常緑低木マサキの育て方と楽しみ方 日本庭園にも洋風の庭にも映える樹木
冬でもみずみずしい葉姿を保つ常緑樹のマサキ。萌芽力が強いため、主に和風の庭の生け垣として用いられてきましたが、斑入りなど美しいカラーリーフの品種もあるので、自然樹形を生かせば洋風の住宅にも似合います。この記事では、マサキの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、品種、育て方など、詳しくご紹介します。
目次
マサキの基本情報
植物名:マサキ
学名:Euonymus japonicus
英名:Japanese euonymus、evergreen euonymus、Japanese spindletree、evergreen spindle
和名:マサキ(柾、正木)
その他の名前:シタワレ、フユシバ
科名:ニシキギ科
属名:ニシキギ属
原産地:日本、中国、朝鮮半島
形態:常緑性低木
マサキの学名は、Euonymus japonicus(ユオニマス・ジャポニカス)。シタワレ、フユシバの別名もあります。ニシキギ科ニシキギ属の庭木で、原産地は日本、中国。日本で自生してきた植物なので暑さや寒さに強く、放任してもよく育ちます。
マサキは、潮風や大気汚染にも強いとされ、海岸付近や都市の緑化を目的に街路樹として用いられてきました。葉に斑が入る変異が出やすいため、江戸時代の園芸愛好家に好まれたことから、園芸品種が多様に生まれた歴史があります。その名残により、現在でも斑入り種が多様に揃っており、選ぶ楽しみもあります。
常緑樹で冬もみずみずしい葉姿を保つので、目隠ししたい場所に植えるのにも向き、園芸用や生け垣として珍重されています。斑入り葉を選べば、カラーリーフプランツとしても活躍することでしょう。樹高は自然樹形で6mほどですが、毎年剪定をすればコンパクトな姿をキープすることは可能です。萌芽力が強いので、刈り込んで生け垣として利用することもできます。
マサキの花や葉の特徴
園芸分類:庭木
開花時期:6〜7月
樹高:2~6m
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:淡緑色
開花期は6〜7月で、直径5mmほどの小さな花が集まって咲きます。花は淡いグリーン色で、あまり目立ちません。花弁は4枚で、おしべも4本ついています。開花後、7〜8mmほどの果実をつけます。秋に赤く熟すと野鳥がやってくることも。完全に熟すと果実が割れて中から実が飛び出してくるので、その実姿も愛らしいものです。厚みのある葉は長さ4〜7cmほどの楕円形で、縁には浅い切れ込みが入ります。
マサキの名前の由来や花言葉
マサキという名前の由来については諸説あり、常緑で冬でも青々としていることから真青木(まさおき)と呼ばれ、それが転訛したとする説、挿し木が容易なことから「芽挿木(めさしき)」が転訛したとする説、真っすぐに伸びることを表す「正木」からとする説などがあります。
マサキの花言葉は「厚遇」「円満」です。
マサキの葉や実には毒がある
マサキの葉や実、樹皮には脂肪油が含まれ、毒性があります。野鳥が好んで食べにくるのでおいしいのかな? と思う方もいるかもしれませんが、絶対に口に入れないでください。誤って食すと、下痢や嘔吐の症状が出ることがあります。特に幼い子どもやペットがいる家庭では、口に入れないように注意しましょう。
マサキの品種
マサキは江戸時代から品種改良が行われた植物として知られています。ここでは、特にポピュラーな品種についてご紹介します。
マサキ
基本種としてのマサキの葉は濃いグリーン。肉厚で光沢があります。
キンマサキ
本来は新芽の中央に黄色い斑が入る品種を指しますが、最近では葉の外側に斑が入る品種もキンマサキとして流通しています。バランスよく入る黄色が洋風で軽やかな雰囲気で、庭を明るく彩ります。
ギンマサキ
やや丸みのある葉が特徴で、葉に白い縁取りが入る品種です。明るく爽やかな雰囲気をもたらします。
オウゴンマサキ
新芽が出る頃は明るい黄色で、まるで花が咲いたような華やかさがあります。葉は徐々にグリーンになります。
マサキの栽培12カ月カレンダー
開花時期:6〜7月
植え付け・植え替え:3月〜4月中旬、9月下旬〜10月上旬
肥料:2月頃
剪定:6月頃と9〜10月(生け垣)
マサキの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たりがよく、風通しのよい場所を好みますが、耐陰性があるため、朝のみ光が差す東側やチラチラと木漏れ日が差す落葉樹の足元など、日なた~明るい日陰まで栽培可能です。ただし、あまりに日当たりが悪い場所では枝葉がヒョロヒョロと伸びて間伸びした樹形になったり、実つきが悪くなったりすることがあります。
【日当たり/屋内】一年を通して屋外での栽培が基本です。
【置き場所】水はけがよく腐食質に富んだふかふかとした土壌を好みますが、さほど土質を選びません。潮風や大気汚染にも強く、耐陰性もあるため、環境を選ばず栽培できます。
耐寒性・耐暑性
暑さにも寒さにも強く、特に冬越し対策などをしなくても周年戸外で管理できます。
マサキの基本的な育て方
用土
【地植え】
植え付けの2〜3週間前に直径、深さともに50㎝程度の穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきましょう。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の樹木用の培養土を利用すると手軽です。自身で配合土を準備する場合は、赤玉土小粒と腐葉土を等量でブレンドするとよいでしょう。
水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の土を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合は、気温の高い昼間に与えると、すぐに水の温度が上がって株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に行うようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメとした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面が乾いてから、鉢底から流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。枝葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
肥料
【地植え・鉢植えともに】
生育期に入る少し前の2月頃、生育を促すために緩効性化成肥料を株の周囲にまき、周囲の土を軽く耕して土に馴染ませましょう。あまり肥料を多く与えると枝葉が茂りすぎて樹形が乱れやすくなるので、与えすぎには注意してください。
注意する病害虫
【病気】
マサキに発生しやすい病気は、うどんこ病、すす病などです。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がって光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
すす病は、一年を通して葉や枝などに発生する病気です。葉に発生すると表面につやがなくなり、病状が進むと黒いすすが全体を覆っていき、見た目が悪いだけでなく、光合成がうまくできなくなり、樹勢が衰えてしまいます。カイガラムシ、アブラムシ、コナジラミの排泄物が原因ですす病が発生するので、これらの害虫を寄せ付けないようにしましょう。込み合っている枝葉があれば、剪定して日当たり、風通しをよくして管理します。
【害虫】
マサキに発生しやすい害虫は、ミノウスバ、カイガラムシなどです。
ミノウスバはガの一種で、幼虫が葉を旺盛に食害します。クリーム色字に黒い縦縞が多数入り、毛も生えているのが特徴です。老齢になると2cmほどになります。発生時期は3〜5月で、集団発生することがあるので要注意。肌に触れるとかぶれることがあります。見つけ次第補殺するか、適用する殺虫剤を散布して駆除しましょう。
カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mm。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われており、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。
マサキの詳しい育て方
苗木の選び方
苗木を購入する際は、葉色が鮮やかで、新しい芽がしっかりしているものを選ぶとよいでしょう。
植え付け・植え替え
マサキの植え付け・植え替えの適期は、3月〜4月中旬か、9月下旬〜10月上旬です。
ただし、植え付け適期以外にも苗木は出回っているので、花苗店などで入手したら真夏と真冬を除いて早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢を軽く崩して植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。
地植えで育てる場合は、環境に合えば植え替える必要はありません。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、入手した苗よりも1〜2回り大きな鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから樹木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木をポットから取り出し、鉢の中に入れて仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて、植え付けていきましょう。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。
剪定
剪定の基本
【自然樹形で剪定する場合】
自然樹形を生かして剪定する場合は、真冬と真夏を除けばいつ行ってもかまいません。花や実を楽しみたい場合は、芽吹く前の3月頃に行うとよいでしょう。
マサキは自然に樹形が整うので、若木のうちはあまり刈り込んだり強く切り戻したりする必要はありません。木が大きくなって枝葉が込み合っている部分があれば、不要な枝を枝の付け根で切り取って風通しをよくします。不要な枝とは、古くなった枝、勢いよく伸びすぎている枝、ほかの枝に絡んでいる枝、内側に向かって伸びる枝、下に向かって伸びる枝、ひこばえ(株元から勢いよく伸びる枝)などです。
また、斑入りの品種を育てている場合、斑の入っていない緑の葉を茂らせた枝が出てくることがあります。このような先祖返りした枝は繁殖力が強く、そのままにしておくと斑の入っていない枝のほうが優勢になってしまうため、こうした枝は見つけ次第根元から切り落としましょう。
【生け垣を刈り込む場合】
生け垣にしている場合、マサキは成長が早く形が乱れやすくなるので、年に2回ほど刈り込みます。適期は6月頃と9〜10月です。さぼらずに刈り込むことで、枝葉が密になって充実した生け垣になります。刈り込む際は、だいたいのアウトラインを決めて、はみ出している枝を刈り込みバサミで切り揃えていくとよいでしょう。
庭師に剪定してもらう
家の周囲にぐるりとマサキの生け垣を設けているなど、範囲が広すぎて手に負えない場合は、庭師に依頼するのも一案です。
増やし方
マサキは挿し木で増やします。挿し木とは、枝を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し木ができないものもありますが、マサキは挿し木で増やすことが可能です。
マサキの挿し木の適期は、6月頃です。その年に伸びた新しい枝を10〜15cmほどの長さで切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を数枚切り取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。その後は日当たりのよい場所に置いて育苗し、大きく育ったら植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
観賞用庭木・生け垣に人気のマサキを育てよう
マサキは日本に自生してきた植物のため環境に馴染みやすく、放任してもよく育つのでビギナーにもおすすめの庭木です。江戸時代から品種改良がされてきた歴史もあり、カラーリーフも種類を選べます。常緑樹で冬もみずみずしい葉姿を保つため、目隠ししたい場所に植栽するのもおすすめ。庭木として見映えのよいマサキを、庭に迎え入れてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
- リンク
記事をシェアする
新着記事
-
ガーデン
都立公園を新たな花の魅力で彩る「第3回 東京パークガーデンアワード」都立砧公園で始動
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテストとして注目されている「東京パークガーデンアワード」。第3回コンテストが、都立砧公園(東京都世田谷区)を舞台に、いよいよスタートしました。2024年12月には、…
-
ガーデン&ショップ
都立公園を花の魅力で彩る画期的コンテスト「第3回 東京パークガーデンアワード 砧公園」全国から選ばれた…
2022年に代々木公園から始まった「東京パークガーデンアワード」。第2回の神代植物公園に続き、3回目となる今回は、東京都立砧公園(世田谷区)で開催されます。宿根草を活用して「持続可能なロングライフ・ローメ…
-
多肉・サボテン
アイスプラントの育て方 ペットボトルで水耕栽培も可能な新感覚野菜!
多肉植物に分類されるアイスプラントは、キラキラとした粒に覆われており、食べると塩気を感じる新感覚の野菜。耐塩性が高く、塩水でも栽培できるユニークな植物です。この記事では、アイスプラントの基本情報や特…