レモン風味のセルフソーシング・プディングで温かな幸せを【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】
寒さの中の庭仕事はなかなか辛いものですが、一仕事がんばったご褒美に、ほかほか、ふわふわのイギリス菓子はいかがでしょう。フレッシュな国産レモンが出回るこの時期にぴったりの、温かいままいただくお菓子です。爽やかなレモンの香りが春の気配を運んでくれるプディングを、イギリス菓子研究家でパティシエのTomoさんに教えていただきます。
目次
イギリス菓子はまずい?
イギリスのお菓子というと、みなさん何を思い浮かべますか? スコーン? アフタヌーンティー? そのくらいですよね。最近は少しずつ、日本でもイギリス菓子が紹介され始めていますが、まだまだよくご存じの方は少ないと思います。
私はかつて、イギリスに語学留学するという形をとって、イギリスのお菓子を食べる旅に出たのですが、「イギリスにイギリスのお菓子を食べに行く!」と、当時働いていたカフェの同僚たちに伝えたところ、「イギリスってまずいんでしょ? 何があるの? なぜフランスじゃないの?」と、質問攻めに遭いました。
イギリスはまずい、なんていうのは大間違い! と、声を大にして言いたいというか、叫びたい。特に、田舎のティールームやパブは、料理もお菓子も美味しいです。残念ながらイギリス菓子は、とにかく「映え」ない、茶色くてどっしりとしたものばかりですが、どれも味わいがあって、紅茶にとっても合います。そんな美味しいイギリス菓子を、これから少しずつ、ご紹介していきますね。
プディングとは
プディングというと、日本ではプリンを想像すると思うのですが、イギリスではデザート全般のことを「プディング」といいます。
留学中にホームステイをしていたのですが、夕飯の後になると、お父さんがいつも「今日のプディングは何?」とお母さんに訊いていたのが懐かしいです。日によって、手作りのケーキの時もあれば、スーパーで買ってきたアイスクリームや、冷凍のチーズケーキの時も(これが美味しくてびっくり!)。毎日何かしら食べていましたから、そりゃあ太るわけですね。
イギリスの昔ながらの家庭菓子には、蒸して作る、温かなスポンジプディングなどがあります。そして、その温かいプディングに、温かいカスタードソースか、生クリームをそのまま、ジャバジャバかけていただくのです。ちなみに、イギリス人の多くは、パイやチーズケーキにも生クリームをそのまま、ジャバジャバかけます。まるで生クリームのプールにケーキが浮かんでいるよう。ふわっとした生クリームを添えていただく日本人の私にしてみれば、カルチャーショックを受けるほどの衝撃的な光景でしたが、やってみると、あら不思議! 生クリームのプールに浮かべたレアチーズケーキの美味しさといったら! ぜひ皆さんも一度試してみてください。病みつきになること間違いなし、です。
セルフソーシング・プディングとは
セルフソーシング・プディングと聞いて、ああ、あれね、と分かる方は、きっとかなりのイギリス菓子好きでしょう。英語にすると”self-saucing pudding”、つまり、「ひとりでにソースができるプディング」ということです。
お菓子のソースというと、生地とは別に作るのが一般的ですが、このプディングは、一つの生地を作って焼くだけ。そして、焼けたプディングをスプーンですくうと、あら不思議! 底にソースができているという仕組みです。面白いお菓子ですよね! ふわふわのスポンジ生地の下には、トロッとしたレモン風味の甘酸っぱいソース。これを、温かいうちにたっぷり生クリームをかけていただきます。
このプディング、別名をレモンサプライズ、もしくは、レモンデリシャス、といいます。とっても可愛いネーミングだし、食べるときにびっくりするので、私は、レモンサプライズ、がぴったりの名前かなと思います。
このプディングとの出合いは、コッツウォルズ地方のチェルトナムに語学留学していた時。イギリスのスーパーには、無料のレシピカードやレシピが載った冊子が置かれているのですが、ステイ先のお母さんがいつもこのレシピカードを貰ってきていたので、私もスーパーに行くたびにチェックするようになりました。これが優れもので、本当に美味しくて簡単にできる、家庭料理のレシピがたくさん! その一つが、このセルフソーシング・プディングでした。
お母さんと一緒に初めて作った時、本当に美味しくて、感動したのを今でも覚えています。イギリスでは昔から、学校給食のデザートとして出されていた、懐かしい味のプディング。簡単にできるので、今では家庭の味となっているようです。
では、作っていきましょう!
セルフソーシング・プディングの作り方
材料(約8人分)
- 無塩バター……75g(室温に戻す)
- きび砂糖……150g(グラニュー糖でも可)
- 卵……4個(卵黄と卵白に分けておく)
- レモン……3個(皮を使うので無農薬の国産レモンがおすすめ)
- 牛乳……300ml
- 薄力粉……75g
作り方
- オーブンを180℃に予熱する。型(1.5リットル入る深めの耐熱容器)にバターを薄く塗っておく。
- ボウルに入れたバターを木のへら(またはスパチュラなど)で練り、柔らかくする。
- 柔らかくしたバターに砂糖を入れ、均一に混ぜる。
- 卵黄をひとつずつ入れて、その度によく混ぜる。
- レモンの皮(3個分)を削り入れる。
*私はこのゼスター(削り器)を使用していますが、しょうが用の細かいおろし金でも代用できます。最近では、小さいゼスターが100円ショップで売られていることも。 - 次に、レモンを半分に切って、レモン汁3個分を絞り入れ、よく混ぜる。
- 牛乳を入れ、よく混ぜる。
- そこへ薄力粉をふるい入れ、さっくりと混ぜる。
- 別のボウルに、卵白をしっかりと泡立てる。
- 泡立てた卵白を1/3ほどレモン生地に入れ、さっくりと混ぜる。
- 混ぜすぎないように、このくらいになったら次の1/3の卵白を入れて、さっくりと混ぜる。これをもう一度繰り返す。
生地の完成! - バターを塗っておいた耐熱容器に生地を流し入れる。耐熱容器を、一回り大きなバット等に入れて、バットにお湯を張る(お湯の深さは、耐熱容器の深さの半分くらい)。バットを天板に載せ、180℃のオーブンに入れて、40分ほど湯煎焼きする。
焼き上がりは、このくらい焼き色がついていれば大丈夫。おめかしに粉糖をかけています。
スプーンを入れてみると、底にはトロッとしたソースが!
温かいうちに生クリームをたっぷりかけていただきます。まだ寒さの残るこの季節にぴったりの、イギリスの家庭菓子です。ぜひ皆さんもご家庭で作ってみてくださいね。
Credit
写真&文/The Pudding Party Tomo
イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
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