各国の花には固有の“色”がある。異国の花の持つ色彩や造形は、インパクトにあふれて鮮烈だ。オーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、神奈川県の自宅の庭で100種以上のオージープランツを育てている遠藤 昭さんに、美しく神秘的なオーストラリアの思い出の花、ユーカリと住宅街の庭での栽培ポイントを教えていただきます。

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人生を変えた木、ユーカリ

左/9〜10月に咲くユーカリの花を花瓶に
右/1998年の実生のユーカリの2年目の状態

僕は、やはりこのユーカリの花を見ると心が癒され、同時に元気とやる気が出るのだ。オーストラリア在住時代の楽しかった思い出がいっぱい詰まっているし、なによりも南半球から輸入したタネから発芽して庭で開花したことが、僕がこうして園芸の面白さにのめり込んで、ついには、ガーデンデザインや植物園の相談員を第二の人生の仕事にしてしまったきっかけをつくった花だ。おおげさにいえば、「人生を変えた木」だ。今までに多くのユーカリの実生にチャレンジしてきたが、だいたいメルボルンやタスマニアで生育するユーカリは横浜でも育つ。

オーストラリア人にとっての心のふるさと

オーストラリア人にとって、ユーカリは日本人にとってのマツとサクラを足したような存在だ。「心のふるさと」的な樹木なのだと思う。正直なところ、僕はオーストラリアに行った最初の頃は、 だらしない樹形であまり「美しい木」というイメージをもつことはできなかった。 ところが、ゴルフ場でオーストラリアの友人が立ち止まってユーカリの巨木を眺め、偉く感心して”Oh! Beautiful tree!”とか、ドライブ中に立派なユーカリを指さして”Great!”などといって、彼らがユーカリを絶賛する言葉を何度か耳にした。

Andrea Izzotti/Shutterstock.com

最初のうちは、オーストラリア人の美意識を「ああ、そうなのだ~」と、人ごとのように感じていたが、周りが皆ユーカリを絶賛するので、やがて自分もすっかり感化され、本当に美しい木と花だと思うようになったのである。早朝のゴルフコースのユーカリ林のあの「スーッとするユーカリの香り」や山岳地帯の屋久杉よりもはるかに大きい「ユーカリの巨木の森」 。そして、「巨木一面に真っ赤な花で染まるガムツリー」、さらにはシラカバを思わせる美しい白い幹……。

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決して日本のマツのように人が枝を整えることはなく、自然のままの枝をのびのびと広げる、スケールのでかい自然の美しさがそこにはあるのだ。今、狭い庭にタネから育てたユーカリを十数本育てているが、風に揺らぐしなやかな枝や太陽に照らされて輝く銀葉、そして、あの「スーッとするユーカリの香り」が、オーストラリアの豊かさを運んでくれる。

Photo/Shutterstock.com

日本でユーカリといえばコアラの餌として有名であるが、コアラが食するユーカリの品種は山林に自生する巨木になるユーカリで、この写真のような花の綺麗な園芸品種の葉は食べない。実際に我が家のユーカリに寄ってくるのはコアラではなくメジロだ。

ユーカリの花の蜜が野鳥を呼ぶ

ユーカリの花はたくさんの蜜を蓄えているので、現地でもこのEucalyptus sideroxylon var. roseaはAttract Birdsという表現が用いられ、庭に鳥を呼ぶ花木としてもオーストラリアでは人気だ。一口にユーカリといっても、約600種以上もあり、最近、日本でも通販で簡単にユーカリの苗が入手できるが、ほとんどは山林用・経済林用の大きく成長する品種で、花も白い小さな花なので注意!

日本に向くユーカリとは

意外とユーカリの花は日本では知られていないようだが、実にさまざまな品種が美しい花を咲かせるのだ

日本でハーブとして人気のEucalyptus globulus(Tasmanianblue gum)は、大きくなり過ぎるし生育旺盛で生態系に影響を及ぼすので、カリフォルニア(the California Exotic Pest Plant Council)においてユーカリでは唯一Exotic Pest Plant(外来有害植物)に指定されている。ユーカリの多くは山林・経済林用なので、ユーカリを購入する時は生態系への影響を考慮して品種に注意が必要だ。中国でも緑化にユーカリを植林したら、ユーカリが地下水を吸いすぎて下流の水位が下がり農業に影響を及ぼした事例もある。逆に西オーストラリアでは、ユーカリ林を伐採して地下水の水位が上がり小麦畑が水没する問題も発生している。なかなかにパワフルな木なのだ。これらを考慮すると、日本の庭植えでは、Eucalyptus sideroxylon var. roseaEucalyptus leucoxylon ‘Rosea’などを選ぶとよい。

僕の庭にユーカリが咲いた!

タネをオーストラリアから輸入して苦節5年。南半球からやってきた小さなタネ。雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ……。異国の地で、花が、ピンクの花が咲いたのですよ~! あぁ、時空を越えた大自然の神秘!不思議大陸!
品種はEucalyptus sideroxylon var. roseaで、大体6個くらいの花が一塊になっている。このユーカリは1997年にオーストラリアから取り寄せたタネから発芽に成功し、4年目から開花している。今、我が家に残っているのはほとんどがこの品種。しかし、今では樹齢20年以上となり、大きくなりすぎて狭い我が家の庭では手に負えなくなりつつあるのが正直なところ。

タネはGum Nutsと呼ばれ(写真左下)木に数年は残る。これが山火事で弾け、雨が降ると芽が出るのだ。こちらの赤い花はEucalyptus leucoxylon ‘Rosea’だ。花もたくさん咲き、比較的小型品種で美しいが、葉の色や香りはE.sideroxylonに負ける。つぼみの状態から、このキャップがポロリと取れて開花する。

ユーカリの剪定枝をペイビングに利用

小さな庭には限界で毎年、チョンチョンに切らざるを得ない。毎年3月頃に剪定した枝は、同じ長さに切って、レンガの間にアクセントとしてはめている。美しい木肌を生かして再利用するアイデア。剪定のたびに新しい木に変えるのも楽しい。庭仕事が一段落し、空をあおいでいるとユーカリの爽やかな香りがそよ風に乗ってくる。オーストラリアの風は日本の庭でも吹くのだ。

Credit

写真&文/遠藤 昭

30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。現在は、川崎市緑化センター緑化相談員を担当しながら、コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施。園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)

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