多種多様な形が魅力的なサボテン。入手しやすい種類も多く、育てやすいイメージのあるサボテンですが、枯らしてしまった経験はありませんか? ここでは、サボテンが枯れる原因や対処法、育て方のポイントを解説します。
目次
サボテンが枯れる原因と症状
育てやすくて人気の高いサボテンですが、栽培環境や育て方によっては枯れてしまうこともあります。それでは、サボテンはどのような状態だと枯れてしまうのでしょうか。具体的な症状と原因についてご紹介します。
根腐れ
サボテンが根腐れすると、根元が茶色や黒っぽい色になり、胴をつまむとぶよぶよしています。根元から上に向かって傷みが進行していき、ぐらぐら動く状態になります。根腐れの原因は、水のやりすぎなど。根が腐ると養分を吸収できず、細胞が死んでいきます。サボテン内部から傷みが進行するため外からでは分かりにくく、気が付くとかなり症状が進行している場合があります。
葉焼け
サボテンが葉焼けすると、表面が白や黄色になったり黒く焦げたように変色します。艶がある種類の場合は艶が失われ、ザラザラした質感になります。直射に晒されたり、長時間日光に当たりすぎるのが葉焼けの原因。強い光で表面から細胞が壊死し、光合成できなくなります。また、葉焼けし壊死した部分を中心に、腐食が進行する場合があります。
栽培環境が悪い
サボテンをどのような場所に置いていますか? 多くのサボテンが好むのは、風通しと日当たりのよい環境。風通しが悪く、じめじめした日陰や、雨が当たる場所に置いているとうまく生育できず、病気や害虫に対しての抵抗力が弱くなり、枯れやすくなります。
また、鉢のサイズも重要です。大きすぎると鉢に入っている土の量が多くなり、土の中の水分量も多くなります。根の過湿が苦手なサボテンは、根が吸い上げる以上に土が湿っている状態が続くと、根の周りの土が乾きにくく、根腐れしやすくなります。このように鉢が大きすぎると根腐れの原因となりますが、あまり小さすぎても根詰まりを起こし枯れてしまう原因に。鉢はサボテンの直径と同じか、一回り程度大きなサイズが適しています。
土が悪い
購入したサボテンは、どのような土に植えられているでしょう。お店によっては、化粧土や化粧砂に植え固められていることがあります。これらの土は長期的な栽培には向いていないので、サボテンに合った土に植え替える必要があります。栄養分が不足すると痩せてしぼんだ状態になり、形が変わってしまうほどの栄養不足になると、元の姿に戻るまで長い時間がかかります。また、水はけの悪い土に植えていると根腐れの原因になります。市販のサボテン・多肉植物用の土や小粒の赤玉土、鹿沼土、軽石などを中心に配合したものなど、水はけのよい用土を使うようにしましょう。
害虫や病気
多くの植物と同様に、サボテンも病気にかかったり、害虫被害を受けたりします。害虫には主に、サボテン表面に被害を与える種類と、土の中の根に被害を与える種類がいますが、養分を吸われて傷がついたサボテンは、表面がザラザラしたり変色したり、艶が失われた状態になります。さらに、害虫はしばしば病気を媒介します。病気にかかると病変部分が黒ずむ、しぼむ、傾く、腐食するなどの症状が見られます。
枯れかけたサボテンを復活させる方法
サボテンが枯れる主な原因として、根腐れ、葉焼け、環境、土、病害虫を挙げました。しかし完全に枯れていない場合、適切に対処すれば復活可能なケースもあります。ここではサボテンをさまざまな被害から救出し、復活させる方法について解説します。
根腐れは胴切りにして挿し木する
根腐れしてしまったサボテンは栄養を吸収できないばかりか、根元から腐食が進行します。腐食を止めて新しい根を出させるには、傷んだ部分を切り落とす「胴切り」という方法があります。緑の固く元気な部分が残っている場合は、胴切りで復活する可能性があります。手順は以下の通りです。
- カットするサボテンのサイズによって、ハサミ、カッター、小刀などを用意します。断面がなめらかでないと発根しにくいので、切れ味がよい刃物を使用しましょう。カットする前に、使う道具の刃を消毒しておきます。また、棘が鋭いタイプの場合、けがをする可能性があるので、棘が通らない厚手のゴム手袋などを着用しましょう。
- サボテンを地面と平行に切断します。腐敗していない固い部分で切りましょう。乾燥時に中央がくぼむ分を考慮し、凸形になるように切り口を整えて消毒しましょう。
- 切り口を上に向けて乾燥させ、表面が乾いたら新聞紙などで軽く包みます。風通しのよい場所でさらに7~10日ほど切り口をしっかり乾燥させます。
- 切り口を下にして清潔な新しい土に植えます。グラグラしていると発根しにくいため、支えを添えておくのも有効です。
葉焼けは変色部分を切り落とす
葉焼けして変色してしまったサボテンも、傷みが部分的であれば復活する可能性があります。変色したりぶよぶよした部分を消毒した刃物を使って切り落とし、殺菌剤を塗ります。ただし、葉焼けした部分が広範囲の場合は復活が難しい場合もあります。葉焼けした部分は元に戻ることはありません。したがって、葉焼けする前に対処することが大切です。
長く日陰に置いてあったサボテンを急に日当たりのよいところに移動したりすると、葉焼けの原因となります。サボテンを移動する場合は、環境に慣れるように、それまで置いていた場所よりも少し明るい場所に1週間置いてから、さらに少しだけ明るい場所に1週間といった具合に、少しずつ強い光に慣らしながら置き場所を移動しましょう。また、風通しが悪い中で長時間日光を浴びていると焼けることもあります。特に夏は直射を避け、室内に入れたり、寒冷紗などのメッシュ素材の布で日よけをするとよいでしょう。室内で管理するときも、直射日光が当たらないように注意しましょう。
栽培環境や土が悪いときは環境を整える
サボテンを枯らさないためには、適した土に植え、栽培環境を整えることが大切です。サボテンを購入したら、まずは土の様子を観察。過度に湿っている、株がグラグラしている、土の表面がカチカチになっている、化粧土などで固められているといった状態であれば植え替えます。植え替える土は、サボテン・多肉植物用のものを用いるとよいでしょう。根が少ない場合は一回り小さな鉢に、根詰まりしているようであれば一回り大きいものに植え替えます。植え替え後は適切な場所で栽培しましょう。サボテンは一般に、明るく風通しのよい、雨の当たらない環境で管理します。日当たりを好みますが、真夏の午後など暑い時間帯には直射日光に当たって葉焼けしないように注意しましょう。逆に日光が不足すると、ヒョロヒョロと徒長したり、病気の原因になるので、様子を観察しながら適した場所を探してみましょう。
害虫は駆除と薬剤で対処する
サボテンにつく害虫は小さな虫が多いので、日頃の観察が重要です。傷んだ部分があれば、害虫が付いていないかじっくり見てみましょう。また、植え替え時には根に害虫が付いていないか確認しましょう。害虫を見つけたら速やかに駆除します。変色したり腐ったりした部分があれば取り除き、殺菌剤を塗ります。被害が広範囲の場合は、必要に応じて胴切りしましょう。複数の株を育てている場合、害虫を見つけたら他の株にも繁殖している可能性があるので、忘れず確認を。害虫が付かないよう、定期的に殺虫剤を散布し防除するのも有効です。
サボテンの育て方のポイント
ここまでサボテンが枯れてしまう原因と対処法を解説しましたが、ここからは枯れる原因を未然に防ぎ、元気に育てるポイントをご紹介します。
水やり
サボテンが枯れる原因として最も多いものの一つが、根腐れ。根腐れは水のやり方が原因で起きることが多いです。サボテンは季節によって必要な水の量が変わるため、季節に応じて調整することが大切です。盛んに生育する春〜秋は、土の表面が乾いたらたっぷり与えましょう。2週間ごとに水やりするくらいのペースです。成長が緩慢になる真夏の高温期と冬は、軽く湿らす程度にします。3~4週間に1回水やりするくらいのペースで十分です。夏は日中に水をやると気温が上がって蒸れるので、夕方から夜に水やりしましょう。一方冬は気温が低い時間帯に水やりすると根が傷みやすいため、比較的暖かい日の午前中や昼間に水やりするようにします。
適した用土と鉢
サボテンにはほどよい保水性があり、かつ排水性にも優れた土が適しています。市販のサボテン・多肉植物用の培養土を使うと手軽で便利です。自分で作る場合は、赤玉土4:鹿沼土3:腐葉土3に緩効性粒状肥料を混ぜたものや、赤玉土4:鹿沼土2:軽石2:腐葉土2に緩効性粒状肥料を混ぜたものなどがよいでしょう。サボテンの植え替えは、一般に生育が始まる直前の春に行います。鉢底穴から根が出てきたり、カチカチになって根詰まりしているようであれば、一回り大きい鉢に植え替えます。根が少ないようであれば一回り小さい鉢に植え替えましょう。水やりしてもなかなか染みこまない場合も、水はけが悪くなっているので植え替えます。購入した時に化粧砂などで固められている場合は、土を取り除き適切な用土で植え直します。鉢からサボテンを出してすぐ植える場合は、植え替え後7〜10日ほどは水やりを行わないようにしましょう。鉢からサボテンを出して土を落とし、7〜10日ほど乾かしてから植え付けた場合は、すぐに水を与えてもかまいません。
肥料の与え方
サボテンの故郷は過酷な環境が多いので、適切な日光と水と風があれば特に肥料がなくても育ちますが、適度に与えれば成長をサポートできます。植え替えるときに元肥として土に混ぜ込んでおくとよいでしょう。サボテン用に販売されている培養土には、あらかじめ肥料が配合されているので不要です。追肥する際は、液体肥料を与えます。肥料が多いと徒長したり、根を傷めたりすることがあるので、与えすぎに注意しましょう。
適した栽培環境
サボテンは適度に日の当たる風通しのよい場所を好む種が多いです。一方で、強い直射日光が長時間当たると深刻なダメージを受ける場合もあります。遮光ネットをかけたり、カーテンなどで遮光するなど工夫をしましょう。また、花芽がつく頂点に水が溜まるとそこから腐ったり、過湿になると根腐れを起こすので、直接雨に当てないようにしましょう。種類にもよりますが、一般に5~40℃の環境で育つため、5℃以下になる場合は室内に入れます。
注意すべき病害虫
サボテンに被害を与える害虫は、カイガラムシ、ワタムシ、ハダニ、ネジラミなどが挙げられます。花芽や新芽は柔らかく害虫が付きやすいので、注意して観察します。カイガラムシやワタムシは刺座(とげの付け根の綿毛のような器官)や溝に付着することが多いです。見つけたら取り除き、殺虫剤で駆除します。
ハダニは高温期の空気が乾燥している時によく発生します。非常に小さいので、被害が進行するまで気がつかないこともあります。湿り気を嫌うので霧吹きで水をかけるだけで防止できることもありますが、水のやりすぎにならないよう注意が必要です。
ネジラミも乾燥を好む害虫で、地中の根につきます。夏と冬は水やり回数が減り、土が乾燥した状態になるので注意が必要です。植え替え時に発見することが多いネジラミですが、発見した場合は、よく洗って殺虫剤で駆除しましょう。また、植える時に殺虫剤を混ぜ込むのも有効です。
多湿な環境に置いておくと病気が発生しやすいため、風通しのよいところで育てましょう。病気が発生した場合は、病変を取り除き消毒します。病変を早く見つけると腐食が少なくて済むので、回復する可能性が高まります。病気や害虫被害を未然に防ぐために、定期的に殺虫殺菌剤を散布するのも有効です。
増やし方
サボテンは挿し木や株分け、種まきで増やすことができます。サボテンの根元についている子株を切り取って増やすことを挿し木という場合もありますが、一般的にはこれは株分けに当たります。根元や株の側面などにできた小株を株分けする場合は、切り取った後7〜10日程度切り口を乾燥させてから土に挿しましょう。やがて根が出てきて新たな株となります。細長いサボテンは、途中で胴切りにすると同様に挿し木することができます。元株のほうは、株元や切り口の近くなどから新しい株を作って生育します。
サボテンは華やかな花も魅力の一つ。花が咲いたら受粉させて種子を採り、種まきしてみましょう。種まきは春か秋が適期です。湿らせた土に等間隔で播き、霧吹きして空気穴をあけたラップをかぶせ、発芽までは乾かないように管理します。発芽したらタイミングを見て植え替えます。
適切な育て方でサボテンを枯らさず楽しもう
サボテンはインテリア性も高く入手しやすい身近な植物の一つですが、突然枯らしてしまった経験がある人も多いのではないでしょうか。今回ご紹介したポイントを参考に、水やりや日当たり、病害虫に注意すると、枯らさずに健やかに長く育てることができます。植物を育てる際に大切なのは、よく観察すること。調子を崩しているようであれば枯れる原因がないかを確認し、傷みを見つけた場合は速やかに対処し、最小限の被害で抑えましょう。ぜひ多種多様なサボテンの中から自分の環境に合ったものを見つけ、適切な育て方で楽しんでみてください!
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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