分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップのオーナーで園芸家の太田敦雄さんがお届けする連載「ACID NATURE 乙庭 Style」。今回は、一年を通して楽しめ、冬の落葉期にはハッとするほど特徴的な姿を現す、枝色や形に独特の美しさを持つ樹木をご紹介します。

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春~秋も美しく、冬の落葉時にはサプライズな魅力を発揮!
おもしろ枝モノ樹木

前回の記事『乙庭Styleの植物7 落葉期にハッと魅せられるおもしろ枝モノ樹木 その1~サンゴミズキの仲間』に続き、冬の落葉時に現れる枝色の美しい樹木や、特徴的な枝姿がオーナメンタルな魅力を発揮する樹木をご紹介します。独特の魅力を持つこれらの樹木は、新鮮なガーデン演出にオススメですよ。

コルヌスとベツラ
コルヌスとベツラ。Andrew Fletcher/Shutterstock.com

例えば、上写真は、サンゴミズキの仲間(コルヌス)のカラフルな枝と、ベツラ(シラカバの仲間)の白幹を組み合わせたウィンターガーデンの植栽例。コルヌスの仲間は冬のカラーステム素材として、比較的よく知られていますが、そこに留まらず、四季を通じて多彩な枝モノ樹木を使いこなせると、植栽にさらなるボキャブラリーの豊富さや文脈の深みを加えることができます。

雲龍ヤナギ
本記事でもご紹介する雲龍ヤナギの特徴的な枝。petra weishaar/Shutterstock.com

また、冬枝の色味だけでなく、枝の形にも注目したいもの。記事冒頭写真の雲龍カラタチや、生け花の世界で動きのある演出に用いられる雲龍ヤナギのように、日本の伝統園芸でも珍重されてきた、荒ぶるように激しく曲がる「雲龍(雲竜)」と呼ばれる奇観の枝芸品種もあります。このような特徴的な枝の形などもデザインに取り込んで、独創的なお庭を演出してみてはいかがでしょうか。

コリルス・アベラナ
本記事でもご紹介するコリルス‘レッドマジェスティック’ の美しい銅葉。RLariza/Shutterstock.com

切り花屋さんでも手に入らない、これらの枝モノ樹木。剪定をかねて切り枝にし、フラワーアレンジメントや生け花に組み入れても面白いです。庭で育てているガーデナーだけに与えられた特権ですよね。

とはいっても、一年を通して考えると、冬の間しか観賞価値がないのもちょっと困ります。そこで、今回は、春から秋の葉の美しさなど、通年楽しめるおもしろ枝モノ品種を、乙庭視点でご紹介します。

セレクト1
海外から羨望されるカエデの枝芸品種
アケル・パルマツム‘珊瑚閣’ &アケル・モリフォリウム(=ヤクシマオナガカエデ)‘脇坂錦’

まずは、日本人にとってサクラと並んで最もなじみ深い樹木の一つでもあるカエデの品種から。

 アケル・パルマツム ‘珊瑚閣’
アケル・パルマツム‘珊瑚閣’ の爽やかな若葉。Natalya Pyrogova/Shutterstock.com

イロハモミジの赤枝品種、アケル・パルマツム‘珊瑚閣’ と、日本国内でも珍しいヤクシマオナガカエデの斑入り葉品種 アケル・モリフォリウム‘脇坂錦’ をご紹介します。

アケル・パルマツム‘珊瑚閣’は、カエデの枝モノ品種の中では比較的よく知られているもので、冬に特に鮮やかに色付く赤枝が、とても美しい品種です。

アケル ‘珊瑚閣’の赤枝
アケル・パルマツム‘珊瑚閣’の冬の赤枝。

鮮やかな赤枝はサンゴミズキとも共通しますが、細枝が密生するサンゴミズキと異なり、しっかりと幹のある樹形に育っていくので、樹姿の印象が大きく異なります。‘珊瑚閣’は、緑葉の品種ですが、芽吹きの若緑色やカエデ特有の掌状の葉形、秋の黄葉も美しく、四季を通じて楽しめます。

アケル ‘珊瑚閣’ の秋の黄葉
アケル・パルマツム‘珊瑚閣’ の秋の黄葉。この鮮やかな黄色から、冬の赤い枝姿への変化が見どころです。Peter Turner Photography/Shutterstock.com

一方、アケル・モリフォリウム‘脇坂錦’ は、日本国内でも独自の生態系を育んできた屋久島を原産とする、ヤクシマオナガカエデの斑入り葉品種です。斑入りの葉が注目されがちな品種ですが、じつは冬の落葉時に現れる若枝の色もクリームピンクがかって美しく、観賞価値の高い逸品です。気候温暖な屋久島原産種ですが、耐寒性もあります。

屋久島オナガカエデ‘脇坂錦’
ヤクシマオナガカエデ‘脇坂錦’の枝。

冬の枝色もさることながら、‘脇坂錦’は、葉の美しさも一級品。春の芽吹き時にはピンクから白、そして黄緑がかった色へと美しく葉色が移ろい、初夏以降は緑地に白~ピンクの散り斑・砂子斑の対比が美しい斑入り葉となります。

屋久島オナガカエデ脇坂錦

秋の紅葉、そして冬の落葉時にはクリームピンクの美しい冬枝を楽しめる、四季折々の観賞価値が高い名品です。特に春~初夏への葉色の移ろいは常に見もので、庭の来訪者の話題の的になることでしょう。

カエデの仲間は春の若緑の美しさや、涼やかな風情のある特有の掌状葉と樹姿、そして鮮やかな紅葉など、まさに日本の野山や和風庭園の景色を代表する、「This is Japan!」な樹木です。日本原産種だけでも20種ほどあり、江戸時代をはじめ、日本園芸の伝統・歴史の中で多くの美しい品種が作られ、人々に親しまれてきました。日本で作出された伝統品種の多くは、海外の有名庭園でもオリエンタルで美しいリーフプランツとして、とても珍重されています。

カエデの植栽例
江戸園芸の風情を漂わせるカエデの銅葉枝垂れ品種を印象的に使った海外での植栽例。Peter Turner Photography/Shutterstock.com

カエデは自然界では山地の沢沿いなどに自生しています。ガーデンでも、やや湿った半日陰に植えるとよいでしょう。世界の園芸家にとって垂涎の的であるカエデ、ぜひ原産国である日本から積極的に発信したいものですね。

【DATA】
■ 学 名:Acer palmatum ‘Sangokaku’
■ 学 名:Acer capillipes var. morifolium ‘Wakisakanishiki’
■ ムクロジ科(旧カエデ科)
■ 主な花期:春
■ 樹 高:5~10m程度
■ 耐寒性:普通
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:半日陰

セレクト2
白幹と銅葉のコントラストがカッコいい
ベツラ・ペンデュラ‘プルプレア’

白い樹皮とホウキ状に茂る美しい樹形で人気の高い、シラカバの仲間の銅葉枝垂れ品種です。

ベツラ・ペンデュラ ‘プルプレア’
乙庭が植栽設計した建築でのベツラ・ペンデュラ‘プルプレア’植栽例。写真中央左に、シンボルツリーとして、黄金葉のニセアカシアと対比させて植栽しています。

日本でも北海道など冷涼な地域に自生するシラカバ(Betula platyphylla var. japonica)と同属の別種です。シラカバ同様、幹が成熟するにつれ古い表皮が剥離して、その下から美しい白い表皮が現れます。黒紫がかった銅葉とのコントラストも美しく、秋には鮮やかな黄葉となり、観賞価値が高い樹木です。

ベツラの黄葉と白幹
/Erkki Makkonen/Shutterstock.com

ベツラの白幹は春~秋も観賞できますが、特に冬場は色の少ない庭の中でその白さが引き立ち、絶好のフォーカルポイントになります。

日本のシラカバは暑さに弱く、冷涼地でないと栽培がやや難しいですが、本種はより耐暑性があり、本州でも大きな問題なく栽培が可能です。それでも、温暖地ではテッポウムシなどの被害も出やすいので、どちらかというと冷涼な地域向けの素材といえるでしょう。自然樹形で美しく整いやすく、宿根草植栽のシンボルツリーとしても素敵ですよ。

【DATA】
■ 学 名:Betula pendula ‘Purpurea’
■ カバノキ科
■ 主な花期:春
■ 樹 高:8m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通~やや弱
■ 日 照:日向~半日陰

セレクト3
銀灰白色の枝や涼やかな葉もおしゃれ!
ポプルス・アルバ(=ギンドロ)‘リチャーディ’

ギンドロ

海外の有名庭園などで、ナチュラル植栽のシンボルツリーとしてもしばしば使われるヤナギ科の樹木、ギンドロの珍しい黄金葉品種です。

冬のギンドロ
Francisco Javier Diaz/Shutterstock.com

ギンドロは、その名のごとく、落葉時の幹や若枝が銀泥を塗ったように銀灰白色になり、冬姿も美しい高木です。

ギンドロの枝

上写真は乙庭の店頭で栽培している本種、‘リチャーディ’の冬の若枝です。薄くフェルトを纏ったような質感で、シラカバの仲間とはちょっと違う雰囲気の白枝を楽しめます。本来は大きく育つ樹種ですが、鉢植えで育てることで2.5m程度の樹高に抑えています。

ギンドロの葉裏

ギンドロは、葉が美しく観賞価値が高いことでも知られています。黄金葉の本種 ‘リチャーディ’ は、葉表が黄金色、葉裏がフェルト質感の白色で、風に吹かれると葉の表裏の色の違いでキラキラと輝いているように見え、動的な美しさがあります。

大きく育つので、広い庭向けの樹木です。場所が合うとひこばえが出てはびこる場合もありますので、離れて出てきたひこばえは大きくなる前に引き抜くとよいでしょう。前述のように大鉢植えにするなどして根域を制限することで、よりコンパクトに育てることもできます。

【DATA】
■ 学 名:Populus alba ‘Richardii’
■ ヤナギ科
■ 主な花期:春
■ 樹 高:10m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向~半日陰

セレクト4
荒ぶる雲龍枝と銅葉を楽しめ、ナッツも収穫できる
コリルス・アベラナ‘レッドマジェスティック’

ヘーゼルナッツの木としても知られる、西洋ハシバミの雲龍枝銅葉品種です。

コリルス・アベラナ‘レッドマジェスティック’
コリルス・アベラナ‘レッドマジェスティック’の冬の幹。COULANGES/Shutterstock.com

落葉時に現れる、グネグネと荒ぶって曲がる枝姿が、西洋の不気味なおとぎ話の挿絵のような怪しい雰囲気を漂わせます。冬庭の絶好のフォーカルポイントになる、奇観の魅力を持った品種です。

レッドマジェスティック
Irina Borsuchenko/Shutterstock.com

春~秋も銅葉を楽しめ、樹が成熟すると、ヘーゼルナッツとして食用できるドングリ状の実がなります。

ヘーゼルナッツの実
ドングリのようなヘーゼルナッツの実。殻の中に入っているナッツを収穫して食用にできます。Valentyn Volkov/Shutterstock.com

雲龍枝の品種全般にいえることですが、枝がグネグネと曲がって成長する分、直線的に成長する基本種よりも生育が緩慢に見えます。早く大きく育つ基本種よりも剪定の手がかからず、見た目のインパクトも強いので、ドラマティックな植栽シーンの演出にオススメです。土壌の乾燥に弱いことを除き、性質も強く育てやすいです。野菜やハーブ、草花を混植したポタジェのシンボルツリーとしても素敵でしょう。

【DATA】
■ 学 名:Corylus avellana ‘Red Majestic’
■ カバノキ科
■ 主な花期:早春
■ 樹 高:3m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向~半日陰

セレクト5
荒々しい雲龍枝と鉤爪のような豪棘が怪物的な魅力
ポンキルス・トリフォリアタ・モンストロサ(=雲龍カラタチ)

長い棘のある枝を生かして侵入防止の生け垣に使われたり、北原白秋の「からたちの花」にも詠われていたりと、日本では古くからなじみ深い、丈夫で育てやすいミカン科の樹木カラタチの雲龍枝品種です。

雲竜カラタチ
春の芽吹きの頃。雲龍カラタチの荒ぶる枝と、コルヌス・アルバ‘オーレア’ の赤枝・黄金葉と組み合わせて。

雲龍枝のカラタチは、その特異な枝ぶりから盆栽の分野でも好んで用いられてきた素材。真緑色のグネグネと曲がる枝には鉤爪状の長い棘もあり、荒ぶった怪物的な姿は、植栽に取り入れても大変異彩を放ちます。

春から秋までは葉が出ますが、本種はあまりたくさんの葉が茂らないので、春~秋の間も比較的雲龍枝の姿が垣間見られます。枝も葉も濃い緑色なので、春~秋は緑豊かな雰囲気を演出するのにも役立ちます。

白秋の「からたちの花」にあるように、春には白い花が咲き、秋にはまん丸の実が黄金色に色づきます。このまん丸の実は初冬まで残り、荒ぶる枝とのコントラストも面白いです。

実付きの雲龍カラタチと、コルヌス・アルバ‘オーレア
実付きの雲龍カラタチと、コルヌス・アルバ‘オーレア’の赤枝。

性質は強く育てやすいですが、ミカン科の植物なので、アゲハチョウの幼虫に葉を食害されやすいです。発生期には浸透移行性の殺虫剤で防除するとよいでしょう。

実なりの状態はオレンジなどの温暖地系柑橘類とイメージがつながりますし、荒々しいモンスタラス(怪物的)な造形美は、ユーフォルビアやアローディアなど熱帯性奇観植物を連想させます。耐寒性もあり丈夫なので、アガベなどと合わせて、砂漠的な雰囲気漂うワイルド植栽を演出しても面白いですよ。

【DATA】
■ 学 名:Poncirus trifoliata var. monstrosa
■ ミカン科
■ 主な花期:春
■ 樹 高:3m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向

セレクト6
生け花素材としても活躍する
サリックス・マツダナ ‘トルトゥオサ’(=雲龍ヤナギ)

生け花作品などでも躍動感や奇観の造形美の演出にしばしば用いられる、ヤナギの雲龍枝品種です。

雲竜ヤナギの生け花
雲龍ヤナギの切り枝を利用したフラワーアレンジメント。Konrad Ziomek/Shutterstock.com

雲龍ヤナギは、切り枝素材としてはよく見かけますが、庭植えの樹木としてはなじみが薄いかもしれませんね。

雲竜ヤナギ
petra weishaar/Shutterstock.com

また、冬枝の色味だけでなく、枝の形にも注目したいもの。記事冒頭写真の雲龍カラタチや、生け花の世界で動きのある演出に用いられる雲龍ヤナギのように、日本の伝統園芸でも珍重されてきた、荒ぶるように激しく曲がる「雲龍」と呼ばれる奇観の枝芸品種もあります。このような特徴的な枝の形などもデザインに取り込んで、独創的なお庭を演出してみてはいかがでしょうか。

江戸の風情で川沿いに植えられたシダレヤナギ(Salix babylonica)の樹姿で枝がグネグネと曲がっている感じを想像していただくとよいでしょうか。

ヤナギ
水辺に涼しげに植栽されたシダレヤナギ。Konoka Amane/Shutterstock.com

雲龍ヤナギは、シダレヤナギ同様、中国原産の高木で、放任するとシンボルツリーサイズに大きく育ち、枝もヤナギらしく枝垂れる樹形になります。海外の有名庭園でも、池の端にシダレヤナギのダイナミックで涼やかな樹形を生かして、シンボリックに植栽している例をよく見かけますよね。

雲龍ヤナギの葉
雲龍ヤナギの葉。LindseyLeeanna/Shutterstock.com

雲龍ヤナギは、「柳葉」という言葉のように細長い葉形で、春~秋も涼しげな緑を提供してくれます。また、若枝はしばしば黄~ほんのりオレンジがかり、色のよい枝を選んで切り枝にすると、枝姿だけでなくカラーステム素材としても楽しめます。

雲竜ヤナギ
Fukume/Shutterstock.com

大きく育てるとシンボルツリーサイズの枝垂れ樹形となりますし、毎年早春に株元まで刈り戻す「コピシング」剪定を行うと、春に勢いよく新芽が伸び、しなやかな立枝姿で、大型の宿根草のように植栽背景に使えます。切り枝としての使用を考えると、コピス仕立てにして、剪定も兼ねて色のよい若枝を収穫するとよいでしょう。本来大きく育つ樹木なので、建物から離れた場所に植えましょう。

【DATA】
■ 学 名:Salix matsudana ‘Tortuosa’
■ ヤナギ科
■ 主な花期:春
■ 樹 高:10m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

Nadezda Verbenko/Shutterstock.com

「お父さん、お父さん あれが見えないの? 暗がりにいる魔王の娘たちが

坊や、坊や 確かに見えるよ あれは灰色の古い柳だよ」

(ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ 詩人・劇作家 1749 – 1832)

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Credit

写真&文/太田敦雄
「ACID NATURE 乙庭」代表。園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科卒業後、前橋工科大学で建築デザインを学ぶ。趣味で楽しんでいた自庭の植栽が注目され、建築家とのコラボレーションワークなどを経て、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書に『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)。
オンラインショップでは、レア植物や新発見のある植物紹介でファンを増やしている。
「ACID NATURE 乙庭」オンラインショップ http://garden0220.ocnk.net
「ACID NATURE 乙庭」WEBサイト http://garden0220.jp

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