まるでアクセサリー! ハート形の可愛い庭の花「タイツリソウ」

Karen Faljyan/Shutterstock.com
茎を釣り竿、花を鯛に見立てて「タイツリソウ(鯛釣草)」。まるで童子の「浦島太郎」が釣り上げた鯛を肩にかついで意気揚々と帰ってくるような可愛らしい姿です。タイツリソウが咲くのは5月初め。折しも子供の日。天真爛漫な草姿は、あなたの庭にパワーを与えてくれるでしょう。育て方も簡単で、丈夫なタイツリソウをコレクションに加えてみませんか。
目次
季節の合間をつないでくれるタイツリソウ

春爛漫と咲き誇っていた桜も散り、いつしか葉桜となる頃。徒長したパンジーやビオラ、枯れ始めたチューリップやヒヤシンスの葉などを片付けながら、移りゆく季節に「春愁」の言葉が重なります。そんなもの憂い心を元気づけてくれるのが「タイツリソウ」。弓形に伸びた茎に、鮮やかな濃いピンクのハート形の花をいくつも吊り下げて咲く愛らしい草花です。
タイツリソウは、ケシ科ケマンソウ属の多年草。原産国は中国東北部から朝鮮半島。自生地は森林や湿った深い谷間にあります。日本には室町時代に渡来し、古くから栽培されてきました。民家の半日陰の庭に咲いている姿がしばしば見られます。

多年草のため、秋には茎や葉が枯れて地上部がなくなり休眠に入ります。根の状態で冬を越し、翌年また芽吹きます。タイツリソウは「ケマンソウ」という別名があります。花の形が、寺院のお堂を飾る装飾品「華鬘(ケマン)」に似ていることから名付けられたものです。華鬘とは「華やか」な「草や花で作った髪飾り」という意味。素敵な名前ですね。

ちなみに、英語では「bleeding heart(血を流す心臓)」という名前です。花の先に滴のような突起があることから名付けられたのでしょうか。花言葉は「失恋」。血の涙を流しているような花という見立てです。ドラマチック!
また、葉がボタンの葉に似ているため、フジボタンやケマンボタンという別名があります。原産国の中国では、花が巾着に、葉がボタンに似ているためか、「荷包牡丹(きんちゃくぼたん)」と呼ばれているそうです。こうしたいろいろな名前の由来を知るのも興味深いですね。
花色、葉色のバリエーションに注目! タイツリソウの品種
ピンク色の花のほかに、次の花色の品種があります。
白花タイツリソウ

花の色が白色に品種改良されたもので、栽培環境によってクリーム色っぽくなったり、真っ白になったりします。涼しげな姿が魅力的で、ほのかな優しい香りが楽しめます。ホワイトガーデンの素材としてもおすすめ。
タイツリソウ‘バレンタイン’

花の色は濃い紅色。花だけでなく、茎や葉もピンクのタイツリソウより濃いのが特徴で、庭での存在感は抜群。まるでオブジェのように目を惹きつけ、個性的なワンシーンを演出するのに活躍してくれます。耐寒性が強く−40℃程度まで耐えられます。
タイツリソウ‘ゴールドハート’

葉の部分が美しい黄色の品種。太陽が当たると金色に輝いて見える様子が名前の由来。
カラーリーフプランツとしても親しまれており、花壇を豊かに彩るのに欠かせません。補色のブルー、紫系の花と一緒に植えるとお互いが引き立ち、きれいですよ。
<ゴールドハートとの混色におすすめのブルー・紫の春の花>
1茎に10〜15輪の花が連なって咲く姿が愛らしい

芽が動き出すのが3月頃。ぐんぐん成長し、4月の終わりから6月にかけて花をつけます。
草丈は30〜60cm程度。多年草ですから年々大株になり、たくさんの花茎に10〜15輪ほどの花を吊り下げて咲くさまは見事です。花が咲き終わったら、茎の根元から切り取ってしまいましょう。あまり長い間そのままにしておくと、種子がついて栄養が奪われ、株が弱ってしまいます。ある程度開花が進んだら、切り花として楽しむこともできます。株が成長している3〜6月に肥料を与えて、しっかり管理しましょう。秋が近づくと地上部の葉が枯れ込み休眠期に入るので、基本的に肥料は不要です。
初心者にもおすすめの丈夫なタイツリソウの育て方

育成環境
寒さには大変強い一方、暑さと強い日差しが苦手なタイツリソウ。午前中は日当たりがよく、午後には日陰になるような場所が適しています。
年々大株になるため、庭植えの場合は花壇の前面ではなく、やや中段に植えると全体のバランスがよいでしょう。
建物の陰や落葉樹の下など、明るい半日陰で、少し湿り気のある場所などもおすすめです。
夏は直射日光に当たると葉焼けを起こしてしまうため、日除けをするなど注意して管理してください。
土づくりと植え付け
タイツリソウの植え付けは、3〜4月、または10〜11月が適期です。その時期に苗を入手して植え付けましょう。
タイツリソウは水もちと水はけのよさ、両方を兼ね備えた用土が適しています。
地植えの場合、20cmほど掘ってたっぷり腐葉土をすき込んでおくとよいでしょう。株間は20〜30cmほど。
鉢植えの場合は、市販の草花用培養土でも十分です。自分で配合するなら、赤玉土と腐葉土を混ぜ込んだ土に少量のパーライトを加えた用土を使用します。根が深く伸びるため、底の深い鉢に植え付けることがポイント。その後は、生育状態を見ながら、2〜3年に1回植え替えをして根詰まりを防ぎます。
タイツリソウの根はゴボウのような太い直根なので、どちらかというと、鉢植えより地植えにしたほうが花つきはよいでしょう。また、植え付けの際は根を傷つけないように注意しましょう。
水やりと肥料

肥料は植え付けの際、元肥としてカリウムやリン酸を多く含んだ緩効性化成肥料か、牛ふん堆肥を土の中に混ぜ込みます。
その後は3月から9月にかけて、液体肥料を2,000倍程度に薄めたものを1週間に1回与えます。夏の間は3,000倍に薄めて与えたほうがいいでしょう。
地上部が休眠したら肥料は与えません。
水やりは植え付け時にたっぷり与えるのはもちろんですが、その後は土の表面が乾いてきたら水を与えてください。やや湿った場所を好むため、土を乾かさないように適度な湿度を保つのがポイント。
鉢植えの場合は、鉢底から水が流れる程度にたっぷり与えます。
冬は休眠期に入りますが、水を与えないと枯れてしまうため、やや控えめに水やりしてください。
増やし方
タイツリソウは株分けか、挿し芽で増やします。
株分けは3〜4月または10〜11月の植え替えと同時に行います。根を傷つけないように注意して、自然に分かれているところで分けます。1つの株に、芽が3つ以上つくように分けてください。根の切り口は、放置すると雑菌が入る恐れがあるため、癒合促進剤や殺菌剤を塗って保護しておきます。
挿し芽とは、植物の一部を切り取り、発根を促して増やす方法です。新芽が伸びてくる春、3〜4月に元気のよい茎を3cmくらいの長さにカットし、1〜2時間水を吸わせた後に、肥料を含まない土か、挿し芽・種まき専用土などに挿してください。
病害虫
タイツリソウは丈夫で病気にはほとんどかかりません。一方、害虫には注意が必要です。
3〜5月にかけてはアブラムシに注意。若葉や新芽の汁を吸うため成長に悪影響を及ぼします。大量発生しやすいため、見つけたら早めに殺虫剤を散布して駆除しましょう。アブラムシは光りものが苦手とされるため、園芸用のシルバーテープなどを利用するのもよいでしょう。
晩春から初夏、初秋の年2回ほどはヨトウムシに注意。ヨトウムシは昼は土の中に隠れていて、夜になると出てきて葉や茎を食い荒らす害虫。葉や茎を集団で食害するため、気付いたら葉が丸坊主になっていた、なんてこともあります。葉裏に大量に卵を産みつけるため、これが孵らないうちに葉ごと処分します。こまめに葉裏もチェックしましょう。
ちょっと注意(毒について)

タイツリソウはとても可愛らしい花姿をしていますが、植物全体に「アルカロイド」という毒を含んでいます。アルカロイドは大脳中枢を麻痺させ、嘔吐、呼吸困難、心臓麻痺など重篤な症状を引き起こす恐れがあります。相当量を摂取しないと死に至るようなことはありませんが、くれぐれも誤って食べないようにしましょう。
日陰の庭を愛らしく演出してくれるタイツリソウをもっと活用しよう!

タイツリソウは、中国から渡来し古くから栽培されてきました。日陰を好む植物だったせいか、あまり注目されていませんでしたが、最近、そのユニークでとても可愛らしい花姿が脚光を浴び人気の花になりました。
タイツリソウの再デビュー!
緑が濃くなっていく時期、タイツリソウの紅色の花が映えて愛らしくも美しく、見る人に元気を与えてくれます。手間があまりかからず、年々大株になっていくのも初心者ガーデナーにとっては、うれしいことですね。ぜひ自分の手でタイツリソウを育ててみましょう。
Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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