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プロが教える夏の寄せ植え2選|補色で魅せる華やかバスケット&白×リーフの涼感アレンジ

プロが教える夏の寄せ植え2選|補色で魅せる華やかバスケット&白×リーフの涼感アレンジ

花2種とリーフで魅せる寄せ植えが、夏の庭を特別な空間に変えてくれます。補色で華やかに、白と斑入りで涼やかに──寄せ植えの名手、ナンバッチこと難波良憲さんが提案する、秋まで長く楽しめる夏の寄せ植えテクニックと葉物選びの秘訣をご紹介します。

リーフの表情で“魅せる”夏の寄せ植え

夏の寄せ植えのリーフ
寄せ植えの名脇役として活躍するリーフ類。

寄せ植えを作るとき、つい花を主役に考えてしまいがち。でもじつは、仕上がりの印象を大きく左右するのは“葉の選び方”です。花は気に入ったものを直感で選べても、リーフとなると「何をどう合わせたらいいのか分からない」「地味にならない?」と悩む声も多いもの。けれど、葉には色・模様・質感・動きなど、花とはまた違った魅力があり、寄せ植えの世界観を支える名脇役として欠かせません。

この記事では、花は最小限に抑えつつ、リーフの表情で“魅せる”ことに成功した夏の寄せ植えを2作品ご紹介。どちらも、NHK「趣味の園芸」や多くの寄せ植え講習会で活躍中のナンバッチこと難波良憲さんによるもの。花の選び方だけでなく、葉をどう組み合わせ、どう見せるかというプロならではの視点が光ります。

補色で魅せる、夏に映える花合わせ

アンゲロニアの寄せ植え

まず目に飛び込んでくるのは、紫と黄色の補色のコントラスト。紫色のアンゲロニア‘セレニータ・スカイブルー’と、黄色の小花を咲かせるコウシュンカズラを組み合わせることで、花色同士が引き立て合い、鮮やかながらも爽やかな印象に仕上がっています。

「紫と黄色は補色関係にあるから、お互いを引き立てる効果があるんです。どちらもはっきりした色だけど、バランスよく組み合わせれば派手になりすぎず、目を引く存在感になります」と難波さん。

カラーリーフ

また、色だけでなく質感や模様にも一工夫。斑入りのジュズサンゴ‘カスリ’や、黄緑の葉が美しいハゴロモジャスミン‘フィオナサンライズ’を添えることで、グリーンの中にも明暗が生まれ、複雑な陰影が加わります。斑入りの葉には光を反射して涼やかに見せる効果もあるため、夏の寄せ植えにぴったりの素材です。

ふんわり立体感。美しいラウンド形に仕上げるテクニック

ラウンド型の寄せ植え

この寄せ植えは、バスケットの持ち手を頂点としたドーム状のラウンド形。立体的でふんわりとしたフォルムが、見る角度によって印象を変え、飽きのこない美しさをつくります。

形をつくる鍵は、植物を植え込む順番と高さの工夫にあります。中心には、細くしなやかな葉を立ち上げるロマンドラ・ロンギフォリア(左手)を配置し、その周囲にコウシュンカズラ(右手)、さらに外周をアンゲロニアで囲み、鉢縁にリーフ類が入る4層構造になっています。

寄せ植えのコツ

「植栽作業をしていくうちに、先に植えた植物が土の中に沈んでしまうことがあるんです。だから、コウシュンカズラは、あらかじめ少し高めに植えると、最後に見栄えのする立ち上がりになります」とナンバッチ。

しっかりと土を固めすぎないこと、軽く押さえながらもふんわり感を意識することが、立体感のある仕上がりのコツ。“高さ”を計算して植えることで、作品全体の完成度がぐっと高まります。

“動き”を加える、プロの仕掛け

動きを出す

この寄せ植えには、静止した花の美しさだけでなく、“風にそよぐような動き”があります。それを生み出しているのが、コウシュンカズラとハゴロモジャスミンの枝先です。

アンゲロニアとコウシュンカズラ

アンゲロニアは花茎がまっすぐ立ち上がるタイプ。一方で、コウシュンカズラはしなやかに曲線を描く枝ぶりが特徴です。直線的なアンゲロニアの中に、あえて曲線を差し込むことで、ナチュラルでリズミカルな印象に。

ハゴロモジャスミン

つる性のハゴロモジャスミンは、枝垂れるように流れる構成に。植物の“動き”を生かすことで、作品全体に風景のような広がりが生まれます。

「まっすぐばかりでは面白くないので、動きのある枝をどう見せるかを意識するだけで、寄せ植えの印象が変わりますよ」と、ナンバッチ。

ジュズサンゴの実
ジュズサンゴの赤い実。SAI A.D.A/Shutterstock.com

さらに注目したいのは、この寄せ植えが “今だけ”で終わらないこと。たとえば、黄色い小花と明るい葉で夏に軽やかさを演出しているコウシュンカズラは、気温が下がってくると徐々に赤紫に紅葉し、秋にはしっとりとした色合いに変化します。また、ジュズサンゴ‘カスリ’は、涼しくなると宝石のような真っ赤な実を房状に実らせ、白斑の葉との対比がドラマチックに。

つまりこの1鉢は、夏から秋へと移ろう季節のグラデーションを、ひとつの器の中で楽しめるようデザインされているのです。見た目の変化だけでなく、時間の経過そのものが作品の一部。こうした“植物の変化を味わう寄せ植え”は、手入れをしながら付き合っていく楽しみを与えてくれます。

管理もやさしい、長く楽しめる組み合わせ

アンゲロニアの寄せ植え

この作品で使われている植物は、どれも夏の暑さに強く、育てやすい種類ばかり。初心者でもチャレンジしやすいのも嬉しいポイントです。さらに、アンゲロニア以外はほぼ常緑なので、次のシーズンにも使い回しが効きます。

アンゲロニア ‘セレニータ・スカイブルー’

特徴: 非耐寒性一年草。夏の高温でも咲き続ける優秀な花。花がら摘み不要で手間いらず。
育て方: 日なたを好み、乾燥気味でもよく育つ。過湿は避ける。

コウシュンカズラ

特徴: つる性常緑低木。黄色い花と細長い葉が特徴。枝先がしなやかで、寄せ植えに軽やかな動きをプラス。
育て方: 日なたで元気に育つが、水切れには注意。乾燥に弱いため夏場は特に水分管理を。

ロマンドラ・ロンギフォリア

特徴: 常緑多年草。シャープな細葉が美しく、寄せ植えに縦のラインと高さを加える。
育て方: 半日陰でも育ち、暑さや乾燥に強い。水はけのよい土で管理。

ハゴロモジャスミン ‘フィオナサンライズ’

特徴: つる性の半常緑低木。明るい黄緑色の斑入り葉で、涼しげな印象を演出。
育て方: 日なた〜半日陰を好む。伸びた枝は流すように配置してやわらかさを演出。

ジュズサンゴ ‘カスリ’

特徴: 非耐寒性常緑多年草。斑入りの葉が爽やかで、秋には赤い実が宝石のように実る。こぼれ種でもよく増える。
育て方: 日なたで育てると葉色が鮮やかになる。高温多湿に強く、風通しのよい場所で蒸れを防ぐと美しく育つ。

手入れのポイントは、水切れを避けながらも根腐れしないように管理すること。表土が乾いたらたっぷり水を与え、風通しのよい場所に置きましょう。枝が伸びすぎたら軽く剪定を。アンゲロニアなどは、そのままでも花が咲き続け、手間いらずで長く楽しめます。

コウシュンカズラ
コウシュンカズラは地植えにすると10mにも伸びる。Quang nguyen vinh/Shutterstock.com

色を抑えて涼やかに。白×グリーンで魅せる上品な1鉢

アンゲロニアの寄せ植え

もう1つご紹介するのは、同じアンゲロニアを使いながら、白花×リーフで涼感を演出した寄せ植えです。紫×黄色の補色でドラマチックに見せた先ほどのバスケットとは異なり、こちらはホワイトトーンを中心に、グリーンの濃淡と葉の表情を重ねることで、清潔感と品のある印象に仕上げています。

アンゲロニアの寄せ植え

主役はもちろん、白花のアンゲロニア ‘セレニータ’。暑さに強く、花がら摘みの手間もない頼れる夏の花です。その周りを彩るのは、くるりと丸く巻いた白い花が愛らしいビンカ ‘MIKI’。控えめながらも存在感があり、白とグリーンの世界にやさしい立体感を加えてくれます。

アメリカヅタ‘バリエガータ’、コルジリネ ‘マジックスター’、レモンタイム
左からアメリカヅタ‘バリエガータ’、コルジリネ ‘マジックスター’、レモンタイム。

そして、ナンバッチらしさが際立つのが、やはりリーフの組み合わせ。後方中央には、株元の深紅の葉が映えるコルジリネ ‘マジックスター’がすっと立ち上がり、白の中で力強い“差し色”として全体を引き締めます。その株元を包むのは、香りも楽しめるレモンタイム、白と緑の斑が美しいアメリカヅタ‘バリエガータ’の斑入り葉など。とくにアメリカヅタの広がりと流れが、器全体に動きを与え、作品に自然なニュアンスを加えています。

夏の間ずっときれい! 育てやすさで選んだ6種

アンゲロニア ‘セレニータ・ホワイト’

特徴:非耐寒性一年草。 夏の暑さに強く、清楚な白花を長く咲かせる。花がら摘み不要で手がかからない。
育て方: 日当たりと水はけのよい場所を好む。過湿に注意し、乾いたらしっかり水やりを。

ビンカ(ニチニチソウ)‘MIKI’

特徴: 非耐寒性一年草。バラのつぼみのようなコロンとした白花が魅力。株元をふんわり彩る。
育て方: 暑さに強く、乾燥にもやや強い。過湿は根腐れの原因になるため、土の表面が乾いたら水やり。

コルジリネ ‘マジックスター’

特徴:非耐寒性常緑多年草。 鋭い立ち上がりのある赤紫葉が寄せ植えの軸になる。
育て方: 寒さに弱いため、冬は霜よけ、または室内管理。

レモンタイム(斑入り)

特徴: 常緑多年草。爽やかなレモンの香りがあり、白い縁取りの葉がナチュラルな雰囲気を演出。
育て方: 日なたを好み、乾燥に強い。定期的に刈り込むとコンパクトに育つ。多湿に注意。

アメリカヅタ ‘バリエガータ’

特徴:落葉つる性低木。 垂れ下がる斑入りの葉が涼感を演出し、寄せ植えに流れを生む。
育て方: 日なた〜半日陰で育つ。伸びすぎた枝は剪定で調整。寒冷地では冬に落葉する。

ハツユキカズラ

特徴: 常緑つる性低木。新芽に白やピンクが混じる可愛らしいカラーリーフ。寄せ植えに彩りと動きをプラス。
育て方: 日なたで育てると発色がよくなるが、真夏の直射日光で葉焼けすることもある。乾燥気味に育てる。

花2種×リーフ多め。構成の“黄金バランス”とは?

夏の寄せ植え

ここで注目すべきは、2つの寄せ植えに共通する構成です。どちらも「主役の花は2種」にとどめ、あとは質感・色合い・高さの異なるリーフ類を組み合わせていること。花を欲張って増やさず、葉の力を信じて“抜け”をつくる。その引き算のバランス感覚こそ、ナンバッチの真骨頂です。

「花は見た目の好みで選べても、葉っぱってどう選べばいいのか分からない…」という読者も多いはず。そんなときは、次のような視点を意識してみてください。

  • 高さを出すリーフ(例:コルジリネやロマンドラ)
  • 葉の形に丸みや柔らかさがあるもの(例:タイムやジャスミン)
  • 斑入りや赤・黄・紫などの“色リーフ”で彩度に変化を
  • 垂れる葉で流れや動きを加える(例:アメリカヅタ)

ナンバッチの作品には、これらの“役割”がそれぞれしっかり分担され、美しい構成と管理のしやすさの両立が実現されています。

見頃の長さも、リーフ使いで決まる

寄せ植えのコツ

花はいつか咲き終わるけれど、リーフはその後も作品の景色を支えてくれます。アンゲロニアもビンカも、晩秋まで咲き続ける優秀な花ですが、作品全体の“美しい状態”を保つのは、葉たちの働きによるところが大きいのです。

レモンタイムやアメリカヅタは、夏の暑さにも強く、管理もラク。コルジリネのようなセンタープランツは、冬の寒さに気をつければ多年草として長く使えるのも魅力です。花が減っても、リーフで作品としての美しさが保たれる──そこが、長く楽しめる寄せ植えの条件といえるでしょう。

まとめ|花を選ぶだけでなく、葉を“演出”する楽しみを

夏の寄せ植え

寄せ植えを考えるとき、まず選びたくなるのは色とりどりの花かもしれません。でも本当に美しい寄せ植えには、花を引き立て、全体を支える“葉のちから”が込められています。

今回ご紹介した2つの作品は、どちらもアンゲロニアを主役に、2種の花+複数のリーフというシンプルな構成でありながら、まったく異なる表情を見せてくれます。プロのテクニックをヒントに、ぜひ“葉っぱの使い方”を意識して、寄せ植えの世界をもっと楽しんでみてください。

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