。寒さに強く、日本の気候のもとでは、戸外に出したままでも越冬できます。草丈は5〜60cmほどで、中には100cmにまで達するものもあります。これは種類によって草丈に幅があるためです。敷地の広さや用途などに合うかを、チェックしておくことも大切です。
ポテンティラは、ハチなど多くの昆虫にとって魅力的な蜜源植物です。特にポテンティラ・シンプレックスは、ハチの好む花として知られています。Sari ONeal/Shutterstock.com
ポテンティラの花や葉の特徴

園芸分類:草花
開花時期:4月〜7月中旬
草丈:5〜100cm
耐寒性:強い
耐暑性:強い~普通
花色:赤、オレンジ、アプリコット、ピンク、黄色、白など
ポテンティラの基本種は一重の5弁花ですが、品種改良により八重咲きのものも出回っています。花色は赤、オレンジ、アプリコット、ピンク、黄色、白、黒赤など、種類によって色幅が多様。開花期間は4月〜7月中旬で、やや小さめの花が次々に咲きます。葉姿は、種類によってバラエティーに富んでおり、品種によってはシルバーグリーンの葉を持ち、カラーリーフとして活躍するものもあります。
ポテンティラの名前の由来や花言葉

ポテンティラの学名はPotentillaで、学名がそのまま花の名前として流通しています。語源はラテン語で「強力」を意味する「potens」で、これは薬効成分の高い品種があることに由来するとされています。和名はキンバイ、ロウゲなど、種類によりいくつかのものがあります。
ポテンティラの花言葉は、「楽しい時間」「思いがけない出会い」などです。
ポテンティラの代表的な種類

ポテンティラは、300種以上が確認されているほか、人の手によって改良された園芸品種も数多く出回っています。ここでは、代表的な種類を一部ご紹介しましょう。
ポテンティラ・サーベリ‘モナークベルベット’

この‘モナークベルベット’は、古くから栽培されている定番的な品種で、北アメリカの一部に自生する赤花のポテンテラの原種(サーベリ/Potentilla thurbere)から作出されました。草丈30~40cmほどで、中心部が黒っぽくなる濃い赤花が多数咲きます。暑さ、寒さに強く丈夫な性質です。
ポテンティラ・レクタ

ポテンティラ・レクタは草丈が30〜50cm程度で、直立性。黄色い花を咲かせるのが特徴です。ポテンティラ・レクタ‘アルバ’は白花が咲きます。
ポテンティラ・ネパレンシス

ポテンティラ・ネパレンシスは、イチゴに似たシンプルな花姿をしています。草丈は40〜50cm程度。園芸品種では‘メルトンファイヤー’、‘ヘレジェーン’、‘ミスウィルモット’などが人気品種です。
ポテンティラ・ネウマンニアナ(ポテンティラ・ベルナ)

ポテンティラ・ネウマンニアナは、這うようにして広がる性質を持つため、グラウンドカバー向き。暑さ寒さに強く、放任してもよく育ちます。
ポテンティラの栽培12カ月カレンダー
開花時期:4月〜7月中旬
植え付け・植え替え:3〜4月、10~11月
肥料:3〜4月、10~11月
種まき:4月〜5月中旬頃、10〜11月
ポテンティラの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり、風通しのよい場所が最適です。日当たりが悪い場所では間伸びぎみの頼りない草姿になり、花つきも悪くなるので注意しましょう。
【日当たり/屋内】一年を通して屋外での栽培が基本です。
【置き場所】高温多湿の環境が苦手なため、粘土質の土壌や、水場に近くて低い場所など、水はけが悪くてジメジメとした環境を嫌います。地植えにする場合は、有機質資材をすき込んでふかふかとした土壌にし、周囲より少し土を盛って高くしておくと水はけがよくなります。
耐寒性・耐暑性
寒さには強いので、戸外で越冬できます。耐暑性もある程度ありますが、真夏は肥料を与えずに暑さを乗り切りましょう。
ポテンティラの育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付けの2〜3週間前に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んでよく耕し、水はけ・水もちのバランスが取れた、ふかふかの土壌に整えておきます。多湿の環境を嫌うので、粘土質の土壌や、水場に近くて低い場所などでは、あらかじめ川砂やパーライト、有機質資材などを投入して土壌改良し、周囲より少し土を高く盛っておくと水はけがよくなります。または、レイズドベッドに植栽するのも一案です。レイズドベッドとは、レンガや石などを周囲に積んで枠を作り、栽培に適した用土を入れた花壇のことで、地面よりも高い位置に底上げしているため、水はけがよくなります。
土づくりの後は、すぐに植物を植え込まないほうがベターです。しばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
草花用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。
水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に行うと凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
鉢栽培の場合は、日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメとした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面が乾いてから、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
肥料

【地植え・鉢植えともに】
3〜4月と10〜11月に、緩効性化成肥料を施します。
注意する病気や害虫

【病気】
ポテンティラはほとんど病気の心配はありませんが、時にうどんこ病、灰色かび病などが発生することがあります。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がって光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発生しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下にて発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
ポテンティラに発生しやすい害虫は、アブラムシ、アザミウマなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
アザミウマは花や葉につき、吸汁する害虫です。スリップスの別名を持っています。体長は1〜2mmほどで大変小さく、緑や茶色、黒の姿をした昆虫です。群生して植物を弱らせるので注意しましょう。針のような器官を葉などに差し込んで吸汁する際にウイルスを媒介するので、二次被害が発生することもあります。被害が進んだ花や葉は傷がついてかすり状になる異変が見られるのでよく観察してみてください。花がらや枯れ葉、雑草などに潜みやすいので、株まわりを清潔に保っておきます。土に混ぜるタイプの粒剤を利用して防除してもよいでしょう。
ポテンティラの詳しい育て方
苗の選び方
ポテンティラの苗を購入する際は、生き生きとした緑色で、節間が間伸びせずがっしりと締まった勢いのあるものを選ぶとよいでしょう。
植え付け・植え替え

ポテンティラの植え付け・植え替えの適期は、3〜4月、10~11月です。ただし、植え付け適期以外にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢を軽く崩して植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。
越年するタイプを地植えにしている場合は、数年は植えたままにしてもかまいません。しかし、大株に育って込み合ってきたら、掘り上げて株分けして植え直し、株の若返りをはかるとよいでしょう。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、6〜8号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して鉢の中に仮置きし、高さを決めます。根鉢を軽くほぐし、少しずつ土を入れて、植え付けていきましょう。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
越年するタイプを鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずし、新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。
日常のお手入れ

【花がら摘み】
ポテンティラは次々に花が咲くので、終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも終わった花を残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
増やし方

ポテンティラは株分けと種まきで増やすことができます。
【株分け】
株分けの適期は、3月か10月頃です。
株を植え付けて越年したのち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りを図ります。株を掘り上げて数芽ずつつけて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿の株が増えていくというわけです。
【種まき】
ポテンティラは、一年草など種類によっては種まきから簡単に育てられますよ! 種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くて多数の苗を植えたい場合は、コストカットにもなります。
ポテンティラの種まきの適期は4月〜5月中旬か10〜11月で、発芽適温は20℃前後です。
種まき用のセルトレイに草花用にブレンドされた市販の培養土を入れ、1穴当たり1〜2粒ずつ播きます。種が隠れる程度に土を薄くかけ、はす口をつけたジョウロで高い位置から優しい水流で水やりをしましょう。発芽までは3週間ほどかかりますが、乾燥・過湿にならないように適度な水管理をしてください。発芽後は日当たりがよく、風通しのよい場所で管理します。本葉が2〜4枚出始めたら黒ポットに鉢上げします。さらに育苗して根鉢が充実し、本葉が7〜8枚ついて十分に育ったら、植えたい場所に定植します。
ポテンティラのおすすめのアレンジ

這性でランナーを出して広がっていくタイプは、グラウンドカバーとしてカーペットのように広げるのがおすすめです。地面を覆うことで雑草対策にも役立ちます。草姿が直立するタイプは、楚々とした風情を生かし、ナチュラルガーデンに取り入れるのがおすすめ。水はけがよく乾燥した環境を好むので、石と石の間を縫うように植栽するスタイルのロックガーデンに取り入れても、野趣感漂う姿を楽しめます。

ポテンティラで庭を華やかに

花色が多様に揃うポテンティラ。ビビッドカラーを選べば庭のアクセントに、優しいパステルカラーや白を選べばほかの植物と調和してナチュラルな雰囲気が楽しめます。寒さに強く、比較的育てやすいため、ビギナーにもおすすめ。ぜひ庭やベランダに迎え入れてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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