はたけやま・じゅんこ/花好きの母のもと、幼少より花と緑に親しむ。1997年より本格的にガーデニングをはじめ、その奥深さや素晴らしさを、多くの人に知ってもらいたいと、ガーデンライフアドバイザーとして活動を開始する。ウェブ、情報誌、各種会報誌、新聞などで記事執筆や監修を行うほか、地元・岩手県の「花と緑のガーデン都市づくり」事業に協力。公共用花飾りの制作や講習会講師などの活動も行っている。
畠山潤子 -ガーデンライフアドバイザー-
はたけやま・じゅんこ/花好きの母のもと、幼少より花と緑に親しむ。1997年より本格的にガーデニングをはじめ、その奥深さや素晴らしさを、多くの人に知ってもらいたいと、ガーデンライフアドバイザーとして活動を開始する。ウェブ、情報誌、各種会報誌、新聞などで記事執筆や監修を行うほか、地元・岩手県の「花と緑のガーデン都市づくり」事業に協力。公共用花飾りの制作や講習会講師などの活動も行っている。
畠山潤子 -ガーデンライフアドバイザー-の記事
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育て方

チューリップの育て方。コツとお手入れ、植え替えや寄せ植えを一挙紹介します
チューリップを育てる前に知っておきたいこと チューリップは秋植えの球根植物で、多種多様の品種があります。その数は5000種を超えるとも。花色や花姿が豊富で、早春から春の花壇の彩りとして、欠かせない植物です。 チューリップの基本データ学名:Tulipa科名:ユリ科属名:チューリップ属原産地:中央アジア~地中海和名:鬱金香(ウコンコウ、ウッコンコウ)英名:tulip開花期:3~5月花色:赤、ピンク、黄、オレンジ、白、緑、紫、黒、複色生育適温:5~20℃前後切り花の出回り時期:12~3月花もち:5~7日 チューリップは、園芸ビギナーの方にも育てやすい植物です。チューリップを球根から育てるなら、秋、10~11月頃が植えつけの適期です。翌年の1月中頃から芽出し球根のポット苗も出回ります。球根を植えそびれた場合は、このポット苗から育て始めるとよいでしょう。 種類を知ると、選び方がわかります 前述したように、じつに多くの園芸品種があるチューリップ。主に、開花時期や品種、花姿で分類することができます。 早生グループ(3月下旬から4月上旬開花)・SE(Single Early、一重咲き)系…アプリコットビューティー、クリスマスドリームなど・DE(Double Early、八重咲き)系…ヴェローナ、ダブルプライスなど 中生グループ (4月上旬から中旬開花)・DH(Darwin Hybrids、ダーウィンハイブリッド)系…オックスフォード、デイドリームなど・T(Triumph、トライアンフ)系…アルマーニ、マンゴーチャームなど 晩生グループ(4月下旬から5月上旬開花)・SL(Single Late、一重咲き)系…ピンクダイアモンド、カフェノワールなど・DL(Double Late、八重咲き)系…アンジェリケ、ブラックヒーローなど・L(Lily-flowared、ユリ咲き)系…バレリーナ、アイスウィングなど・FR(Fringet、フリンジ)系…ネグリジェ、ファンシーフリルなど・V(Viridiflira、ヴィリデフローラ)系…グリーンランド、チャイナタウンなど・P(Parrot、パーロット)系…ロココ、シルバーパーロットなど・R(Rembrandt、レンブラント)系…フレミングフラッグ、レムズフェイバリットなど その他の原種と雑種・K(Kaufmaniana、カウフマニアナ、早生)系…ハーツデライト、ヨハンシュトラウスなど・F(Fosteriana、フォステリアナ、早生)系…コンサート、ピューリシマなど・G(Greigii、グレイギー、中生)系…アリババ、ピノキオなど・S(Other Species、スピーシーズ、Miscellaneous)系…タルダ、ライラックワンダーなど いずれも鉢植え、地植え、どちらでも楽しめます。球根の袋や苗についているラベルを参考に、好みのチューリップを選びましょう。 チューリップを育てるときに必要な準備は? チューリップは鉢植えでも、庭や花壇に植える地植えでも育てることができます。育てるときは、以下のものを用意しましょう。 準備するもの・チューリップの球根、または芽出し球根の苗 *鉢植えの場合は、下記のものも用意・鉢、またはプランター・培養土・鉢底ネット・鉢底石(なくても可)・土入れ、移植ゴテ(球根植え用のバルブプランター、ディバー) チューリップは日向を好みますので、植え場所や鉢の置き場所も考慮しておきましょう。 適した土作りが、育てるコツの第一歩 チューリップは水はけのよい、弱酸性の土を好みます。 鉢植えの場合は、市販の草花用培養土で問題ありません。製品により、チューリップに対しては水はけが悪いことがあります。そういったときは、砂やパーライトを足すことで改善されます。また、「球根用」とか「チューリップ用」と書かれた培養土も市販されています。 自分で単用土をブレンドして作る場合には、赤玉土と腐葉土、パーライトを6:3:1の割合で混ぜます。 地植えの場合には、日当たりと水はけのよい場所を選び、あらかじめ堆肥や腐葉土をすき込んで耕しておきます。水はけが悪いときは、川砂も加えて、水はけをよくしてください。また、酸性土の中和のために、苦土石灰を施したり、用土に籾殻くん炭や草木灰を混ぜたりするのも有効です。 いずれの場合も、あらかじめ元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。 チューリップの育て方にはポイントがあります チューリップの育て方には、球根を購入して育てる方法と、芽出し球根のポット苗から育てる方法があります。 チューリップの育て方~球根から始める~ 球根の選び方 時期になると、園芸店にはたくさんの球根が並びます。球根を選ぶ際は、ラベルの写真だけに惑わされず、球根の状態をよく見て選ぶようにします。 バラ売りされている場合は、1個1個手に取り、大きくて持ち重りのする球根、表面に凹凸や汚れのない締まった球根を選ぶようにしましょう。5球、10球とネット袋でまとめて売られているものも触れてみて、フニャフニャするようなものは避けます。 ネット通販では、店頭では見かけないような品種を扱っていることがあります。通販を利用して球根を入手する場合は、信頼できる種苗メーカー、ショップから購入することをおすすめします。 植えつけ時期と方法 チューリップの球根は、鉢植え、地植えとも、10~11月頃が植えつけの適期です。 鉢植えの場合の手順①鉢に鉢底ネット、鉢底石を入れ、培養土を鉢の上端から8~10㎝くらい(球根の高さ+ウォータースペース分)まで入れておきます。鉢植えの場合は、根張りのスペースを取りたいので、球根の頭が隠れる程度の浅植えになります。②培養土の上に球根を並べます。球根同士の間隔は、球根1個分が目安です。このとき、球根の向きに注意してください。球根は上から見ると円ではなく、平らな面とふっくらしている面があります。これを一定の向きに揃えて植えることで、その後に展開する葉の向きが揃います。③球根の上に覆土をして、植えつけ完了です。 球根植えに特化した穴掘り(バルブプランター、ディバー)がある場合は、鉢の上端から2~3㎝くらいウォータースペースを確保して培養土を入れ、穴を開けます。球根の向きを揃えて配置し、覆土をします。 地植えの場合の手順①事前に土作りを済ませて、よく耕しておきます。②球根の植え穴を掘ります。深さは、球根の高さ2~3個分が目安です。③植え穴に球根を並べます。植え付け間隔は、球根2~3個分が目安です。④球根の上に覆土をして、植えつけ完了です。 鉢植え同様に、耕してならした地面に、穴掘りで穴を開けて植えつけても構いません。また、地植えの場合には、誤って掘り起こしてしまわないよう、どこに植えたのかわかるように、印をつけておくようにするとよいでしょう。 鉢植え、地植えとも、植えつけ後は、たっぷりと水やりをしておきます。 発芽しやすくさせるコツ 十分に肥大したよい球根は、すでにその中に葉も花芽も形成されていて、発芽できるだけの養分を蓄えています。ですから、球根選びと管理を間違えなければ、ちゃんと芽が出てきます。 ただし、芽は出ても、そのあと開花に至らないケースがあります。チューリップの球根は、一定期間、低温を経験することで開花が促されます。これを休眠打破(きゅうみんだは※)といいます。 球根を植えつけたあと低温にあわないでしまうと、芽は出ても開花に至らないケースがあります。そこで、冬も温暖な地域では、人為的に低温にあわせて開花を促す「低温処理」という方法をとることも。チューリップの球根の場合は、5℃程度の低温で6~8週間くらいが必要とされています。家庭でこの処理を行う場合は、冷蔵庫と梱包材を利用して、低温にあてていくとよいでしょう。 ※「休眠打破」 休眠状態にある種子、冬芽、球根などが、ある特定の刺激を受けたあと、活動状態になること。チューリップのほか、サクラなども、一定期間低温にあたることで休眠が打ち破られます。 チューリップの水栽培 チューリップは、水栽培でも楽しむことができます。 球根は水栽培用のものがおすすめですが、普通の球根でも、前述の「低温処理」をすれば開花させることができます。 容器は、市販の水栽培用のものを使って育てるのが一般的。しかし、球根を支えられるようにすれば、ペットボトルや家にあるガラスコップなどでも育てることができます。 水栽培の手順①水を入れた容器に、外皮を剥いた球根をセットし、冷暗所に置きます。②時々水を入れ替えて管理します。③根がしっかり伸びだしたら、日の当たる場所に出します。 この後は水の入れ替えの際に、葉や根を傷めないように注意して管理します。 チューリップの育て方~ポット苗から始める~ 苗の選び方 チューリップの苗(芽出し球根)は、1月中頃から園芸店やホームセンターの園芸コーナーなどで入手することができます。苗にはそれぞれ、開花イメージの写真ラベルが付いていることが多いので、それらを参考にして選んでみましょう。 売り場には、同じ品種でもたくさんの苗が並んでいますが、苗にも良し悪しがあります。虫がついている、白いカビのようなものがついている…といった苗はいわずもがなですが、周囲のほかの苗と比べて、葉色が悪いような苗は避けましょう。 よい苗は株元がクラクラすることなくしっかり根が張り、ズングリガッシリしています。なるべく、そういった苗を選ぶようにしましょう。 購入後は、後述の「チューリップと仲よくなる、日々のお手入れ」と同様に管理します。 立派に育てるための、植え替え時期と方法 チューリップは植え替えを嫌いますので、植え替えは芽出し球根の苗を購入して、育て始める場合にとどめます。植え替えの際は、チューリップの根を傷めないよう、慎重に扱いましょう。 チューリップと仲よくなる、日々のお手入れ ポット苗の状態で購入した芽出し球根は、できるだけ早く定植場所、あるいは鉢に植えつけしましょう。日当たり、水はけ、風通しのよい場所が適しています。 水やりのタイミング 鉢植えの場合は、基本的に「鉢土が乾いたら鉢底から流れ出るくらいにたっぷりと」水やりをします。時間帯は、朝~午前中のうちに済ませます。夕方以降に水やりすると、夜間の冷えこみで、凍ってしまうこともあります。 チューリップは過湿で球根が腐ってしまうことがあるので、まだ鉢土が湿っているのにもかかわらず、ただ漫然と日課として、水やりをすることのないように注意しましょう。 逆に、冬期に水やりを忘れてしまうケースがあります。鉢を目のつく所に置く、ラベルをつけるなどして、基本の水やりを忘れないようにしてください。 地植えの場合は、定植時にたっぷりと水やりをした後は、極端に乾燥した日が続いた場合以外は不要です。 肥料の施し方 チューリップは、球根の植えつけ時や苗の定植時に、元肥として長くゆっくり効くタイプの「緩効性肥料」を施します。 前述のように、十分肥大した球根には、開花できるだけの養分が蓄えられているので、特に追肥の必要はありません。 生育を助けるために肥料を与えるのであれば、芽が出た頃にいちど、液体肥料を規定の希釈倍率より薄めにして水やり代わりに施します。その後の施肥は、球根が腐る原因となるので、避けたほうがよいでしょう。 なお、ダブルデッカー(※後述)など、ほかの植物と寄せ植えにした場合には、元肥が切れた頃に追肥として、希釈した液体肥料などを与えます。 肥料は過剰に与えると、根が肥料やけを起こす場合があります。肥料を与える際には注意書きをよく読み、使用量を守って与えるようにしましよう。 チューリップの増やし方が知りたい! チューリップは、球根を腐らせてしまわない限りは、植えっぱなしにすることができます。 球根は土中で栄養を蓄え、親となる母球(秋に植えつけた球根)の脇に子球を形成して増えていきます。この子球を分球することにより、増やすことができます。 狭いスペースにたくさんの球根を密植した場合などは、球根が十分に肥大せず翌年には開花しないことが多いため、毎年新しい球根を買い求めるという方も多いかと思います。ですが、今年は小さかった球根も、再び栄養を蓄えることで、太らせていくことができます。この機会に、花後の処理の仕方も覚えておきましょう。 球根の掘り上げと保存法 花が終わったチューリップは、球根を肥大させるために、葉と花茎はそのまま残し、種ができる子房(花のあったところ)を手で摘み取ります。この作業をすることにより、種を作ることに費やされるエネルギーを、球根に蓄えることができるのです。この後、葉が黄色く変色するまでは、水やりは通常通りに行います。葉が枯れ出したら、枯れた葉は取り除いて構いません。 植え場所の都合などにより、チューリップの球根を掘り上げる場合は、葉が黄色く変色して枯れ始めてから行います。掘り上げた球根は土を落として、日の当たらない風通しのよい場所で乾燥させます。 よく乾いたら、葉や根を取り除き、秋の植えつけ適期までネット袋に入れ、風通しのよい涼しい日陰で保管します。 毎日の観察が、病気や害虫を防ぐコツです チューリップによく見られる病気としては、花弁に本来あるはずのない縞模様が出る「モザイク病」、地際や球根が腐る「軟腐病」、株元に白い菌糸が現れて立ち枯れる「白絹病」などがあります。病気の株は、発見しだい抜き取って処分しましょう。 また、虫害としては、アブラムシやネダニが発生することがあります。特にアブラムシはモザイク病などを媒介するので、見つけ次第こそげ落とすか、株元にオルトランをまくなどして防除します。 病虫による害は、いずれも毎日の観察が被害を広げさせないコツになります。 チューリップと相性のよい寄せ植えの植物 チューリップは、ひとつの鉢に花期の異なる品種を数種植え込むと、長く楽しむことができます。 また、「ダブルデッカー(※)」や「トリプルデッカー」と呼ばれる植え込み方法で、ムスカリなどの少球根、パンジー、ビオラなど晩秋から春に咲く花と、寄せ植えにして楽しむことができます。この手法を取る場合には、それぞれの根張りスペースを確保するため、深鉢を準備しましょう。 ※「ダブルデッカー」 ダブルデッカーとは、本来は2階建てバスのこと。チューリップの球根より、浅い位置にほかの小球根を植える手法。さらに、パンジーなどの花を植えて、3階建てにしたものをトリプルデッカーと呼びます。 チューリップ、ここに注意して! チューリップはそのかわいい花姿に相反して、花や葉、球根まで全草に毒を持つ「有毒植物」です。同じ球根植物であるスイセンを、食用と間違えて食中毒を起こすケースを、ニュースなどで見聞きしたことがあるかと思います。チューリップの場合は、子供が球根を口にしてしまったり、ペットが葉を誤って食べてしまったりするケースがあります。買ってきた球根を放置しておかないなど、留意して自衛しましょう。 チューリップを切り花にして楽しみたいときは「チューリップのおしゃれな生け方・飾り方。 フラワーアレンジで長もちさせるコツ」、ドライフラワーにしたいときは「チューリップの、上手なドライフラワーの作り方と簡単アレンジ」、押し花にしたいときは「チューリップの、上手な押し花の作り方と飾り方アイデア」をご覧ください。 併せて読みたい
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ガーデニング

チューリップを元気に育てるには、適した土作りが必要です
チューリップを育てる前に知っておきたいこと チューリップは秋植えの球根植物で、多種多様の品種があります。その数は5000種を超えるとも。花色や花姿が豊富で、早春から春の花壇を彩りとして、欠かせない植物です。 チューリップの基本データ学名:Tulipa科名:ユリ科属名:チューリップ属原産地:中央アジア~地中海和名:鬱金香(ウコンコウ、ウッコンコウ)英名:tulip開花期:3~5月花色:赤、ピンク、黄、オレンジ、白、緑、紫、黒、複色生育適温:5~20℃前後切り花の出回り時期:12~3月花もち:5~7日 チューリップは、園芸ビギナーの方にも育てやすい植物です。チューリップを球根から育てるなら、秋、10~11月頃が植えつけの適期です。翌年の1月中頃から芽出し球根のポット苗も出回ります。球根を植えそびれた場合は、このポット苗から育て始めるとよいでしょう。 チューリップにとっての、土の役割とは… チューリップは土中に根を張り巡らせることで、自分自身の体を支えています。それと同時に、土中の根で呼吸を行ったり、水で溶け出した土中の栄養分を根から吸い上げたりしています。つまり、チューリップの根は、人間でいうと、体を支えるための足であり、呼吸をするための肺であり、栄養補給をするための口(胃)であるといえるでしょう。 また、土は、その大切な根を、夏の強い日差しや高温、乾燥、風といった急激な環境変化から守る役割を担っています。これは人間にたとえると、「住まい」にあたる役割を果たしているといえます。 元気に育てるための、チューリップの土作り 用土とは、園芸で使われる土のこと。さまざまな種類があります(※後述)。培養土とは、数種類の用土がブレンドされ、そのまま使用できる土のことです。 チューリップは水はけのよい、弱酸性の土を好みます。 チューリップの球根を鉢植えにする場合は、市販の草花用培養土で問題ありません。「球根用」とか「チューリップ用」と書かれた培養土も市販されています。 植えつけの際は、清潔で新しい培養土を使うようにしましょう。古い土は「団粒構造(※後述)」が崩れ、水はけが悪くなりがちです。古い土には、病原菌や害虫の卵などが潜んでいることがあるので、注意しましょう。 なお、製品により、チューリップに対しては水はけが悪いこともあります。そういったときは、砂やパーライトを足すことで改善されます。 自分で単用土(※後述)をブレンドして作る場合には、赤玉土と腐葉土、パーライトを6:3:1の割合で混ぜます。 地植えの場合には、日当たりと水はけのよい場所を選び、あらかじめ堆肥や腐葉土をすき込んで耕しておきます。水はけが悪いときは、川砂も加えて、水はけをよくしてください。 酸性土の中和のために、苦土石灰を施したり、用土に籾殻くん炭や草木灰を混ぜたりするのも有効です。 いずれの場合も、あらかじめ元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。 よい土は、水はけ、水もちに優れています チューリップをはじめとした植物の栽培には、水はけ(排水性)、水もち(保水性)、通気性、保肥性に優れた「よい土」が必要となります。 「よい土」とは、園芸用語でいう「団粒構造をもつ土」のことです。団粒構造とは、砂や粘土など、さまざまな土の粒子(単粒)がくっつきあって、小さな固まり(団粒)を形成して重なっている状態を指します。団粒のなかには小さい隙間が、団粒と団粒の間には大きな隙間があります。それらの隙間が、それぞれ排水、通気、保水、保肥に役立ち、植物が根を張りやすい環境を作っているのです。このようなよい土は、フカフカとしていて、よい匂いがします。 ホームセンターや園芸店には、たくさんの土が販売されています。あらかじめメーカーでブレンドされ、袋詰めされた培養土のほかに、「赤玉土」とか「黒土」などの単用土も販売されています。園芸ビギナーの方は、どれを買ってよいのか迷われるかもしれません。次の項で紹介する用土の特性を参考に、育てる環境や選んだ商品に合わせて、混ぜる用土を見極め、「よい土」に仕立ててください。 補足として、赤玉土7~6:腐葉土3~4のブレンドは、ベースとして、ほとんどの植物に使えます。覚えておくとよいでしょう。 種類を知ることが、適した土作りへの近道 土の種類について知ることは、植物栽培に必要な「よい土」作りに役立ちます。ここでは、ひととおり、土の種類とその特徴を見てみましょう。 黒土畑土などにみられる、黒い土。粒子が細かく、多用すると水はけが悪くなるため、コンテナなどの容器栽培には不向きとされています。 赤玉土関東ローム層の赤土をふるって粒子を揃えたもので、水はけ、水もちがよいのが特徴。小粒・中粒・大粒と選別されて袋詰めになっています。ほかの用土とブレンドして使うときは、中~小粒のものを選びます。 鹿沼土栃木県鹿沼地方で産出される粒状の軽い土。水はけ、水もちがよく、性質は赤玉土に似ています。酸性なのでツツジやサツキ、山野草などの栽培向き。 腐葉土広葉樹の落ち葉を腐熟させたもので、水はけ、水もち、通気性に優れています。肥料分はそれほどありませんが、土中の微生物を増やして土を活性化する働きがあります。袋を開けたとき、カビや嫌な匂いのするものは使用を避け、しっかり完熟したものを使いましょう。 堆肥藁、落葉、野菜くずなどを腐熟させたもので、土中の微生物を増やし、水はけや通気性をよくする働きがあります。腐葉土よりは、有機質の肥料分が含まれます。 腐葉土同様に、しっかり完熟したものを使います。 ピートモス水ゴケ、シダなどが堆積し泥炭化したもので、軽くて水もち、通気性がよいのが特徴。 酸性が強いので、一般的な草花には「酸度調整済み」のもの、酸性の土を好む植物には「酸度未調整」と表記されたもの、と使い分けてください。 バーミキュライト蛭石を高熱処理して膨張させた人工用土で、軽いのが特徴。水はけ、通気性、保肥力に優れています。 パーライト真珠岩を高熱処理して膨張させた、白い粒状の軽い人工用土。 配合することで、水はけ、通気性がよくなります。 砂水はけや通気性をよくするために用いられます。川砂が一般的ですが、 群馬県桐生地方で産出される「桐生砂」や、富士山周辺から産出される「富士砂」は火山砂礫で、主に山野草の栽培などに使われます。 水ゴケ湿原のコケ類を乾燥させたもの。軽くて通気性がよく、保水性に優れています。 籾殻くん炭籾殻を燻して炭化させたもの。水もち、通気性に優れ、根腐れ防止の効果があります。アルカリ性なので、酸性土の中和にも使われます。 たとえば、いつも水やりしすぎて過湿で植物を枯らしてしまう場合は、ベースに砂やパーライトを加えることで、水はけをよくすることができます。用土の種類と特性を知っていれば、このように、自身で調整し、より「よい土」を作ることができるのです。 ※市販の「○○用」などと銘打った培養土は、これら用土の特性を生かして、配合割合を各社で研究してブレンドしたものになります。 チューリップの植えつけの時期 チューリップの球根は、10~11月頃が植えつけの適期です。チューリップの根の生長適温は、10℃前後なので、気温が下がりにくい地域では12月初旬までなら、植えつけることができます。 1月中頃から、園芸店やホームセンターの園芸コーナーなどに「芽出し球根」が出回ります。苗から育て始める場合は、購入したポット苗をできるだけ早く定植しましょう。 土のほか、植えつけ時に準備したいもの 用土について理解を深めたら、実際の植えつけについて、紹介しましょう。チューリップの球根を鉢に植えつけるときは、以下のものを用意します。 準備するもの(鉢植え、地植え共通)・適した土(前述のとおり)・植え付けるチューリップの球根・土入れ、移植ゴテ(球根植え用のバルブプランター、ディバー)・ジョウロ *鉢植えの場合は、下記のものも用意・鉢(浅鉢は避けます)・鉢底ネット・鉢底石(なくても可、砕いた発泡スチロールで代用も可能) チューリップは過湿により球根が腐ってしまうことがあるので、植えつけ用の鉢は、それ自体に吸水性、通気性がある素焼き鉢が望ましいです。しかし、寒冷地では鉢の水分が夜間の冷え込みで膨張し、鉢が割れてしまうことがあります。近年はポリカーボネートやグラスファイバー製など、多種多様な鉢が出回っていますので、環境にあったものを使用しましょう。 鉢底石は排水の意味でもよいのですが、球根を植えたあと根が伸びるスペースを確保したいので、鉢の高さにあまり余裕がない場合は、鉢底ネットの上に培養土だけでも構いません。もちろん、培養土は水はけのよいものを使用します。 鉢底石の代わりとして、砕いた発泡スチロール(清潔なもの)を使うこともできます。 チューリップは日向を好みますので、植え場所や鉢の置き場所も考慮しておきましょう。 チューリップの植えつけ方法が知りたい 必要なものを準備したら、次は実際の植えつけに。手順は以下のとおりです。 鉢植えの場合 ①鉢に鉢底ネット、鉢底石を入れ、培養土を鉢の上端から8~10㎝くらい(球根の高さ+ウォータースペース分)まで入れておきます。鉢植えの場合は、根張りのスペースを取りたいので、球根の頭が隠れる程度の浅植えになります。②培養土の上に球根を並べます。球根同士の間隔は、球根1個分が目安です。このとき、球根の向きに注意してください。球根は上から見ると円ではなく、平らな面とふっくらしている面があります。これを一定の向きに揃えて植えることで、その後に展開する葉の向きが揃います。③球根の上に覆土をして、植えつけ完了です。 球根植えに特化した穴掘り(バルブプランター、ディバー)がある場合は、鉢の上端から2~3㎝くらいウォータースペースを確保して培養土を入れ、穴を開けます。球根の向きを揃えて配置して、覆土をします。 地植えの場合 ①事前に土作りを済ませて、よく耕しておきます。②球根の植え穴を掘ります。深さは、球根の高さ2~3個分が目安です。③植え穴に球根を並べます。植え付け間隔は、球根2~3個分が目安です。④球根の上に覆土をして、植えつけ完了です。 鉢植え同様に、耕してならした地面に、穴掘りで穴を開けて植えつけても構いません。地植えした場合は、誤って掘り起こしてしまわないよう、どこに植えたのか、わかるように印をつけておくとよいでしょう。 鉢植え、庭植えとも、植えつけ後、たっぷりと水やりをしておきます。 植えつけをするときの注意点はこちらです 球根を植えつける際に間隔を詰めすぎると(密植)、花が咲いたときは豪華ですが、その後来年に向けての球根の肥大はあまり望めません。球根は1年限りと割り切って植えるのであれば、開花期の違うものを組み合わせたり、花色を変えてデザインして密に植えると、春の開花時には見応えのあるものができます。 なお、球根の上に覆土をする際は、ギュウギュウと力を入れて押しつけると、土中の空気が抜けてしまいます。球根が安定する程度に、優しく押さえるようにしましょう。
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育て方

アサガオの正しい剪定方法。時期やコツを知れば、初心者でも簡単にできます
アサガオを育てる前に知っておきたいこと アサガオは比較的育てやすい植物です。一方で、新品種を作り出すのがブームになったほど、奥の深い植物でもあります。 アサガオの基本データ 学名:Ipomoea nil 科名:ヒルガオ科 属名:サツマイモ属 原産地:熱帯から亜熱帯地域 和名:朝顔(アサガオ) 英名:Morning glory 開花期:7~9月 花色:赤、ピンク、白、青、紫、複色 発芽適温:20~25℃ 生育適温:20~25℃ アサガオを種から育てるなら、5月の連休明けから6月いっぱいくらいまでが適期です。5月以降はポット苗も出回り始めるので、夏の遮光に緑のカーテンを作りたい場合は、早めに植えつけましょう。 夏至を過ぎた7月頃には、次々と花が咲き始めます。この頃に開催される朝顔市などで開花鉢を買い求めた場合も、種や苗から育てたのと同様に10月くらいまで楽しむことができます。 剪定には、いろいろな種類があります 剪定とは、植物の姿形を整えたり、生育や結実の調整をするために茎の一部を切り取ったりする作業のこと。脚立を立てて行なうような大掛かりなものから、草花の切り戻しのような細かい作業までを含みます。剪定というと、庭木の枝切りばかりを想像しがちですが、それだけではありません。 多くの植物は、日光を求めて片側だけ伸びがよかったり、生育が旺盛で姿が乱れたりします。時には、繁りすぎることで、風通しが悪くなり病気が発生することも。 人の手が届かない山の中では致し方ないかもしれませんが、家の庭で伸びるに任せてジャングルになってしまっては困りもの。そうしないためにも、また、庭で植物がすくすくと生育でき、美しい姿でいられるようにするためにも、剪定という作業が必要になるのです。 剪定は主に、植物の姿形を整える、花つきや結実をよくする、通風や採光をよくし、生育を助ける、株や枝の若返りを図ることなどを目的として行います。 従って、剪定には、以下の作業が含まれます。 枝下ろし 樹木の大きい枝の芽を残さずに、枝分かれした元から切り落とすこと。 枝透かし(枝抜き) 通風や採光を妨げているような込みすぎた枝を、枝分かれした元から切り取ること。 刈り込み 全体の形を刈り整える作業。 切り戻し(※) 伸びた茎(枝)を短く切り詰める作業。 摘心(摘芯、ピンチ、芯止め) 枝茎の先端の芽(頂芽)を摘むこと。これにより、脇芽(腋芽、側芽)を出させたり、開花を促したりします。 ※切り花で、花材の水あげをよくするために茎の根元を新しく切り直すことも「切り戻し」といいます アサガオに剪定って、じつは必要です アサガオのような草花でも、すくすくとした株の状態で長く楽しむためには、必要に応じて随時、剪定が必要になります。 アサガオに行なう剪定は、大きく分けて、2の項で説明した「摘心」と「切り戻し」の作業です。 知りたい! 剪定する目的とメリット 切り戻しの目的とメリット アサガオを切り戻しする目的は、伸びすぎた蔓や葉を整理して、姿形を整えることです。 アサガオのような蔓性植物は、気づかない間に蔓同士が絡み合っていることがあります。そのまま放っておくと、ほどけないほどの塊になって見苦しいだけでなく、通風の妨げにもなります。余分な蔓は伸びすぎてしまう前に、切り戻しておくようにしましょう。 また、不要な蔓を切り戻しで取り除くことにより、蔓に余分なエネルギーを取られることがなく、そのぶん多くの花を楽しむことができるというメリットもあります。 なお、大輪アサガオは、花芽の数を調整して、よい花を咲かせることを目的に、切り戻しすることがあります。 摘心の目的とメリット アサガオを摘芯する目的は、葉の枝数とともに、花数を増やすことにあります。 アサガオをはじめ多くの植物は、「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」という性質をもっています。これは、茎の先端にある芽(頂芽)の生長のほうが、茎の側面につく脇芽よりも優先されることを指します。つまり、摘心をしないでそのまま育てていると、優先された茎だけが伸びて、脇芽の生長は抑制されてしまうので、花は優先された茎先にしかつかず、その結果、花数が少ない…ということになってしまうのです。 摘心をしなくても自然に分枝するものもありますが、アサガオは摘心することで、葉の枝数が増えて繁りやすくなります。緑のカーテンを仕立てる場合、摘心で葉の枝数を増やせば、密に繁ってネットを覆うことができるというメリットがあります。 剪定に適した時期を、見極めましょう アサガオの剪定は、その目的によって、適した時期が異なります。 摘心の適期 摘心の作業は、脇芽を出すのが目的なので、植えつけ後の本葉が7枚くらいになったら、頂芽を摘みます。その後の摘心を何回行なうかは、アサガオの仕立て方によって変わってきます。 切り戻しの適期 切り戻しは、傷んだ茎や蔓を取り除くとともに、増えすぎた蔓があれば切って形を整えます。従って、特定の時期に限定せず、日々の水やりの際にでも、気がついたら随時行うとよいでしょう。 なお、開花期になると、毎日の作業として、花がら摘みが加わります。咲き終わった花をそのままにしておくと、種を作るために多くのエネルギーを使います。ある程度の種を結び、子孫を残すという目的を果たしたアサガオは、その後の生育が衰えてしまいます。 花がら摘みは、花がらを早く取り除くことによって、種を作るために使われるエネルギーを生育に回して、できるだけ長い期間アサガオの花を楽しむために行ないます。開花期間中は、この花がら摘みを兼ねて、切り戻しをしてもよいでしょう。 アサガオの剪定方法は、難しくありません 摘心の方法 摘心は、初夏の定植後に、本葉が5~7枚くらいになったら行います。方法は、アサガオの頂芽をハサミで切り取るか、茎が柔らかいものは指先でひねるようにして摘み取ります。 切り戻しの方法 アサガオの切り戻しは、夏から秋の間、随時行ないます。方法は、不要な蔓を切りたい位置までたどってカット。誤って、残したい茎を切ってしまわないよう、注意しましょう。 花がら摘みの方法 夏の開花期間中は、花がら摘みが頻繁に必要です。前述したように、この花がら摘みと一緒に、切り戻しをするのがおすすめです。花がら摘みは、花が咲き終わったら、花首の下の茎をたどって、分岐している元のところで切ります。このとき花のすぐ下で切り取っても、“種をつけさせない”という花がら摘みの目的は果たせますが、切ったあとの茎が突き立って見苦しいので、元から切るようにしましょう。 なお、萎れた花弁だけをむしり取っても、花の根元の子房(種となる胚珠を包んでいる部分)が残っていると、種を結ぶので意味がありません。剪定の目的をきちんと意識して、切り取ってください。 剪定のポイントは、枝や茎の選び方です 庭木の場合には、「忌み枝※」と呼ばれる枝を剪定し、形を整えていきますが、アサガオの剪定をする際には、どのような枝を選んで切ればよいのでしょう。 摘心の場合は、アサガオの頂芽を切るので迷うことはありません。切り戻しは、不必要に伸びて暴れているような蔓や、繁りすぎて混み合っている部分を選んで切り取ります。また、気づかないうちに風など何らかの理由で、茎が途中で折れていることがあります。いずれ萎れて枯れてしまうだけなので、こういった茎なども取り除いておきましょう。 ※「忌み枝」美しい木の形を保つときに、不要な枝のこと。枯れ枝、徒長枝、立枝、逆さ枝、懐枝、重なり枝、かんぬき枝、車枝、絡み枝、垂れ枝、胴吹き、ひこばえがあります。 アサガオの剪定には、コツがあります アサガオを剪定するときのコツは、ズバリ「切るべき時に、切るべき枝を切る」。これに尽きます。 時々、「花が咲いていると、もったいなくて切れないのよ」という声を聞くことがあります。咲いた花が何日も美しい姿でとどまっているのであれば、もったいないという気持ちもわかります。しかし、一日花であるアサガオの場合は、長く咲いても夕方までなので、これには当たりません。これまで述べてきた剪定の意義からみても、そのまま放っておくほうが悪影響になります。 また、園芸を始めたばかりというビギナーには、「ハサミを入れるのが怖い」という方も。植物の剪定は、人間にたとえると散髪のようなもの…と考えれば、ハサミを持つ手が軽くなるのではないでしょうか。 剪定するときの注意点はこちらです アサガオに限らず、植物を剪定するときの注意点は、「剪定の際は清潔なハサミを使う」ということが挙げられます。 庭で多種多様な植物を育てている場合、道具を媒介として病気がうつってしまうことがあります。あきらかに「病気にかかった植物を切った」とわかっている場合は、ハサミの消毒が必要。といっても、強い薬品や難しい作業は必要ありません。普段は水で洗ったあとに、水分をよく拭き取り、オイルを塗っておく程度でよいでしょう。消毒したいときは、薬局で売られている消毒用エタノールの使用が手軽です。 美しく見せる、アサガオの仕立て方 最後にアサガオの仕立て方について簡単に触れておきましょう。 もっともポピュラーなのは、「行灯仕立て」。ほかには、1本の蔓をそのまま伸ばして仕立てる「本蔓仕立て」、摘心して子蔓を出して仕立てる「子蔓仕立て」、子蔓をさらに摘心して孫蔓を出して仕立てる「孫蔓仕立て」があります。 一般的には、本葉が5~7枚程度になったら摘心をして脇芽を出させ、伸びた子蔓を行灯仕立て用の支柱に誘引して仕立てる「子蔓仕立て」にすることが多いようです。 このほか、1本の支柱に螺旋状に巻いた針金を固定し、そこにアサガオの蔓を這わせる「らせん仕立て」、蔓が伸びるたびに下葉を2枚残しながら摘芯を繰り返して小さく仕立てる「切り込み仕立て(盆栽仕立て)」といった仕立て方があります。
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アサガオの水やり方法。適切なタイミングと頻度で、根腐れを防ぎます
アサガオを育てる前に知っておきたいこと アサガオは、ヒルガオ科サツマイモ属の蔓性植物です。アサガオの学名(※1)は“Ipomoea nil” で、これはサツマイモの仲間であることを示しています。 朝開いたアサガオの花は、その日のうちに萎んで終わる「一日花」。一方で、毎日次々と新しい花を咲かせます。アサガオを使って、近年、地球温暖化対策のひとつとして注目されている「緑のカーテン」を作ることもできます。 またアサガオは、種からでも育てやすい植物でありながら、江戸時代には交配させることでさまざまな変化に富んだアサガオを作出することが一大ブームとなりました。人々の暮らしと密接にかかわってきた歴史をもつ、奥深い植物でもあります。 ■アサガオの基本データ 学名:Ipomoea nil 科名:ヒルガオ科 属名:サツマイモ属 原産地:熱帯から亜熱帯地域 和名:朝顔(アサガオ) 英名:Morning glory 開花期:7~9月 花色:赤、ピンク、白、青、紫、複色 発芽適温:20~25℃ 生育適温:20~25℃ アサガオを種から育てるなら、5月の連休明けから6月いっぱいくらいまでが適期です。5月以降はポット苗も出回り始めます。夏の遮光にグリーンカーテンを作りたい場合は、早めに植えつけましょう。 ※1「学名」学術上、生物などを分類してつける世界共通の名称 水やりの方法と、そのタイミング アサガオの水やりのタイミングは、時間帯でいえば、朝のうちがベストです。 早朝から、日が高くなるまでのあいだ、比較的涼しい時間帯のうちに、水やりを行うのがコツです。水やりをする際は、ジョウロであっても散水ホースを使う場合でも、アサガオの花に直接水がかかるようなやり方は避けます。株元から土中に水を行き渡らせる気持ちで、ゆっくり与えましょう。 アサガオは鉢植え、地植えのどちらでも栽培できますが、それぞれ水やりの頻度は異なります。次の項からは、植えつけ別の水やりを紹介しましょう。 鉢で育てている場合の、アサガオの水やり 水やりの頻度 通常は朝のうちに1回、土が乾いているかを確認してから水やりをします。天候により土が湿っている状態であれば、水やりは不要です。 夏になると、水やりの頻度は雨が降っている日以外は毎日の作業になります。ただし、小雨のときは、さっと鉢の土の表面が濡れただけ、お湿り程度のことがあります。あるいは外は本降りの雨でも、アサガオの鉢は軒先で、土にはちっとも雨がかかっていないということも。これでは鉢の中まで、水が行き渡ることはありません。そのようなときはやはり、鉢土の状態をしっかり確認して、水やりをしましょう。 水やりのコツ 「土が乾いたら、鉢底穴から水が流れ出てくるまでたっぷりと水やり」が基本です。土の表面だけが濡れた状態だと、根まで水が届きません。ですから、ジョウロなどで水を与えるときは、底から水が流れ出ているかを、しっかり確認してください。 水やりの確認方法 水やりのタイミングを確認するには、指で土を触ってみる、あらかじめ土に割り箸などを刺しておいて、引き抜いて湿り気があるか見る…といった方法があります。アサガオの背丈が低いうちは、水やり前と水やり後の鉢の重さを体感しておくというのも、ひとつの手です。 アサガオの葉先が萎れたようになっているのも、水切れのサインです。そのような状態のときは、しっかりと水やりをしましょう。 地植えの場合の、アサガオの水やり 水やりの頻度 地植え栽培では、アサガオがしっかり根づいたあとは、自然に降る雨だけで、基本的に水やりは不要です。これは、土の量が鉢に比べて、圧倒的に多く、地中に水分が蓄えられているためです。しかし、極端に雨が降らない日が続いたり、アサガオの葉が萎れてしまうような乾燥した日が続いたりする場合には、土中にしっかりと水がしみ渡るように水やりしてあげましょう。 水やりのコツ 前述したとおり、水やりを行うときは、土の奥、根の先端まで水が届くように、たっぷりと与えます。 水やりの確認方法 極端に雨が降らない日が続いたときなど、アサガオの葉先が萎れたようになっていたら、これは水切れのサインです。しっかり水を与えましょう。 水やりは、季節によっても多少変わります 水やりの具合は、天候のほか、植物の生育状態や季節で多少変わります。そこで、この項では季節ごとの違いを見ていきましょう。 春~初夏(鉢植え、地植え) 種まき後は、発芽するまで土が乾かないように湿らせておく必要があります。アサガオは水やりで種が流れてしまうことはあまりないですが、小さい種をまいた場合などは、水を張った容器に苗床を入れて底穴から水を吸い込ませる「底面給水(底面灌水)」というやり方もあります。この方法では、土に十分水分が行き渡ったら、苗床は水から引き上げます。 なお、植え替え後のアサガオも、活着(根づいて生長を続けること)するまでの間は、地植えであっても、水やりは忘れずに行ってください。 夏(鉢植え) この時季は、朝の水やりだけでは足りないことがあります。前述したように、鉢土の乾き具合を確認して、必要に応じて水やりをするのが基本ですが、夏の間は、朝・夕2回の水やりが必要となる日が多いでしょう。 秋(鉢植え) 夏が過ぎて花の数が少なくなったアサガオは、片付け時を見越して、水やりを控えても差し支えはありません。しかし、花後の種を採りたいのであれば、種が熟すまでは基本どおりの水やりをします。 西洋アサガオやノアサガオは、大輪アサガオに比べて1か月ほど開花時期が遅れるので、秋になっても盛んに花を咲かせている間は水やりを継続します。 アサガオの水やり、注意点が知りたい 鉢植えの場合の注意点 鉢植えのアサガオに勢いよく水やりをすると、水は鉢の内面を伝ってすぐに流れ落ちてしまい、肝心の根に水が行き渡っていないことがあります。アサガオの鉢の下に鉢受け皿を置いている場合は、水やり後に鉢底から流れ出た水はそのままにしておかず、必ず捨てるようにしましょう。アサガオは根腐れしにくい植物といわれていますが、いつも鉢受け皿に水が溜まっていると、鉢土の過湿状態を招きます。 逆に、鉢受け皿に水が溜まるのが嫌だから、鉢底から水が流れ出す前に水やり終了!という「水のちょいやり」もNGです。『アサガオを元気に育てるには、適した土作りと、植え替え(定植)が必要です』で、土の団粒構造について解説しているとおり、水やりをすると団粒と団粒の間の空気が押し流され、ここに水分と共に新しい酸素が供給されます。しかし「ちょいやり」では、土は湿っても、この大事な酸素を供給するまでには至りません。水やりの基本である「鉢植えでは鉢底から水が流れ出るくらいたっぷりと」というのには、このような理由があるのです。 上記のほか、夏の水やりでの注意点もあります。真夏ともなると、朝に水やりをしても、昼には鉢土がカラカラに乾いてしまっていることがあります。そんなとき、慌てて水やりをしてはいけません。夏の日照りの下に置いていたジョウロやホース内の水は、熱せられてお湯のようになっていることがあるからです。水やりの前に、触って手で水温を確かめるなど注意しましょう。 外出先から帰宅したら、アサガオが水切れでグッタリしていた!という場合は、鉢が動かせるのであれば日陰に移動し、バケツに張った水に鉢ごとつけます(腰水)。熱せられた株を冷やすと同時に、乾いた鉢土にしっかり吸水させることで、元気なアサガオへと復活を図ります。緑のカーテンにしているなど鉢が動かせないときは、鉢土を冷やす気持ちでゆっくり、しっかり水やりをしてください。水は水温が低いことを確認してから、水やりに使うことを忘れずに。 地植えの場合の注意点 地植えでは、庭などの水やりを一気に済ませようと、散水ホースを使うケースがあります。このとき、水の勢いが強すぎると、土が跳ね返って葉裏につき、そこから病気が発生することがあるので注意が必要です。 アサガオ栽培のなかで、水やりの役割 アサガオに限らず植物栽培における水やりは、俗に「水やり3年(5年とも)」といわれるくらいに奥深いものです。なぜなら、水やりは次のような役割を担っているからです。 ・植物の根に水を吸収させる ・根が呼吸するのに必要な酸素を供給する ・高温期には株や土の温度を下げる ・葉に付着した埃などを落とす(葉への散水の場合) つまり、水やりはただ毎日の日課で漫然と植物に水をかけるという行為ではありません。以上のような役割を念頭に、植物の根がしっかりと水分や酸素を吸収できるよう与える必要があるということです。 日々の水やりに際し、土の乾き具合を確認するとともに、花色や葉色はどうか、虫害や病気は出ていないかなど、植物の様子を観察することも日課にしたいですね。
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アサガオの育て方。コツとお手入れ、植え替えや寄せ植えを一挙紹介します
アサガオを育てる前に知っておきたいこと アサガオは比較的育てやすい植物ですが、新品種を作り出すのがブームになったほど奥の深い植物でもあります。 アサガオの基本データ学名:Ipomoea nil科名:ヒルガオ科属名:サツマイモ属原産地:熱帯から亜熱帯地域和名:朝顔(アサガオ)英名:Morning glory開花期:7~9月花色:赤、ピンク、白、青、紫、複色発芽適温:20~25℃生育適温:20~25℃ アサガオを種から育てるなら、5月の連休明けから6月いっぱいくらいまでが適期です。5月以降はポット苗も出回り始めるので、夏の遮光にグリーンカーテンを作りたい場合は、早めに植え付けましょう。 夏至を過ぎた7月頃には、次々と花が咲き始めます。この頃に開催される朝顔市などで開花鉢を買い求めた場合も、タネや苗から育てたのと同様に10月くらいまで楽しむことができます。 アサガオを育てるときに必要な準備は? アサガオは鉢植えでも、地面に直接植える露地植えでも育てることができます。育てるときは、以下のものを用意しましょう。 準備するもの・アサガオの種または苗・支柱またはネット・6号以上の鉢または横長プランター *鉢植えの場合・土 アサガオは、自分の体を支える「蔓」を絡ませて上へ上へと成長していくので、行灯仕立てにできるよう組まれた支柱や、緑のカーテンを作るならネットを準備しておきます。また鉢植えにする場合には、6号(直径18センチ程度)以上の鉢を、緑のカーテンなら2~3株植えられる横長プランターを準備します。 アサガオは日向を好みますので、植え場所や鉢の置き場所も考慮しておきましょう。 種類を知ると、選び方がわかります アサガオにはじつに多くの品種がありますが、大きく「大輪アサガオ」、「変化アサガオ」に分けられます。また「変化アサガオ」のなかでも、キキョウのような花姿のアサガオは「キキョウ咲きアサガオ」と呼ばれます。 このほか、アサガオの近縁種として花弁に白い筋の入る「曜白アサガオ」や、朝から昼まで咲く「西洋アサガオ(ソライロアサガオ)」、沖縄でよく見られ琉球アサガオの名でも知られる「ノアサガオ(宿根アサガオ)」などがあります。 種袋や苗についているラベルを参考に、好みの花姿のアサガオを選びましょう。 いずれも鉢植え、露地植えどちらでも楽しめますが、大輪や変化アサガオは鉢植えに向き、近年注目されている「緑のカーテン」には蔓がよく伸びる曜白アサガオや西洋アサガオ、ノアサガオが向いています。 適した土作りが、育てるコツの第一歩 アサガオの栽培には、栄養分に富み排水性、保水性、通気性のある土が向いています。 鉢植えの場合は、市販の草花用培養土で問題ありませんが、製品によっては水はけや水もちが悪いこともあります。そういったときは、堆肥や腐葉土、川砂を足すことで改善されます。露地植えの場合には、あらかじめ植え場所に堆肥や腐葉土をすき込んで耕しておきます。水はけが悪いときは、川砂も加えて水はけをよくしてください。 自分で単粒の土をブレンドして作る場合には、赤玉土と腐葉土を6:4の割合で混ぜるか、赤玉土、堆肥、腐葉土を6:2:2の割合で混ぜます。 またアサガオは酸性土を嫌うので、中和のために苦土石灰を施したり、用土に籾殻くん炭を混ぜたりするのも有効です。 いずれの場合も、あらかじめ元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。 アサガオの育て方にはポイントがあります アサガオの育て方には、種から育てる方法と、市販の苗を購入して育てる方法があります。植物栽培に慣れていない方、アサガオを育てるのが初めて…という方は、苗から育て始めると失敗が少ないでしょう。 アサガオの育て方~苗から始める~ 苗の選び方 初夏になると、園芸店やホームセンターの園芸コーナーにはさまざまな品種のアサガオの苗が出回ります。苗にはそれぞれ開花イメージの写真ラベルが付いていることが多いので、まずは好みの花姿で選んでみましょう。 とはいえ、苗にも良し悪しがあります。虫そのものや虫食いの跡、病気と思われる白斑や黒斑等が付いていないことは言わずもがなですが、周囲の他の苗と比べて葉色が悪かったり、葉っぱが黄色くなって萎んだり縮れていたりする苗は避けましょう。 またヒョロヒョロと背丈だけ伸びて茎が弱々しいもの、葉と葉の間が間延びしているものは「徒長」といい、日照や栄養状態に問題があったことを示しますので、こういった苗も避けたほうが良いですね。 良い苗は株元がクラクラすることなくしっかり根が張り、ズングリガッシリしていますから、なるべくそういった苗を選ぶようにしましょう。 購入後は、後述の「アサガオと仲よくなる、日々のお手入れ」と同様に管理します。 アサガオの育て方~種から始める~ 種まき時期 アサガオの種は、気温20~25度くらいが発芽しやすいです。これを「発芽適温」といいます。露地に直接まく場合は、遅霜などの心配がなくなり、地温が充分に上がった頃にまきます。地域によって差がありますが、種まきはだいたい、5月の連休明けから6月いっぱいまでできます。鉢植えの場合は、適温が確保できればもう少し早く種まきすることが可能です。 発芽のコツ アサガオの種は、そのままでは皮が固く発芽しにくい傾向があります。種をまく前にひと晩水につけて吸水させるか、やすりなどで表皮に軽く傷をつけて吸水しやすくさせてからまくと芽が出やすくなります。 近年は発芽しやすいように処理を施した種が市販されるようになりました。そのような種には、種袋に「発芽処理済み」などの記載があります。 種まき方法 アサガオの種は、植え場所に直接、種をまく「直まき」と、一旦ポリポットなどに種まきして丈夫な苗を選別して植え場所に移植する「鉢まき」ができます。いずれも指で用土に2~3か所植え穴を開け、そこに種をまく「点まき」にします。この際、種の上下に注意しましょう。種は、角のある方を下に、丸い方を上にして植えます。 アサガオの種は、光があると発芽しにくい「嫌光性(けんこうせい)」の種です。種をまいたら種の厚みと同じくらい培養土をかけ(覆土)、しっかり水やりをします。芽が出るまでは、乾かさないように注意しましょう。おおよそ1週間程で双葉が出ます。芽が出揃ったら、丈夫そうな芽だけを残して間引きします。 立派に育てるための、植え替え時期と方法 種を直まきにした場合には必要ありませんが、鉢まきにした場合は、本葉が3~4枚くらいになったら6~7号程度の鉢に根鉢を崩さないように注意して植え替え(定植)します。 植え替えの際は、あらかじめ支柱を立てておくこと、緑のカーテンにするならネットを張っておきましょう。植え替え後は、たっぷりと(鉢植えの場合は鉢底から水が流れ出てくるくらい)水やりをしておきます。 アサガオと仲よくなる、日々のお手入れ 定植後、蔓が伸びてきたら、アサガオを支柱やネットに誘引します。 緑のカーテンを作りたい場合には、本葉が5~7枚程度になったら摘心(先端の芽を摘む)して腋芽を出させ、枝数を増やしてネットに這わせていきます。 アサガオの蔓は左側へ向く習性があるので、蔓を誘引するときには「左へ」を意識して巻きつけてあげます。 水やりのタイミング 鉢植えの場合は、基本的に「鉢土が乾いたら鉢底から流れ出るくらいにたっぷりと」水やりを。時間帯は、日が高くなる前の朝~午前のうちに済ませます。ただし気温や環境によって、朝に水やりをしたのに、昼にはカラカラになっているときがあります。そのようなときには、日が傾きだした頃にもういちど水やりしましょう。 苗を露地植えにした場合は定植時にたっぷりと、その後は根が活着するまで葉がしおれないように水やりします。根付いた後は、晴天が長く続くなど極端に乾燥しない限り、あまり水やりの必要はありません。土がパサパサで明らかに乾燥しているときには、地中まで染み渡るようにたっぷり水やりをしましょう。 ※カンカン照りの中に置いていたジョウロやホース内の水は予想以上に熱くなっている場合があります。水やりの前に、チェックするクセをつけておきましょう! 肥料の施し方 肥料には長くゆっくり効く「緩効性肥料」と、すぐに効く「速効性肥料」があります。また肥料の三大要素としてチッソ、リン酸、カリがあり、それぞれの効果により葉肥、実肥、根肥とも呼ばれます。市販の肥料にはこの要素の配分量が5:10:5のように数値で表記されているので、参考にするとよいでしょう。 一般的に草花に施す肥料は、リン酸分の多い配合になっています。また観葉植物のように茎葉を茂らせるにはチッソ分の多い肥料を選びます。 アサガオの苗の植え付け前には「緩効性肥料」を施しますが、次々に花を咲かせる時期には栄養が必要になります。植え付け後3~4週間ほど経過したら、追肥としてリン酸分の数値の大きい「速効性肥料」を施します。 肥料は過剰に与えると、根が肥料焼けを起こす場合があります。注意書きをよく読み、液体肥料の場合には希釈倍率に注意して施すようにしてください。アサガオの場合は、1000倍に希釈した液肥を月に2~3回程度与えます。 置き肥の場合は株際に置くのではなく、根張りをイメージして展開した葉先の下辺りに半分くらい埋めるような形で置きます。 花が咲いたら… アサガオの花は、「一日花(開花して一日で終わってしまう花)」です。花を楽しめる時間が限られますが、その代わりに毎日次々と花を咲かせます。咲き終わった花は、子孫を残すために種を結びます。 それには多くのエネルギーを使うので、より長くアサガオの花を楽しみたいなら、少々面倒かもしれませんが、咲き終わった花がらをこまめに摘み取るようにしましょう。 剪定を行うときは、時期に注意しましょう アサガオの剪定には、脇芽を出させる「摘心」と、伸びすぎた蔓を整理する「切り戻し」があります。 摘心は、植え付け後の本葉が7枚くらいになったら頂芽を摘みます。 切り戻しは生育期間中、気がついたときに傷んだ茎や蔓を取り除くとともに、増えすぎた蔓があれば切って形を整えます。 また、開花期間中は、前述のように、咲き終わった花の花がら摘みを行ないます。 アサガオの増やし方が知りたい! アサガオは、種の採取、挿し木、接ぎ木で増やすことが可能です。アサガオの接ぎ木は同じイポメア属であるサツマイモの茎を使ってできますが、ちょっと技術が必要でしょう。いちばん簡単なのは開花後にタネを採ることですが、ノアサガオは不稔性(種ができにくい性質)なので挿し木で増やします。 挿し木(挿し芽)の時期と方法 アサガオの挿し木は、6月頃が適期です。元気な茎葉を挿し穂として切り、大きい葉は蒸散を防ぐため半分くらいに切っておきます。挿し穂は小1時間ほど水あげをしてから、湿らせたバーミキュライトなど肥料分のない用土に挿し、土が乾燥しないように注意して管理します。茎葉が萎れずにしゃっきりした状態を保っていれば、やがて新しい葉が出てきます。ここまでくれば、無事に発根しているはずです。苗として鉢上げをして、育てていきましょう。 毎日の観察が、病気や害虫を防ぐコツです アサガオの病害としては、葉に斑点が現れる「斑紋病」や白い粉が吹いたようになる「うどんこ病」、ウィルス性の「モザイク病」などがあります。斑紋病やうどんこ病は薬剤で防除しますが、モザイク病の場合は罹患した株ごと処分するしかありません。 アサガオの虫害としては、夏のベランダ栽培など高温で乾燥した状態が続くと、ホコリダニやハダニが発生することがあります。その場合には、葉裏に強めのシャワーで葉水をしましょう。アブラムシは見つけ次第こそげ落とす、ヨトウムシは捕殺します。毎日の観察が、被害を広げないコツです。 アサガオと相性のいい寄せ植え植物 蔓が長く伸びて側にあるものに絡みついていく性質のアサガオは、寄せ植えの花材としては少し扱いにくいかもしれません。チャレンジしやすいのは、大きめの鉢に花色や姿の異なるアサガオ2種を植える寄せ植えです。行灯仕立てにしてもよいですし、洋風のオベリスクに絡ませても面白いでしょう。 蔓が伸びにくいアサガオや枝垂れるタイプのアサガオもありますので、そういった品種のアサガオと一緒に、同じように日光を好む植物を組み合わせて寄せ植えを楽しむことができます。 アサガオ、こんなときはどうする…? 「花付きの鉢植えを買った」 朝顔市などで買った花付きの鉢、できれば長く楽しみたいですよね。基本的な管理方法はこれまで述べたとおりですが、もし買ってきた鉢植えの底穴から根がはみ出して見えるような場合は、そのままでは根詰まりを起こす可能性があるので、ひと回り大きい鉢に植え替える「鉢増し」をしてあげるとよいでしょう。植え替えの際には、苗の植え付け同様に根鉢を崩さないようにします。 「蔓が伸び葉は茂るのに、アサガオの花が咲かない」 生育期に肥料過多だった、特にチッソ分が多かった場合、葉ばかりが茂ってしまうことがあります。また、アサガオは短日植物なので、夏至を過ぎて日が短くなると花芽ができる性質です。そのため、人工照明であっても夜間明るい場所では花芽が形成されず、いつまでたっても花が咲かない状態になります。
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育て方

ユリを増やしたい! 最適な時期と方法、注意点を知っておきましょう
ユリを育てる前に知っておきたいこと ユリは秋植えの球根植物で、北アメリカやヨーロッパ、アジアに約100種が自生し、日本にはそのうちの15種ほどがあります。ユリの歴史は古く、紀元前の遺跡にユリが描かれていたり、日本では古事記や日本書紀に登場したりしています。欧米では聖書や宗教画のなかにも、ユリが登場。キリスト教では「マドンナリリー」と呼ばれる白いユリが、聖母マリアの象徴として描かれています。 可憐なものからゴージャスなものまで、ユリにはさまざまな花色、花姿があります。さらに芳香をもつ品種もあり、庭に、そして切り花にと人気のある植物です。 ユリの基本データ学名:Lilium科名:ユリ科属名:ユリ属原産地:北半球の温帯地域和名:百合(ユリ)英名:Lily開花期: 5~8月(品種により異なる)花色:赤、ピンク、黄、オレンジ、白、緑、複色生育適温:5~25℃前後切り花の出回り時期:オールシーズン花もち:7~15日 ユリを育てるなら、秋、10~11月頃が球根植えつけの適期になります。また、春~初夏にポット苗の形で出回る品種もありますから、それらを植え付けて育てることができます。 植物を増やすには、いくつかの方法があります ユリの増やし方の前に、植物はどのようにして増やすことができるのか、その方法について知っておきましょう。 一般的な植物の増やし方は、「種子繁殖」と「栄養繁殖」とに大別できます。 「種子繁殖」とは、その名のとおり種による繁殖方法です。 一方の「栄養繁殖」には、以下のような方法があります。 挿し木葉、茎、根など植物体の一部を切り取って、用土や水に挿して発根させ、新たな個体を得る手法。 株分け親となる植物を根とともに分けて、複数の株を得ること。いちどに得られる株数は少ないが、大株になったものや老化した株の更新にも用いられる手法。 接ぎ木植物体の一部を、台木となる別の植物に接合して生育させる方法。病害に強い丈夫な個体を得るために、バラのほかトマトやキュウリ、ナスなどの果菜類にもよく用いられます。 取り木親となる植物の一部に傷をつけて、発根させた後に親株から切り離して新たな個体を得ること。挿し木でうまくいかない植物でも増やすことができ、観葉植物や樹木などで多く用いられます。 球根葉や茎、根が変化した部分に養分を蓄えたもの。変化した器官により、鱗茎、球茎、塊茎、根茎、塊根と分類されます。 このほかに、ムカゴや木子(きご)といった形で増える植物もあります。また家庭の園芸で行なうことはまずありませんが、「組織培養」という手法で、人為的に増やす方法があります。 球根は形態によって、5つに分類されます ユリは、球根植物に分類されます。ここでは、球根について、もう少し詳しく見てみましょう。球根は、茎や葉、根の一部などが肥大して、その内部に養分を蓄えていることが特徴です。肥大する部分によって、次の5つに分類されます。 葉が変化したもの 鱗茎(りんけい)短縮化した茎の周囲に、養分を蓄えて厚くなった鱗片葉が層状に重なって球形を成しているもの。さらに、ふたつに分けられます。「有皮鱗茎(層状鱗茎)」鱗茎のうち、薄皮に包まれているもの。⇒チューリップ、ヒヤシンス、タマネギなど「無皮鱗茎(鱗状鱗茎)」鱗茎のうち、薄皮のないもの。⇒ユリ、フリチラリアなど 茎が変化したもの 球茎(きゅうけい)地下茎の一種で、茎が養分を蓄えて球形に肥大したもので、薄皮に包まれています。⇒グラジオラス、クロッカス、クワイ、サトイモなど 塊茎(かいけい)地下茎の一種で、茎が養分を蓄えて肥大し、塊状になったもの。薄皮はありません。⇒アネモネ、カラー、シクラメン、ジャガイモ、球根ベゴニアなど 根茎(こんけい)横に這った地下茎が肥大化し、節から芽や根を出すもの。⇒タケ、ハス、フキカンナ、スズラン、ジャーマンアイリス、ハスなど 根が変化したもの 塊根(かいこん)根が養分を蓄えて肥大化したもの。⇒ダリア、ラナンキュラス、サツマイモなど ユリを増やす、最適な方法と時期 前項で述べたように、ユリは球根のなかでも「無皮鱗茎」に分類されます。秋に植えつけたユリの球根は、土中で栄養を蓄え、内部で新しい鱗片ができて球根が肥大していきます。この肥大した球根を分球したり、球根の鱗片を剥がして用土に挿す(鱗片挿し)ことで増やすことができます。 また、花後の種を採取してまいたり、品種によってムカゴや木子(きご)ができるものは、それらを採取してまくことでも増やすことができます。ただし、このような増やし方では、ほとんどの場合、開花まで数年を要しますので、球根の分球によって増やすのが一般的です。種まきから1年以内で開花するシンテッポウユリのように、一部例外もあります。 球根掘り上げの適期 鉢植えの場合、ユリの球根の掘り上げは、花後に茎葉が黄変し始めた、6月下旬~7月頃の晴れた日が適しています。 地植えの場合は、数年間植えっぱなしで構いません。 知りたい! ユリの増やし方「球根の掘り上げ」 ユリを増やすには、花後の球根を肥大させる必要があります。そのため、花が終わったら、葉と茎はそのまま残し、種ができる子房(花のあったところ)を手で摘み取ります。この作業をすることにより、種を作ろうとするエネルギーを球根に蓄えることができるのです。 この後、葉が黄色く変色するまでは、通常どおり水やりを行います。葉が枯れ出したら、その葉は取り除いて構いません。 植え場所の都合などにより、ユリの球根を掘り上げる場合も、葉が黄色く変色して枯れ始めてから行います。 準備するもの ・シャベル *掘り上げ後に保存しておく場合・ポリ袋(数か所、空気穴を開けておく)・バーミキュライト(オガクズ、ピートモスでもOK) 掘り上げの際は、鉢植えの場合は移植ゴテでも構いません。地植えの場合は、球根を傷めないよう大きく掘るため、穴掘り用のシャベルを使うほうがよいでしょう。 球根の掘り上げ手順 ①葉が黄色く枯れたユリの球根を、傷つけないように掘り起こします②球根の上部で茎を切り、球根についた土を落とします③分けられるだけ大きく肥大した球根は、分球します 掘り上げたユリの球根は、乾かしてしまわないように、できるだけ早く植えつけをします。 球根の保存 前述したように、ユリの球根には皮がないので、保存する場合は球根を乾燥させてしまわないように留意する必要があります。市販の球根が「おがくず」などに入った状態で売られているのは、このためです。家庭でも同様に、ポリ袋に軽く湿らせたバーミキュライトやピートモスなどを入れ、それに球根を埋めるような形で保存します。保存のポリ袋には、空気穴を開けておきましょう。空いている鉢に、同様にして埋めておく方法もあります。いずれも、球根が乾ききらないようにして、適期内に植えつけをします。 コツと注意点 ユリは秋植え球根ですが、有皮鱗茎であるスイセンやチューリップのように乾かして保存することができないので、扱いに注意が必要です。 球根を乾かしてしまわないことと、大切な根を傷めないようにしましょう。 また、これは必ずしも必要な作業ではありませんが、自家で掘り上げた球根を再度植えつけたい場合、球根の消毒をすると球根腐敗病の防除に役立ちます。方法は、掘り上げた球根をベンレート水和剤、もしくはオーソサイド水和剤やホーマイ水和剤などの殺菌剤を添付の使用説明書に従って水で薄め、そこにネット袋に入れた状態の球根を3 0分ほど浸け込みます。その後、陰干しをしてから植えつけます。この作業は、市販の球根では必要ありません。 ユリの種まき、その他の増やし方について ここまで球根の分球による、ユリの増やし方について述べてきましたが、「ユリを増やす、最適な方法と時期」で述べたように、鱗片挿しや種まき、ムカゴ、木子でも増やすことができます。 最後にこれらの増やし方について、簡単に紹介しましょう。 鱗片挿し ほとんどのユリで行える増やし方です。開花に至るまで3年ほどかかりますが、いちどにたくさん増やすことができます。 鱗片挿しの適温は20~25℃くらいといわれています。適期は秋、9月~10月頃です。掘り上げた球根を使用する場合は、よく洗って土を落とし、できれば消毒をしておきます。球根の外側から鱗片を1枚ずつ剥がし、それを鉢に入れ、湿らせておいた川砂やバーミキュライトなどに、下半分くらいを埋める形で挿します。 半日陰に置き、鉢土の表面が乾いたら水やりをして管理します。 およそ2か月で、挿した鱗片の根元にごく小さな球根ができます。葉が数枚になったら、植え替えます。 種まき ユリもほかの植物同様に、開花後の花がら摘みを行わないと種をつけます。その種をまいて増やすことができます。ユリの場合は、シンテッポウユリ、リーガルリリー、ヒメユリなど、種まきから開花までの期間が短い品種で行うことが多いです。 種の発芽適温は20℃前後で、秋まき、春まきができます。 ムカゴ、木子 オニユリなど、ムカゴ(葉の付け根にできる球状の芽。零余子、珠芽)や、木子(地中の茎の節にある芽が肥大したもの)ができるユリでは、それらを種と同じ要領で、まくことで増やすことができます。開花までは、数年を要します。
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育て方

セージの育て方。コツとお手入れ、植え替えや寄せ植えを一挙紹介します
セージを育てる前に知っておきたいこと セージは「ヤクヨウサルビア」の名前からもわかるように、花壇などでよく見かける園芸植物のサルビアの仲間です。古くから民間療法に使われてきたコモンセージのほか、さまざまな園芸品種があります。 セージの基本データ学名:Salvia officinalis科名:シソ科属名:サルビア(アキギリ)属原産地:地中海沿岸地方など和名:薬用サルビア(ヤクヨウサルビア)英名:Common Sage開花期:5月~7月花色:ピンク、白、青、紫など発芽適温:20℃前後生育適温:20℃前後 セージを種から育てるなら、春4~5月頃か、秋9~10月頃が適期です。春と秋のガーデニングシーズンにはポット苗もよく出回っていますので、園芸ビギナーの方なら苗から育て始めると良いでしょう。伸びた枝は料理やハーブティーのほか、クラフト材料にも使えます。 種類を知ると、選び方がわかります ハーブとしてのセージは、一般的に「コモンセージ」のことを指します。この園芸品種として、以下のような種類があり、コモンセージ同様に利用できます。 ゴールデンセージ(S. officinalis 'Icterina')名前のとおり、黄色みのある明るい葉色のセージ トリカラーセージ(S. officinalis 'Tricolor')緑に白と赤紫の斑が入った葉が特徴のセージ パープルセージ(S. officinalis 'Purpurascens')赤紫の葉色が特徴のセージ 以下は、主に観賞用とされるセージの園芸品種です。中南米やヨーロッパ南部原産で、半耐寒性(-5℃くらいまで)のものが多く、寒冷地では冬の対策が必要です。 チェリーセージ(S. microphylla)無農薬ならエディブルフラワーになります。 ペインテッドセージ(S. virdis サルビア・ホルミナム)ドライフラワーとして利用するといいでしょう。 ボッグセージ(S. uligionsa) メキシカンブッシュセージ(S. leucantha)ドライフラワーやポプリにして楽しみます。 メドーセージ(S. pratensis、サルビア・プラテンシス)サルビア・ガラニチカ(S. guaranitica、メドーセージの名で流通) ローズリーフセージ(S. involcurata) 以下はハーブとして利用できるサルビアの仲間です。 クラリーセージ(別名・オニサルビア、S. sclarea)強い芳香を持ち、精油が採れます。 パイナップルセージ(S. elegans)料理の香りづけや、ポプリによく使われます。 スパニッシュセージ(ホソバサルビア、S. lavandulaefolia)料理やティーにおすすめです。 グリークセージ(S. fruticosa)コモンセージに似ています。 いずれも鉢植え、地植えどちらでも楽しめます。種袋や苗についているラベルを参考に、植え場所や生長後の姿をイメージしながら、好みのセージを選びましょう。 セージを育てるときに必要な準備は? セージは鉢植えでも、地面に直接植える地植えでも育てることができます。育てるときは、以下のものを用意しましょう。 準備するもの(鉢植え、地植え共通)・セージの苗または種 *鉢植えの場合は、下記のものも用意・鉢またはプランター・培養土・鉢底ネット・鉢底石(無くても可) なお、セージは日なたを好みますので、植え場所や鉢の置き場所も考慮しておきましょう。 適した土作りが、育てるコツの第一歩 セージは水はけ、水もちのよい土に植えます。また酸性が強い土や過湿を嫌うので、その点を考慮した土を使うのが望ましいでしょう。 鉢植えの場合は、市販のハーブ用培養土、もしくは草花用培養土で問題ありません。しかし、製品によりセージに対しては水はけが悪いこともあります。そういったときは、砂やパーライトを足すことで改善されます。 自分で単用土をブレンドして作る場合には、赤玉土と腐葉土、パーライトを6:3:1の割合で混ぜます。 地植えの場合には、あらかじめ植え場所に、堆肥や腐葉土をすき込んで耕しておきます。水はけが悪いときは、川砂も加えて水はけをよくしてください。 また、酸性土の中和のために、苦土石灰を施したり、用土に籾殻くん炭や草木灰を混ぜたりするのも有効です。 いずれの場合も、あらかじめ元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。 セージの育て方にはポイントがあります セージの育て方には、市販の苗を購入して育てる方法と、種から育てる方法があります。植物栽培に慣れていない方、セージを育てるのが初めて…という方は、苗から育て始めると失敗が少ないでしょう。 セージの育て方~苗から始める~ 苗の選び方 セージの苗は、園芸店やホームセンターの園芸コーナー、ネット通販などで入手することができます。前述のセージの種類や、それぞれの苗についている、開花イメージの写真ラベルなどを参考にして選んでみましょう。 売り場には同じ品種でもたくさんの苗がトレイに並んでいると思いますが、苗にも良し悪しがあります。虫がついている、白いカビのようなものがついている…といった苗はいわずもがなですが、周囲の他の苗と比べて葉色が悪かったり、萎れているような苗は避けましょう。 また、ヒョロヒョロと背丈だけが伸びて茎が弱々しいもの、葉と葉の間が間延びしているものは「徒長」といい、日照や栄養状態に問題があったことを示します。こういった苗も避けたほうがよいですね。 よい苗は、株元がクラクラすることなくしっかり根が張り、ズングリガッシリしていますから、なるべく、そういった苗を選ぶようにしましょう。 購入後は、後述の「セージと仲よくなる、日々のお手入れ」と同様に管理します。 セージの育て方~種から始める~ 種まき時期 セージの種は、気温20℃前後が発芽しやすい(発芽適温)ので、種まきの適期は春3~4月頃、または9~10月頃になります。 発芽のコツ セージの種は、種まきから2週間ほどで発芽します。他の植物に比べ、芽が出てくる割合(発芽率)が低めなので、それを念頭においてください。種を多めにまく、発芽に適した温度と湿度を維持するといったことが、発芽しやすくさせるコツになります。 種まき方法 セージの種は、一旦ポリポットや育苗箱に種まきしたあと、丈夫な苗を選別して植え場所に移植する「鉢まき、箱まき」にします。 セージの種は、ゴマ粒程度の大きさです。厚紙に種をのせてパラパラと「ばらまき」にするか、ピンセットでひと粒ずつ種をつまむ、あるいは湿らせた爪楊枝の先にひと粒ずつ吸いつけるようにして、まき床に「点まき」にします。発芽率が低いので、やや多めにまきます。 セージの種は、発芽の際に光が必要な「好光性(こうこうせい)」の種です。種をまいたあとに、あまり厚く土を被せてしまうと発芽しません。種まき後は、種の上に土をふりかけるように薄く覆土します。 芽が出るまでは、種が乾いてしまわないように管理します。発芽後、芽が混んでいるところは適宜間引きを行ない、本葉が3~4枚になったら植え替え(定植)します。 種まきから開花するようになるまでの時間はかかりますが、本来丈夫な性質ですので、定植後の手間はあまりかかりません。 立派に育てるための、植え替え時期と方法 鉢植えの場合は根が回りやすいので、根詰まりを防ぐためにも1~2年に1回、ひと回り大きい鉢に植え替え(鉢増し)をしてあげましょう。植え替えは春か秋が適期になりますが、特に春の新芽が伸びてくる頃は、その後の生育も盛んなのでベストな時期です。 セージと仲よくなる、日々のお手入れ 市販のセージの苗を入手した場合は、できるだけ早く定植場所に植えつけしましょう。水はけ、水もちのよい土が適しています。 日当たりの好きなセージも、盛夏の高温と強い日差しには弱い傾向があります。鉢植えの場合は強光を避けられる風通しのよいところに移動することができますが、地植えの場合はその点も考慮して、植え場所を決めましょう。 セージは、小さい苗のうちは摘心で枝数を増やし、まずは株を大きく育てるようにします。その後、枝が伸びてきたら随時切り戻しをしながら収穫ができます。 セージは基本的には丈夫な性質の植物ですが、高温多湿を嫌います。あまり枝葉が混み合っていると、蒸れてしまうことがあるので、梅雨時前など収穫も兼ねて混みあった部分の茎葉を切り取り、通風をよくしてあげましょう。 コモンセージは耐寒性がありますが、冬は雪や霜で葉が傷んでしまうので、降霜前に地上部を刈って霜よけをしておきます。半耐寒性のセージについては、寒冷地では鉢上げをして軒先で管理します。 なお、セージは、年数とともに株元から木質化してきます。株が老化する前に挿し木などで株の更新を図りましょう。 水やりのタイミング 鉢植えの場合は、基本的に「鉢土が乾いたら鉢底から流れ出るくらいにたっぷりと」水やりをします。時間帯は、日が高くなる前の朝~午前のうちに済ませます。 セージは過湿を嫌いますので、まだ鉢土が湿っているのにもかかわらず、ただ漫然と日課として水やりをすることのないように注意しましょう。 苗を地植えにした場合は、定植時にたっぷりと水やりします。苗が根づいたあとは、基本的に水やりの必要はありません。 ※カンカン照りの中に置いていたジョウロやホース内の水は、予想以上に熱くなっている場合があります。水やりの前に、チェックするクセをつけておきましょう! 肥料の施し方 セージは、苗の定植時に長くゆっくり効くタイプの「緩効性肥料」を施す程度で、あまり肥料を必要としない植物です。 鉢植えの場合は、植替えの都度、用土に緩効性肥料を加えておきます。 株を充実させたい、花つきをよくしたいときなど、追肥をする場合には、4~6月と9月頃に、月1回程度の割合で固形肥料を施します。置き肥をする場合は、株際に置くのではなく、根張りをイメージして、展開した葉先の下あたりに、半分くらい埋めるような形で置いてください。 肥料は過剰に与えると、根が肥料やけを起こす場合があります。肥料を与える際には、注意書きをよく読み、使用量を守って与えるようにしましよう。 剪定を行うときは、時期に注意しましょう セージの剪定には、脇芽を出させる「摘心」と、伸びすぎた茎を整理する「切り戻し」があります。 摘心は、定植後にしっかり根づいて茎が伸び始めたら先端を摘みます 切り戻しは生育期間中、気がついた時に傷んだ茎を取り除くとともに、葉が繁って混み合っている部分を透かすように切って風通しをよくします。 また、開花期間中は、咲き終わった花の花がら摘みを兼ねて、花穂ごと切り戻しを行ないます。 セージの増やし方が知りたい! セージは、種の採取と挿し木で増やすことが可能です。 挿し木(挿し芽)の時期と方法 セージの挿し木は春4~5月頃か、秋9~10月頃が適期です。若い元気な茎を先端から10㎝ほど挿し穂として切り取ります。大きい葉は蒸散を防ぐため半分に切り、土に埋もれる部分の葉は取り除いておきます。 挿し穂は小1時間ほど水あげをしてから、湿らせた赤玉土やバーミキュライトなど肥料分のない用土に挿し、土が乾燥しないように注意して管理します。3週間ほどで根が出るので、根を傷めないように鉢上げをして、育てていきましょう。 種の採取と保存方法 セージも他の植物のように、花が終わったあとに種を結びます。それを採取して次の種まきで増やすことができます。 セージはひとつひとつの花が小さく、気づかないうちに種がこぼれてしまっていることがあります。確実に種を採りたい場合は、花がしぼみきる前に花穂ごと不織布やネット袋などで包んでおくか、種が熟す直前に花穂ごと切り取って、乾燥させるとよいでしょう。 毎日の観察が、病気や害虫を防ぐコツです セージは丈夫な性質で、あまり病虫害は出ませんが、繁りすぎて風通しが悪いような場合、葉に白い粉が吹いたようになる「うどんこ病」になることがあります。 また、高温期に、葉裏から栄養を吸汁するハダニの虫害が出ることがあります。。 セージはハーブとして料理にも使いますから、できれば薬品を使わずに対処したいですよね。方法としては、うどんこ病対策には病気の出た枝葉は切り取って処分するとともに、繁りすぎた枝を切って風通しをよくします。ハダニには、葉裏に霧吹きなどで散水(シリンジ)をします。 病虫による害は、いずれも毎日の観察が被害を広げさせないコツになります。 セージと相性のいい寄せ植え植物 セージは、株が小さいうちであれば寄せ植えの花材としても使えます。寄せ植えにするポイントとしては、似たような環境を好む植物と組み合わせることです。セージの場合は、日なたで風通しがよく、やや乾燥気味の場所を好む植物になります。 同じように料理などに使えるタイムやローズマリー、ラベンダーといったハーブと一緒に植えて、キッチンハーブのひと鉢を作ってみても、おもしろいですね。ですが、いずれも繁りすぎる前に、単独の鉢で育てたほうが、その後の生育にはよいでしょう。 また、セージをハーブとしてではなく、カラーリーフの植物として捉えると、寄せ植えやハンギングバスケットの花材として幅広く使うことができます。 香りよいセージの収穫と利用法 セージの収穫は、香りの高い朝のうちに収穫するのがおすすめです。収穫したセージは、フレッシュのままハーブティーにしたり、肉の臭み消しや、肉・魚料理の風味づけにしたりすることができます。また、リースなどのクラフト素材としても利用できます。 たくさん収穫できた場合は、乾燥させて保存瓶に入れておけば、ドライハーブとしていつでも使うことができます。 ※セージには健胃整腸、抗菌、抗酸化作用のほか、女性ホルモンに働きかける作用など、さまざまな薬効があります。一方、妊娠中の方の飲用には注意が必要です。また、体質によりアレルギー反応を起こす場合がありますので、ご注意ください。



















