分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップのオーナー&園芸家の太田敦雄さんがお届けする連載「ACID NATURE 乙庭 Style」。庭づくり、植物選びに“マンネリ”しているあなたへ。植物のケアにふり回されないよう、夏に元気なセミトロピカルプランツを5つご紹介します。真夏から秋の庭のダイナミックな主役になりますよ。

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セミトロピカルプランツを上手に使って、アッツい猛暑を乗り切ろう!

2018年7月は、埼玉県熊谷市で国内観測史上最高の気温41.1℃が記録され、ニュースをにぎわせましたね。年々暑さを増しているように感じられる日本の夏。夏の猛暑厳しい群馬県高崎市の乙庭でも、日本の高温多湿に耐える植物選びや、暑い中での手入れ負担をいかに軽減するかは、とても重要な課題。夏に元気な植物を使って、植物のケアにふり回されないよう工夫をしています。そこで今回は、暑い夏でもぐんぐん育ち、夏~秋の庭の主役になるセミトロピカルな巨大葉プランツをご紹介します。見映えも増しつつ、夏庭の手入れを軽減できる提案です。

照り銅葉のカンナや紺黒みのコロカシア、メリアンサス・マヨールなどを大胆に組み合わせたインパクト満点の夏庭。

セミトロピカルプランツ、「半耐寒性植物」と言い換えられるでしょうか。温暖化や、アスファルト面が多くなった都市環境変化のせいか、東京都心部などでは、かつての日本の園芸常識では考えられなかった、クワズイモやゴムノキなどが屋外越冬している光景も散見されるようになりました。

以下にご紹介するのは、日本の温暖地域でも場所選びや管理を適切に行えば、屋外越冬が可能で、ガーデニングの選択肢を広げてくれる植物です。これらの栽培は、場所や耐寒適性の判断力が求められたり、予想を超えた冬の寒さへのリスクもはらみますが、それだけに成功したときのダイナミックな光景は感動的で、大きな達成感を得ることができます。

上写真は、チョコレート色の縞模様が入るカンナ ‘クレオパトラ’ を織り込んでオリジナリティーを強調した例。園芸は芸ごと。誰にでも簡単に攻略できてしまっては面白くないでしょう。リスクを負って、それをクリアーしていくことで、技アリな園芸の世界が広がっていきます。

オーナメンタルな巨大葉を主役にして季節感とインパクトを

バナナのように面の大きな葉は、熱帯の風情を感じさせてくれます。もはや熱帯よりも暑いといわれる日本の夏。トロピカルな植栽も気分になじみますね。これらの植物は、暑さが増すにつれ成長が活発になり、大きく育っていきます。トロピカルプランツ特有の巨大な葉姿は、他の植物では代用がきかない独特の個性があり、植栽でもひときわ目立ちます。

こちらは、見上げるようなトウゴマの巨大品種、リキニス ‘ザンジパーム’です。アーキテクチュラル(建築的)とも評される、これら巨大な葉の植物を印象的に使うと、夏気分も演出でき、庭の景色も引き締まりますよ。

セレクト1 カンナ

銅葉のカンナ ‘オーストラリア’ と黄金葉のコロカシア ‘エレーナ’を組み合わせた一角。カンナは比較的耐寒性が強く、寒冷地以外では屋外越冬可能な有望種です。昭和期にも、このトロピカルな雰囲気が好まれて植栽されていたカンナからは、どことなく懐かしさも漂いますね。

カンナは、個性的なカラーリーフ品種も多く、宿根草植栽に織り込んでも絶好のフォーカルポイントになります。性質も丈夫で育てやすく、オススメのセミトロピカルプランツです。高温期は肥料も水もたっぷり与えると、ぐんぐん成長します。冬季は休眠しますので、水やりを控えて乾燥ぎみに。なお、冬季に-7℃以下になる寒冷地では越冬は難しいです。その場合、晩秋に地上部を切り落として掘り上げ、土をあまり落とさずに乾燥させ、新聞紙などで包んで凍らない屋内で春まで保管し、翌春にまた植えつけます。

カンナ ‘オーストラリア’
Canna ‘Australia’

最もダークな銅葉品種。

カンナ ‘クレオパトラ’
Canna ‘Cleopatra’

個性が際立つ不規則縞模様葉品種。

カンナ ‘ムサフォリア’
Canna ‘Musafolia’

バナナのような巨大な草姿がオーナメンタル。

カンナ ‘ベンガルタイガー’
Canna ‘Bengal Tiger’

鮮黄色の縞模様がデザイン性満点。

【DATA】
■ カンナ科  宿根草(球根植物に分類されることも)
■ 主な花期:夏~秋
■ 草 丈:1.5〜2.5m程度(品種により異なる)
■ 耐寒性:-7℃程度
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向

セレクト2 コロカシア

食用でもおなじみのサトイモもカンナ同様、日本人には畑の風景や懐かしさを感じさせる素材です。コロカシアも海外では多くのカラーリーフ品種が開発され、大きなハート葉を生かして印象的に植栽されます。ダリアやアスターなど秋の花とも相性よく、似合いますよ。

コロカシア ‘コールマイナー’
Colocasia esculenta ‘Coal Miner’

コロカシア ‘コールマイナー’の紺黒葉が植栽を引き締める。

明緑葉にスプラッシュ模様が入るコロカシア ‘モヒート’ に、黒葉のコロカシア ‘ブラックランナー’ をキクやグラスなどと合わせた植栽例。コロカシアは、カンナよりも耐寒性に劣り、地植えするには温暖地でも暖かい日向がよいでしょう。冬季休眠中は堆肥などで地表をマルチングし、凍結を防ぐのも効果的。-5℃以下になる地域では屋外越冬は難しく、晩秋に鉢上げし、鉢土ごと乾かしてカンナ同様に保管を。

コロカシア ‘イラストリス’
Colocasia esculenta ‘Illustris’

灰紫葉のアルストロメリア、黄金葉のパイナップルセージを合わせて。

【DATA】
■ サトイモ科  宿根草(球根植物に分類されることも)
■ 主な花期:夏~秋
■ 草 丈:1~1.5m程度(品種により異なる)
■ 耐寒性:-5℃程度
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向

番外編 サトイモ科
アロカシア ポルトドラ
Alocasia ‘Portodora’

観葉植物でもおなじみのクワズイモ(Alocasia odara)の仲間で、クワズイモより耐寒性のある大型種です。コロカシアのハート葉に対し、アップライトで照り感のあるスペード葉。-3~-5℃程度の耐寒性。極力乾燥状態を保つのが越冬のポイント。まだ日本ではあまり植栽されていない、「これから」を感じさせる期待種です。

セレクト3 バショウの仲間

バショウ(Musa basjoo)も、熱帯の雰囲気と同時に昭和の民家の庭を感じさせる素材ですよね。バショウを含むムサ属は、要するにバナナの仲間。熱帯の風景で真っ先に思い浮かぶ葉の一つでしょう。ここでは、ムサの近縁でバナナな風景を演出できる新感覚な2種をご紹介します。2種とも成長がとまる冬季は乾燥気味に管理しましょう。

エンセテ‘マウレリー’
Ensete ventricosum ‘Maurelii’

まさに銅葉のバナナといった雰囲気のアフリカ原産種。バナナのように樹木状に幹立ちせず、どっしりとしたダイナミックな立ち性ロゼットが見事です。耐寒性は弱めで、国内でも特に温暖な地域向け。冬季は葉が枯れ下がり、コーデックス状の基部が残り越冬します。寒い地域では冬季は屋内で観葉植物として楽しめます。

【DATA】
■ バショウ科  宿根草
■ 主な花期:夏
■ 草 丈 :1.5~3m程度(冬季落葉する日本での場合)
■ 耐寒性:-3〜5℃程度
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向

ムセラ ラシオカルパ(地湧金蓮)
Musella lasiocarpa

少しワックスがかったようなバショウ形の葉姿もよく、充実した太茎の頂部に咲く黄色のハスのような花も開花期がとても長く観賞価値が高い、中国雲南省原産種。

こちらは、花の様子。草丈は大きくなりすぎず、耐寒性も強くてガーデニング素材としても新感覚です。

【DATA】
■ バショウ科  宿根草
■ 主な花期:夏
■ 草 丈 :1.5~2m程度(冬季落葉する日本での場合)
■ 耐寒性:-7℃程度
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向

セレクト4  リキニス(トウゴマ)

古来からヒマシ油の原料などに使用されてきた植物です。巨大な掌状葉とダイナミックな草姿が魅力。

リキニス ‘ザンジパーム’
Ricinus communis ‘Zanzi Palm’

緑葉の巨大品種。

リキニス ‘ニュージーランドパープル’
Ricinus communis ‘New Zealand Purple’

濃銅葉はデザイン性が高い 。

リキニスは本来宿根草ですが、日本では冬越しが不安定なため一年草扱いとし、晩秋に実る種子を採って翌春に播き、更新するほうが実用的です。銅葉の品種が近年ガーデナーの間でも人気になっています。

【DATA】
■ トウダイグサ科  宿根草(日本では一年草扱い)
■ 主な花期:夏~秋
■ 草 丈 :2~3m程度(品種により異なる)
■ 耐寒性:-3℃程度(種子で毎年更新が実用的)
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向

セレクト5 メリアンサス・マヨール
Melianthus major 

縁に鋸歯のある、ワックスがかかったような美しい灰水色の葉を持つ。まるで鳥が羽ばたくように葉が展開する南アフリカ原産種。

晩春に咲く暗臙脂色の穂花も含め、不思議でお洒落な雰囲気のある有望種。-5℃程度に下がると、地上部の茎が枯れ下がり、春に株元から出る新芽で更新されます。

花は越冬した茎の頂部に咲くので、花を楽しみたい場合は、冬の間、枝先を不織布で巻くなどして保護するとよいでしょう。

【DATA】
■ メリアンタ科  宿根草
■ 主な花期:晩春
■ 草 丈:2~3m程度
■ 耐寒性:-7℃程度(-5℃程度で地上部落葉)
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向

「危険を冒したらいいじゃないか。おいしいのはそこだろう?」

(フランク・スカリー コラムニスト 1892 – 1964)

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Credit

写真&文/太田敦雄
「ACID NATURE 乙庭」代表。園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科卒業後、前橋工科大学で建築デザインを学ぶ。趣味で楽しんでいた自庭の植栽が注目され、建築家とのコラボレーションワークなどを経て、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書に『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)。オンラインショップでは、レア植物や新発見のある植物紹介でファンを増やしている。
「ACID NATURE 乙庭」オンラインショップ http://garden0220.ocnk.net
「ACID NATURE 乙庭」WEBサイト http://garden0220.jp

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