スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!
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スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!
3and gardenの記事
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育て方

春に行うバラ栽培の作業 不要な芽を除く「芽かき」とは
「芽かき」とは 芽かきとは、バラの新芽が成長する頃に、不要な芽を取り除く作業のこと。対象となるバラは、大きくなった成株のみです。芽かきは、新芽を吹いた後、葉を数枚展開させた頃に行います。ある程度芽が成長するのを待って、勢いのある芽を選別して残します。芽かきの作業は、バラ栽培において必須なものではありません。必要であれば行いますが、芽かきにはメリットとともにデメリットもありますので、バラの様子を見ながら判断しましょう。まだ小さな株は、芽を減らすことなく成長させ、株の体力を養いましょう。 左は芽かきの前。右は芽かき後。 芽かきによる主なメリットは、病気の発生の抑制です。バラの枝、特に株内部の枝や下のほうの枝には、花をつけず、葉も数枚出しただけで止まってしまうものがあります。これらの枝にも、もちろん光合成をして養分をつくり出す、という役割がありますが、一方で病気の発生源になりやすいというマイナス面もあります。思いきって不要な脇芽を整理すれば、株内部の蒸れが解消し、さらに枝を透かすことで株全体への薬剤散布もしやすくなり、病気の発生を抑制することができます。 芽かきにより、伸び始めた新芽を摘み取って枝の数を減らすことは、バラにとっては負担となりますが、十分に生育した株の場合は、芽かきによるデメリットよりも、株全体に大きなダメージを与える黒星病が発生してしまうリスクのほうが大きいため、芽かきをします。一方、十分に生育していない株の場合、メリットよりもデメリットのほうが大きくなるので、芽かきはしないほうが無難です。また、育てているバラの数が多い場合には、全ての株の芽かきをすることは大変なので、あくまでも手が回ったら行う作業としてとらえておくとよいでしょう。 それではバラの芽かきの方法を、写真とともに見ていきましょう。ここでは生育のよい、3年目の‘レオニダス’を例に解説します。 芽かきの手順 芽かき前の‘レオニダス’。新芽が展開し、内部が少し混み始めている。芽によっては小さなつぼみもついている。‘レオニダス’はもともと切り花品種のため、耐病性が低く黒星病に弱い。 芽かきは、春に新芽が伸び始めてから。葉を数枚展開させた後に、勢いがよく花芽の付いた新芽を残すようにします。芽が小さいほうが株の体力を奪いませんが、勢いのある芽を選別するために、ある程度成長させてから作業しましょう。 芽かきを行う芽。葉が数枚展開しているほうが、芽の選別がやりやすい。 芽かきの際は、花芽が付いておらず、他に比べて勢いのない芽を手で摘みます。特に、株内部は枝が混みやすいため、内部の不要な芽を摘み取るようにします。摘み取る際には、付け根の部分からしっかり取り除きましょう。一方、勢いよく伸び、花芽が付いたものは摘まずに残します。 一枝分の芽かきが終了。株内部の芽を整理し、風通しよく育てる。 芽かきで取り除いた新芽。写真のような一株でこの程度の量の芽を整理し、あまり摘みすぎないように気を付ける。 芽かきの際は、あまり勢いよく摘みすぎないように注意しましょう。一度摘んでしまった芽は元に戻せないため、必要最低限だけ整理し、できるだけ慎重に作業します。 芽かき終了後の‘レオニダス’。必要な分だけ取り除いたため、一見大きな変化はないが、株の内部が少しすっきり。
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宿根草・多年草

独特の風味を持つミョウガの栽培! 初心者でも育てやすい香味野菜
まずはミョウガの基本情報! 家庭栽培で人気がある理由は? ミョウガはショウガ科ショウガ属(ジンギベール属)の多年草です。原産地は日本を含む東アジア。10世紀にまとめられた『本草和名』にも登場するほど、古くから身近にあった植物です。日本の気候を好み、放任してもよく育ちます。 畑で栽培する野菜は短期間で枯死する一年草が多いなか、ミョウガは多年草のため数年は植えたままにしてよく、毎年収穫できるのが特徴。冬は地上部を枯らして地下茎の状態で休眠し、冬を越して春を迎えると再び新芽を出し始めます。 食用にする部分は花蕾(からい)で、その名の通り開花する前のつぼみです。開くと食感が劣ってしまうので、地上にわずかに顔を出した硬い状態で収穫します。独特の香りとやや苦味があり、香味野菜として重宝するので、庭の片隅で育てるのもおすすめです。 日当たりの悪い場所でも栽培できるミョウガ! 適切な栽培環境は? ミョウガは半日陰の環境を好むため、光が届きにくい庭の片隅や北側地などでも栽培することができます。水はけ・水もちがよく、やや粘土質の湿潤な土壌を好むのが特徴。生育適温は20〜25℃くらいです。乾燥すると株が弱るので、水切れには注意してください。栽培の際には表土を敷きワラで覆って、乾燥を防ぐのがポイントです。 地植えでもプランターでも栽培できる! 用意するものと土づくり 【菜園】 植え付ける場所に畝幅を約60cm取り、園芸用支柱や割りばしなどで畝幅の目印を四隅に立てておきます。畝の長さは、環境や作りたいミョウガの量に合わせて決めてかまいません。 植え付けの2〜3週間以上前に、苦土石灰を1㎡当たり約100g散布し、よく耕して土に混ぜ込んでおきます。耕している際に、小石や木片などの異物が見つかったら取り除き、全体にふかふかとした土壌づくりを目指します。植え付けの1〜2週間前に、畝幅の中央に約20cmの深さの溝を掘り、1㎡当たり堆肥約2kg、緩効性化成肥料(N-P-K=8-8-8)約100gを溝全体に均一にまき、土を戻しておきます。さらに高さ10cmほどの畝を作り、地表を平らにならしておきましょう。土づくりの後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。 【プランター栽培】 ミョウガは数年にわたって栽培することになるので、丈夫な材質のプランターを用意しましょう。地下茎が成長するスペースを保てるように、大型で深めのサイズを準備してください。 用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから市販の野菜用にブレンドされた培養土を入れます。土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、水やりの際にすぐに水があふれ出さないように、ウォータースペースを取るとよいでしょう。 ミョウガは球根または苗を植え付ける! 苗の選び方と植え付け ミョウガの植え付けは2通りあります。根株(地下茎)または、地上部に茎葉が展開しているポット苗のどちらかを植え付けることからスタートしましょう。 根株の植え付け 根株の植え付け適期は3月下旬〜4月中旬です。根株を購入する際は、太くて充実したものを選びましょう。 【菜園】 1〜2週間前に土づくりしておいた畝が少しくずれていたら、幅60〜70cm、高さ約10cmになるようにもう一度クワを入れて調整し、表土を平らにしておいてください。 畝幅の中央に深さ約10cmの植え溝を掘り、根株を約30cm間隔で入れて土を戻し、平らにならします。最後に、たっぷりと水を与えておきましょう。芽が出たら、ワラを株の周囲に敷いて乾燥を防ぎます。 【プランター栽培】 培養土を入れておいたプランターに深さ5cmほどの植え溝を掘り、根株を2〜3株等間隔で入れ、埋め戻して平らにならします。最後に、たっぷりと水を与えましょう。芽が出たら、ワラを株の周囲に敷いて乾燥を防ぎます。 ポット苗の植え付け ポット苗の植え付け適期は、5月頃です。節間が短く、がっしりと締まって勢いがある苗を選びましょう。 【菜園】 1〜2週間前に土づくりしておいた畝が少しくずれていたら、幅60〜70cm、高さ約10cmになるようにもう一度クワを入れて調整し、表土を平らにしておいてください。 畝幅の中央に約30cm間隔で植え穴を掘り、ポット苗を植え付けていきます。たっぷりと水を与え、ワラを株の周囲に敷いて乾燥を防ぎましょう。 【プランター栽培】 培養土を入れておいたプランターに深さ5cmほどの植え穴を掘り、等間隔を取って苗の根鉢をくずさず2〜3株植え付けます。最後にたっぷりと水を与え、ワラを株の周囲に敷いて乾燥を防ぎましょう。 ミョウガを上手に育てるための水やり 【菜園】 根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、ミョウガは乾燥するとつぼみがつかず、収穫量が落ちるので、乾燥する時期は水やりをして補います。 【プランター栽培】 日頃の水やりを忘れずに管理します。ミョウガは乾燥を嫌うので、水切れしないようにすることが大切です。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。ミョウガは冬は地上部を枯らして休眠していますが、カラカラに乾かさないように、適宜水やりを続けてください。 ミョウガを充実させる追肥の与え方 【菜園】 植え付けから2カ月後を目安に、緩効性化成肥料を1㎡当たり30g程度株の周囲にばらまき、軽く耕して株元に寄せておきます。 【プランター栽培】 ミョウガの葉が立ち上がってよく茂った頃に、緩効性化成肥料を株の周囲にまき、土によく馴染ませます。 ミョウガ栽培で気をつけたい病害虫 【病気】 ミョウガの栽培で発症しやすい病気は、根茎腐敗病です。 根茎腐敗病は、塊茎や根、幼い芽などが侵される病気です。ミョウガの場合は葉の下のほうから黄色くなってしおれてきます。病気が進むと葉の上部にまで症状が現れ、やがて枯死します。地際部がやわらかくなって腐り、倒れてしまうことも。根茎に感染すると褐色に変色し、病状が進むと根茎全体がやわらかくなって腐ってきます。地温が15〜20℃で感染しやすくなり、5月下旬以降に多く発生します。発病が見られたら、周囲に蔓延するのを防ぐために病株を抜き取り、土ごとビニール袋に入れて土壌とは離れた場所に運んで処分してください。発生を防ぐためには連作を避け、花苗店やホームセンターなどで販売されている無病の根株を入手することが大切です。 【害虫】 ミョウガの栽培で発生しやすい害虫は、アワノメイガ、ヨトウムシ、ナメクジなどです。 アワノメイガは、トウモロコシの大敵といわれますが、同様にミョウガにも発生しやすい害虫です。主に被害を与えるのは幼虫で、葉裏に産みつけられた卵から孵化した後、新葉を食害します。葉がかすり状になっていたら、被害が疑われるので入念にチェックして捕殺してください。ここで駆除できないと、茎内に侵入して食い荒らし、枯らしてしまいます。 ヨトウムシは、蛾の幼虫で、夜に活動して葉を食い荒らします。食欲旺盛で、一晩のうちに丸裸にされてしまうことも。葉の裏に卵が産み付けられるので、孵化直後の幼齢のうちに退治するのがポイントです。 ナメクジは花やつぼみ、新芽、新葉、果実などを食害します。体長は40〜50mmほどで、頭にツノが2つあり、茶色でぬらぬらとした粘液に覆われているのが特徴。昼間は鉢底や落ち葉の底などに潜んで姿を現しませんが、夜に活動します。ミョウガが好む半日陰で湿気の多い場所はナメクジも大好きな環境です。食害していなくても、収穫するつぼみに不快な粘液がついていたら、食べる気がしなくなりますよね。ナメクジが出没している疑いがある場合は、夜にパトロールして捕殺してください。不可能な場合は、ナメクジを誘引して駆除するタイプの薬剤を利用して防除してもよいでしょう。 株が込み合ってきたら間引こう 【菜園】 植え付けから数年経って、株まわりが込み合ってきたら、込んでいる部分の株を間引いて風通しよく管理します。 【プランター栽培】 株が込み合ってきたら、葉が開ききった茎を地際で切り取り、風通しをよくします。 8月頃には収穫! 2年目以降は、もう少し早い時期から収穫可能 【菜園・プランター栽培ともに】 茎の根元から花のつぼみが出たのち、赤くなってきたら、若いうちに折り取って収穫します。花が咲いてしまうと、やわらかくなって食感が悪くなるので、取り遅れに注意しましょう。 植え付けた1年目は、8〜9月頃に収穫できるようになりますが、2年目以降は株が充実してくるので、もう少し早めの7月頃から収穫が可能になります。また、1年目は株がまだ充実していないために収穫ができないこともあるので、気長に見守って2年目以降に期待してください。 たくさん採れたときは? ミョウガの保存方法 【冷蔵する】 収穫したつぼみを水洗いし、水分をよく拭き取ります。ペーパータオルなどにミョウガを2〜3個ずつ包み、密閉できる保存袋に入れて冷蔵庫へ。1週間〜10日ほど保存できます。または、水を浅く張った容器に収穫したミョウガの切り口を下にして並べ、冷蔵庫で保存してもOKです。 【冷凍する】 収穫したつぼみを水洗いし、水分をよく拭き取ります。ミョウガを1個ずつラップでくるみ、密閉できる保存袋に入れて冷凍庫に。利用する時は、凍ったままでOK。そのまま包丁で難なく切ることができます。 ミョウガの冬越しと翌年への備え ミョウガは多年草で、一度植え付ければ越年して何年も生き続ける、息の長い植物です。冬は地上部を枯らして根茎(球根)の状態で休眠して越冬し、翌春には再び芽を出して生育期に入ります。そこで、ミョウガの冬越しのためにひと手間かけてあげましょう。 【菜園・プランター栽培ともに】 晩秋になって茎葉が枯れてきたら、地上部を地際で刈り取ります。お礼肥として、菜園の場合は堆肥を1㎡当たり約2kgを目安にまきます。プランターの場合は、サイズに応じて適宜株の周囲にまいて土に馴染ませておきましょう。 3〜4年したら株分けと植え替えが必要 ミョウガの株分け・植え替えの適期は、新芽が動き出す少し前の2〜3月頃です。 【菜園】 ミョウガは、一度植え付ければ、春からの生育期と冬からの休眠期のライフサイクルを繰り返し、数年は植えたままにしてもかまいません。しかし、3〜4年も経つと株が大きく育って込み合い、風通しが悪くなってきます。同時に株の勢いも弱って老化してくるので、若返りを図るためにも株分けして増やすとよいでしょう。 株を掘り上げて数芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直します。それらの株が再び大きく成長し、若返って株の勢いがよくなります。 【プランター栽培】 ミョウガは球根植物の一種で、そのまま何年もプランターに植えたままにすると、根詰まりして株が弱ってしまいます。そのため、プランターで栽培する場合は2年に1度を目安に掘り上げて、植え替えることが大切です。新芽が動き出す前の早春に、根株を掘り上げてみましょう。大きく育っている場合、古い部分や余分な根を取り除き、昨年伸びたばかりと見られる新しくて太い根を残し、半分くらいのサイズに整理して植え直します。 薬味以外の味わい方! さまざまな料理にミョウガを使ってみよう そばやそうめんなどの薬味に利用されることが多いミョウガですが、味噌汁や吸い物、炒め物などに加えても香りのアクセントになってくれます。天ぷらにして塩をふってもよく、味噌をのせて焼くと酒の肴に好適。甘酢漬け、味噌漬け、ぬか漬け、佃煮にすると保存がきき、ごはんのお供になります。特に甘酢に漬けると赤く鮮やかに発色するので、見た目にも美しくおすすめです。 栽培方法を把握して家庭菜園にミョウガを取り入れてみよう! 昔から日本に自生してきた植物だけに、手をかけずともたくさんの収穫がのぞめるミョウガ。独特の香りは爽やかで、食欲がなくなる暑い時期など、そうめんやそばに添えると嬉しいですね。生命力旺盛で放任してもよく育つので、ビギナーにもおすすめ。日当たりの悪い庭の片隅などを有効利用して、ぜひミョウガを育ててみてはいかがでしょうか。 Credit 文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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アルケミラ・モリスってどんな植物? 育て方や楽しみ方を詳しくご紹介!
アルケミラ・モリスの基本情報 agatchen/Shutterstock.com アルケミラ・モリスは、バラ科ハゴロモグサ属(アルケミラ属)の多年草です。原産地はヨーロッパ東部〜小アジアで、寒さに強い性質です。草丈は30〜50cm、株幅は50〜80cmになります。開花期は5〜7月で、花色は黄色。落葉性のため、冬は葉を落として越年しますが、土中で休眠している期間なので、枯れたと判断して捨てないようにしてください。翌春には再び新芽を出して生育を始め、何年も生き続ける息の長い植物です。ただし、気候や環境によっては常緑のまま越冬することもあります。 アルケミラ・モリスの名前の由来や花言葉 faustasyan/Shutterstock.com アルケミラ・モリスの名前は、学名Alchemilla mollisをそのまま読んだものです。「Alchemilla」とは、アラビアでの呼び名の「Alkemelych」にちなんでいるとされています。諸説ありますが、錬金術という意味を持つ「alchemy」からきているそう。これはアルケミラ・モリスの葉に溜まったしずくは不思議な力を宿すと信じられ、錬金術に用いられていたことからと伝わっています。 また、英名は「レディースマントル」といい、葉の形からイメージして「聖母マリアのマント」という意味があるそうです。日本へはレディースマントルの名前でもたらされ、マントを訳して「羽衣」とし、「西洋羽衣草(セイヨウハゴロモソウ)」という和名がつきました。 花言葉は、「輝き」「献身的な愛」「初恋」などです。 アルケミラ・モリスの特徴 photoPOU/Shutterstock.com アルケミラ・モリスは、縁に細かな切れ込みが入る丸い葉を持っています。シルバーがかっても見える美しい葉には優しい雰囲気があり、細かなうぶ毛をもつのが特徴。このうぶ毛が水をはじくため、葉に水が落ちると細かなしずくをたたえ、みずみずしい姿を見せてくれます。初夏の開花期になると葉の間から花茎を長く伸ばし、先端で細かく枝分かれして星形の花を多数咲かせます。鮮やかな黄色の花がたっぷりと咲くので、周囲を明るく見せてくれるのも魅力です。 アルケミラ・モリスの種類 Gold Picture/Shutterstock.com アルケミラ・モリスは基本種が主に出回っていますが、人気の高い植物だけに、人の手によって育種された園芸品種もあります。切り花向けとして流通しているのは、草丈が高く大型になるタイプの‘アウスレーゼ’や‘ロブスタ’などです。一方で、草丈が20cmほどに低く抑えられ、コンパクトな草姿が魅力の‘エリスロポダ’もあります。葉の美しさに特化した品種は‘ブルガリス’で、葉の縁の切れ込みが深めに入り、カラーリーフプランツとしての魅力を発揮します。 ハーブとしても有名なアルケミラ・モリス fotoknips/Shutterstock.com アルケミラ・モリスは、西洋ではハーブの一種として古くから利用されてきました。葉を収穫してドライにし、熱湯を注いでハーブティーにしたり、抽出液を化粧水にしたりと、身近な存在となっています。ハーブとしての利用を目的に、アルケミラ・モリスを育ててみるのもいいですね。ただし、園芸用として販売されている品種の中には、薬用としての効果が薄いものもあるため、花苗店などでハーブ苗として販売されているものを選ぶとよいでしょう。 アルケミラ・モリスを上手に育てるポイント ここまで、アルケミラ・モリスの特徴や花言葉、種類など基本情報についてご紹介しました。では、ここからはガーデニングの実践編として、適した栽培環境や植え付け、水やりや施肥、手入れなど日頃の管理、増やし方など、育て方について詳しく解説していきます。 アルケミラ・モリスに適した栽培環境 Sergey V Kalyakin/Shutterstock.com アルケミラ・モリスは、寒さに強く、暑さに弱い性質を持っています。寒冷地であれば日当たりのよい場所で放任してもよく育ち、防寒対策の必要もありません。暑さにもある程度耐性がありますが、高温多湿の環境を嫌い、蒸れやすい場所では枯れ上がることがあるので、風通しのよい場所を選びましょう。暑さが厳しい地域では、午前中のみ日が差す東側や、一日中チラチラと木漏れ日が差すような涼しい半日陰の場所に植え付けるのが無難です。 アルケミラ・モリスに適した用土 funnyangel/Shutterstock.com 【地植え】 植え付けの2〜3週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕しておきます。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。 【鉢植え】 ハーブ用や山野草用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。 アルケミラ・モリスを植え付け・植え替えする時期と方法 OlegDoroshin/Shutterstock.com アルケミラ・モリスの植え付け・植え替え適期は、3〜5月か9〜11月です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。 【地植え】 土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。 庭で育てている場合、環境に合えば植え替える必要はありません。 【鉢植え】 鉢で栽培する場合は、7〜10号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてからハーブ用または山野草用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して軽く根鉢をくずし、鉢に仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。 鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。 アルケミラ・モリスの水やり Osetrik/Shutterstock.com 水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。 真夏に水やりする場合は、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。気温の高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がり、株が弱ってしまいます。 また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。 【地植え】 根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、アルケミラ・モリスは乾燥すると株が弱るので、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。 【鉢植え】 日頃の水やりを忘れずに管理します。アルケミラ・モリスは乾燥を嫌うので、水切れしないようにすることが大切です。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬に地上部が枯れても、カラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。 アルケミラ・モリスに必要な肥料 New Africa/Shutterstock.com 【地植え】 植え付け時に緩効性肥料を施してあれば、その年の追肥は暑さが落ち着いた9月下旬〜10月に、株の周囲に緩効性肥料をばらまいてよく耕すのみでOK。 越年して以降は、生育が旺盛になり始める少し前の3〜4月と、暑さが落ち着いた9月下旬〜10月の年に2回を目安に肥料を施します。 【鉢植え】 3〜4月と9月下旬〜10月に、緩効性肥料を鉢に均一にばらまいて土に馴染ませましょう。もしくは、この時期に液体肥料を2週間に1度を目安に与えてもかまいません。 アルケミラ・モリスに必要な手入れや作業 mihalec/Shutterstock.com 【花がら摘み】 アルケミラ・モリスは次々に花が咲くので、終わった花は摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。 【切り戻し】 開花後は暑くなって株が蒸れて弱ることがあるので、切り戻して風通しよく管理します。草丈の半分くらいまでを目安に短くカットして、込み合っている部分があればすかし剪定をしておくとよいでしょう。 【冬の刈り取り】 アルケミラ・モリスは、基本的に寒くなると落葉して越年します。枯れ葉などをいつまでも残しておくと、病害虫の越年場所となってしまうことがあるので、地上部が枯れたら枯れ葉や茎を刈り取っておくとよいでしょう。 アルケミラ・モリスを育てるうえで気をつけるべき病気と害虫 yod 67/Shutterstock.com アルケミラ・モリスは、病害虫の心配はほとんどありません。ただし、新芽やつぼみに毛虫がついて食害することがあります。虫が苦手で、ハーブとして利用する目的がない場合には、土中に混ぜ込んでおく粒剤タイプの薬剤を使用して防除するのも一案です。 アルケミラ・モリスの増やし方 Montana Isabella/Shutterstock.com アルケミラ・モリスは、種まきと株分けで増やすことができます。 【種まき】 種まきのメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなります。 アルケミラ・モリスの種まきの適期は4〜5月か9〜10月です。発芽率が低いので、直まきせずにセルトレイなどに多めに播いて育苗するとよいでしょう。種まき用のセルトレイにハーブ用または山野草用にブレンドされた市販の培養土を入れ、1穴当たり1〜2粒ずつ播きます。種が隠れる程度に土を薄くかけ、はす口をつけたジョウロで高い位置から優しい水流で水やりをしましょう。乾燥しないように管理し、過保護にせずに冬の寒さにあわせてください。発芽後は日当たりがよく、風通しのよい場所で管理します。本葉が2〜3枚出始めたら、黒ポットに植え替えて育苗しましょう。ポットに根が回ってしっかりした株に育ったら、植えたい場所に定植します。 【株分け】 アルケミラ・モリスの株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りを図ります。株分けの適期は4月か10月頃です。株を掘り上げて数芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直します。それらの株が再び大きく成長し、株が増えていくというわけです。 アルケミラ・モリスの楽しみ方 アルケミラ・モリスは、さまざまな楽しみ方ができる植物です。ここでは、アルケミラ・モリスを暮らしに取り入れる活用術についてご紹介します。 ガーデンでグラウンドカバーや寄せ植えに! J Need/Shutterstock.com アルケミラ・モリスは、もともとイングリッシュガーデンやロックガーデンなどで人気を集めてきた植物です。株幅が大きく、野趣感のある草姿を生かして、敷地が広ければ群植させてダイナミックな景色をつくってもいいでしょう。また、発色の美しい花を咲かせる主役の花の近くに植えると、脇役としての魅力も発揮します。地面の隙間を縫うように自然に増え広がる特性を生かし、グラウンドカバーとして利用するのもおすすめ。葉姿が美しいので、カラーリーフプランツとして利用することもできます。 切り花としてほかの花と組み合わせるのにも最適 Sarah Marchant/Shutterstock.com フォルムが美しくみずみずしい葉に、発色の美しい黄色い花がよく映えるので、切り花としてインテリアに飾るのもおすすめです。黄色い花は目立ちますが、一つひとつは小さい花なので主張しすぎず、他の植物を引き立てる役割を果たしてくれ、どんな花とも相性よくまとまります。 アルケミラ・モリスはドライフラワーにもできる! neroli/Shutterstock.com アルケミラ・モリスは、ドライフラワーにして楽しむこともできます。風通しがよく乾燥しやすい環境であれば、切り取った花を束ねて逆さに吊るし、1週間ほど置いて乾燥させます。草姿がナチュラルで美しいので、そのままガラスのフラワーベースに飾ったり、バスケットに飾ったりするのがおすすめ。リースやスワッグなどにアレンジしても素敵です。 ガーデンと暮らしの中でも楽しめるアルケミラ・モリス mizy/Shutterstock.com アルケミラ・モリスはガーデナーに大人気の植物。それもそのはず、楚々とした野趣味のある草姿が美しく、どんな植物とも相性よくまとまるうえ、切り花やドライフラワーとしてもアレンジでき、室内を豊かに彩ってくれます。そのうえ、ハーブとしても利用できる優秀な植物です。ぜひアルケミラ・モリスをガーデンに迎えてみてはいかがでしょうか。
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宿根草・多年草

ジャーマンアイリスとは? 基本情報から育て方のポイントまで徹底解説
ジャーマンアイリスとは? アイリスは、ヨーロッパから中近東にかけて分布するさまざまなアヤメの仲間(アイリス)を交配させてできた園芸品種グループ。Iris germanica(ドイツアヤメ)が交配の元となっているため、一般にジャーマンアイリスと呼ばれています。ヨーロッパで広く品種改良が行われた結果、黄土色や黒に近い紫色まで、まさにレインボーカラーともいえる絶妙な花色が生まれました。近年、ヨーロッパはもちろん、アメリカ西海岸での育種も盛ん。雨量が少なく、乾燥した地中海性気候を好み、高温多湿な日本の気候は少し苦手ですが、ポイントを押さえることで問題なく栽培できます。 ジャーマンアイリスの基本データ ジャーマンアイリスは、アヤメ科アヤメ属の多年草で、開花期は5~6月。耐寒性・耐暑性ともに強く、日本の環境であれば植えっぱなしで問題ありません。ただし多湿環境と酸性土壌を嫌うため、水はけのよい土に植え付けましょう。植え替えや株分けは春か秋に行います。 育種の歴史 アイリスの育種の歴史は古く、1800年代にはヨーロッパ周辺に自生していた多数のアイリス属を交配し、品種改良が始まっていたようです。中でもフランスのレモンという人は、多数の品種を作出・発表しています。しかしその頃のアイリスは、今のような大輪でフリルも豪華という花ではなかったようです。今に続く美しいアイリスの礎を築いたのは、ケンブリッジ大学の生理学者マイケル・フォスター卿でした。さらに品種改良が進み、膨大な品種数となったため、育種家のウィリアム・ダイクスがアイリス属の分類の基礎を確立。ダイクスはまた、大輪の黄花品種を世界で初めて作出したことから、その後創設された、最も優れた品種に贈られる賞に「ダイクスメダル」という名が冠せられ、後世に語り継がれています。ヨーロッパで始まったアイリスの品種改良の波ですが、今はその場をアメリカに移し、膨大な数のジャーマンアイリスが毎年作出されています。 ジャーマンアイリスの育て方 地植えでも鉢植えでも育てやすいジャーマンアイリスですが、ポイントを押さえることで早く株を充実させ、より多くの花を咲かせることができます。ここではジャーマンアイリスの栽培方法について解説します。 植え付け 植え付けの適期は、主に春と秋です。3月中、または9月下旬〜10月を目処に行いましょう。アイリスの根はショウガのような球根となっています。地植えの場合は、水はけをよくするために高畝を作るとよいでしょう。植え付け時は球根を横向きにし、半分くらいが土の上に出るように浅く植えます。よく成長するので、株と株の間は50cmほど間隔を空けましょう。また鉢植えの場合は7号以上の少し大きめの鉢を用意します。植え付ける際は鉢底部にゴロ土を敷き、水はけのよい用土を使いましょう。 水やり 地植えの場合、基本的には水やりの必要はありません。植え付け直後や土の乾燥が気になる場合にのみ与えてください。鉢植えの場合、植え付け直後や生育期の春は、土の表面が乾いたらしっかりと与えましょう。それ以外の時期は、土の表面が乾いた後しばらくしてから与えてください。過湿状態だと根が腐りやすいので、乾かし気味に管理しましょう。 肥料 肥料は早春の3月、または秋に、緩効性の化成肥料を月1回程度、株の周りに置き肥してください。肥料過多、特に窒素分の多い肥料や真夏の高温期の施肥は、病気や生理障害を引き起こすことがあるので注意しましょう。 発芽後の管理 ジャーマンアイリスは冬期落葉し、根茎のみとなります。春先になると新芽を展開しはじめますが、その際は雑草を取り除き、よく日光が当たるようすることで固く締まった健全な葉に成長し、病害虫の予防に効果的です。また植え替え1年目は根張りが弱いため、風雨で苗が転倒することがあります。支柱を立てて誘引しておくことで、根張りが安定し生育速度もスムーズになります。新芽が十分展開した後は、開花期。花は雨で傷みやすいので、鉢植えであれば雨の当たらない軒下などに移しておくと、長く観賞することができます。 植え替え 同じ場所で長期間育てていると大株になり、葉数が増えてきます。その場合、花数が少なくなる傾向があるため、株分けも兼ねて植え替えを行います。植え替えの適期は、主に春と秋。3月中、または8~10月を目処に行いましょう。植え付ける方法は、植え付けの項を参照ください。 株分け 適期は8~9月です。特に寒冷地では早めに株分けを行い、寒くなる前にしっかりと根を張らせておくと、翌年の立ち上がりがよくなります。株の分け方は、親株と子株の分かれ目でカットするか、割り取ります。その際、1つの株に1~3個程度は芽が付いている状態にしておきましょう。株分け後は葉を半分ほどに切り、葉からの水分の蒸散量を抑えることで株の負担を減らすことができます。数日風通しのよい日陰に置き、切り口をよく乾かした後に植え付けます。 ジャーマンアイリスの注意すべき病気・害虫 基本的には丈夫で、花も栽培も手間なく観賞でき、管理も楽です。病害虫にも強いジャーマンアイリスですが、過湿状態には注意する必要があります。ここでは主な病害虫の注意すべき環境と、対処法について解説します。 軟腐病 梅雨時や水の与えすぎなど、過湿状態が続くと根に細菌が入り込み、株を腐らせてしまう「軟腐病」にかかりやすくなります。早期発見できれば、根を掘り上げ、薬剤処理をしたり根をよく乾燥させることで再度植え付けることができますが、病気の広がりを抑えるために基本的に処分することになります。まずは病気にさせない環境作りを行いましょう。 アブラムシ 葉にアブラムシが付くことがあります。見つけ次第手で取り除くか、殺虫剤を使って対処しましょう。風通しをよくし、時々葉水などを行うことで予防できます。 ガーデニング初心者におすすめのジャーマンアイリス ジャーマンアイリスは、過湿にさえ注意すれば、丈夫で園芸初心者の方でも綺麗な花を咲かせることができる、育てやすさが大きな魅力です。多くの品種があるので、たくさん集めると庭やベランダを華やかに彩ってくれることでしょう。みなさんもお気に入りの花色を探して、育ててみてくださいね。 Credit 文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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ゲウムを美しく咲かせるには? 特徴や育て方のコツを徹底解説
ゲウムとは 美しい花姿でガーデナーの大注目を集めているゲウムとは、どんな花なのでしょうか? ここでは、特徴や性質、品種など、基本情報についてガイドしていきます。 ゲウムの基本情報 ゲウムは、バラ科ダイコンソウ属(ゲウム属)の多年草です。原産地はユーラシア、南北アメリカなどで、50種ほどが分布しているとされ、日本でも5種ほどの自生が確認されています。寒さには大変強いのですが、高温多湿が苦手です。気候や環境によって、冬になると地上部を枯らすこともあれば、常緑のまま越冬することもある半常緑性です。一度植え付けると、生育期が来れば新芽を出して毎年開花する息の長い植物なので、冬に地上部が枯れたからといって早々に処分せずに、翌春まで見守ってあげてください。 ゲウムの学名はGeumで、学名がそのまま草花名として流通しています。とはいえ、日本では大根草(ダイコンソウ)という名のほうに親しみを感じる方もいるかもしれません。日本に古くから自生してきたダイコンソウは、学名をGeum japonicumといい、ゲウムの一種です。 ゲウムの草丈は10〜60cm。品種によって草丈に幅があるので、購入する際に、最終的にどのくらいの大きさになるのか、ラベルなどをチェックしておくとよいでしょう。 開花期は5〜6月で、花色には赤、オレンジ、黄、ピンク、アプリコット色、白などがあります。 代表的な品種 ゲウムは50種ほどが世界に分布しているといわれ、日本で自生してきた黄花のダイコンソウのほか、南欧〜小アジア原産で濃いオレンジ色のベニバナダイコンソウ(Geum coccineum)、ヨーロッパ原産のセイヨウダイコンソウ、南米原産のチリダイコンソウなどがあります。園芸品種も見られるようになっており、草丈が低めにまとまり多数の花を咲かせる‘カクテル’シリーズ、赤みを帯びた茎葉に深みのある赤花を咲かせるゲウム・リバレ‘フレームオブパッション’などが人気です。 ゲウムの特徴 ゲウムの草丈は10〜60cmで、ダイコンの葉をコンパクトにしたような葉が、地際から放射状に伸びます。この葉の姿が「ダイコンソウ」と呼ばれる所以です。花茎が長く伸びた先に2〜3cmほどの5弁花が数輪開花。花茎が細く、少しの風にもゆらゆらと揺れる姿には野趣感があり、ナチュラルな雰囲気を持っています。 ゲウムの基本的な育て方 ここまで、ゲウムの基本情報や代表的な品種、特徴などについてご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、適した栽培環境や植え付け、水やりや施肥、手入れなど日頃の管理、増やし方など、育て方について詳しく解説します。 望ましいゲウムの栽培環境 基本的には、日当たり、風通しのよい場所が適しています。半日陰の場所でも育ちますが、花付きが悪くなります。暑さにも耐性がありますが、特に暑さが厳しい地域では、午前中のみ日が差す東側や、一日中チラチラと木漏れ日が差すような涼しい半日陰の場所に植え付けるほうが無難です。また、ゲウムは高温多湿の環境を嫌うため、蒸れに注意。込み合っていたら、適宜間引き剪定をして、風通しよく管理するとよいでしょう。一方で冬の寒さには比較的強く、植えっぱなしにしても越冬します。 ゲウムの栽培に適している用土 【地植え】 植え付けの2〜3週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕しておきます。水はけの悪い土壌であれば、植え穴を大きめに掘り、川砂やパーライトを混ぜて土壌改良しておくとよいでしょう。さらに腐葉土や堆肥を多めにすき込み、10〜20cmくらい土を盛って周囲よりも高くしておきます。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。 【鉢植え】 ハーブ用や山野草用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。 植え付け ゲウムの植え付け適期は、3月または10月です。ただし、適期以外にも苗が園芸店で販売されていることもあります。入手したら、早いうちに適地に植え付けましょう。苗を購入する際は、節間が短くがっしりと締まって、勢いのあるものを選んでください。 【地植え】 土づくりをしておいた場所に苗よりも一回り大きな穴を掘り、ポットからゲウムを取り出し、根鉢をやや崩して植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、30〜40cmの間隔を取りましょう。最後に、たっぷりと水やりします。 【鉢植え】 鉢の大きさは、7〜10号鉢(直径21〜30cm)を準備しましょう。 用意した鉢の底穴の上に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから、ハーブ用または山野草用の培養土を半分くらいまで入れましょう。ゲウムの苗を鉢に仮置きし、高さを決めたら、苗をポットから出し、根鉢をやや崩して植え付けましょう。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。 水やり 水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。 真夏に水やりする場合は、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。気温の高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまいます。 また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。 【地植え】 根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。 【鉢植え】 日頃の水やりを忘れずに管理します。ゲウムは高温多湿を嫌う性質とはいうものの、乾燥しすぎると弱るので、水切れしないようにすることが大切です。しかし、いつもジメジメした状態になっていると、根腐れの原因になってしまいます。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬に地上部が枯れても、カラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。 ゲウムへの肥料の与え方 【地植え】 植え付け時に元肥として緩効性肥料を施してあれば、その年の追肥は暑さが落ち着いた10〜11月中旬に、株の周囲に緩効性肥料をばらまいてよく耕すのみでOK。 越年して以降は、生育が旺盛になり始める少し前の3〜4月中旬と、暑さが落ち着いた10〜11月中旬の年に2回を目安に緩効性肥料を施します。 【鉢植え】 3〜4月中旬と10月〜11月中旬に、緩効性肥料を表土に均一にばらまいて土に馴染ませましょう。もしくは、この時期に液体肥料を2週間に1度を目安に与えてもかまいません。 ゲウムの栽培に必要な作業 【花がら摘み】 ゲウムは次々に花が咲くので、終わった花はすぐ摘み取りましょう。株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも終わった花を残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。種子を採取したい場合は、開花が終わりそうな頃に花がら摘みをやめて、種子をつけさせましょう。 【切り戻し】 開花後は暑くなって株が蒸れて弱ることがあるので、切り戻して風通しよく管理します。草丈の半分くらいまでを目安に短くカットして、込み合っている部分があれば透かし剪定をしておくとよいでしょう。 ゲウム栽培に注意すべき病気や害虫 【病気】 ゲウムが発症しやすい病気は、灰色かび病などです。 灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほどの多湿の環境下で発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。 【害虫】 ゲウムに発生しやすい害虫は、アブラムシ、ヨトウムシなどです。 アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目も悪いので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、シャワーではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。 ヨトウムシは蛾の幼虫で、夜に活動して葉を食い荒らします。食欲旺盛で、一晩のうちに丸裸にされてしまうことも。葉の裏に卵が産み付けられるので、孵化直後の幼齢のうちに退治するのがポイントです。または植え付け時に、土に混ぜ込んで防除するタイプの殺虫粒剤を利用してもよいでしょう。 夏越し・冬越し 【夏越し】 地植えの場合、環境に合えば植え替えの必要はありません。しかし、夏の暑さに弱る場合は夏前に半日陰の涼しい場所に植え替えるか、鉢に植え替えて夏越しさせるとよいでしょう。 鉢植えの場合は、風通しのよい半日陰など涼しい場所へ移動して管理します。 【冬越し】 ゲウムは冬の寒さに大変強いので、地植えは植えっぱなしでよく、鉢植えは戸外に置いたままで越冬できます。 ゲウムの植え替え・鉢替え ゲウムの植え替え適期は、3月または10月です。 【地植え】 順調に生育していれば、数年は植えっぱなしにしてもかまいません。大株に育って株が衰え始めたら、株分けを兼ねて植え替えます。株分けの仕方は、「増やし方」の項目を参照してください。 【鉢植え】 鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。 鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢を崩す程度にして植え替えてください。 増やし方 ゲウムは、種まきと株分けで増やすことができます。 【種まき】 種まきするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなります。 種まきの適期は3月中旬〜5月中旬か10月頃です。ゲウムは発芽率がよく、こぼれ種でも増えるほどなので、種まきは容易にできます。種まき用のセルトレイに市販の草花用培養土を入れ、1穴当たり1〜2粒ずつ播きます。種が隠れる程度に土を薄くかけ、はす口をつけたジョウロで高い位置からやわらかい水流で水やりをしましょう。乾燥しないように管理し、発芽後は日当たりがよく、風通しのよい場所で管理します。本葉が2〜3枚出始めたら、黒ポットに植え替えて育苗しましょう。ポットに根が回ってしっかりした株に育ったら、植えたい場所に定植します。 【株分け】 ゲウムの株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りを図ります。ゲウムの株分けの適期は3月か10月頃です。株を掘り上げて数芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直します。それらの株が再び大きく成長し、株が増えていくというわけです。 ゲウムで初夏の庭を華やかに 春から初夏にかけて次々と花を咲かせてくれるゲウムは、カラフルな花色ながらも楚々とした花姿が可憐で、ほかの草花ともコーディネートしやすいのも長所の一つです。また、切り花としても利用でき、インテリアをみずみずしく彩るのにも一役買ってくれます。ぜひ庭やベランダに取り入れて、明るい花色を愛でてはいかがでしょうか。 Credit 文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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丈夫なシランは蘭初心者におすすめ! シランの種類から育て方まで
シランの基本情報 シランはラン科シラン属の多年草で、漢字では紫蘭と書きます。学名はBletilla striata。地中に根を張って育つタイプで、地生蘭に分類されます。冬の間は葉を落としますが、春になると地中のバルブ(偽球茎。球根のような部位)から新芽を出し、開花に向けて生育を始めます。 4~6月に花を咲かせ、赤紫、紫、ピンク、白の花色があります。春から秋にかけぐんぐん生育して草丈は50cm程度になり、冬に向け地中のバルブが太ります。そして冬の訪れとともに落葉します。原産地は日本、中国で、日本では関東以西に自生しています。暑さ寒さに強く、古くから園芸植物として親しまれており、鉢植えや庭植えで楽しまれています。街中の植栽などでも利用されることが多い植物の一つです。 シランの花言葉は? シランの花言葉は、「変わらぬ愛」「あなたを忘れない」「互いに忘れないように」「美しい姿」など。暑さ寒さにも耐える性質は強い心を表し、バルブや種子で増えて子孫を残し群生する様子は永遠性を感じます。何輪も花を咲かせますが、うつむき気味に咲く姿はどこか控え目で、美しい横顔も印象的です。シランは切り花として流通していないので、贈り物にするなら鉢植えがよいでしょう。 シランの主な種類や花の色をご紹介 シランは花弁が6枚、花径8cmくらいのサイズで、1本の花茎に5輪程度の花を咲かせます。花は大きく開かず、ややすぼみ気味にうつむいて咲くので、全体的には縦長に見えます。香りは甘い微香があります。基本種は赤紫色の花を咲かせることに由来して「紫蘭」と名付けられていますが、そのほかにもいろいろな種類があります。 紫蘭(シラン) シランは種全体の名称ですが、園芸店などで特に色や形について書かれていない場合は普通種の赤紫の花のシランを指す場合が多いです。 口紅紫蘭(クチベニシラン) 全体は白く、中央の唇弁(リップとも呼ばれる)が紅を差したように桃色や赤紫になります。 青花紫蘭(アオバナシラン) 青みがかった紫色の花を咲かせます。多くの場合、唇弁の先に濃く色が乗ります。花全体は青紫色の濃淡があり、薄紫から紫紺まで幅があります。 白花紫蘭(シロバナシラン) 白い花を咲かせます。まれに蕊柱(ずいちゅう)が薄ピンクになったり、唇弁の先が薄ピンクになったりすることがあります。 黄花紫蘭(キバナシラン) 中国の南西部に自生するシラン。薄黄色の花を咲かせます。唇弁は濃いめの黄色です。 覆輪紫蘭(フクリンシラン) 葉の縁を囲むように斑の入った種類のシランです。花色は各種あります。 三蝶咲き(サンチョウサキ) 花弁が唇弁化した花を三蝶咲きといい、ランの花では時々見られる変異花の一つです。シランも三蝶咲きのものがあり、色は各種あります。 シランの育て方のポイントを解説 シランは暑さ寒さに強く丈夫なランです。育て方のポイントを押さえれば、より大きく育ち、花つきもよくなります。ここではシランの栽培に合った土の配合、水やりの仕方、適した環境、病害虫の対処法など、育て方全般について解説します。 シランにおすすめの土 シランの根は空気が好きなので、土選びのポイントは水はけがよいこと。自分で配合する場合、鉢植えは鹿沼土、赤玉土、軽石(それぞれ小粒のもの)を混合するとよいでしょう。赤玉土と腐葉土を6:4で混合するのもおすすめです。ブレンドされた市販の土を購入する場合は、山野草の土がよいでしょう。根がよく張るので、一回り大きめの鉢を用意します。地植えの場合は水はけのよい場所に。背丈が50cm程度になり、成長スピードが速いので、スペースのある場所がおすすめです。 水やりの頻度 シランは水が好きなランの一つです。鉢植えの場合、新芽を伸ばし成長する春から秋にかけては表面が乾いたらたっぷり水を与えましょう。地中には水や栄養を蓄えて球根のような役割を果たすバルブ(偽球茎)があるため、ある程度は乾燥に耐えられますが、花の時期に長く乾燥した状態になると、花が咲かずに干からびてしまうことがあります。また水が少ないと新芽の成長が阻害され小さくなってしまいます。根が詰まり気味だったり、大株の場合などは、水をたくさん必要とするので、毎日たっぷり水やりをします。落葉し休眠する冬は、水やりの回数を減らしてやや乾き気味にしますが、断水はしないで週1回くらい水を与えます。地植えの場合は雨任せで構いませんが、軒下の雨がかからない場所や、すぐ乾燥してしまう場所に植えている場合は水やりを忘れないようにしましょう。 シランは日当たりのよい場所が好き シランに適した場所はどのようなところでしょうか。野生のシランは里山の開けた土手や崖に自生しています。つまり、日当たりがよく、風通しのよい場所を好みます。夏、温度が非常に高く風通しが悪いと、葉焼けを起こしたり、葉先から枯れたり、根腐れすることがあります。その場合は夏の間は涼しく過ごせるよう日陰に移動したり、少し遮光してあげましょう。冬の寒さにも強いので戸外で越冬できますが、鉢植えの場合、凍るような場所は避け、雨水の当たらないところに置きましょう。地植えの場合は、凍結するような場所でなければ植えたままでかまいません。植える時に夏と冬の日当たりや凍結具合を確認しておくとよいでしょう。 シランに付きやすい害虫やかかりやすい病気 シランは日当たりと風通しのよい場所が好きなので、戸外で育てます。そうすると季節によっては害虫が付いたり、病気が発生したりすることがあります。最もよく見かける害虫は、アブラムシやハダニ、ナメクジです。アブラムシは新芽や花のつぼみに付きやすく、汁を吸って株を弱らせます。つぼみが吸汁されるとカスリ状に花弁の色が抜けたり、きれいに咲かない場合があります。 ハダニは葉の裏に付いて吸汁します。カスリ状に傷がついたようにムラになっている葉を裏返すと、ザラザラとした粉のような粒が付いていることがありますが、よく見ると、それはハダニの大群。ハダニは高温の乾燥した気候で発生しやすいので、こまめに葉裏にも水をかけるようにすると予防効果があります。アブラムシやハダニはしばしばウイルスを媒介するので、見つけたら早めに駆除しましょう。 ナメクジは葉や花に付きやすく、特に新芽やつぼみが小さい時は、気が付かないうちにナメクジに食害されることがあります。新芽を食べられると、その後の成長が著しく阻害されます。また、つぼみを食べられると花が咲きません。日頃から周囲にナメクジの這った跡がないか注意深く観察することが重要です。 シランは葉にウイルス症状が出ることがあります。葉が黒くすすけたようになったり、色むらが出たりする場合は、ほかの株への感染を防ぐために、見つけたら抜いて処分します。 植え付け・植え替えのポイント シランの植え付けや植え替えは4〜5月、または9月下旬〜10月の暖かい時期がおすすめです。新芽がある程度の大きさに育った時点で行います。梅雨時期には根がよく伸びて成長するので、梅雨に入る少し前に植え替えるのがおすすめです。真夏の暑い時期や落葉している冬の時期は生育が鈍化するので避けましょう。鉢植えの場合、植え替えたら鉢底から流れ出るくらいたっぷり水やりし、根が落ち着くまで1週間程度は日陰に置いて様子を見ましょう。 シランは成長が早いランです。鉢が小さすぎるとすぐにいっぱいになってしまうので、一回り大きい鉢に植えるように心がけましょう。大きな鉢がない、大きくしたくない場合は、植え替えの際に株分けを行いましょう。根の成長が旺盛なので、植え替えずに置いておくと鉢が中から割れてしまうこともあるほどです。根が詰まると十分に水が吸えず、成長が鈍化して花が咲きにくくなります。少なくとも2年に1度は植え替えるのがおすすめです。地植えの場合も3年に1度は株分けし、美しい状態を保つようにしましょう。 シランに肥料を与えるときのポイント シランは本来、丈夫で生育旺盛な植物ですので、肥料が無くとも十分な水と日光、適度な風があればすくすく育ちますが、肥料を与えることによって、より成長が促進されたり花つきがよくなります。植え付けや植え替え時には元肥として緩効性化成肥料を与えましょう。追肥は緩効性化成肥料や液体肥料を、成長する春(4〜6月)や秋(9〜10月)に与えます。鉢植えの場合、株が鉢にいっぱいになったものはやせてくるので、肥料を与える回数を多くします。成長が鈍化する真夏や休眠する冬は、肥料を与えると根を傷める原因になるので控えましょう。 シランの増やし方 シランを増やす方法は、一般的に株分けと種まきがあります。 株分けは植え替えの際に行います。株を分ける時、1株にバルブ(偽球茎)が3つ以上つくように分けると、体力を落とすことなく、翌年も花を咲かせやすくなります。株分けをしたら植え付け、たっぷりと水を与えます。鉢植えの場合はその後、根が動き出すまで涼しい日陰で管理し、少しずつ日光に慣らしていきましょう。 ラン科の植物は種子から育てるのが難しいものがほとんどですが、シランは比較的、成功率の高いランです。戸外で育てている場合は虫などの力によって自然に受粉することがありますが、好みの花同士を人工的に受粉させて種子を取ることもできます。受粉が成功すると、花の根元の子房が膨らんできて果実となり、熟すと自然に割れます。種子は粉のような見た目でとても細かく、風に乗って飛んでいきます。種まきをする場合は、熟して割れる直前に採取しましょう。ラン科の植物の多くは共生菌の力を借りて発芽、成長するので、親株の根元に播くと発芽しやすくなるでしょう。種子から育てた場合、開花までには2~3年かかります。 シランの冬越し方法 シランはもともと日本の関東地方以西の平地に自生しているランなので、これらの地域であればなんなく冬越しできます。冬には落葉しコンパクトになるので管理しやすいのも扱いやすい点です。鉢植えの場合、特殊な環境を用意する必要はありませんが、土が凍るような場所を避け、日だまりのような場所に春まで置いておきます。地植えのシランの場合は雪が降っても問題ありませんが、霜が降りると凍結の恐れがあるので、腐葉土で覆うなど霜よけをするとよいでしょう。鉢植えの場合、週に1度程度は水を与えます。水やりは暖かい昼間に行いましょう。地植えの場合は雨任せで構いません。 初心者でも大丈夫! シランを育ててみよう この記事ではシランの魅力や基本的な育て方をご紹介しました。シランは暑さ寒さに強く、特別な環境を用意しなくても戸外で育てられる初心者向きの丈夫なランです。鉢植えの場合、山野草に向く通気性のよい土に植え、日当たりのよい場所に置いておけば、すくすく育ちます。病害虫や植え替え、施肥や株分けも、ポイントを押さえれば難しくありません。 4~6月にかけて毎年花を咲かせ、楽しませてくれるシラン。花は色も形もバラエティ豊かで、鉢植えでも地植えでも育てられます。庭づくりやインテリアの一部として、お気に入りの種類を育ててみてはいかがでしょう。 Credit 文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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キャットミントは猫を惹きつける? キャットミントの基本情報と育て方を解説します!
キャットミントとは キャットミントとはどんな花なのか。まずはその特徴や性質、品種など基本情報についてご紹介しましょう。 特徴 キャットミントは、シソ科イヌハッカ属(ネペタ属)の多年草です。キャットミントという名前は、本来ネコが好むハーブのキャットニップの英名なのですが、日本では学名でいうところのネペタ・ファーセニー(Nepeta×faassenii)がキャットミントとして普及しています。ただし、キャットニップや、ほかのネペタ属の植物もキャットミントと呼ばれることもあり、大変ややこしくなっているのですが、近年は「ネペタ」と呼ばれることが多くなっています。 ガーデニングで主に普及しているキャットミント(ネペタ・ファーセニー)は、ネペタ・ラセモーサ(N. racemosa)とネペタ・ネペテラ(N.nepetella)の交雑種です。ミントという名前がついていますが、ガーデニングでは主に観賞用として利用されています。耐寒性も耐暑性もありますが、多湿に弱い性質です。草丈は30〜50cmで、株張りは50〜80cm。開花期は高温期を除く4〜10月ですが、ずっと花盛りが続いているというよりは、一番花が終わった後に切り戻すと、再び茂って花を咲かせるのを繰り返すというものです。花色は青紫が最もポピュラーで、ほかにピンク、白もあります。 キャットミントの品種バリエーション キャットミント(ネペタ・ファーセニー)の品種は、花茎が立ち上がって株姿がスマートにまとまる‘ウォーカーズロウ’、人気品種の‘ウォーカーズロウ’の小型改良品種で草丈が20〜30cmとコンパクトにまとまる‘ジュニアウォーカー’、大型で背丈が70〜90cmになる‘シックスヒルズジャイアント’、深いブルーの花を咲かせる‘セレクトブルー’、明るい黄金葉を持つ‘ライムライト’などがあります。 キャットミントの名前の由来 キャットミントにはネペタラクトンという物質が含まれており、これに反応して猫が興奮することが名前の由来となっています。キャットミントが属すイヌハッカ属(ネペタ属)は、猫にちなんだ名前が散見するようです。また、キャットミントはネペタとも呼ばれていますが、これはイタリア中部の古代都市の名前が由来とされています。 キャットミントの栽培環境 キャットミントは、日当たり、風通しのよい場所を好みます。水はけのよい場所であれば、朝のみ日が差す東側や、木漏れ日がチラチラと差す程度の半日陰の場所でも栽培できます。 寒さには強いので、特に防寒の必要はありません。乾燥には強い一方で、高温多湿はやや苦手なので、蒸れに注意しましょう。 また、酸性に傾いた土壌を嫌うので、土づくりの際に苦土石灰を散布してよく耕し、土壌の酸度調整をしておきます。 キャットミントの土づくり 【地植え】 植え付けの3〜4週間前に苦土石灰を散布し、よく耕しておきます。さらに植え付けの約2週間前に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕してください。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。 【鉢植え】 ハーブ用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。自身で配合土を作りたい場合は、赤玉土小粒4、鹿沼土3、腐葉土3の割合でブレンドするとよいでしょう。 キャットミントの苗の植え付け・植え替え キャットミントの植え付け・植え替えの適期は、3〜4月か、9月下旬〜10月です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、入手したら早めに植え付けましょう。 【地植え】 土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えます。 庭で育てている場合、環境に合えば植え替える必要はありません。 【鉢植え】 鉢で栽培する場合は、7〜8号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてからハーブ用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して軽く根鉢をくずし、鉢に仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。 鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢を崩す程度にして植え替えてください。 水やり 水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。 真夏に水やりする場合は、気温の高い昼間に行うと、すぐに水がぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。 また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。 【地植え】 根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。 【鉢植え】 日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、キャットミントは多湿を嫌うので、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬に地上部が枯れても、カラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。 肥料 【地植え】 やせ地で育つほど強健な性質なので、1年目は植え付け時に元肥として緩効性肥料を施してあれば、追肥の必要はありません。2年目以降は、春に新芽が動き出す少し前に、緩効性肥料を株の周りにまいて軽く耕し、土に馴染ませておきましょう。 【鉢植え】 3〜4月と9月下旬〜10月の年2回、緩効性化成肥料を株の周囲にまいて軽く土に馴染ませます。水やりと共に肥料成分が流亡しやすいので、株の状態を見て、勢いがないようであれば液肥を施して様子を見るとよいでしょう。 キャットミントの夏越し・冬越し 【夏越し】 キャットミントは暑さには耐えますが、高温多湿に弱いので梅雨前に短く切り戻し、風通しよく管理します。鉢栽培の場合は、雨の当たりにくい軒下やベランダなどに移動するとよいでしょう。また、種をつけると株が消耗して弱るので、花が終わったら早めに花茎を摘み取るようにしてください。 【冬越し】 キャットミントは寒さに大変強く、種類にもよりますが-15〜20℃まで耐えるとされています。そのため庭植えの場合は、植えっぱなしにしてもかまいません。鉢栽培の場合も室内などに取り入れる必要はなく、戸外に置いたまま越冬できます。 剪定 【花がら摘み】 キャットミントは次々に花が咲くので、終わった花は摘み取りましょう。株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。 【切り戻し】 多湿になると株が蒸れて弱ることがあるので、梅雨前に切り戻して風通しよく管理します。地際から10〜20cmの高さを目安にカットして、込み合っている部分があれば、すかし剪定をしておくとよいでしょう。 【冬の刈り取り】 キャットミントは、基本的に寒くなると落葉して越年します。枯れ葉などをいつまでも残しておくと、病害虫の越年場所となってしまうことがあるので、地上部が枯れたら新芽を残し、枯れ葉や茎を地際近くで刈り取っておくとよいでしょう。 キャットミントの増やし方 キャットミントは、さまざまな増やし方ができます。ここでは、増やし方について解説します。 挿し芽 挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。たくましいですね! 植物の中には挿し芽ができないものもありますが、キャットミントは挿し芽で増やせます。 キャットミントの挿し芽の適期は、5〜6月か9月下旬〜10月です。新しく伸びた茎を2節以上つけて、切り口が斜めになるように切り取ります。採取した茎(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚取ります。セルトレイを用意して新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。根が回ってきたら黒ポットに鉢上げして育苗し、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。 株分け キャットミントの株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りを図ります。株分けの適期は3〜4月か、9月下旬〜10月です。株を掘り上げて数芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直します。それらの株が再び大きく成長し、株が増えていくというわけです。 種まき 種まきするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなります。 キャットミントの種まきの適期は3〜5月か、9月下旬〜10月です。種まき用のセルトレイにハーブ用または山野草用にブレンドされた市販の培養土を入れ、1穴当たり1〜2粒ずつ播きます。種が隠れる程度に土を薄くかけ、はす口をつけたジョウロで高い位置から優しい水流で水やりをしましょう。乾燥しないように管理し、発芽後は日当たりがよく、風通しのよい場所で管理してください。本葉が2〜3枚出始めたら、黒ポットに植え替えて育苗します。ポットに根が回ってしっかりした株に育ったら、植えたい場所に定植しましょう。 キャットミントの病害虫 【病気】 キャットミントにはほとんど病気の心配はありませんが、灰色かび病が発生することがあります。 灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほどで多湿の環境下で発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は間引いて、風通しよく管理してください。適用する殺菌剤を散布して早めに防除してもよいでしょう。 【害虫】 キャットミントに害虫がつく心配は、ほとんどありません。 キャットミントの楽しみ方 地際近くから花茎を長く立ち上げ、濃い青紫色の花を咲かせるキャットミントは、株元が寂しくなりがちな草花と相性よくまとまります。特にバラとは開花期が揃い、バラの花色にない青紫の花を咲かせて花姿も異なるので、相性抜群。アーチやオベリスクなどに仕立てたつるバラなどは足元が寂しくなりがちなので、その足元をキャットミントで彩るのもおすすめです。 キャットミントで庭やベランダを彩ろう! 株が大きく育ち、花穂を伸ばして青紫の花をびっしりとつけるキャットミントの姿は迫力があり、初夏のガーデンに重宝します。多年草のため、一度植え付ければ毎年花を咲かせてくれるコストパフォーマンスのよさも魅力です。寒さに強く丈夫な性質なので、ガーデニングの初心者にもおすすめ。ぜひ庭やベランダに迎え入れてみてはいかがでしょうか。 Credit 文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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宿根草・多年草

まるでアクセサリー! ハート形の可愛い庭の花「タイツリソウ」
季節の合間をつないでくれるタイツリソウ 春爛漫と咲き誇っていた桜も散り、いつしか葉桜となる頃。徒長したパンジーやビオラ、枯れ始めたチューリップやヒヤシンスの葉などを片付けながら、移りゆく季節に「春愁」の言葉が重なります。そんなもの憂い心を元気づけてくれるのが「タイツリソウ」。弓形に伸びた茎に、鮮やかな濃いピンクのハート形の花をいくつも吊り下げて咲く愛らしい草花です。 タイツリソウは、ケシ科ケマンソウ属の多年草。原産国は中国東北部から朝鮮半島。自生地は森林や湿った深い谷間にあります。日本には室町時代に渡来し、古くから栽培されてきました。民家の半日陰の庭に咲いている姿がしばしば見られます。 多年草のため、秋には茎や葉が枯れて地上部がなくなり休眠に入ります。根の状態で冬を越し、翌年また芽吹きます。タイツリソウは「ケマンソウ」という別名があります。花の形が、寺院のお堂を飾る装飾品「華鬘(ケマン)」に似ていることから名付けられたものです。華鬘とは「華やか」な「草や花で作った髪飾り」という意味。素敵な名前ですね。 ちなみに、英語では「bleeding heart(血を流す心臓)」という名前です。花の先に滴のような突起があることから名付けられたのでしょうか。花言葉は「失恋」。血の涙を流しているような花という見立てです。ドラマチック! また、葉がボタンの葉に似ているため、フジボタンやケマンボタンという別名があります。原産国の中国では、花が巾着に、葉がボタンに似ているためか、「荷包牡丹(きんちゃくぼたん)」と呼ばれているそうです。こうしたいろいろな名前の由来を知るのも興味深いですね。 花色、葉色のバリエーションに注目! タイツリソウの品種 ピンク色の花のほかに、次の花色の品種があります。 白花タイツリソウ 花の色が白色に品種改良されたもので、栽培環境によってクリーム色っぽくなったり、真っ白になったりします。涼しげな姿が魅力的で、ほのかな優しい香りが楽しめます。ホワイトガーデンの素材としてもおすすめ。 タイツリソウ‘バレンタイン’ 花の色は濃い紅色。花だけでなく、茎や葉もピンクのタイツリソウより濃いのが特徴で、庭での存在感は抜群。まるでオブジェのように目を惹きつけ、個性的なワンシーンを演出するのに活躍してくれます。耐寒性が強く−40℃程度まで耐えられます。 タイツリソウ‘ゴールドハート’ 葉の部分が美しい黄色の品種。太陽が当たると金色に輝いて見える様子が名前の由来。 カラーリーフプランツとしても親しまれており、花壇を豊かに彩るのに欠かせません。補色のブルー、紫系の花と一緒に植えるとお互いが引き立ち、きれいですよ。 <ゴールドハートとの混色におすすめのブルー・紫の春の花> ・フロックス‘シアウッド・パープル’ ・ワスレナグサ ・シラー 1茎に10〜15輪の花が連なって咲く姿が愛らしい 芽が動き出すのが3月頃。ぐんぐん成長し、4月の終わりから6月にかけて花をつけます。 草丈は30〜60cm程度。多年草ですから年々大株になり、たくさんの花茎に10〜15輪ほどの花を吊り下げて咲くさまは見事です。花が咲き終わったら、茎の根元から切り取ってしまいましょう。あまり長い間そのままにしておくと、種子がついて栄養が奪われ、株が弱ってしまいます。ある程度開花が進んだら、切り花として楽しむこともできます。株が成長している3〜6月に肥料を与えて、しっかり管理しましょう。秋が近づくと地上部の葉が枯れ込み休眠期に入るので、基本的に肥料は不要です。 初心者にもおすすめの丈夫なタイツリソウの育て方 育成環境 寒さには大変強い一方、暑さと強い日差しが苦手なタイツリソウ。午前中は日当たりがよく、午後には日陰になるような場所が適しています。 年々大株になるため、庭植えの場合は花壇の前面ではなく、やや中段に植えると全体のバランスがよいでしょう。 建物の陰や落葉樹の下など、明るい半日陰で、少し湿り気のある場所などもおすすめです。 夏は直射日光に当たると葉焼けを起こしてしまうため、日除けをするなど注意して管理してください。 土づくりと植え付け タイツリソウの植え付けは、3〜4月、または10〜11月が適期です。その時期に苗を入手して植え付けましょう。 タイツリソウは水もちと水はけのよさ、両方を兼ね備えた用土が適しています。 地植えの場合、20cmほど掘ってたっぷり腐葉土をすき込んでおくとよいでしょう。株間は20〜30cmほど。 鉢植えの場合は、市販の草花用培養土でも十分です。自分で配合するなら、赤玉土と腐葉土を混ぜ込んだ土に少量のパーライトを加えた用土を使用します。根が深く伸びるため、底の深い鉢に植え付けることがポイント。その後は、生育状態を見ながら、2〜3年に1回植え替えをして根詰まりを防ぎます。 タイツリソウの根はゴボウのような太い直根なので、どちらかというと、鉢植えより地植えにしたほうが花つきはよいでしょう。また、植え付けの際は根を傷つけないように注意しましょう。 水やりと肥料 肥料は植え付けの際、元肥としてカリウムやリン酸を多く含んだ緩効性化成肥料か、牛ふん堆肥を土の中に混ぜ込みます。 その後は3月から9月にかけて、液体肥料を2,000倍程度に薄めたものを1週間に1回与えます。夏の間は3,000倍に薄めて与えたほうがいいでしょう。 地上部が休眠したら肥料は与えません。 水やりは植え付け時にたっぷり与えるのはもちろんですが、その後は土の表面が乾いてきたら水を与えてください。やや湿った場所を好むため、土を乾かさないように適度な湿度を保つのがポイント。 鉢植えの場合は、鉢底から水が流れる程度にたっぷり与えます。 冬は休眠期に入りますが、水を与えないと枯れてしまうため、やや控えめに水やりしてください。 増やし方 タイツリソウは株分けか、挿し芽で増やします。 株分けは3〜4月または10〜11月の植え替えと同時に行います。根を傷つけないように注意して、自然に分かれているところで分けます。1つの株に、芽が3つ以上つくように分けてください。根の切り口は、放置すると雑菌が入る恐れがあるため、癒合促進剤や殺菌剤を塗って保護しておきます。 挿し芽とは、植物の一部を切り取り、発根を促して増やす方法です。新芽が伸びてくる春、3〜4月に元気のよい茎を3cmくらいの長さにカットし、1〜2時間水を吸わせた後に、肥料を含まない土か、挿し芽・種まき専用土などに挿してください。 病害虫 タイツリソウは丈夫で病気にはほとんどかかりません。一方、害虫には注意が必要です。 3〜5月にかけてはアブラムシに注意。若葉や新芽の汁を吸うため成長に悪影響を及ぼします。大量発生しやすいため、見つけたら早めに殺虫剤を散布して駆除しましょう。アブラムシは光りものが苦手とされるため、園芸用のシルバーテープなどを利用するのもよいでしょう。 晩春から初夏、初秋の年2回ほどはヨトウムシに注意。ヨトウムシは昼は土の中に隠れていて、夜になると出てきて葉や茎を食い荒らす害虫。葉や茎を集団で食害するため、気付いたら葉が丸坊主になっていた、なんてこともあります。葉裏に大量に卵を産みつけるため、これが孵らないうちに葉ごと処分します。こまめに葉裏もチェックしましょう。 ちょっと注意(毒について) タイツリソウはとても可愛らしい花姿をしていますが、植物全体に「アルカロイド」という毒を含んでいます。アルカロイドは大脳中枢を麻痺させ、嘔吐、呼吸困難、心臓麻痺など重篤な症状を引き起こす恐れがあります。相当量を摂取しないと死に至るようなことはありませんが、くれぐれも誤って食べないようにしましょう。 日陰の庭を愛らしく演出してくれるタイツリソウをもっと活用しよう! タイツリソウは、中国から渡来し古くから栽培されてきました。日陰を好む植物だったせいか、あまり注目されていませんでしたが、最近、そのユニークでとても可愛らしい花姿が脚光を浴び人気の花になりました。 タイツリソウの再デビュー! 緑が濃くなっていく時期、タイツリソウの紅色の花が映えて愛らしくも美しく、見る人に元気を与えてくれます。手間があまりかからず、年々大株になっていくのも初心者ガーデナーにとっては、うれしいことですね。ぜひ自分の手でタイツリソウを育ててみましょう。 Credit 文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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多肉・サボテン

【サボテンが枯れる原因とは?】復活させる方法や育て方のポイントを解説
サボテンが枯れる原因と症状 wisawa222/Shutterstock.com 育てやすくて人気の高いサボテンですが、栽培環境や育て方によっては枯れてしまうこともあります。それでは、サボテンはどのような状態だと枯れてしまうのでしょうか。具体的な症状と原因についてご紹介します。 根腐れ oraya/Shutterstock.com サボテンが根腐れすると、根元が茶色や黒っぽい色になり、胴をつまむとぶよぶよしています。根元から上に向かって傷みが進行していき、ぐらぐら動く状態になります。根腐れの原因は、水のやりすぎなど。根が腐ると養分を吸収できず、細胞が死んでいきます。サボテン内部から傷みが進行するため外からでは分かりにくく、気が付くとかなり症状が進行している場合があります。 葉焼け bouybin/Shutterstock.com サボテンが葉焼けすると、表面が白や黄色になったり黒く焦げたように変色します。艶がある種類の場合は艶が失われ、ザラザラした質感になります。直射に晒されたり、長時間日光に当たりすぎるのが葉焼けの原因。強い光で表面から細胞が壊死し、光合成できなくなります。また、葉焼けし壊死した部分を中心に、腐食が進行する場合があります。 栽培環境が悪い phonsak chaimanuskul/Shutterstock.com サボテンをどのような場所に置いていますか? 多くのサボテンが好むのは、風通しと日当たりのよい環境。風通しが悪く、じめじめした日陰や、雨が当たる場所に置いているとうまく生育できず、病気や害虫に対しての抵抗力が弱くなり、枯れやすくなります。 また、鉢のサイズも重要です。大きすぎると鉢に入っている土の量が多くなり、土の中の水分量も多くなります。根の過湿が苦手なサボテンは、根が吸い上げる以上に土が湿っている状態が続くと、根の周りの土が乾きにくく、根腐れしやすくなります。このように鉢が大きすぎると根腐れの原因となりますが、あまり小さすぎても根詰まりを起こし枯れてしまう原因に。鉢はサボテンの直径と同じか、一回り程度大きなサイズが適しています。 土が悪い Lokana/Shutterstock.com 購入したサボテンは、どのような土に植えられているでしょう。お店によっては、化粧土や化粧砂に植え固められていることがあります。これらの土は長期的な栽培には向いていないので、サボテンに合った土に植え替える必要があります。栄養分が不足すると痩せてしぼんだ状態になり、形が変わってしまうほどの栄養不足になると、元の姿に戻るまで長い時間がかかります。また、水はけの悪い土に植えていると根腐れの原因になります。市販のサボテン・多肉植物用の土や小粒の赤玉土、鹿沼土、軽石などを中心に配合したものなど、水はけのよい用土を使うようにしましょう。 害虫や病気 MargaPl/Shutterstock.com 多くの植物と同様に、サボテンも病気にかかったり、害虫被害を受けたりします。害虫には主に、サボテン表面に被害を与える種類と、土の中の根に被害を与える種類がいますが、養分を吸われて傷がついたサボテンは、表面がザラザラしたり変色したり、艶が失われた状態になります。さらに、害虫はしばしば病気を媒介します。病気にかかると病変部分が黒ずむ、しぼむ、傾く、腐食するなどの症状が見られます。 枯れかけたサボテンを復活させる方法 BUNDITINAY/Shutterstock.com サボテンが枯れる主な原因として、根腐れ、葉焼け、環境、土、病害虫を挙げました。しかし完全に枯れていない場合、適切に対処すれば復活可能なケースもあります。ここではサボテンをさまざまな被害から救出し、復活させる方法について解説します。 根腐れは胴切りにして挿し木する BAAN-NORK /Shutterstock.com 根腐れしてしまったサボテンは栄養を吸収できないばかりか、根元から腐食が進行します。腐食を止めて新しい根を出させるには、傷んだ部分を切り落とす「胴切り」という方法があります。緑の固く元気な部分が残っている場合は、胴切りで復活する可能性があります。手順は以下の通りです。 カットするサボテンのサイズによって、ハサミ、カッター、小刀などを用意します。断面がなめらかでないと発根しにくいので、切れ味がよい刃物を使用しましょう。カットする前に、使う道具の刃を消毒しておきます。また、棘が鋭いタイプの場合、けがをする可能性があるので、棘が通らない厚手のゴム手袋などを着用しましょう。 サボテンを地面と平行に切断します。腐敗していない固い部分で切りましょう。乾燥時に中央がくぼむ分を考慮し、凸形になるように切り口を整えて消毒しましょう。 切り口を上に向けて乾燥させ、表面が乾いたら新聞紙などで軽く包みます。風通しのよい場所でさらに7~10日ほど切り口をしっかり乾燥させます。 切り口を下にして清潔な新しい土に植えます。グラグラしていると発根しにくいため、支えを添えておくのも有効です。 葉焼けは変色部分を切り落とす Boyloso/Shutterstock.com 葉焼けして変色してしまったサボテンも、傷みが部分的であれば復活する可能性があります。変色したりぶよぶよした部分を消毒した刃物を使って切り落とし、殺菌剤を塗ります。ただし、葉焼けした部分が広範囲の場合は復活が難しい場合もあります。葉焼けした部分は元に戻ることはありません。したがって、葉焼けする前に対処することが大切です。 長く日陰に置いてあったサボテンを急に日当たりのよいところに移動したりすると、葉焼けの原因となります。サボテンを移動する場合は、環境に慣れるように、それまで置いていた場所よりも少し明るい場所に1週間置いてから、さらに少しだけ明るい場所に1週間といった具合に、少しずつ強い光に慣らしながら置き場所を移動しましょう。また、風通しが悪い中で長時間日光を浴びていると焼けることもあります。特に夏は直射を避け、室内に入れたり、寒冷紗などのメッシュ素材の布で日よけをするとよいでしょう。室内で管理するときも、直射日光が当たらないように注意しましょう。 栽培環境や土が悪いときは環境を整える Julia Lav/Shutterstock.com サボテンを枯らさないためには、適した土に植え、栽培環境を整えることが大切です。サボテンを購入したら、まずは土の様子を観察。過度に湿っている、株がグラグラしている、土の表面がカチカチになっている、化粧土などで固められているといった状態であれば植え替えます。植え替える土は、サボテン・多肉植物用のものを用いるとよいでしょう。根が少ない場合は一回り小さな鉢に、根詰まりしているようであれば一回り大きいものに植え替えます。植え替え後は適切な場所で栽培しましょう。サボテンは一般に、明るく風通しのよい、雨の当たらない環境で管理します。日当たりを好みますが、真夏の午後など暑い時間帯には直射日光に当たって葉焼けしないように注意しましょう。逆に日光が不足すると、ヒョロヒョロと徒長したり、病気の原因になるので、様子を観察しながら適した場所を探してみましょう。 害虫は駆除と薬剤で対処する popid/Shutterstock.com サボテンにつく害虫は小さな虫が多いので、日頃の観察が重要です。傷んだ部分があれば、害虫が付いていないかじっくり見てみましょう。また、植え替え時には根に害虫が付いていないか確認しましょう。害虫を見つけたら速やかに駆除します。変色したり腐ったりした部分があれば取り除き、殺菌剤を塗ります。被害が広範囲の場合は、必要に応じて胴切りしましょう。複数の株を育てている場合、害虫を見つけたら他の株にも繁殖している可能性があるので、忘れず確認を。害虫が付かないよう、定期的に殺虫剤を散布し防除するのも有効です。 サボテンの育て方のポイント Negnut/Shutterstock.com ここまでサボテンが枯れてしまう原因と対処法を解説しましたが、ここからは枯れる原因を未然に防ぎ、元気に育てるポイントをご紹介します。 水やり Irina Wilhauk/Shutterstock.com サボテンが枯れる原因として最も多いものの一つが、根腐れ。根腐れは水のやり方が原因で起きることが多いです。サボテンは季節によって必要な水の量が変わるため、季節に応じて調整することが大切です。盛んに生育する春〜秋は、土の表面が乾いたらたっぷり与えましょう。2週間ごとに水やりするくらいのペースです。成長が緩慢になる真夏の高温期と冬は、軽く湿らす程度にします。3~4週間に1回水やりするくらいのペースで十分です。夏は日中に水をやると気温が上がって蒸れるので、夕方から夜に水やりしましょう。一方冬は気温が低い時間帯に水やりすると根が傷みやすいため、比較的暖かい日の午前中や昼間に水やりするようにします。 適した用土と鉢 jarntag/Shutterstock.com サボテンにはほどよい保水性があり、かつ排水性にも優れた土が適しています。市販のサボテン・多肉植物用の培養土を使うと手軽で便利です。自分で作る場合は、赤玉土4:鹿沼土3:腐葉土3に緩効性粒状肥料を混ぜたものや、赤玉土4:鹿沼土2:軽石2:腐葉土2に緩効性粒状肥料を混ぜたものなどがよいでしょう。サボテンの植え替えは、一般に生育が始まる直前の春に行います。鉢底穴から根が出てきたり、カチカチになって根詰まりしているようであれば、一回り大きい鉢に植え替えます。根が少ないようであれば一回り小さい鉢に植え替えましょう。水やりしてもなかなか染みこまない場合も、水はけが悪くなっているので植え替えます。購入した時に化粧砂などで固められている場合は、土を取り除き適切な用土で植え直します。鉢からサボテンを出してすぐ植える場合は、植え替え後7〜10日ほどは水やりを行わないようにしましょう。鉢からサボテンを出して土を落とし、7〜10日ほど乾かしてから植え付けた場合は、すぐに水を与えてもかまいません。 肥料の与え方 TY Lim/Shutterstock.com サボテンの故郷は過酷な環境が多いので、適切な日光と水と風があれば特に肥料がなくても育ちますが、適度に与えれば成長をサポートできます。植え替えるときに元肥として土に混ぜ込んでおくとよいでしょう。サボテン用に販売されている培養土には、あらかじめ肥料が配合されているので不要です。追肥する際は、液体肥料を与えます。肥料が多いと徒長したり、根を傷めたりすることがあるので、与えすぎに注意しましょう。 適した栽培環境 Natalya Mali/Shutterstock.com サボテンは適度に日の当たる風通しのよい場所を好む種が多いです。一方で、強い直射日光が長時間当たると深刻なダメージを受ける場合もあります。遮光ネットをかけたり、カーテンなどで遮光するなど工夫をしましょう。また、花芽がつく頂点に水が溜まるとそこから腐ったり、過湿になると根腐れを起こすので、直接雨に当てないようにしましょう。種類にもよりますが、一般に5~40℃の環境で育つため、5℃以下になる場合は室内に入れます。 注意すべき病害虫 Boyloso/Shutterstock.com サボテンに被害を与える害虫は、カイガラムシ、ワタムシ、ハダニ、ネジラミなどが挙げられます。花芽や新芽は柔らかく害虫が付きやすいので、注意して観察します。カイガラムシやワタムシは刺座(とげの付け根の綿毛のような器官)や溝に付着することが多いです。見つけたら取り除き、殺虫剤で駆除します。 ハダニは高温期の空気が乾燥している時によく発生します。非常に小さいので、被害が進行するまで気がつかないこともあります。湿り気を嫌うので霧吹きで水をかけるだけで防止できることもありますが、水のやりすぎにならないよう注意が必要です。 ネジラミも乾燥を好む害虫で、地中の根につきます。夏と冬は水やり回数が減り、土が乾燥した状態になるので注意が必要です。植え替え時に発見することが多いネジラミですが、発見した場合は、よく洗って殺虫剤で駆除しましょう。また、植える時に殺虫剤を混ぜ込むのも有効です。 多湿な環境に置いておくと病気が発生しやすいため、風通しのよいところで育てましょう。病気が発生した場合は、病変を取り除き消毒します。病変を早く見つけると腐食が少なくて済むので、回復する可能性が高まります。病気や害虫被害を未然に防ぐために、定期的に殺虫殺菌剤を散布するのも有効です。 増やし方 Ton Bangkeaw/Shutterstock.com サボテンは挿し木や株分け、種まきで増やすことができます。サボテンの根元についている子株を切り取って増やすことを挿し木という場合もありますが、一般的にはこれは株分けに当たります。根元や株の側面などにできた小株を株分けする場合は、切り取った後7〜10日程度切り口を乾燥させてから土に挿しましょう。やがて根が出てきて新たな株となります。細長いサボテンは、途中で胴切りにすると同様に挿し木することができます。元株のほうは、株元や切り口の近くなどから新しい株を作って生育します。 サボテンは華やかな花も魅力の一つ。花が咲いたら受粉させて種子を採り、種まきしてみましょう。種まきは春か秋が適期です。湿らせた土に等間隔で播き、霧吹きして空気穴をあけたラップをかぶせ、発芽までは乾かないように管理します。発芽したらタイミングを見て植え替えます。 適切な育て方でサボテンを枯らさず楽しもう Stolyevych Yuliya/Shutterstock.com サボテンはインテリア性も高く入手しやすい身近な植物の一つですが、突然枯らしてしまった経験がある人も多いのではないでしょうか。今回ご紹介したポイントを参考に、水やりや日当たり、病害虫に注意すると、枯らさずに健やかに長く育てることができます。植物を育てる際に大切なのは、よく観察すること。調子を崩しているようであれば枯れる原因がないかを確認し、傷みを見つけた場合は速やかに対処し、最小限の被害で抑えましょう。ぜひ多種多様なサボテンの中から自分の環境に合ったものを見つけ、適切な育て方で楽しんでみてください!
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宿根草・多年草

寄せ植えにして可愛いミセバヤ! 育て方のポイントや種類など
ミセバヤの特徴 ミセバヤはベンケイソウ科ムラサキベンケイソウ属の多年草。冬に落葉し、小さな芽をつけてそのまま休眠しますが、春の生育期を迎えると再び新芽を出して旺盛に生育します。一度植え付けると毎年開花する、息の長い植物です。 原産地は日本、中国などで、主に岩場に自生してきたとされています。暑さ寒さに強く、日本の気候によく馴染んで丈夫に育つ植物です。岩場に自生してきたこともあり、乾燥気味の土壌を好む性質を持っています。 ミセバヤの草丈は10〜60cm。茎葉が地際から多数出る株立ち状の草姿で、茎は直立せずにしなるようにして伸び、長くなると下垂していきます。厚みのある丸い葉が愛らしく、多肉植物としても愛されています。 ミセバヤの開花期は10〜11月で、花色はピンク。小さな花がまとまって頂部にドーム状に咲き、色の塊となって目に飛び込んでくるため、大変鮮やかです。また、秋が深まるとともに、葉が赤く紅葉する姿にも観賞価値があります。 ミセバヤの楽しみ方 ミセバヤは多肉質の丸い葉が美しく、寄せ植えなどに重宝される植物です。ハンギングバスケットやフラワースタンドに飾る寄せ植えなどでは、縁に植え付けると、枝垂れる葉が流れるような動きのある演出に一役買ってくれます。 また、もともと岩場などに自生してきた植物のため、乾燥した土壌を好む性質を生かし、ロックガーデンや傾斜地などの地植えにも向いています。 ミセバヤは種類が豊富! ミセバヤは種類が豊富なことでも知られ、コレクションして選ぶ楽しみもありますよ! ここでは、ミセバヤの種類についてご紹介します。 ヒダカミセバヤ 北海道の日高〜釧路地方の海岸や山地の岩場に自生する近縁種。草丈は10〜20ほどで、葉色はやや青みが強く出ます。寒さと乾燥に強い性質です。ヒダカミセバヤとして流通しているものには、葉形が異なるものがありますが、産地によって多少の違いが出るようです。 カラフトミセバヤ 北海道の山地の岩場に自生してきた種類で、葉姿がコンパクトにまとまるのが特徴。葉色はグレーがかった青緑で、縁に切れ込みが入らず、可愛らしい表情を見せてくれます。葉にほんのりと赤がのる、赤葉の種類もあります。 エッチュウミセバヤ 富山県の固有種で、やや大きく成長するダイナミックさをもっています。オーバル形で多肉質の葉の縁に、うっすらとピンクがのるので、目を引く存在感も。寄せ植えに添えるカラーリーフとしても活躍します。 白雪ミセバヤ 青みがかった葉に白い粉が吹くため、名前の通りシルバーリーフとして重宝します。原産地は西アメリカで、草丈は5cm前後。他の種類に比べてゆっくりと生育し、小型なのが特徴。夏に黄色い花を咲かせます。 ミセバヤを育てるポイント ここまで、ミセバヤの特徴や楽しみ方、種類などについてご紹介してきました。ここからはガーデニングの実践編として、ミセバヤの育て方のポイントを解説します。 日当たりや置き場所 【地植え】 ミセバヤは日当たり、風通しのよい場所を好みますが、半日陰の場所でも十分育ちます。 過湿を嫌うので、粘土質の土壌や水場に近くて低い場所など、水はけが悪くてジメジメとした環境は向きません。庭に植え付ける場合は、水はけのよい場所を選び、腐葉土や堆肥などの有機質資材をすき込んで、腐植質に富むふかふかとした土壌づくりをしておきましょう。 ミセバヤは、真夏に強い太陽の光を浴びると葉焼けすることがありますが、もともと暑さに強く季節が進めば回復するので、それほど神経質になる必要はないでしょう。冬の寒さには-3℃くらいまでは耐えるので、冬越しも容易です。 【鉢植え】 一年を通して日当たり、風通しのよい場所に置いて管理しますが、半日陰の場所でも生育します。多湿が苦手なので、雨が多くなる梅雨の時期は軒下などへ移動するのが無難。真夏に強い日差しを浴びると葉焼けすることがあるので、ベランダなど目にとまりやすい場所に置いている場合は、午前中のみ日が差す東側や半日陰の場所に移動するとよいでしょう。基本的には暑さにも寒さにも強いので、周年屋外で管理できます。 土 【地植え】 植え付ける1〜2週間前に、腐葉土や堆肥などの有機質資材と緩効性化成肥料を植え場所に投入し、よく耕してふかふかの土をつくっておくとよいでしょう。ミセバヤは過湿を嫌うため、粘土質の土壌など水はけが悪い場所には、川砂やパーライトなどの土壌改良資材を投入し、周囲より少し土を盛って高くし、水はけのよい環境にしておくとよいでしょう。事前に土づくりをしておくことで、分解が進んで土が熟成します。 【鉢植え】 山野草や多肉植物の栽培用に配合された、水はけのよい園芸用培養土を利用すると便利です。 植え付け・植え替え ミセバヤの植え付け、植え替えの適期は、3月下旬〜4月です。 【地植え】 土づくりをしておいた場所に、苗よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。最後に、たっぷりと水やりします。 【鉢植え】 鉢の大きさは、入手した苗よりも1〜2回りほど大きい鉢を準備しましょう。また、ミセバヤは垂れ下がるようにして伸びるので、高さのあるコンテナスタンドや吊り鉢に飾るか、ハンギングバスケットの寄せ植えなどに利用するのがおすすめです。 用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢に仮置きして高さを決めたら、ポットから出し、軽く根鉢を崩して植え付けましょう。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。 鉢栽培の場合、植え付けてから時間が経つと、成長とともに根が詰まって生育が悪くなってしまうので、1〜2年に1度を目安に植え替えましょう。植え替えの際は、それまでの鉢よりも大きな鉢を用意して株を大きくしてもよいですし、同じ鉢を用いて株のサイズをキープしてもかまいません。鉢から株を出したら、古い根を切り取って整理し、根鉢を徐々に崩してやや小さくしてから新しい土を入れて植え直します。 水やり 株が蒸れるのを防ぐために株全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水がすぐにぬるま湯になって株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。冬は十分気温が上がった真昼ごろに与えてください。夕方に水やりすると凍結の原因になり、株が弱るので避けましょう。 ミセバヤは多湿を嫌うので、水の与えすぎには注意します。バランスのよい水の管理が大切です。 【地植え】 しっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、水切れしないように管理しましょう。根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続いて乾燥するようなら、水やりをして補います。 【鉢植え】 日頃の水やりを忘れずに管理します。とはいえ、ミセバヤは多湿を嫌うので与えすぎに注意し、気候や株の状態に適した水やりを心がけましょう。土の表面が白く乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えます。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。 肥料 【地植え】 ●元肥 植え付け前の土づくりの際に、緩効性化成肥料を少量混ぜておきます。 ●追肥 地植えの場合は、ほとんど不要です。ただし、株に勢いがないようであれば、液肥を与えて様子を見守ります。 【鉢植え】 ●元肥 植え付けの際に、緩効性化成肥料を少量混ぜておきます。 ●追肥 鉢栽培では土の量が限られており、水やりとともに肥料成分が少しずつ流れ出すので、定期的な追肥が必要です。ミセバヤの追肥の適期は4月下旬〜6月、9月下旬〜10月です。この期間に、月に2回を目安に液体肥料を施しましょう。 夏・冬の注意点 夏の注意点 真夏は強い日差しを直接浴び続けると、葉焼けをすることがあります。ベランダなど目の届きやすい場所で育てる場合は、半日陰の涼しい場所に移動してみずみずしい葉姿を保つとよいでしょう。 また、鉢栽培の場合は、真夏は高温によって乾燥しやすくなるので、他の植物と一緒に水やりをすることが多くなりますが、ミセバヤは多湿を嫌う性質があるので与えすぎに注意します。いつもじめじめとした状態にならないように、乾燥気味に管理してください。 冬の注意点 ミセバヤはライフサイクルの長い植物で、冬に落葉して休眠します。しかし枯れたわけではないので、鉢栽培では冬も水やりは必要です。とはいえ、常に湿った状態にすると根腐れするので、乾燥気味に管理することがポイント。表土が乾いて、さらに数日待ってから水やりをするという程度でよいでしょう。 ミセバヤの増やし方 ミセバヤは、株分けと挿し芽で容易に増やすことができます。ここでは、ミセバヤの増やし方についてご紹介します。 株分け ミセバヤは、株分けをして増やすことができます。適期は、植え付け・植え替えと同じ3月下旬〜4月です。 ミセバヤが大株に育ったら、株を掘り上げて土を落とし、数芽をつけて根を切り分けます。その切り分けた株を植え直せば、その分だけ数も増えるというわけです。大株に育つと、存在感が大きくなりすぎて持て余してしまうことも。株を小分けにすることで、株が若返って再び勢いよく生育するメリットもあります。 挿し芽 挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと、発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。たくましい生命力ですね! 植物の中には挿し芽できないものもありますが、ミセバヤは容易に挿し芽で増やせます。 ミセバヤの挿し芽の適期は、5〜6月です。新しく伸びた茎を3節くらいつけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した茎(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を数枚取ります。育苗用トレイに新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。発根してしっかり育ったらポットに植え替えて育苗し、さらに十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。 注意すべき病害虫 【病気】 ミセバヤは病気の心配はほとんどありませんが、多湿の環境下では軟腐病にかかることがあります。 軟腐病はジメジメとした環境で発生しやすい、細菌性の病気です。葉や茎などの傷口から侵入して発症します。病気が進行すると腐敗して悪臭が漂い、ほかの株にも蔓延してしまうので、発見次第抜き取って土ごと処分しましょう。水はけのよい環境づくりをし、風通しよく管理することが大切です。 【害虫】 ミセバヤの栽培で注意したい害虫は、アブラムシ、ナメクジなどです。 アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。 ナメクジは、花やつぼみ、新芽、新葉、果実などを食害します。体長は40〜50mmほどで、頭にツノが2つあり、茶色でぬらぬらとした粘液に覆われているのが特徴。昼間は鉢底や落ち葉の下などに潜んで姿を現しませんが、夜に活動します。植物に不快な粘液がついていたら、ナメクジの疑いがあるので、夜にパトロールして捕殺してください。不可能な場合は、ナメクジ用の駆除剤を利用して防除してもよいでしょう。多湿を好むので風通しをよくし、落ち葉などは整理して清潔に保っておきます。 寄せ植えにすると可愛いミセバヤを育ててみよう 古くから愛されてきたミセバヤは、寄せ植えの脇役に、ロックガーデンや傾斜地の彩りにとさまざまなシーンで活躍する植物です。種類も多様で選ぶ楽しみもあるミセバヤを庭やベランダに取り入れて、みずみずしい葉姿や秋の開花、晩秋の紅葉を楽しんではいかがでしょうか。 Credit 文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。



















