花の女王、バラ。バラには古くから性質や花形を変えずに愛され続ける野生種のほか、交配という栽培の技により生み出された無数の園芸品種があります。新しいバラがこの世に生まれるまでには、長い時間と、これまでにないバラを夢見て一輪に情熱を注ぎ続ける人々の存在があります。ここでは、新しいバラを生み出す世界中の育種家とバラのブランドヒストリーをご紹介していきます。

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ハイブリッド・ティーローズの原点
バラ‘ラ・フランス’

1867年、フランスで開催された新種のバラの品評会で優勝した、‘ラ・フランス’。このバラはただの新種バラではなく、細い枝にうつむきがちに大輪の花をたくさん咲かせる花姿、ダマスクの豊かな香りと、何よりも「完全な四季咲き性」を兼ね備えた、まったく新しいバラでした。現在の私たちがよく知る、ハイブリッド・ティーという新しいバラの系統が確立した瞬間です。‘ラ・フランス’の登場はあまりにも革命的であったために、以後、このバラを起点として、これ以前に栽培されていたバラがオールドローズ、このバラ以降に作出されたバラがモダンローズと呼ばれています。

ジャン=バプティスト・ギヨー・フィス(1827-1893)

バラの歴史に名を残す名花‘ラ・フランス’を作出したのが、フランスのバラ育種生産会社・ギヨー社の2代目ジャン=バプティスト・ギヨー・フィスでした。世界で最も古いバラのナーセリーに生まれ、幼い頃からバラを愛し、新種の作出を夢見てきた彼は、40歳にして作出した美しいバラを見て偉業の成功を確信し、その思いを込めて“ラ・フランス”というフランス国家そのものの名をバラに冠しました。国の名前を花に付けるのは珍しく、いかにこのバラの作出がセンセーショナルであったかがうかがえます。

ギヨー社のバラ

ギヨー社は現在も、ジェネロサシリーズとして、オールドローズの性質や風格を残しつつも先進的な現代のバラの作出に常に挑戦し、評価の高いバラを生み出し続けています。近年は、5代目ジャン・ピエール・ギヨーが、6代目で従兄弟にあたるドミニク・マサドと共に作出家として活躍。ドミニク氏はその後独立し、独自で花をつくり続けています。

ギヨー・ブランドのバラの特徴は、四季咲き性が強く、華やかで素晴らしい色合いのバラが多いこと。中輪で香り高く、花付き・花もちがよいのも持ち味です。そんなギヨーらしい洒脱な花姿と、フルーティーな香り漂うバラの魅力に取りつかれる人も多く、ギヨー社のバラは世界中のガーデナーやバラ好きに愛されています。

華やかなギヨー・ブランドのバラ

‘ラ・フランス’

バラの歴史を語る上で、最も重要なバラのひとつ。特徴的なくるりと丸まったデリケートな花弁は、表と裏でわずかにグラデーションがかるグレイッシュなピンク色。ダマスクにフルーツと蜂蜜がまざった香りも魅力的です。

‘エリアーヌ・ジレ’

深紅のつぼみから美しいオフホワイトの花が開く驚きがあり、バラ愛好家から熱い支持を受ける愛らしいバラ。花弁には不規則にピンク色が混ざり、一つ一つ異なる表情を見せます。濃い緑色の照り葉とのコントラストも鮮やか。

‘ソニア・リキエル’

ギヨー社が展開するバラのコレクション「ロサ・ジェネロサ」シリーズ。‘ソニア・リキエル’は、ジェネロサが目指す性質をすべて兼ね備えたバラ、と作出者に言わしめた可憐なバラです。ロゼット咲きのローズピンクの大輪花からは、濃厚なフルーツ香が漂います。

 ‘ポール・ボキューズ’

ピンク色にオレンジが残る、ニュアンスカラーの花色が美しいバラ。花弁の先端が少しとがった剣弁気味の整ったロゼット咲きの大輪花で、フルーティーな香りも魅力です。つるがよく伸びるので、ショートクライマーとしても。

‘ラデュレ’

マカロンで人気のパリのパティスリー「LADUREE」とのコラボレーションで生まれた品種。コロンとしたフランボワーズピンクの可愛らしい花はクォーターロゼット咲きで、春から秋まで繰り返しよく咲きます。

‘イングリッド・ベタンクール’

2015年に作出された最新品種。コロンビアの反汚職、反麻薬取引に挑んだ女性政治活動家に捧げられ名がつきました。ジェネロサ・シリーズでは初登場の花色で、凛とした花姿。アプリコットゴールドのカップ咲きの花は、香りも豊かです。

写真&記事協力:大森プランツ
ギヨー社のバラ苗は、大森プランツにてお買い求めいただけます。
大森プランツ

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Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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