乾燥が気になる季節。蒸篭(せいろ)を使った調理で美味しく楽しく、部屋の中を加湿してみては? 蒸篭料理はとても簡単。蒸気で野菜やお肉をふっくらと仕上げ、素材の甘さや旨味を引き出します。今回は、身体に嬉しい作用が詰まった中国のミックススパイス五香粉を使う「五香粉香る、モチモチ餅米シュウマイ」を、神奈川県葉山で植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんに教えていただきます。
目次
記憶の中の「ごちそう」

思い出に残る母の手料理。横浜育ちの母は、揚げワンタンやワンタンスープ、ベトナム春巻など、中華料理にインスパイアされたものも多かった気がします。特に思い出深いのが「餅米シュウマイ」。頻繁に登場した訳でもなく、なぜこの料理? と自分でもよく分からないのですが、モチモチとした食感にしっかりと味のついた挽肉が、きっと子供心を鷲掴みにしたのでしょう。

二十歳の頃。当時一人暮らし初心者だった私は、自分だけのキッチンに大興奮。ケンタロウさんの本から「料理はオシャレだ!」と学び、クックパッドという魔法のツールを手に入れて、まるでマリオの無敵スター状態。食べきれないほどのきんぴらを作ったり、夜な夜なパンを捏ねたり、揚げ野菜をのせたおしゃれ風カレーを友達に披露してみたり。「作りたいものリスト」が万里の長城並みで大忙し。そんな中、早々に挑戦したのが、思い出の味「餅米シュウマイ」でした。
憧れの食べ物を自分の手で作れるなんて、急に大人になった気分だったのを覚えています。皆さんの思い出の手料理はなんでしょうか。もうしばらく続く「冬の夜長」、温かい部屋であの頃に想いを馳せながら、思い出の料理を作ってみては?
あれから約20年。あぁ、思えば遠くへ来たもんだわ。思い出の中の甘酸っぱさや苦みは調味料にもなるのよ♡
蒸篭は美味しい加湿器

寒い季節に食べたくなるのは、やはり温かいお料理。オーブン料理やコトコトお鍋で煮込む情景が似合う冬のキッチンですが、今回私がおすすめしたいのは「蒸篭蒸し」。ご存じ、蒸篭は竹や木で編まれた蒸し料理用の調理道具です。日本では江戸時代におそばを蒸して出していたとか。その名残から現在でも、「せいろそば」と呼ばれています。日本でも中国でも使われる調理器具ですが、今回使うのは、チャイニーズスタイルの蒸篭。

蒸篭を使った調理って、とっても簡単。蒸気で野菜やお肉がふっくらと仕上がり、素材の甘さや旨味を引き出します。お部屋の中も乾燥しがちな今日この頃。蒸篭蒸しは調理をしながら、部屋の湿度も高めてくれる「美味しい加湿器」です。
五香粉とは?

「五香粉(ごこうふん)」は、甘くエキゾチックでセクシー。独特な風味を持つ中華料理に欠かせないスパイスの一つ、別名「ウーシャンフェン」。なんだか名前もミステリアス! いかにも中華料理らしい独特な香りを放ち、肉や魚、野菜はもちろんのこと、お菓子作りにも使える万能スパイスです。数種類のスパイスをミックスしたもので、通常はシナモン(桂皮)、クローブ(丁香)、花椒(ホアジャオ)、スターアニス(八角)、フェンネル(茴香)、陳皮(チンピ)などが配合されています。必ずしも5種類とは限らず、家庭や地方、メーカーによって使われるスパイスや配合が異なるので、さまざまな味や香りの五香粉が存在します。

五香粉は、日本料理にはない独特で「強烈」な香りなので、使う量を間違えると大惨事。イマイチ使い方が分からなくて、敬遠されている方も多いかもしれません。特に醤油やゴマ油との相性がよく、焼き豚やチャーハン、餃子などに少量使うと、簡単にプロの味に大変身。じつは、これらのスパイスたちはアロマセラピーや漢方でもよく使われており、体を温め、新陳代謝を促進し、消化を助けるなど、身体に嬉しい効能を持っています。私のキッチンでも頻繁に使うスパイスの一つです。
五香粉は食べる漢方薬

スイーツでもおなじみの「シナモン」は身体を内側から温め、日本では丁字として知られている「クローブ」は冷えからくる腹痛や消化不良に効果的です。麻婆豆腐にも欠かせない「ホアジャオ」には食欲不振や消化不良を改善する働きがあります。インド料理にも使われる「フェンネル」には食欲増進や消化酵素の分泌促進作用があるとされ、食べすぎ、飲みすぎ、胃のもたれなどにも効果的です。角煮やチャイに使われる「八角」には身体を温める血行促進作用があり、胃腸を整えてくれます。喉の炎症にもよいので、風邪などで体が弱っている時にもおすすめです。

じつは十三香粉というものもあり、こちらの香りはさらに本格的。中華街でも購入可能ですので、ご興味があれば是非。食べることは生きること、医食同源です。スパイスやハーブを上手に取り入れて美味しく健康に。さぁ、五香粉のご用意を。シュウマイタイムのはじまり、はじまり〜。
ルーシー流「五香粉のモチモチ餅米シュウマイ」

普段は花より団子な私ですが、2023年は食い気と色気、どちらも兼ね備えた女になりたい!(アタシったら欲ばりさん♡) というわけで、2色のシュウマイを作ります。
通常運転バージョンの白と、ビーツの汁を使ったお赤飯色バージョン。紅白だし、おメデタイ! お肉の味付けは優しく甘く、紹興酒の華やかさと五香粉のエキゾチックな香りがクセになる味。思い出の母の味からはアップデートされ、私の味に進化しましたが、毎日のおかずにも、ハレの日にもおすすめの、とっておきメニューです。
■ 材料 ※3〜4人前 25個ほど

- 餅米 2合弱
- 豚挽肉 400g
- 玉ねぎ 半個
- 生姜 1片
- a) 紹興酒 大さじ2
- a) 片栗粉 大さじ1
- a) 五香粉 小さじ1/2〜1 お好みで
- a) ナンプラー 小さじ1
- a) ごま油 大さじ1
- a) 砂糖 小さじ1
- a) 塩 小さじ1/2
- a) 胡椒 少々
- a) 醤油 大さじ1/2
■ 作り方
1.洗ってたっぷりの水(お赤飯色バージョンはビーツの汁)に一晩浸けておいた餅米をざるに上げ、しっかりと水を切る。
※水っぽいようなら、クロスやキッチンペーパーで水を拭き取りましょう。

2.玉ねぎは粗みじん切り、生姜はみじん切りにする。

3.豚挽肉に a)の材料を入れて粘りが出るまでよく混ぜ、②を加えて20分ほど休ませる。

③をゴルフボールほどの大きさにまとめて、餅米の上を転がして軽く握り、しっかりとくっつける。

蒸気が上がった蒸し器に並べ、中火で約15分蒸す。
※蒸篭の底部分に油がつかないよう、クッキングペーパーなどを敷きましょう。キャベツや白菜を敷くと肉汁が染み込んで美味しく食べられます。今回は近所で採れる月桃の葉を使いました。蒸すとキッチン中がいい香りに。


ホカホカのうちに召し上がれ! 食べきれなかったら冷凍もおすすめです。
タレを作ってごちそう感を演出

お醤油やからしで食べても美味しいですが、ササッとタレを作れば、ごちそう感も倍増します。さっぱりとお酢の香りがする、何個でもシュウマイが食べられそうなタレです。
■ タレ材料
- 醤油 大さじ2
- 酢 大さじ1
- ラー油 大さじ1/2
- ごま油 小さじ1
- 砂糖 小さじ1
- 水 大さじ1
- ネギ
■ 作り方
すべての材料をよく混ぜて完成。

餅米シュウマイは手軽で簡単、見栄えもいいし、おなかも膨れる、もうこれ以上何を望むの! といった感じの料理です。

あー、今回も美味しかった! 今年も私の胃袋はここにあらず。スパイスを使ってピョンピョン! うさぎのように世界中を旅しています。皆さんも、まずはこの五香粉で中国へ! 五香粉は「魔法の粉」キッチンに常備しておけば、おうちでいつでも本格中華料理が楽しめます。2023年もキッチンから世界へ〜! 懲りずにお付き合いください♡
Credit
写真&文 / ルーシー恩田

ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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