【プロが解説】長期開花! トロピカルな花「マンデビラ」の特徴・系統ごとの育て方・楽しみ方
夏を彩る鮮やかな花が魅力のマンデビラは、咲き続ける器官も長い人気の熱帯植物です。品種は2つの系統に大きく分けられ、じつは、育て方と楽しみ方が異なります。この系統の違いが混同されているため、初心者が混乱することもあるようです。ここでは、マンデビラの基本情報と2つの系統の特徴、それぞれの育て方や楽しみ方を園芸研究家の小川泰弘さんが、詳しく解説します。
目次
マンデビラの基本情報
マンデビラは鮮やかな花と艶のある葉が美しい、つる性の熱帯花木です。温度が保たれていれば常緑で周年開花します。寒さには強くありませんが、室内で管理すれば、比較的容易に越冬できます。
キョウチクトウ科マンデビラ属に分類されますが、以前は旧属名のディプラデニアの名で流通していました。近年は多く流通しているマンデビラの品種シリーズ・「サンパラソル」が、そのままマンデビラの名前として知られるようになってきています。
花色は、ピンクや赤、白のほか、アプリコットなども増え、八重咲きの品種もあります。種類や品種によりますが、鉢物として楽しんだり、つるを誘引してグリーンカーテンやトレリスなどに仕立てたりして親しまれています。また母の日ギフト用として、混色で植えた鉢物なども流通するようになってきました。
枝や葉を切ると出る白い乳液は有害で、皮膚につくとかぶれたり痒みがでることがあり、口に入れると嘔吐や下痢などの中毒症状を引き起こします。また、服などにつくと落ちにくいので注意してください。
マンデビラの種類
マンデビラの仲間は南米に110種が知られています。サンデリやスプレンデンス、ボリビエンシスなどの原種から多くの園芸品種が生み出されています。
マンデビラの園芸品種は、花が大輪でつるがよく伸びる系統と、つるの成長が遅いサンデリの系統に大きく分けられます。系統によって育て方や楽しみ方が異なるので注意してください。
マンデビラ・ボリビエンシスはコスタリカからボリビア、ブラジル原産で、花は白い花弁に中心が黄色の美しい原種です。サマードレスの名でも流通しています。つるの成長はやや遅く、マンデビラの2つの系統の中間的な性質です。小~中サイズのトレリスなどに誘引するほか、伸びすぎたつるをピンチしながら支柱なしでも育てることができます。
黄色のマンデビラとして、別属のウレキテス・ルテアがサマーブーケの名で流通しています。花はやや小さめですが、マンデビラよりつるの成長が早く旺盛です。
つるがよく伸びる系統の特徴と楽しみ方
【主な品種】
ローズジャイアント/ルビースター/ホワイトデライト/レッドインパクト/アリスデライト(薄ピンク~白)/ピンクパフェ(八重咲き) /ピンクマリー(半八重咲き)/クライミングサンパラソル
つるの伸びが早く、支柱やトレリスに誘引して育てます。暑さに強く、大輪の花が魅力です。
深型のプランターに植え付けて楽しむのがおすすめです。つるはほとんど分枝しないので、多くの株をプランターに植えると枝数も花も多くなり、大きめのグリーンカーテンに適します。鉢植えの目安は、60cm幅のプランターにポット苗を5株植えます。比較的分枝に優れるクライミングサンパラソルは、ポット苗2~3株程度でよいでしょう。
地植えでも楽しむことができますが、水はけのよい場所を好むので、腐葉土や堆肥などの有機物を2~3割程度すき込み、畝を作るなど、排水をよくして植え付けてください。
つるの伸びが遅い系統の特徴と楽しみ方
【主な品種】
サンパラソル/リオ/アロハ/リップギャル
マンデビラ・サンデリとその改良品種の系統です。つるの成長が遅いので、支柱を立てずにそのまま育てます。剪定せず大株で冬越しさせ、翌年は支柱に誘引してさらに大きく育てると、見応えが出ます。
明るい日陰でも開花しますが、徒長気味になってつる性の性質が強くなります。室内でも朝だけ日光が当たる場所に置けば、一年中室内で育てることができます。
鉢植えやプランターのほか、花壇に植えても栽培が可能です。吊り鉢などに仕立ててもよいでしょう。
花壇に植える際は、排水がよく午前中だけ日光が当たる場所が適します。植え付け前に腐葉土や堆肥などの有機物を十分すき込んでください。
マンデビラの入手
4~5月に出回り始め、小型のポット苗や5号鉢くらいの行燈仕立ての鉢物が流通しています。
つるが伸びる系統のポット苗は花が咲いていないものが多いですが、徐々に鉢を大きくすれば、夏までに十分成長して花を楽しむことができます。
つるの伸びが遅いサンデリの系統は、小苗でも花が咲いているものが多く、成長はゆるやかです。
また品種名がない状態で販売されていることも多いです。
株を購入する際は、葉が黄色くなっていたり、落葉が見られるもの、日陰に置かれて徒長したような株は避けてください。がっしりとした印象で茎が太く、葉が多く葉色もよいものを選びましょう。
マンデビラの育て方
置き場所
日光がよく当たる場所を好みます。最低でも半日以上日光が当たる場所に置いてください。ただし夏の猛暑で株が弱ることも多いので、暑さの厳しい地域では、風通しの悪い場所は避けましょう。また株の調子が悪い場合は、午前中だけ日光が当たる場所に置くか、30~50%程度の遮光ネットを張るなどの対策を行いましょう。
水やり
水やりは用土の表面が乾いてから与えますが、盛んに開花している時期は水切れさせないように注意してください。また用土が湿っているのに水を与えると、根腐れなどを起こしやすいので、与えすぎには十分注意してください。
肥料
よく花を咲かせるには十分な肥料が必要です。三要素が同じ割合で含まれている化成肥料などの置き肥を規定量与え、さらに旺盛に開花しているときは、液体肥料も併用して与えると効果があります。
植え替え
冬越しさせた株は、4月中旬に根鉢を1/3から半分程度くずし、新しい用土を足して植え替えてください。用土は、赤玉土に腐葉土を3割程度混ぜたような排水性がよいものが適します。
病害虫
害虫類は新芽付近にアブラムシが発生するほか、ハマキムシなども発生するので、アセフェート粒剤等をあらかじめ鉢土にまいておくと予防になります。
過湿にすると立ち枯れが発生するので注意してください。
増やし方
挿し木で増やすことができますが、上級者向けで難しいです。挿し木に挑戦する場合は発根剤を使用します。水やりは表土が乾いてから与え、気温20~30℃、かつ湿度の高い環境で管理してください。
2つの系統の作業と冬越し
ここからは、2つの系統で管理方法が異なる点を解説します。
つるがよく伸びる系統の作業と冬越し
つるの誘引と剪定
つるはそのまま伸ばすと上方向だけに伸びて密集してしまうので、横や斜めに適宜誘引してください。
支柱につるを誘引する際は、反時計回りに巻きつけてください。理由は、反時計回りに巻きつく習性があるため、時計回りに巻きつけるとほどけてしまうからです。つるを支柱から外したり、誘引する際に折ってしまっても、軽く折れた程度なら回復することがあります。
ピンチについて
基本的にピンチは必要ありません。ピンチをしても枝数が増えることは少なく、また増えても生育が遅くなり、生育初期は特にその傾向が強いです。
冬越しについて
霜が降りる前の10月中に剪定作業をすませ、室内に取り込むとよいでしょう。場所を取らないよう小さくしたい場合は、株元から20~30cmほど残してばっさりと切り詰めてもよいでしょう。室内の明るい場所で冬越しさせ、用土を乾かし気味に管理してください。寒さなどで地上部が枯れても、5~6月に新芽が出てくることがあります。
つるの伸びが遅い系統の作業と冬越し
剪定、ピンチ
剪定せず放任しても、大株になりながら、よく開花します。吊り鉢では枝が下垂しつつボリューム感が増します。
つるを伸ばさずにコンパクトに楽しみたい場合は、つるが3~4節ほど伸びたら先端付近をピンチすると、新しいつるが伸びてよく開花します。
冬越し前につるが伸びている場合は、軽く枝先を切り詰めてください。コンパクトにしたい場合は、株元から20~30cmほど残して切り詰めてもよいでしょう。大株に育てたい場合は、剪定は不要です。
冬越し
室内の日向から明るい日陰に置けば、容易に越冬します。サンデリとその系統は周年開花性が強いので、冬でも花を咲かせやすいです。開花させるには剪定を行わず、室内の日光がよく当たる場所で最低温度を15℃以上に保つようにしてください。よく開花している場合は、10日に1回を目安に、規定の半分程度の濃度の液体肥料を与えてください。
マンデビラを上手に育てるコツのまとめ
マンデビラの育て方は、以下が大きなポイントとなります。
- 支柱を立てるか否か、系統を確認する
- 日光に当てて育てる
- 夏に暑さが厳しい場合や調子が悪い場合は、半日陰に移動するか遮光する
- 水のやりすぎに注意
- 肥料切れに注意
育て方が分かれば、鮮やかな花が手軽に長期間楽しめます。赤やピンク、アプリコットの花色のマンデビラは、トロピカルな華やかさを演出できます。一方、白や薄ピンク色のマンデビラは、清楚で涼し気な雰囲気に。また背丈の低いものから、つるがよく伸びる品種まで性質が幅広いので、コレクションして育てるとマンデビラだけでも見応えがあるでしょう。花期の長いマンデビラを育てて、夏も元気にトロピカルなガーデニングを満喫してください。
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