みなさんはジャーマンアイリスをご存じですか? 「レインボーフラワー」とも呼ばれ、アヤメの仲間の中でも花が大きく、さまざまな花色があり、多彩な表情を楽しむことができます。また丈夫な性質で初心者でも育てやすく、栽培も簡単です。ここでは、人気のジャーマンアイリスの基本情報から育て方のポイントまでご紹介します。
目次
ジャーマンアイリスとは?
アイリスは、ヨーロッパから中近東にかけて分布するさまざまなアヤメの仲間(アイリス)を交配させてできた園芸品種グループ。Iris germanica(ドイツアヤメ)が交配の元となっているため、一般にジャーマンアイリスと呼ばれています。ヨーロッパで広く品種改良が行われた結果、黄土色や黒に近い紫色まで、まさにレインボーカラーともいえる絶妙な花色が生まれました。近年、ヨーロッパはもちろん、アメリカ西海岸での育種も盛ん。雨量が少なく、乾燥した地中海性気候を好み、高温多湿な日本の気候は少し苦手ですが、ポイントを押さえることで問題なく栽培できます。
ジャーマンアイリスの基本データ
ジャーマンアイリスは、アヤメ科アヤメ属の多年草で、開花期は5~6月。耐寒性・耐暑性ともに強く、日本の環境であれば植えっぱなしで問題ありません。ただし多湿環境と酸性土壌を嫌うため、水はけのよい土に植え付けましょう。植え替えや株分けは春か秋に行います。
育種の歴史
アイリスの育種の歴史は古く、1800年代にはヨーロッパ周辺に自生していた多数のアイリス属を交配し、品種改良が始まっていたようです。中でもフランスのレモンという人は、多数の品種を作出・発表しています。しかしその頃のアイリスは、今のような大輪でフリルも豪華という花ではなかったようです。今に続く美しいアイリスの礎を築いたのは、ケンブリッジ大学の生理学者マイケル・フォスター卿でした。さらに品種改良が進み、膨大な品種数となったため、育種家のウィリアム・ダイクスがアイリス属の分類の基礎を確立。ダイクスはまた、大輪の黄花品種を世界で初めて作出したことから、その後創設された、最も優れた品種に贈られる賞に「ダイクスメダル」という名が冠せられ、後世に語り継がれています。ヨーロッパで始まったアイリスの品種改良の波ですが、今はその場をアメリカに移し、膨大な数のジャーマンアイリスが毎年作出されています。
ジャーマンアイリスの育て方
地植えでも鉢植えでも育てやすいジャーマンアイリスですが、ポイントを押さえることで早く株を充実させ、より多くの花を咲かせることができます。ここではジャーマンアイリスの栽培方法について解説します。
植え付け
植え付けの適期は、主に春と秋です。3月中、または9月下旬〜10月を目処に行いましょう。アイリスの根はショウガのような球根となっています。地植えの場合は、水はけをよくするために高畝を作るとよいでしょう。植え付け時は球根を横向きにし、半分くらいが土の上に出るように浅く植えます。よく成長するので、株と株の間は50cmほど間隔を空けましょう。また鉢植えの場合は7号以上の少し大きめの鉢を用意します。植え付ける際は鉢底部にゴロ土を敷き、水はけのよい用土を使いましょう。
水やり
地植えの場合、基本的には水やりの必要はありません。植え付け直後や土の乾燥が気になる場合にのみ与えてください。鉢植えの場合、植え付け直後や生育期の春は、土の表面が乾いたらしっかりと与えましょう。それ以外の時期は、土の表面が乾いた後しばらくしてから与えてください。過湿状態だと根が腐りやすいので、乾かし気味に管理しましょう。
肥料
肥料は早春の3月、または秋に、緩効性の化成肥料を月1回程度、株の周りに置き肥してください。肥料過多、特に窒素分の多い肥料や真夏の高温期の施肥は、病気や生理障害を引き起こすことがあるので注意しましょう。
発芽後の管理
ジャーマンアイリスは冬期落葉し、根茎のみとなります。春先になると新芽を展開しはじめますが、その際は雑草を取り除き、よく日光が当たるようすることで固く締まった健全な葉に成長し、病害虫の予防に効果的です。また植え替え1年目は根張りが弱いため、風雨で苗が転倒することがあります。支柱を立てて誘引しておくことで、根張りが安定し生育速度もスムーズになります。新芽が十分展開した後は、開花期。花は雨で傷みやすいので、鉢植えであれば雨の当たらない軒下などに移しておくと、長く観賞することができます。
植え替え
同じ場所で長期間育てていると大株になり、葉数が増えてきます。その場合、花数が少なくなる傾向があるため、株分けも兼ねて植え替えを行います。植え替えの適期は、主に春と秋。3月中、または8~10月を目処に行いましょう。植え付ける方法は、植え付けの項を参照ください。
株分け
適期は8~9月です。特に寒冷地では早めに株分けを行い、寒くなる前にしっかりと根を張らせておくと、翌年の立ち上がりがよくなります。株の分け方は、親株と子株の分かれ目でカットするか、割り取ります。その際、1つの株に1~3個程度は芽が付いている状態にしておきましょう。株分け後は葉を半分ほどに切り、葉からの水分の蒸散量を抑えることで株の負担を減らすことができます。数日風通しのよい日陰に置き、切り口をよく乾かした後に植え付けます。
ジャーマンアイリスの注意すべき病気・害虫
基本的には丈夫で、花も栽培も手間なく観賞でき、管理も楽です。病害虫にも強いジャーマンアイリスですが、過湿状態には注意する必要があります。ここでは主な病害虫の注意すべき環境と、対処法について解説します。
軟腐病
梅雨時や水の与えすぎなど、過湿状態が続くと根に細菌が入り込み、株を腐らせてしまう「軟腐病」にかかりやすくなります。早期発見できれば、根を掘り上げ、薬剤処理をしたり根をよく乾燥させることで再度植え付けることができますが、病気の広がりを抑えるために基本的に処分することになります。まずは病気にさせない環境作りを行いましょう。
アブラムシ
葉にアブラムシが付くことがあります。見つけ次第手で取り除くか、殺虫剤を使って対処しましょう。風通しをよくし、時々葉水などを行うことで予防できます。
ガーデニング初心者におすすめのジャーマンアイリス
ジャーマンアイリスは、過湿にさえ注意すれば、丈夫で園芸初心者の方でも綺麗な花を咲かせることができる、育てやすさが大きな魅力です。多くの品種があるので、たくさん集めると庭やベランダを華やかに彩ってくれることでしょう。みなさんもお気に入りの花色を探して、育ててみてくださいね。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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