存在感がありつつも、ナチュラルな植栽にも合わせやすいのがカラーリーフの落葉樹。ここでは、シンボルツリーにもオススメの高木品種をセレクトしてご紹介。分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップ「ACID NATURE 乙庭」のオーナーで、園芸家の太田敦雄さんにご案内いただきます。

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ナチュラルな宿根草やバラともよく似合うカラーリーフ落葉樹

ゴールデンウィークが始まる4月下旬~5月にかけては、春咲きの一年草や球根類の開花ラッシュから始まり、華々しいバラの季節。そして、なんといっても宿根草や樹木類の新緑が美しく、庭が最も瑞々しい色彩と生命感に満ち溢れる時期ですね。カラーリーフ品種の樹木の新緑も発色が鮮やかで、見頃のピークを迎えます。

庭には花だけでなく、さまざまな色の葉を加えてあげると、植栽の雰囲気がグッとニュアンス豊かになりますよ。バラや宿根草のお庭づくりをしている方も、ぜひデザインに取り入れてみてはいかがでしょうか。

カラーリーフ樹木を取り入れた植栽
カラーリーフ樹木を取り入れた植栽例。

今回から2回にわたり、「植栽にダイナミックな彩りを加えてくれる、シンボリックなカラーリーフ樹木」をご紹介します。宿根草やバラを使った植栽にも似合うという観点で、より季節変化とナチュラルさを感じられる落葉樹からセレクトしました。前編は、大きなシンボルツリーにできる高木の魅惑品種です。

ヤマボウシの斑入り品種 ‘ウルフアイ’の植栽
ナチュラルな庭木の代表格ともいえるヤマボウシも、斑入り品種 ‘ウルフアイ’を使うと、背景から主役に様変わり。雰囲気が一新します。

宿根草やバラを多く使った植栽は、開花シーズンはとても美しいのですが、花の少ない時期は変化の少ない緑一色になりがち。ナチュラルといえばナチュラルですが、ちょっと視点が定まらず平坦な感じに陥りやすいのが難点です。そんな時、植栽の背景やシンボルにカラーリーフ樹木の大きな色のマッス(塊)があるだけで、フォーカルポイントが定まって風景が引き締まります。また、美しい葉色を春~秋までの長い期間楽しめるので、上手に使いこなせるととても心強い素材なんですよ。

カラーリーフ植栽の秋

上の写真はカラーリーフ樹木を多く取り入れた植栽の秋の風景。花がなくとも、とてもデザイン性の「濃い」豊かな植栽空間になっていますね。

草花やバラなど、やや丈の低い植栽の背景にカラーリーフ樹木を配することで、とてもダイナミックでデザイン性の高い植栽空間をつくることができます。単体でシンボリックに使ったり、複数色を組み合わせてデザインで遊んでみたり、積極的に活用してみてください。

また、以前に冬も楽しめる枝もの樹木としてご紹介した中にも、魅力的なカラーリーフ品種がありますので、ぜひ併せてご参照ください。

乙庭Styleの植物8「落葉期にハッと魅せられる!おもしろ枝モノ樹木」その2〜カラーステム&雲龍枝

セレクト1
クエルクス(ナラ、カシワ)の仲間

まずご紹介するのは、バラのオープンガーデンをしていらっしゃる実力派ガーデナーの方々にも人気の高いヨーロッパナラのカラーリーフ品種と、樹木園芸家の間でも垂涎の的となっている魅惑の品種、オウゴンカシワです。柏餅をくるんでいるカシワの葉の形をイメージしていただければ分かりやすいでしょうか。ドングリのなる木ですね。

ヨーロッパナラ

ヨーロッパナラ
基本種のヨーロッパナラ。Przemyslaw Muszynski/Shutterstock.com

ヨーロッパナラ(Quercus robur)は、ヨーロッパから西アジア辺りが原産地。日本のカシワよりは少し小ぶりの葉がかわいらしいです。自然樹形で直立的に育ち、植栽のダイナミックな骨格になります。

カラーリーフでオススメの品種は以下の3種です。

‘コンコルディア’

ヨーロッパナラ ‘コンコルディア’
写真提供/矢澤ナーセリー

黄金葉品種、ヨーロッパナラ ‘コンコルディア’ (Quercus robur ‘Concordia’)。

 ‘アトロプルプレア’

ヨーロッパナラ ‘アトロプルプレア’

樹木ではとても珍しい灰紫の葉色が魅力的な、ヨーロッパナラ ‘アトロプルプレア’ (Quercus robur ‘Atropurpurea’)。

‘アルゲンテオマルギナータ’

ヨーロッパナラ ‘アルゲンテオマルギナータ’
写真提供/矢澤ナーセリー

青緑地に乳白色の覆輪が美しい、ヨーロッパナラ ‘アルゲンテオマルギナータ’ (Quercus robur ‘Argenteomarginata’)。上写真に見られるように、ドングリの実にも縞斑が入り、実モノとしてもオーナメンタルに楽しめます。

オウゴンカシワ

オウゴンカシワ
写真提供/矢澤ナーセリー

そして、オウゴンカシワ(Quercus aliena ’Lutea’)は、主に西日本に多く自生するナラガシワの黄金葉品種です。日本から世界に発信できる美麗種ですね。

【DATA】
■ 学 名:Quercus roburQuercus aliena (各品種名は上記参照)
■ ブナ科
■ 主な花期:春
■ 樹 高:5~10m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向~明るい半日陰

セレクト2
ファグス・シルバティカ(=ヨーロッパブナ)‘ダーウィックパープル’

ヨーロッパの有名庭園でもしばしばシンボリックに使われる、ヨーロッパブナの紫葉品種です。

ファグス・シルバティカ(=ヨーロッパブナ)‘ダーウィックパープル’
Peter Turner Photography/Shutterstock.com

照り質感の黒紫葉は、他にはなかなかなく、独特の雰囲気があります。

ファグス・シルバティカ(=ヨーロッパブナ)‘ダーウィックパープル’

ブナというナチュラルなイメージの樹木ながら、とてもデザイン性が高く、植栽の中でもよく目立ちます。テッポウムシの被害に逢うことがありますので、株元にオガクズ状の木屑を見つけたら、食害穴から殺虫剤を入れて早めに駆除しましょう。

【DATA】
■ 学 名:Fagus sylvatica ‘Dawyck Purple’
■ ブナ科
■ 主な花期:春
■ 樹 高:7m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向~半日陰

セレクト3
ケルシディフィルム(=カツラ)‘レッドフォックス’

日本各地をはじめ、朝鮮半島、中国などを原産とするカツラの銅葉品種です。

ケルシディフィルム(=カツラ)‘レッドフォックス’
写真提供/矢澤ナーセリー

春の芽吹きは美しい赤銅色、初夏から夏にかけて少し青黒みを帯びた渋い深緑葉になっていきます。基本種のカツラよりもスレンダーな樹形に育ち、姿も美しいです。

ケルシディフィルム(=カツラ)‘レッドフォックス’
初夏以降の葉色(写真中央)。味わいのある深緑の葉となり、樹形も行儀よく美しいですね。

また、秋に落葉したカツラの葉は、メープルシロップにも似た甘い香りがあり、視覚だけではない楽しさがあります。もともと日本にも自生する樹種なので、日本の気候環境にも合い、シンボルツリーにもオススメです。

【DATA】
■ 学 名:Cercidiphyllum japonicum ‘Red Fox’
■ カツラ科
■ 主な花期:春
■ 樹 高:10m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向~半日陰

セレクト4
プルヌス・ヴァージニアナ ‘ベイリーズセレクト’ & プルヌス・パドゥス (= エゾウワミズザクラ) ‘コロラータ’

サクラの近縁種で、春にサクラに似た穂咲きの花を楽しめ、花後に展開する美しい銅葉や実も楽しめる品種を2つご紹介します。

プルヌス・ヴァージニアナ ‘ベイリーズセレクト’

プルヌス・ヴァージニアナ ‘ベイリーズセレクト’植栽例
濃銅葉のプルヌス・ヴァージニアナ ‘ベイリーズセレクト’を始め、カラーリーフ樹木で大胆に色合わせした植栽例。

一つ目はプルヌス・ヴァージニアナ ‘ベイリーズセレクト’ 。基本種のヴァージニアナ種「チョークベリー」とも呼ばれ、原産地の北アメリカでは実をジャムなどにして食用します。‘ベイリーズセレクト’はその銅葉品種です。

チョークベリー
チョークベリー。TippyTortue/Shutterstock.com

上写真が、チョークベリーの実です。‘ベイリーズセレクト’ は、濃厚な色合いの銅葉にこの鮮やかな赤い実がなり、実と葉の色対比も楽しめます。

‘ベイリーズセレクト’の花
‘ベイリーズセレクト’の開花。Nick Pecker/Shutterstock.com

‘ベイリーズセレクト’は、春の開花時には上写真のように緑葉で芽吹きます。その後、初夏にかけて、プルヌスの銅葉品種の中でも最もダークな銅葉へと変化していきます。

プルヌス・パドゥス ‘コロラータ’

プルヌス・パドゥス ‘コロラータ’

もう一方の品種、プルヌス・パドゥス ‘コロラータ’ は、その実を鳥が好むことから「バードチェリー」の名でも知られる、アジア北部にも自生するエゾノウワミズザクラの淡桃花品種。葉脈が際立った鈍い銅葉に、淡ピンク色の花が美しいです。上写真のように穂咲きの花で、前出のチョークベリーに似た形状の黒紫色の実がなります。

【DATA】
■ 学 名:Prunus virginiana ‘Bailey’s Select’ 、Prunus padus ‘Colorata’
■ バラ科
■ 主な花期:春
■ 樹 高:10m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向~半日陰

セレクト5
コルヌス・コウサ(=ヤマボウシ)‘ウルフアイ’

日本でもナチュラルな雰囲気の花木として人気の高いヤマボウシの斑入り美麗種です。

コルヌス・コウサ(=ヤマボウシ) ‘ウルフアイ’

日本~中国にかけての東アジア原産種で、日本の気候にも合い育てやすく、ナチュラルな雰囲気でありながら鮮やかにくっきりと入る白覆輪斑が印象的。銅葉の樹木などとも、とても相性よく似合います。

コルヌス・コウサ(=ヤマボウシ)‘ウルフアイ’

白覆輪種にしばしば見られる夏の葉焼けも少ないですが、半日陰で育てるほうが、直射による葉のよじれを防げてより良いでしょう。

‘ウルフアイ’の紅葉
また、‘ウルフアイ’は、秋の紅葉時に白覆輪の部分が鮮やかなピンクに色づき、とても美しいですよ。写真提供/矢澤ナーセリー

【DATA】
■ 学 名:Cornus kousa var. chinensis ‘Wolf Eyes’
■ ミズキ科
■ 主な花期:初夏~夏
■ 樹 高:5~7m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向~半日陰

次回後編は、小さな植栽スペースのシンボルツリーや、草花植栽と高木植栽の間の彩りとして活躍してくれる中低木をご紹介します。どうぞお楽しみに!

カラーリーフ落葉樹

「いつか、水彩の皿を並べた色のピアノで、自由に即興できるようになりたい」
(パウル・クレー 画家 1879 – 1940)

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Credit


写真&文/太田敦雄
「ACID NATURE 乙庭」代表。園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科卒業後、前橋工科大学で建築デザインを学ぶ。趣味で楽しんでいた自庭の植栽が注目され、建築家とのコラボレーションワークなどを経て、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書に『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)。
オンラインショップでは、レア植物や新発見のある植物紹介でファンを増やしている。
「ACID NATURE 乙庭」オンラインショップ http://garden0220.ocnk.net
「ACID NATURE 乙庭」WEBサイト http://garden0220.jp
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