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落葉期にハッと魅せられるおもしろ枝モノ樹木 その1〜サンゴミズキの仲間

トロピカルな植物から懐かしい素材、ナチュラルな宿根草など、分類の垣根を取り去った新鮮な植物セレクトで話題のボタニカルショップのオーナーで園芸家の太田敦雄さんがお届けする連載「ACID NATURE 乙庭 Style」。今回は、彩りが乏しくなる落葉期のガーデンに取り入れたい、ハッとするほどカラフルな枝が魅力的な庭木をご紹介します。
目次
冬の落葉時にこそ威力を発揮する、おもしろ枝モノ樹木
宿根草やバラなどを多く育てている方にとって、落葉期の真冬は、花や緑も少なく、早春咲きのクリスマスローズや球根類も開花前、特に1~2月の庭の見せ方は悩みどころですよね。かといって、よりナチュラルでサスティナブルな植栽を考える場合、毎年ビオラやストック、ハボタンなどの一年草で彩るのもなんだかお決まりコースのようだし、「地に根付いている感じとは違うんだよなぁ」と思っている方も多いことと思います。

そこで、今回から2回に渡って、落葉時の枝色や姿が面白く、冬の庭の見どころとなる落葉樹をご紹介します。
海外の有名庭園でも、冬の落葉時にだけ現れるコルヌスのカラフルな枝をはじめ、荒ぶる雲龍枝など、色や姿の面白い枝ものを上手に取り入れて、効果的に季節の見どころとしている例が多くあります。

むしろ、他の樹木や草花が落葉し、色やボリュームが少なくなる冬だからこそ、そのカラフルさや枝のオーナメンタルな造形が目を引き、葉が茂っている春~秋には分からない「骨格の美しさ」で新鮮な驚きを与えてくれる、「刺激的なウィンターガーデン素材」といえるでしょう。

多くの園芸家が、鑑賞をしない期間と割り切って、土壌改良や剪定など「春への準備」にいそしむ真冬の季節に、ハッと驚かされる庭景色をつくることができるボキャブラリーとして、いかがでしょうか。
まず今回は、枝色のバリエーションも豊富で、冬以外にも楽しめるカラーリーフ品種も充実している、コルヌス・アルバ (=シラタマミズキ)の仲間を解説します。
鮮やかな枝が美しいコルヌス・アルバ
コルヌス・アルバは、秋に実る白い実にちなんで、「シラタマミズキ」の名でも知られる、ミズキ科の低木です。生け花の分野でも、冬には、「サンゴミズキ」の名で知られるコルヌス・アルバの鮮やかな赤枝変種(Cornus alba var. siberica)の枝を、俳句における季語のように印象的に使いますよね。

日本では、シベリカ種の切り枝は多く流通していますが、それ以外の品種も含め、意外と庭植えではあまり普及していない樹木であるともいえます。シベリカ種は、冬の枝は鮮やかで美しいですが、春~秋の葉色が普通の緑色となるため、鑑賞期間が短いと敬遠されがちなのか、あるいは、庭での組み合わせ方が難しいと思われているのかもしれないですね。

海外の有名庭園では、赤枝のシベリカと鮮やかな黄枝のフラビラメア種をコントラストよく植えて、冬庭の見どころとする植栽例も多く見られますし、赤・黄色以外にも黒やコーラルオレンジ色の品種、春~秋も葉色を楽しめるカラーリーフ品種も開発されており、上手に使うと四季を通じて多角的に鑑賞できるおもしろ素材です。
これらのような、切り花屋さんでは手に入らない珍しい枝物を、庭や切り花で楽しめるのはガーデナーの特権ですよね。庭植えでも活用範囲の広い、コルヌスの品種や育て方を以下でご紹介します。
Select1
赤枝でカラーリーフも楽しめる
コルヌス・アルバ‘オーレア’とコルヌス・アルバ‘エレガンティッシマ’
まずはコルヌスの代名詞ともいえる赤枝の品種から。

通常のサンゴミズキは、冬の赤枝は美しいものの、普通の緑葉が茂るため、春~秋の園芸本番期に鑑賞価値が低いのがやや難点。そこでオススメしたいのが、アルバ種のカラーリーフ品種です。

明るい葉色でシェードガーデンでも活躍する黄金葉のコルヌス・アルバ ‘オーレア’ 。上写真では、ピンク花のアスチルベと美しいコントラストを奏でています。

白覆輪葉のコルヌス・アルバ ‘エレガンティッシマ’ は、より装飾的なニュアンスを植栽に加えられます。
上記2品種とも、冬のカラーステムからバトンタッチするように美しいカラーリーフが茂り、年間を通じて楽しめますよ。
【DATA】
◼️ 学 名:Cornus alba ‘Aurea’
◼️ 学 名:Cornus alba ‘Elegantissima’
Select2
黒枝と銅葉のコントラストが渋カッコいい
コルヌス・アルバ‘ケッセルリンギィ’
切り花屋さんには出回らない、珍しい黒枝品種です。

このコルヌス・アルバ‘ケッセルリンギィ’ は、黒枝品種として知られていますが、赤枝や黄枝の品種と合わせれば冬の彩りになりますし、葉色も銅葉がかり、春~秋にはカラーリーフプランツとしても楽しめます。黒枝は単体だと沈んで目立ちにくいので、赤や黄色などカラフルな色や銀葉の植物とコントラストを大きく組み合わせると効果的でしょう。
【DATA】
■ 学 名:Cornus alba ‘Kesselringii’
Select3
鮮やかな黄色の枝が冬庭のフォーカルポイントになる
コルヌス・セリケア‘フラビラメア’
海外の有名庭園で、前出の赤枝種・黒枝種と印象的に組み合わせることが多い黄枝種が、本種コルヌス・セリケア‘フラビラメア’。

日本では「キエダミズキ」の名で流通しています。比較的手に入りやすい‘フラビラメア’ は、冬の枝は美しい黄色ですが、春~秋は普通の緑葉に覆われますので、緑を多く取り入れたいナチュラル植栽に組み入れてもよいでしょう。シラカバの白い冬幹とコーディネートしても美しいですよ。
セリケア種にも、日本ではとても生産量が少ないですが、覆輪葉の品種もあります。 コルヌス・セリケア‘シルバーアンドゴールド’ 。カラーリーフ志向の方はぜひ探してみてください。
【DATA】
■ 学 名:Cornus sericea ‘Flaviramea’
Select4
コーラルオレンジ〜黄みのグラデーション枝色がおしゃれ!
コルヌス・サンギネア‘ミッドウィンターファイアー’
枝先がコーラルオレンジ、株元に向けて黄みを増していくグラデーションカラーの枝色が新感覚で、単独でも色の組み合わせが楽しめる、とても素敵な品種です。

まだ国内では流通が少ないですが、冬のカラーステム樹木としては最高のものの一つでしょう。本種‘ミッドウィンターファイアー’ は、カラーリーフ品種としては知られていませんが、春~秋の葉色も黄緑色がかり、単なる緑葉とはちょっと違う雰囲気でキレイですよ。

【DATA】
■ 学 名:Cornus sanguinea ‘Midwinter Fire’
サンゴミズキ系コルヌスの育て方と剪定方法
コルヌス属には花木としても幅広く普及しているハナミズキ(Cornus florida)なども含まれますが、ここでは前項まででご紹介した、カラフルな冬枝を楽しむ品種群の育て方を解説します。

カラーステム系コルヌスの多くは、シベリア~中国北部といった寒冷地原産の低木です。耐寒性が強く、その他の性質も概ね丈夫で、日本では、どちらかというと冷涼な地域で育てやすい樹木です。温暖地では夏に葉焼けすることがあるので、半日陰に植えるとよいでしょう。
水切れには弱いので、地植えで管理し、雨が降らない日が続いたときは水切れさせないように注意が必要です。

コルヌスは、その年に伸びた若枝が冬にカラフルに色づきます。年数が経過した旧枝は木質化して鮮やかな冬枝が楽しめないので、冬のカラーステムを楽しむ場合は、英国の庭園などでもよく用いられる「コピシング」という剪定法で若枝を多く出させるのが有効です。
馴染みの薄い用語かもしれませんが、「コピシング」とは、手短にいうと「強い刈り戻し剪定」です。株元まで強く刈り戻す剪定で、新芽を多く出させて株立ち樹形を作ったり、強制的に樹を若返らせ、カラーリーフやカラーステム品種の樹木を色鮮やかに楽しむために用いられます。

コルヌスの場合は、カラフルな冬枝を一定期間楽しみ、早春咲きの球根植物などとバトンタッチできる2月下旬~3月中旬の頃合いで、地上10cmくらいの高さまでバッサリ枝を刈り戻してしまいます。

そうすることで、株元にたくさんの新芽ができて春以降勢いよく若枝が伸びて、冬の落葉時に、ほどよい高さで枝数多くカラフルな枝を楽しめます。
ただし、春先にコピシングを行なった場合、花は咲かず、秋の白い実を楽しむことはできないので、実を楽しみたい場合は、花後、梅雨の頃に、成り始めの実を残して剪定を行うようにしましょう。
【DATA】
■ ミズキ科
■ 主な花期:春
■ 樹 高 :2m前後
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照 :半日陰
カラーステムのコルヌス 組み合わせのコツ
コルヌスは、他の植物が少ない真冬が見どころとなるプランツなので、何と組み合わせるかが難しいところですね。冬だけに着目しないで、春以降も引き続き楽しめるように植物を組み合わせるのがポイントです。

カラーステム系のコルヌスは、樹高2m程度でそれほど背が高くならないので、冬季に枯れ姿になってしまう宿根草植栽の背景などに利用してもよいでしょう。
オーナメンタルグラスの枯れ姿や、フロミスの黒褐色に乾いたシードヘッド、アジサイ‘アナベル’ の花がらなど、ドライになった冬の姿が面白い植物と組み合わせ、春先に、コルヌスのコピシングと合わせて冬枯れした宿根草を刈り込むと、枯れた冬の庭も鑑賞価値が上がり、管理もまとめられて便利です。


また、シラカバやギンドロなど、冬の幹が美しい高木と合わせて冬のカラーコーディネートをしても面白いでしょう。春~秋には緑に覆われナチュラルな林のような植栽風景になりますよ。

それ以外にも、ベルゲニアやクリスマスローズのカラーリーフ品種など冬の葉色を楽しめる常緑の宿根草や、以前ご紹介した、ちょっと技ありの常緑樹と組み合わせて冬枯れの印象を薄めるのも有効です。

また、コルヌス以外で冬の枝姿が面白い他の樹木を意図的に組み合わせられると、さらに上級者の智と術を演出することができます。コルヌスだけではない、その他の面白枝もの樹木については、次号にてご紹介しますね。

「あなたよ なぜ骨を嫌うのか 骨は美しい
いやらしいのは その上に付いている 肉なのかもしれない」
(楳図かずお 漫画家 1936 – )
Credit
写真&文 / 太田敦雄 - 「ACID NATURE 乙庭」代表 -

おおた・あつお/園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科、および前橋工科大学建築学科卒。趣味で楽しんでいた自庭の植栽や、現代建築とコラボレートした植栽デザインなどが注目され、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)ほか、掲載・執筆書多数。
「6つの小さな離れの家」(建築設計:武田清明建築設計事務所)の建築・植栽計画が評価され、日本ガーデンセラピー協会 「第1回ガーデンセラピーコンテスト・プロ部門」大賞受賞(2020)。
NHK『趣味の園芸』講師。(一社)ジャパンガーデンデザイナーズ協会(JAG)正会員デザイナー。ガーデンセラピーコーディネーター1級取得者。(公社) 日本アロマ環境協会 アロマテラピーインストラクター、アロマブレンドデザイナー。日本メディカルハーブ協会 シニアハーバルセラピスト。
庭や植物から始まる、自分らしく心身ともに健康で充実したライフスタイルの提案にも活動の幅を広げている。レア植物や新発見のある植物紹介で定評あるオンラインショップも人気。
「太田敦雄」公式ブログ https://note.com/acid_nature_0220
プロフィール写真/田中雅也
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