キャットミントは猫を惹きつける? キャットミントの基本情報と育て方を解説します!
キャットミントは、シルバーがかった葉の色が爽やかで、花茎を長く立ち上げ、青紫の涼しげな花をたくさん咲かせます。比較的育てやすく、日本の厳しい気候では育ちにくい人気のラベンダーと似た雰囲気を持っていることからも、近年特に注目が集まっている花です。この記事では、キャットミントの基本情報や魅力、種類、育て方など、多岐にわたってご紹介します。
目次
キャットミントとは
キャットミントとはどんな花なのか。まずはその特徴や性質、品種など基本情報についてご紹介しましょう。
特徴
キャットミントは、シソ科イヌハッカ属(ネペタ属)の多年草です。キャットミントという名前は、本来ネコが好むハーブのキャットニップの英名なのですが、日本では学名でいうところのネペタ・ファーセニー(Nepeta×faassenii)がキャットミントとして普及しています。ただし、キャットニップや、ほかのネペタ属の植物もキャットミントと呼ばれることもあり、大変ややこしくなっているのですが、近年は「ネペタ」と呼ばれることが多くなっています。
ガーデニングで主に普及しているキャットミント(ネペタ・ファーセニー)は、ネペタ・ラセモーサ(N. racemosa)とネペタ・ネペテラ(N.nepetella)の交雑種です。ミントという名前がついていますが、ガーデニングでは主に観賞用として利用されています。耐寒性も耐暑性もありますが、多湿に弱い性質です。草丈は30〜50cmで、株張りは50〜80cm。開花期は高温期を除く4〜10月ですが、ずっと花盛りが続いているというよりは、一番花が終わった後に切り戻すと、再び茂って花を咲かせるのを繰り返すというものです。花色は青紫が最もポピュラーで、ほかにピンク、白もあります。
キャットミントの品種バリエーション
キャットミント(ネペタ・ファーセニー)の品種は、花茎が立ち上がって株姿がスマートにまとまる‘ウォーカーズロウ’、人気品種の‘ウォーカーズロウ’の小型改良品種で草丈が20〜30cmとコンパクトにまとまる‘ジュニアウォーカー’、大型で背丈が70〜90cmになる‘シックスヒルズジャイアント’、深いブルーの花を咲かせる‘セレクトブルー’、明るい黄金葉を持つ‘ライムライト’などがあります。
キャットミントの名前の由来
キャットミントにはネペタラクトンという物質が含まれており、これに反応して猫が興奮することが名前の由来となっています。キャットミントが属すイヌハッカ属(ネペタ属)は、猫にちなんだ名前が散見するようです。また、キャットミントはネペタとも呼ばれていますが、これはイタリア中部の古代都市の名前が由来とされています。
キャットミントの栽培環境
キャットミントは、日当たり、風通しのよい場所を好みます。水はけのよい場所であれば、朝のみ日が差す東側や、木漏れ日がチラチラと差す程度の半日陰の場所でも栽培できます。
寒さには強いので、特に防寒の必要はありません。乾燥には強い一方で、高温多湿はやや苦手なので、蒸れに注意しましょう。
また、酸性に傾いた土壌を嫌うので、土づくりの際に苦土石灰を散布してよく耕し、土壌の酸度調整をしておきます。
キャットミントの土づくり
【地植え】
植え付けの3〜4週間前に苦土石灰を散布し、よく耕しておきます。さらに植え付けの約2週間前に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕してください。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
ハーブ用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。自身で配合土を作りたい場合は、赤玉土小粒4、鹿沼土3、腐葉土3の割合でブレンドするとよいでしょう。
キャットミントの苗の植え付け・植え替え
キャットミントの植え付け・植え替えの適期は、3〜4月か、9月下旬〜10月です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、入手したら早めに植え付けましょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えます。
庭で育てている場合、環境に合えば植え替える必要はありません。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、7〜8号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてからハーブ用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して軽く根鉢をくずし、鉢に仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢を崩す程度にして植え替えてください。
水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合は、気温の高い昼間に行うと、すぐに水がぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、キャットミントは多湿を嫌うので、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がってきたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬に地上部が枯れても、カラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
肥料
【地植え】
やせ地で育つほど強健な性質なので、1年目は植え付け時に元肥として緩効性肥料を施してあれば、追肥の必要はありません。2年目以降は、春に新芽が動き出す少し前に、緩効性肥料を株の周りにまいて軽く耕し、土に馴染ませておきましょう。
【鉢植え】
3〜4月と9月下旬〜10月の年2回、緩効性化成肥料を株の周囲にまいて軽く土に馴染ませます。水やりと共に肥料成分が流亡しやすいので、株の状態を見て、勢いがないようであれば液肥を施して様子を見るとよいでしょう。
キャットミントの夏越し・冬越し
【夏越し】
キャットミントは暑さには耐えますが、高温多湿に弱いので梅雨前に短く切り戻し、風通しよく管理します。鉢栽培の場合は、雨の当たりにくい軒下やベランダなどに移動するとよいでしょう。また、種をつけると株が消耗して弱るので、花が終わったら早めに花茎を摘み取るようにしてください。
【冬越し】
キャットミントは寒さに大変強く、種類にもよりますが-15〜20℃まで耐えるとされています。そのため庭植えの場合は、植えっぱなしにしてもかまいません。鉢栽培の場合も室内などに取り入れる必要はなく、戸外に置いたまま越冬できます。
剪定
【花がら摘み】
キャットミントは次々に花が咲くので、終わった花は摘み取りましょう。株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【切り戻し】
多湿になると株が蒸れて弱ることがあるので、梅雨前に切り戻して風通しよく管理します。地際から10〜20cmの高さを目安にカットして、込み合っている部分があれば、すかし剪定をしておくとよいでしょう。
【冬の刈り取り】
キャットミントは、基本的に寒くなると落葉して越年します。枯れ葉などをいつまでも残しておくと、病害虫の越年場所となってしまうことがあるので、地上部が枯れたら新芽を残し、枯れ葉や茎を地際近くで刈り取っておくとよいでしょう。
キャットミントの増やし方
キャットミントは、さまざまな増やし方ができます。ここでは、増やし方について解説します。
挿し芽
挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。たくましいですね! 植物の中には挿し芽ができないものもありますが、キャットミントは挿し芽で増やせます。
キャットミントの挿し芽の適期は、5〜6月か9月下旬〜10月です。新しく伸びた茎を2節以上つけて、切り口が斜めになるように切り取ります。採取した茎(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚取ります。セルトレイを用意して新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。根が回ってきたら黒ポットに鉢上げして育苗し、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
株分け
キャットミントの株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りを図ります。株分けの適期は3〜4月か、9月下旬〜10月です。株を掘り上げて数芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直します。それらの株が再び大きく成長し、株が増えていくというわけです。
種まき
種まきするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなります。
キャットミントの種まきの適期は3〜5月か、9月下旬〜10月です。種まき用のセルトレイにハーブ用または山野草用にブレンドされた市販の培養土を入れ、1穴当たり1〜2粒ずつ播きます。種が隠れる程度に土を薄くかけ、はす口をつけたジョウロで高い位置から優しい水流で水やりをしましょう。乾燥しないように管理し、発芽後は日当たりがよく、風通しのよい場所で管理してください。本葉が2〜3枚出始めたら、黒ポットに植え替えて育苗します。ポットに根が回ってしっかりした株に育ったら、植えたい場所に定植しましょう。
キャットミントの病害虫
【病気】
キャットミントにはほとんど病気の心配はありませんが、灰色かび病が発生することがあります。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほどで多湿の環境下で発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は間引いて、風通しよく管理してください。適用する殺菌剤を散布して早めに防除してもよいでしょう。
【害虫】
キャットミントに害虫がつく心配は、ほとんどありません。
キャットミントの楽しみ方
地際近くから花茎を長く立ち上げ、濃い青紫色の花を咲かせるキャットミントは、株元が寂しくなりがちな草花と相性よくまとまります。特にバラとは開花期が揃い、バラの花色にない青紫の花を咲かせて花姿も異なるので、相性抜群。アーチやオベリスクなどに仕立てたつるバラなどは足元が寂しくなりがちなので、その足元をキャットミントで彩るのもおすすめです。
キャットミントで庭やベランダを彩ろう!
株が大きく育ち、花穂を伸ばして青紫の花をびっしりとつけるキャットミントの姿は迫力があり、初夏のガーデンに重宝します。多年草のため、一度植え付ければ毎年花を咲かせてくれるコストパフォーマンスのよさも魅力です。寒さに強く丈夫な性質なので、ガーデニングの初心者にもおすすめ。ぜひ庭やベランダに迎え入れてみてはいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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