トウモロコシは、代表的な夏野菜の一つですが、収穫後24時間で甘みが半減するといわれます。家庭で栽培すれば採りたてならではの格別の美味しさを味わえますよ! ここでは、トウモロコシの基本情報や特徴、品種、栽培のポイント、病害虫・鳥害対策などについて、詳しく解説します。
目次
トウモロコシの基本情報
植物名:トウモロコシ
学名:Zea mays subsp. mays
英名:corn、maize
和名:トウモロコシ(玉蜀黍)
その他の名前:スイートコーン、トウキビ、ナンバンキビ
科名:イネ科
属名:トウモロコシ属
原産地:北アメリカ
分類:一年草
トウモロコシは、イネ科トウモロコシ属の一年草です。原産地は北アメリカ。栽培適温は25〜30℃で、暑さに強い性質です。初夏から栽培を始める夏野菜で、種まきから90日ほどで収穫できます。基本的には連作障害が少なく、吸肥力が強いのが特徴。また、受粉は昆虫ではなく風によって行われる風媒花で、別の株の花粉によって受粉する他家受粉の性質から、同じ場所に複数株を植え付ける必要があります。トウモロコシには数個の雌穂がつきますが、1株に1つの雌穂のみを残し、ほかは摘果するのが基本です。養分を1つに集中させることで、実がぎっしりと詰まって充実した果実に仕上がります。
トウモロコシの花や葉の特徴
園芸分類:野菜
開花時期:7〜9月
草丈:1.8〜2m
耐寒性:弱い
耐暑性:強い
トウモロコシは、発芽から3カ月程度で開花します。雌雄同株で、茎の先端にススキに似た穂状の雄花を、茎の中間の節に2~3個の雌花を咲かせます。トウモロコシのひげはめしべに当たり、実の数だけ出ていて、受粉すると実がなります。
トウモロコシの花言葉や名前の由来
トウモロコシの「モロコシ」は、タカキビとも呼ばれるイネ科の一年草のことを指し、トウモロコシとは唐から伝わったモロコシという意味。同じようにイネ科の穀物のキビに似ていることから、トウキビやナンバンキビと呼ばれることもあります。トウモロコシの花言葉は、「財宝」「豊富」「同意」「洗練」「仲たがい」などです。
トウモロコシの主な品種
トウモロコシは主に4種に分けられ、甘みが強いスイートコーン、トウキビ(モチキビ)として昔よく食べられていたフリントコーン、ポップコーンの原料となるポップコーン、飼料用のデントコーンがあります。
ここでは家庭栽培向きのスイートコーンに注目しましょう。年々交配が進み、たくさんの品種が出回っているので、新しい品種にチャレンジしてみるのもいいですね。甘みが強いイエロー種の‘キャンベラ84’や‘ゴールドラッシュ’、白と黄色の粒が混じるバイカラーの‘カクテル84EX’や‘ピーターコーン’、白いトウモロコシの‘ホイップコーン’や‘クリスピーホワイト’などがあります。
トウモロコシの栽培12カ月カレンダー
開花時期:7〜9月
植え付け:5月頃
肥料:5〜8月
種まき:4月~5月中旬
トウモロコシの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たりのよい場所で栽培します。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】水はけがよい土壌を好みます。場所を選ばず栽培できますが、根が深く張るので、プランターで栽培する場合は深型のものを選ぶとよいでしょう。
耐寒性・耐暑性
14℃以下では発芽しないので、十分に気温が上がってから栽培をスタートします。一年草なので、収穫後は抜き取って処分しましょう。
トウモロコシの育て方のポイント
用土
【地植え】
土づくりは種まき、または苗の植え付けの2〜3週間前にスタートします。畝幅約90cmを取って目印に支柱などを立てておき、苦土石灰を1㎡当たり100〜150gを散布してよく耕し、土に混ぜ込みます。さらに、植え付けの1〜2週間前に畝幅約90cmの中央に深さ15〜20cmの溝を掘り、1㎡当たり堆肥2kg、緩効性化成肥料100gを均一にまき、埋め戻して平らにならしておきましょう。土づくりは植え付け直前ではなく、数週間前に行っておくことで、分解が進んで土が熟成し、根張りがよくなります。
【プランター栽培】
野菜用にブレンドされた市販の培養土を使うと便利です。それぞれの野菜に適した土壌酸度などが異なるので、市販品の用途に「トウモロコシ」の項目が入っているか、確認しておくとよいでしょう。
水やり
【地植え】
発芽までは、乾燥していたら水やりします。地植えの場合は、下から水が上がってくるので、天候にまかせてもよく育ちます。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補いましょう。
【プランター栽培】
土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えます。特に梅雨明け後の高温期は乾燥しやすいので、朝夕2回の水やりを忘れずに行いましょう。高温の真昼に水やりすると、すぐにお湯状になって地温が上がり、かえって株が弱ってしまうので、必ず涼しい時間帯に与えることが大切です。
肥料
【地植え】
種まきから栽培した場合は、2回目の間引きの際、つまり1本立ちにした頃に追肥をします。1㎡当たり約30gの緩効性化成肥料を周囲にばらまき、軽く耕して株元に土を寄せましょう。トウモロコシは多肥を好むので、株に勢いがないようであれば肥料を補って調整します。
【プランター栽培】
2週間に1度を目安に液肥を与え、株の勢いを保ちます。
注意する病害虫や鳥害対策
甘くて美味しいトウモロコシは、害虫や虫にとってもごちそうです。ここでは、注意したい病害虫や鳥害対策についてご紹介します。
【病気】
トウモロコシの栽培ではほとんど病気の心配はありませんが、まだ株が幼いうちに立ち枯れ病やモザイク病が発生することがあります。
立ち枯れ病は、根や地際の茎から感染する病気です。だんだん生育が悪くなり、葉が黄色くなって株全体に病気が広がり、やがて腐って枯れてしまいます。発生初期に適用する殺菌剤をかけて防除しましょう。病気が広がるようなら、抜き取って処分します。
モザイク病はウイルス性の病気で、アブラムシやアザミウマ、コナジラミなどの虫が媒介となって発症します。したがって、発症しやすい時期はアブラムシなどの活動が活発な春から秋にかけて。主に葉に被害が発生し、モザイク模様が現れます。症状が進むとウイルスの種類によっては葉などが縮れてきたり、湾曲して変形したりし、株の生育が著しく悪くなります。治療効果のある薬剤はないので、発症したら抜き取って土ごと処分し、周囲に蔓延するのを防ぎましょう。アブラムシ対策をしておくことが、発症を抑制することにつながります。
【害虫】
トウモロコシの栽培で最も注意すべき害虫は、アワノメイガです。成虫は1cmほどの蛾で、開花する頃に産卵。孵化した幼虫は葉から食害し、さらに茎に穴をあけて入り込んで食い荒らし、子実にまで被害が及びます。発見はしやすく、穴の周囲に食べかすや黄褐色の糞が見つかります。幼虫が葉にいるうちに補殺することが大切で、パトロールを怠らずに異変を早めにキャッチしましょう。穂が出始めた頃に、適用する薬剤を散布するのも一案です。
【鳥害】
実が充実した頃に、鳥や野生動物の食害にあうことがあります。受粉が終わったら、実に収穫ネットをかぶせて対策しておきましょう。
トウモロコシの詳しい育て方
種まきと育苗
トウモロコシの栽培は、種まきからスタートするとコストカットにつながりますが、「狭い場所に数株単位で栽培するので、手軽に苗の植え付けからスタートしたい」という場合は、次項に進んでください。
【畑への直まき】
畑に直まきする場合の適期は、4月中旬〜5月中旬頃です。
土づくりをしておいた場所に、幅約90cm、高さ約10cmの畝をつくり、表土を平らにならします。この畝に2列に種をまきます。植える株数によって、畝の長さを調整しましょう。ちなみに2列にする理由は、トウモロコシは別の株の花粉を受粉して実をつける他家受粉の性質を持っているため、相互に受粉しやすくするためです。
株間約30cm、条間(2列の間隔)約60cmを取って、直径約7cm、深さ2cmほどの穴を畝に開けていきます。列同士の穴を並列にせずに、互い違いになるように配すと管理しやすくなります。畝に開けた穴に3粒ほど種子を播き、土をかぶせて軽く手のひらで押さえます。最後にたっぷりと水やりをしておきましょう。ジョウロで高い位置から優しい水流で与えます。
畝をほじくり返して種子を食べる鳥害防止や幼苗時の害虫対策として、防虫ネットを張っておくと安心です。まず、畝の両端とその間に数本の園芸用支柱を土中にさし込んで渡し、高さの揃った半円を作ります。そこに防虫ネットをかけて畝の両端で結び、四方の裾に土を盛って固定します。強風で飛ばされることのないように、結び目はペグで固定しておくとよいでしょう。
発芽後、本葉が出て10cmほどのびたら2本を残し、弱々しく育ちの悪い苗を抜き取る、「間引き」をします。間引いた後は、株元に軽く土を寄せておきましょう。
本葉が20〜30cmに育ったら、2回目の間引きをします。成育がよく勢いのあるほうの苗を1本残し、もう1本の苗は抜き取りましょう。この時には根もよく育っているので、残す苗の根を傷めないように株元に手を添えて抜き取ります。または地際付近をハサミで切ってもよいでしょう。
苗が成長して、防虫ネットの天井に葉が当たるようになったら、防虫ネット・支柱共に撤去します。
【ポットまき】
ポットまきする場合、種まきの適期は4月〜5月中旬頃です。
黒ポットに培養土を入れて、中央に深さ2cmほどの穴を開けます。3粒ほど種子を播き、覆土して手で軽く押さえましょう。最後にたっぷりと水を与え、日当たりのよい場所に置きます。遅霜の心配がある時期は、凍結しない場所で管理することがポイントです。
発芽後、本葉が出て10cmほど伸びたら2本を残し、弱々しく育ちの悪い苗を抜き取る、「間引き」をします。間引いた後は、株元に軽く土を寄せておきましょう。
本葉が20〜30cmに育ったら、2回目の間引きをします。成育がよく勢いのあるほうの苗を1本残し、もう1本の苗は抜き取りましょう。この時には根もよく育っているので、残す苗の根を傷めないように株元に手を添えて抜き取ります。または地際をハサミで切ってもよいでしょう。
苗の植え付け
【地植え】
黒ポットに種子を播いて育苗した場合や購入した苗を利用する場合、植え付け適期は遅霜の心配がなくなる5月頃です。
土づくりをしておいた場所に、幅約90cm、高さ約10cmの畝をつくり、表土を平らにならします。この畝に2列に苗を植え付けます。植える株数によって、畝の長さを調整しましょう。ちなみに2列にする理由は、トウモロコシは別の株の花粉を受粉して実をつける他家受粉の性質を持っているため、相互受粉しやすくなるためです。
株間約30cm、条間(2列の間隔)約60cmを取って、苗を植え付けます。列同士で並列に植え付けずに、互い違いになるように配すと管理しやすくなります。
【プランター栽培】
大型プランター、鉢底網、鉢底石、培養土、苗×2、支柱、ひもを用意します。トウモロコシは別の株の花粉を受粉して実をつける他家受粉の性質を持っているため、相互受粉しやすくするため、必ず2株以上栽培することがポイントです。
大型プランターの底穴に鉢底網を敷き、底が見えなくなるくらいまで鉢底石を入れ、その上に市販の野菜用培養土を入れます。水やりの際に水があふれ出ずに済むように、ウォータースペースを鉢縁から2〜3cm残しておきましょう。30cmほどの間隔を取って、2株植え付けるのが目安です。苗より一回り大きな植え穴を掘り、根鉢をくずさずそのまま苗を植え付けて、最後にたっぷりと水を与えましょう。
日常のお手入れ
【支柱立て】
トウモロコシは草丈が高くなりますが、茎が太く自立します。しかし台風が来る前など、心配な時は支柱を株の近くに立てて、麻ひもやビニタイなどで誘引するか、囲い込んでおくとよいでしょう。
【追肥と土寄せ】
倒伏防止のため、本葉が6~8枚出た頃、追肥と同時に土寄せを行うとよいでしょう。
受粉・摘果
【受粉】
トウモロコシは、風の力を借りて受粉する風媒花です。花が咲いて花粉が出るようになったら、株を握って少し揺らして花粉を周囲に飛ばしましょう。
【摘果】
トウモロコシの栽培では、1株に1つの実を収穫します。1株に2〜3個の雌穂がつきますが、絹糸が出始めたら一番上についた雌穂のみを残して、残りの雌穂を摘み取りましょう。こうすることで養分が集中し、実がつまって充実したトウモロコシを収穫することができます。摘み取った雌穂は、ヤングコーンとして炒め物やスープなどに利用できます。
収穫
トウモロコシの収穫適期は、受粉後20〜25日後くらいです。絹糸が茶色く変色して縮れてきた頃を目安に、実を倒してもぎ取ります。トウモロコシは鮮度が落ちやすいので、収穫したらすぐに調理しましょう。
トウモロコシ栽培では脇芽はそのままにする
トウモロコシの栽培では、株元からいくつかの脇芽(わき芽)が出てきます。ひと昔前までは、この脇芽をかき取るようにアドバイスされていましたが、取り除かなくても成育に支障が出ないことが分かり、現在ではそのまま管理するようになりました。葉の面積が増えるために光合成が活発に行われ、かえって株や根が充実するとされています。
トウモロコシ栽培でよくある質問
トウモロコシを家庭で栽培する場合に、よく寄せられる質問についてピックアップし、解説します。
トウモロコシの実がうまく入らない
原因は受粉がうまくいかなかったことが考えられます。プランター栽培では2株以上を植えているでしょうか。菜園では1つの畝に2列植えて、受粉しやすいようにしてください。開花したら株を軽くゆすり、花粉を周囲に飛ばして、周囲の株への受粉を促しましょう。また、日頃からの適切な水やり・施肥の管理も大切です。極端に乾燥させたり、肥料切れにしたりせず、適した管理を心がけましょう。
風で倒れる
株が倒れることがないように、幼苗のうちは株元にしっかり土寄せしておきましょう。成長後は支柱を立てて麻ひもかビニタイで誘引しておくと安心です。
トウモロコシを栽培してもぎたてを味わおう
トウモロコシは、栽培のポイントさえ押さえれば、家庭でも容易に育てることができます。家庭で栽培して、採りたての美味しさを味わってはいかがでしょうか。
参考文献/
『やさしい家庭菜園』 監修者/藤田智、加藤義松 発行/家の光協会 2006年3月1日第1刷
『甘やかさない栽培法で野菜の力を引き出す 加藤流絶品野菜づくり』著者/加藤正明 発行/万来舎 発売/エイブル 2015年5月25日発行第2刷
『はじめての野菜づくり コンテナ菜園を楽しもう』著者/藤田智 発行/日本放送出版協会 2007年5月25日発行
『わが家の片隅でおいしい野菜をつくる』監修/藤田智 発行/日本放送出版協会 2008年2月10日第5刷発行
『別冊やさい畑 野菜づくり名人 虎の巻』発行/家の光協会 2009年2月1日発行
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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