夏から急に増えてくる庭づくりのお悩み。5月はまだ快適に作業ができますが、6月、7月、8月と、暑さが増すにつれ課題もマックスに。今回はそんな「夏の庭の困りごと」をまとめて解決! この時期だからこそ押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。最後に、お悩みTOP5をまるっと一挙解決する画期的な方法を、造園家の阿部容子さんが伝授します。
目次
夏の庭の困りごと第5位「暑くて庭作業ができない」

2025年の夏も猛暑が予想されています。去年より梅雨入り・梅雨明けが早く、近年のなかではかなり暑い夏になり、秋にかけて厳しい残暑になる、というのが日本気象協会の予想。聞いただけで早くもくじけそうになる情報ですが、そんな夏を切り抜ける策をご紹介します。
A. 真夏のガーデニングは早朝&装備を万全に
まずは体調を一番に、無理しないのが鉄則。もし真夏にガーデニングをするなら、装備を万全にして、できる限り早朝からAM8時までに終えるようにしましょう。また、夏はインドアガーデンを楽しむのもおすすめです。
<真夏のガーデニング装備>

- 蚊よけ対策/蚊も人が動きやすい温度のときに活動し、35℃以上になると木陰で休みます。蚊よけスプレーを全身にくまなく施し、腰には携帯用の電池式蚊取りを装備、そしてスプレーができない顔にはネット付きの帽子をかぶって蚊よけします。
- 日除け対策/UVクリーム、帽子、薄手の長袖(冷感シャツがおすすめ)
- 汗対策/薄手のタオルを首に(厚手だと暑い)
- 熱中症対策/ネッククーラー、水分(こまめに補給すること)

<観葉植物の寄せ植え>

夏もガーデニングを楽しみたい場合は、涼しい室内でのインドアガーデンがおすすめです。例えば、観葉植物の寄せ植えはいかがですか。観葉植物にも寄せ植えできるミニサイズの種類が豊富です。ガラスの器に植えるハイドロカルチャーなら、見た目も涼しげできれいです。
夏の庭の困りごと第4位「害虫が大量発生!」
夏は一年で最も多くの害虫が発生する季節。夏のガーデンの要注意害虫と発生時期をリストにしました。

A. 防除・早期発見・早期対策が鉄則
事前の対策として、まずは庭の風通しをよくしましょう。風通しが悪く隠れやすいところに害虫が発生しやすいです。アブラムシやハダニは水が苦手なので、葉水をこまめに行うことで増えすぎるのを防ぐことができます。
また、幼虫は生育するにつれ、食欲旺盛になって被害が拡大するため、早期発見、早期対策が鉄則です。発生前にタイミングよく予防効果のある薬剤を用いて防除するのが最も手間がかかりません。また、庭をよく観察し、見つけたら適用薬剤を用いるか捕獲するなどして、早期に対策すれば被害を最小限でとどめられます。
夏の庭の困りごと第3位「雑草が爆発的に増える!」

暑さとともに生育旺盛になるのが雑草。猛暑のなかの草取りは苦役でしかなく、ガーデニングの大きな負担になっているケースが多々。
A. 除草剤は適切な種類を選ぼう
新築の家の庭などでは、敷地造成のための土壌に山土が使われていることがあります。山土には大量の雑草のタネが仕込まれているので、庭中に雑草が生えることがよくあります。至るところに雑草が生える場合は、一度、除草剤を用いて土壌をリセットするのが効率がよいです。

除草剤は製品ごとに効果の持続期間が異なるので、除草した後に植栽する場所は効果の短いものを選ぶとよいでしょう。すでに植わっている植物がある場合は、掘り上げて別の場所に養生させるか、葉に塗布することで根まで枯らすタイプの除草剤を用いて、雑草のみを枯らしましょう。ビニール手袋をして、ビニール手袋に重ねて着けた軍手に除草剤を染ませ、雑草のみを触ることで除草ができます。

また、グラウンドカバーで地面を覆っておくと、雑草の種子が入りこむ余地がないので、有効な雑草対策にもなります。グラウンドカバーとは這って育ち、地表を覆うように広がる植物です。葉っぱの面が広いアジュガや丸葉のクラピア、リシマキア・ヌンムラリア‘オーレアなどがおすすめです。
夏の庭の困りごと第2位「水やりが追いつかない!」
基本的に地植えの植物には水やりは必要ありませんでしたが、猛暑が続く近年では水やりが必要なケースも発生してきています。また、夏休みなどで旅行に行く方も多い季節。植物の水やりをどうするのかという問題で悩む方がたくさんいます。
A. 自動冠水装置は時間設定が肝!

乾きを防止するために土壌資材でマルチング(表土を覆う)をしたり、グラウンドカバーを活用しましょう。そして、自動冠水装置も有効な手段。自動冠水装置を用いる場合は、冠水の設定時間を季節で変えるのがポイント。夏は自動冠水装置のホースが太陽光で温められ、中の水がお湯になっていることが少なくありません。お湯を注がれると植物は一気に弱るので、夏の自動冠水装置は毎朝早朝4〜5時に設定しましょう。
夏の庭の困りごと第1位「植物が暑くてバテる・枯れる」
昨年はあまりの暑さに、これまで大丈夫だった植物も弱ったり、枯れたりしたという声が多く聞かれました。地植えの植物でも次第に暑さ対策が必要になってきています。
A. 植物選びで暑さ対策を。宿根草は秋植えがおすすめ
<宿根草>

夏に咲く宿根草の多くは、暑さには強いものが多いですが、春に入手した苗はまだ根が十分に張っておらず、地植えにしても暑さで枯れる場合があります。ポットのまま、残暑が終わる秋まで待って地植えにすると、冬越しした株は深く根を張り、夏越しもしやすくなります。その際、夏の間の水管理はしっかりと。

<一年草>

一年草は暑さに強いという特徴とともに、強い雨にも耐えられるものを選びましょう。ラベルに「耐雨性」という表記があるものが該当します。
<樹木>

木陰ができるように樹木を植栽するのがおすすめ。小さな庭でもニシキギなら最大でも樹高3mで、秋は見事な紅葉も楽しめます。高木になるものでも、剪定でコントロールできます。その場合は生育がゆっくりのものを選ぶと、メンテナンスがラクに済みます。アオダモは樹高10m以上になる樹木ですが、生育がゆっくりで株幅がスリムなのでおすすめです。
<マルチング>
土壌資材でマルチング(表土を覆う)すると、乾きや暑さを緩和できます。
<グラウンドカバー>

グラウンドカバーも庭の暑さ対策に有効です。地表が緑で覆われていると、地温が上がりにくく、他の植物が暑さでバテるのを防いでくれます。植物は「蒸散(じょうさん)」といって葉裏から水蒸気を出しているので、天然のミスト効果で周辺温度を下げる効果もあります。
<肥料と活力剤>
夏は肥料が高温で溶け出しやすく、効きすぎることがあるので、固形肥料は控えめに。植物も猛暑で生育が緩慢になり、春ほど肥料分を吸い上げることができないので、液肥も過多になりがちなので注意。植物の元気がなく心配なときは、「肥料」ではなく「活力剤」を使うのがおすすめです。活力剤は肥料やけの心配がありません。
5つの悩みを一挙に解決するプロの技
上記5つの悩みをまるっと一挙解決するのが、「ノンストレスガーデン」。このガーデン工法を考案した、かたくり工房所属の造園家阿部容子さんは、「ノンストレスガーデン工法は、年齢とともに庭づくりの体力がなくなり、植物の世話ができないとお客さまから相談されたことがきっかけです」と話します。

ノンストレスガーデン工法とは
ノンストレスガーデン工法とは、除草して整地した後、全面に防草シートを施工。植栽箇所にスポット的に植え込み穴をあけて植栽することで、雑草を極力生やさずに育てたい草花だけを育てられるというもの。防草シートの上からはバークチップを敷き詰めマルチングを施すので、防草シートは見えなくなります。

ノンストレスガーデンは雑草取りから解放されるだけでなく、防草シートがマルチング効果を発揮し、土壌の乾きが抑えられ、コガネムシの幼虫など土中に潜って食害する害虫被害も防ぐことができます。結果的に必要な作業が大幅に減少し、夏のガーデニングがとってもラクに。
ノンストレスガーデン工法の6つのポイント
施工のポイントは6つ。正しく施工しないと、雑草が入り込んだり、シートがめくれ上がって大事な草花がダメージを受けることがあるので注意が必要です。
① 除草剤で既存の雑草を駆逐し、土壌を一旦リセットする。
② 整地の際に排水勾配を1%つける。
③ 植栽エリアの土壌改良をする。有機物は分解されて次第にシートが沈み、雑草のタネが入る隙間ができやすくなるので配合を注意。

④ 雑草のタネが入り込んだり、風でめくれ上がるのを防ぐために、防草シートの端はモルタルでしっかり留める。

⑤ 植物ごとに適切なサイズの植え穴をあけ、植栽リングできっちり留める。

⑥ 防草シートは紫外線によって劣化が早まるので、防草シートの上から必ずマルチングを。植栽箇所には植物の生育をサポートする微生物入りの土壌資材「バイオマイスター」をマルチングに用いるのもおすすめ。

詳しい施工方法はこちら!
「実家の庭問題」も解決してくれるノンストレスガーデン工法

ノンストレスガーデン工法は、「実家の庭問題」で悩む人にもおすすめです。高齢の親が自宅の庭の手入れができなくなり、実家の庭の草取りのために帰省をしている人は、じつは少なくありません。雑草が生え、草木がぼうぼうになった庭は防犯上よくないので、キレイにしておきたいものですが、かといって親に手入れをさせるのも心配です。庭を全部コンクリートで埋めてしまうという手もありますが、長く親しんだ緑の風景をすっかりなくしてしまうのは、親にとっても、そして子どもにとっても本当は寂しいものです。

ノンストレスガーデン工法なら、庭が雑草で荒れ放題になるのを防ぎながら、季節の花が咲く楽しみを残してあげられます。遠方の場合は、造園知識が確かなプロに依頼するのがおすすめです。一度施工してしまえば、さまざまな庭の手入れの苦労から解放され、美しい風景を家族で楽しむことができますよ。
Credit
アドバイス / 阿部容子 - ガーデンデザイナー/造園家 -

あべ・ようこ/岐阜県可児郡「かたくり工房」に所属。モデルガーデンのガーデンカフェ「ガズー(Garzzz)」を拠点とし、公共、企業、個人の庭を全国各地でデザイン、施工。ぎふ国際バラコンクール審査員として岐阜県「花フェスタ記念公園」でも活動。アメリカ園芸療法協会会員として米国のカンファレンスで学んだ知識や技術を生かし、病院のガーデンも施工しています。
文&写真(クレジット記載以外) / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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