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- アボカドを自宅で収穫! 短期収穫の裏技&実をならせる育て方
消費量も生産量も上がっている人気の果実「アボカド」。近年は、国産のアボカドが高値で取り引きされ、アボカドの国内での栽培が注目されています。家庭でアボカドを結実させるのはハードルが高いですが、熱心なアボカド好きの方には自宅で栽培する人もいるほど。ここでは、家庭で観葉植物として楽しみながら少しの果実を収穫する育て方から、本格的な栽培と短期収穫までの裏技まで、プロが解説します。
目次
アボカドとは
植物名:アボカド
学名:Persea americana
英名:avocado 、alligator pear
和名:ワニナシ
科名:クスノキ科
属名:ワニナシ属
原産地:中央アメリカ
形態:常緑高木
脂質を多く含むことから「森のバター」という愛称でも呼ばれるアボカド。ビタミンやミネラルが豊富に含まれており、栄養価が最も高い果物とされます。美容効果も高く、高カロリーでも適量ならダイエットにもよいことから、女性からも非常に好まれているようです。
アボカドは、バナナやパイナップルの次に最も多く輸入される熱帯果実の一つ。日本で流通するアボカドの果実は、メキシコ産の「ハス」という品種がほとんどです。近年はペルーからの輸入も増え、2割程度を占めています。
国産のアボカドは和歌山県や愛媛県、宮崎県で生産されています。出荷量が非常に増えていますが、全体に占める割合はまだごくわずかです。ただし国産のアボカドが高値で売れたりしているので、今後さらなる普及が見込まれています。
アボカドは高木に育ちますが、根は地表付近に浅く伸び、台風などの強風で倒れやすいです。また根は酸素不足になると枯れやすいです。風当たりの強い平坦地に植えると、大きく育って実を付ける頃に突然枯れてしまうことも珍しくありません。
葉は大きくたくさん付き、多くの水分を必要とします。特に梅雨明け後の夏の高温乾燥期に水不足を起こしやすいです。アボカドを地植えで育てる場合は、適地に植えることが非常に重要で、灌水設備があるのが望ましいです。
鉢での栽培のほうが排水や樹勢を制御しやすいですが、灌水設備の必要性が高いです。
アボカドの栽培12カ月カレンダー
開花時期:5〜6月
収穫時期:11〜1月
植え付け・植え替え:3月下旬〜4月、10月頃
肥料:3月下旬〜4月、10月頃
種まき:5月頃
アボカドの生育サイクル
秋遅くから初冬に花芽が分化し、冬に花芽を形成していきます。4月に温度が上がっていくにつれて花芽が成長し、5~6月に開花します。開花期頃から7月くらいまで新しい枝が伸びてきますが、新しい枝の成長が盛んな場合、結実した果実が落果しやすくなります。8~9月に果実がよく肥大しますが、乾燥させるとうまく肥大しません。収穫期は11月から1月です。
アボカドの受粉と品種
アボカドは、同じ花でも午前と午後の活動で性別が変わり、2回開花します。アボカドの品種は開花習性によって、A・B2つのグループに分けられています。
【Aタイプ】
午前が雌で、午後が雄の活動をするタイプ
メキシコーラ、メキシコーラグランデ、スチュワート、ウィンターメキシカン、ハス(寒さに強くない)
【Bタイプ】
午前が雄で、午後が雌の活動をするタイプ
ベーコン、フェルテ、ズタノ
受粉させるには、AとBの2つの異なるタイプの品種を2株用意する必要があります。
寒さに強い品種を選ぶと暖地では路地栽培でき、鉢植えでも越冬が容易になります。上記のハス以外の品種は、寒さに強くマイナス4℃~マイナス6℃程度までの低温に耐えます。
アボカドの開花・結実までの期間
接ぎ木苗は高さが1m以内と大きくない株でも、購入してすぐに開花しやすいです。接ぎ木苗を購入して育てれば、最も早く確実に実がなります。
一方、種子から育てた実生苗は、開花させるのがまず第一の問題です。実生苗は、ある程度広いスペースで大きく育てないと開花しにくいです。温室等で加温すれば、実生からでも5~6年で結実させることは可能です。ただし親株とは形質が異なる果実になります。
関東地方南部や都心部など条件のよい場所では屋外で越冬しますが、開花まで10年以上かかることが多いでしょう。さらに結実させるには、受粉樹も必要です。
大きな木になり多くの花を咲かせるようになると、1本でも結実するようになります。1本の木の中でも開花習性に時差などが生じるので、花が多く咲くと結実する可能性が高くなります。
アボカドの鉢植え栽培
最小限の栽培で少しの果実を収穫したい場合は、接ぎ木苗を2本用意して最終的に10号鉢程度の大きさで栽培してください。
多く収穫したい場合は、直径50cm、60ℓくらいの容量の鉢を使い、広いスペースが必要です。実生で果実を収穫したい場合も、同様の大きさの鉢を使って大きく育てます。水やりの労力が多くかかるので、自動灌水装置の設置をおすすめします。
アボカドの実生株を早く省スペースで開花・結実させる裏技
比較的入手容易な品種「ハス」の種子だけで開花結実させます。
まず5月に「ハス」の種子を播いて(土に埋めて)、実生苗を多く作ります。鉛筆程度の太さまで育った苗を台木として、同じ「ハス」の実生の枝を接ぎ木します。6~7月が接ぎ木の適期ですが、やや難しいので多くの苗を作ったほうがよいでしょう。
接ぎ木が成功すれば、大きく育てなくても早く開花します。同様の開花株を複数育てると、結実するようになります。ただしハスは寒さにあまり強くない品種なので、冬はビニールハウス内などで栽培するとよいでしょう。
違う品種の受粉樹を用意しなくても結実するのは、実生苗のため開花習性に変異が生じやすいことが考えられます。
アボカドの剪定・仕立て方
全く剪定しないとあまり分枝しないことも多く、急速に背が高くなります。地植えした場合は、どんどん成長して2階建ての家を越える高さになってしまいます。
実生苗は、30cmくらい伸びたら枝先を切る摘心を行ってください。接ぎ木苗も購入したら直立した枝の摘心を行ってください。上方向に伸びる枝の摘心を繰り返すことで樹高を抑え、コンパクトな樹形にすることができます。
結実している場合、梅雨明け頃から伸びる新しい枝は、早めに摘心してください。そのままにすると栄養を取られ、果実が落ちる原因になります。
アボカドに適した環境・置き場所
鉢植えの置き場所
鉢植えは、日当たりがよく風が強く当たらない場所が適します。室内で冬越しさせた鉢植えは、4月下旬から11月までは、屋外の日向に置いてください。
地植えに適した場所
根が酸素不足に弱いので、水没しない場所を選ぶことが重要です。10年育てて実を付け始めた株が、例年にない台風で1晩水没しただけで枯れた例などがあります。斜面や高台のような場所など、確実に水没しない場所に植えるようにしてください。
南面のゆるやかな傾斜地が理想的です。ただし傾斜地の上のほうは乾燥しやすく、水やりが必要になりやすいので注意してください。また強風や塩害に弱いので、周囲に防風林があるなど風当たりの弱い場所が適します。
木が大きくなってくると夏に乾燥しやすいので、灌水設備のある場所が望ましいです。
屋外で栽培できる地域
関東地方南部の海沿いの地域や都心部が、アボカドが屋外栽培できる北限とされます。ただし冬に花芽が枯死する場合もあるため、結実が安定しないことが多いです。温室で無加温栽培できるので、温室内の栽培のほうが結実させやすいでしょう。
アボカドの育て方・日常の手入れ
水やり
春と秋は鉢土の表面が乾いたら水やりしますが、夏は毎日水やりしてください。また葉が多く茂った鉢植えは乾きやすく、より多くの水やりが必要になります。夏は1日2回の水やりが必要な場合も多いです。
受け皿に水を貯めるのは避けてください。根が酸素不足になって根が傷み、突然枯れる可能性が高くなります。
肥料
鉢植えは4月から10月に、3要素が等量の緩効性化成肥料などを規定量与えてください。
地植えした場合は、4月と10月に施肥してください。実が付くようになったら、7月にも肥料を与えてください。
植え替え
大きく育てるには、毎年春に一回りから二回り大きな鉢に植え替えてください。根が酸素不足に弱いので、急に大きな鉢に植え替えると生育が衰えやすいです。
用土は特に選ばないので、草花用の一般的な培養土で大丈夫です。水はけが悪い場合は、パーライトを1~3割足すとよいでしょう。
病害虫
生産地では病害虫は重要な問題ですが、日本では目立つ病害虫がありません。無農薬で栽培しやすいです。
温室栽培では害虫類の被害が発生します。カイガラムシやコナジラミ等の発生に注意してください。
冬越し
室内の日当たりのよい窓際のような場所に置いてください。室内に置けば、比較的容易に越冬します。
アボカドが屋外で越冬できる海沿いの暖かい地域や都心部でも、種まきから3年くらいまでの幼い株は屋外の冬の寒さで枯れやすいので、室内で冬越しさせたほうがよいでしょう。
アボカドの実をならせるポイント
- 異なる開花タイプの接ぎ木苗を2株用意する
- 根が確実に水没しないようにする
- 夏は水切れしやすい
- 摘心を繰り返して樹高を抑える
- 地植えは適地の選定が非常に重要
消費量が多く栄養価が高いアボカドは、今後日本での栽培が盛んになることが見込まれます。国内で生産された高品質なアボカドは、多くのアボカドファンが待望しています。アボカドを家庭で育てて実をならせるのも、やりがいのある挑戦になることでしょう。ぜひアボカドを育てて、樹上で実らせた美味しい果実を味わってください。
Credit
文 / 小川恭弘 - 園芸研究家 -
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