さまざまな花色や花姿が揃い、品種も多様に出回っているカーネーション。母の日の贈答用としても、フラワーアレンジや鉢花が人気抜群です。この記事では、カーネーションの基本情報や特徴、育て方のポイントなどについてご紹介します。
目次
カーネーションってどんな花?
カーネーションは、ナデシコ科ナデシコ属(ダイアンサス属)の多年草で、冬でも茎葉を枯らさない常緑タイプです。原産地は南ヨーロッパ、西アジアで、日本には江戸時代にオランダからもたらされました。昔から愛されてきただけに品種改良が盛んで、さまざまな形、色などがあります。また、4〜6月に一季のみ咲くタイプと、開花条件が合えば春から秋まで何度か咲く四季咲きタイプがあります。草丈は10〜30cmほどです。
カーネーションの種類や色
カーネーションは品種が多いので、草姿や花の特徴に注目し、どんなタイプがあるか解説します。
花のつき方で分ける
さまざまな品種があるなかで、カーネーションの草姿に注目してみましょう。最もポピュラーなのがスタンダード咲きで、花茎を伸ばした頂部に1輪のみ咲くタイプ。1輪のサイズが大きく、豪華なのが特徴です。また、スプレー咲きは花茎が枝分かれしてそれぞれの頂部に花が咲くタイプ。花はやや小ぶりになりますが、たくさん咲いてより華やかに見えるのが特徴です。
花の特徴で分ける
ここでは、花姿の特徴に注目します。剣弁咲きは、花弁の縁に細かく切れ込みが入るタイプで、カーネーションといえばこの花姿を思い浮かべるくらい一般的です。丸弁咲きは、逆に花弁の縁に切れ込みが入らない、または、ほとんど切れ込みが見られないタイプで、優しい雰囲気をまとっています。また、スター咲きは、正面から見ると一枚一枚の花弁が細く、まさに星のような花姿をしているのが特徴。一つひとつの花はやや小ぶりですが、ブーケなどに使うと個性が際立ちます。
変わった色のカーネーションも!
生花店では、変わった花色に出合うことが多いですよね。時に青いカーネーションを見つけることもありますが、これは白いカーネーションにブルーのインクを混ぜた水を吸わせ、着色したものがほとんど。七色に染まったレインボーカーネーションも同様です。しかし、品種改良の技術が進んだことによって、近年では青紫色の花を咲かせるカーネーションも出てきました。また、複色咲きや絞り咲きなど、複数の花色が混じり合う品種もありますよ!
色の変化がかわいいカーネーション I♡U(アイラブユー)
カーネーション I♡U(アイラブユー)は、母の日の贈り物にぴったりの名前。咲き始めは濃いピンクで、咲き進むにつれ淡いピンクへと花色が変化し、夢見るようなロマンチックなグラデーションが魅力です。一輪の花のもちが良いうえに、四季咲き性で暑さにも寒さにも強いので長期間、花を楽しむことができます。これだけでもかわいい1鉢ですが、小ぶりの花は寄せ植えや花壇の花材としても最適。寄せ植えの鉢植えは、世界に一つだけの母の日の贈り物になりますよ!
母の日にカーネーションを贈るのはなぜ?
女性社会運動家のアン・ジャービスさんは、アメリカの南北戦争時代に「マザーズデー・ウォーク・クラブ」を作って負傷兵の衛生環境改善に尽力し、敵兵にも分け隔てなく介抱したことで知られる人物です。その娘のアンナさんが、彼女の死後に教会で開催された追悼集会で、母のアンさんが愛した白いカーネーションを配ったことから、白いカーネーションが母の日のシンボルとして広まっていったとされています。
カーネーションが持つ意味! 花言葉や色の意味
カーネーション一般の花言葉は、「無垢で深い愛」。色別の花言葉もあり、白花は「純粋な愛」「愛の拒絶」、赤は「深い愛」、深みのある赤は「私の心に哀しみを」、オレンジは「純粋な愛」、ピンクは「美しい仕草」「上品」「気品」です。
贈る際に気をつけたいポイントは?
黄色いカーネーションには「友情」などの花言葉がある一方、「軽蔑」「嫉妬」と悪いイメージの花言葉を持っているので、贈り物にする際にはご注意を。また、白いカーネーションは、亡くなった母へ贈るものというイメージが強いので、注意したいものです。
カーネーションを育てるポイント
ここまで、カーネーションの基本情報のほか、花や種類、花言葉などについてご紹介しました。では、ここからはガーデニングの実践編として、適した栽培環境や植え付け、水やりや施肥、気をつけたい病害虫、増やし方など、育て方について詳しく解説します。
適した環境
カーネーションの栽培には、日当たり・風通しのよい場所が最適です。日当たりが悪い場所では間伸び気味の頼りない草姿になり、つぼみがついても開かずにしぼんでしまうことがあるので注意しましょう。また、高温多湿の環境が苦手なため、粘土質の土壌や、水場に近くて低い場所など、水はけが悪くてジメジメした環境を嫌います。カーネーションを地植えにする場合は、水はけ・水もちがよくバランスのとれた土壌づくりがポイントです。有機質資材をすき込んでふかふかとした土壌にし、周囲より少し土を盛って高くしておくと水はけがよくなります。鉢栽培では、梅雨時期には軒下など雨が当たらない場所に移動して管理するとよいでしょう。
土づくり
【地植え】
植え付けの1カ月ほど前に、苦土石灰を表土がうっすらと白くなる程度に散布してよく耕しておきます。さらに植え付ける1〜2週間前に腐葉土や堆肥などの有機質資材を投入し、よく耕して水はけのよい土壌をつくっておくとよいでしょう。事前に土づくりをしておくことで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。
植え付け・植え替え
カーネーションの植え付け適期は、3〜5月か10〜11月です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。苗を選ぶ際は、節間が短くがっしりと締まって勢いのあるものを。黄色く傷んだ葉がついているものや虫食い痕のあるもの、ヒョロヒョロと茎葉が長く伸びて弱々しいものは避けたほうが無難です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗を植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、20〜40cmの間隔を取ります。あまり密に植え付けると、風通しが悪くなって株が蒸れることがあるので、余裕を持たせておきましょう。
地植えの場合、数年は植えたままにしてもかまいません。しかし、大株に育って込み合ってきたら掘り上げ、株分けして植え直し、株の若返りをはかるとよいでしょう。
【鉢植え】
鉢の大きさは、入手した苗よりも1〜2回りほど大きい鉢を準備します。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢に仮置きし、高さを決めます。苗をポットから出してみて根が白く回っているようなら、軽く根鉢をくずしてから植え付けましょう。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1年に1度は植え替えることが大切。植え替えの適期は10〜11月です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずし、新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。
水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温の高い昼間に与えると、すぐに水の温度が上がり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に行うようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。カーネーションは多湿を嫌い、いつもジメジメした状態にしておくと根腐れの原因になってしまうので注意。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
ただし、新芽を多く出して旺盛に生育する時期や、開花期には水を欲しがるので、時期に応じた水やりがカーネーション栽培のポイントになります。
肥料
【地植え・鉢植えともに】
3〜5月と10〜11月に、緩効性化成肥料を月に1度を目安に株の周囲にばらまいて、表土を軽く耕して馴染ませます。地植えでは控えめにしてもかまいませんが、鉢植えの場合は肥料を欲しがるので、株の勢いを保つために肥料切れに注意しましょう。
日頃の管理
【摘心】
幼苗を購入した場合は、早めに茎の先端を切り取る「摘心」をしておくと、より分枝して茂り、株張りがよくなります。
【花がら摘み】
カーネーションは次々に花が咲くので、終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【切り戻し】
一通り開花が終わり、草姿が乱れてきたら、切り戻して株の若返りをはかります。新芽がついている部分は残し、地際から草丈の半分くらいの高さを目安にカットしましょう。株が込み合っているようなら、数本の茎を地際から切り取り、風通しをよくします。
夏越し・冬越し
【地植え】
●夏越し
一日中、日差しが強く照りつける場所では遮光ネットを張り、株元に敷きワラをして暑さ・乾燥対策をするとよいでしょう。真夏は鉢に植え替えて、風通しがよく涼しい場所で夏越しさせるのも一案です。
●冬越し
敷きワラをして寒さ対策をしておきましょう。寒さが厳しい地域では鉢上げして軒下か室内へ移動して管理します。
【鉢植え】
●夏越し
強い日差しが照りつける暑い環境にさらされると弱るので、風通しのよい涼しい場所で管理しましょう。
●冬越し
常に寒風が吹き付ける場所を避け、夜でも凍結しない軒下または室内の窓辺などに移動して、暖かい日だまりなどで管理します。
病害虫
【病気】
カーネーションが発症しやすい病気は、灰色かび病、立ち枯れ病などです。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下にて発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、花がらや枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。
立ち枯れ病は、根や地際の茎から感染する病気です。だんだん生育が悪くなり、葉が黄色くなって株全体に病気が広がり、やがて腐って枯れてしまいます。発生初期に適用のある殺菌剤をかけて防除しましょう。病気が広がるようなら、抜き取って処分します。
【害虫】
カーネーションに発生しやすい害虫は、アブラムシ、ハダニなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間です。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期には葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけてあげるとよいでしょう。
増やし方
【挿し芽】
挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し芽ができないものもありますが、カーネーションは挿し芽で増やせます。
カーネーションの挿し芽の適期は、6月頃か9〜10月です。新しく伸びた茎を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した茎(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚切り取ります。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に植え穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。成長して根が回ってきたら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
【種まき】
カーネーションの種まきの適期は、9月下旬です。種まき用のセルトレイに市販の草花用培養土を入れて種を播き、薄く覆土してください。種が流れ出すことがないように、トレイより一回り大きな容器に浅く水を張り、トレイを入れて底面から吸水させます。発芽までは半日陰の場所に置いて、乾燥しないように管理しましょう。
発芽までは1週間ほどかかります。発芽後は日当たり・風通しのよい場所へ移動しましょう。本葉が2〜3枚出始めたら、黒ポットに植え替えて育苗します。10日に1度を目安に液肥を与えると、生育がよくなります。越年してしっかりした株に育ったら、3〜5月に植えたい場所に定植しましょう。
可愛くて華やかなカーネーションを自宅で楽しもう!
カーネーションは華やかな花姿が魅力で、意外にも花色は多様に揃うので、コレクションしてそれぞれの個性を楽しむのもいいですね。一度植え付ければ毎年花を咲かせてくれるカーネーションを、ぜひ庭やベランダに取り入れてはいかがでしょうか。
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