花茎を長く伸ばして、ふわふわとした質感の花を咲かせるアスチルベ。半日陰の環境でもよく育ち、元気に花を咲かせてくれるので、日当たりに恵まれない庭などにも重宝する植物です。この記事では、初夏から花を咲かせるアスチルベの特徴や種類、育て方などについて幅広くご紹介します。
目次
アスチルベってこんな花!
アスチルベはユキノシタ科チダケサシ属(アスチルベ属)の多年草です。原産地は日本、中国、朝鮮半島、北アメリカ。これらの地域に約25種が自生し、日本ではアワモリショウマ、チダケサシなど6種が分布しています。寒さに強く、マイナス15℃程度まで耐えるとされています。日当たりのよい場所を好みますが、半日陰の場所でも生育し、よく開花するので、日当たりに恵まれないシェードガーデンを明るく彩ってくれるとして人気のある植物です。
一度植え付ければ毎年開花してくれますし、株分けで増やしやすいので、コストパフォーマンスにも優れています。春に新芽を出して生育期に入り、開花は5〜7月。落葉性のため、晩秋に地上部の葉を落としますが、休眠して越年するので「枯れてしまった」と判断して抜き取って処分したりしないでください。そのまま春まで待つと、春には再び新芽を出す……というライフサイクルを繰り返します。
種類によって異なりますが、草丈は60〜90cm。株幅は環境にもよりますが40〜80cmと比較的大きく育つので、庭植えの場合はスペースを広めにとっておくのをおすすめします。花色は、赤、ピンク、白などがあります。
アスチルベの特徴は?
アスチルベは、花茎を30cmほど伸ばし、下から頂部に向かって穂状に多数の花をつけます。ふわふわと柔らかな質感で花穂が大きいので、開花期には色の塊となって迫力のあるシーンを演出できます。このような花姿から、アスチルベの花言葉には、「恋の訪れ」「自由」「落ち着いた明るさ」などがあります。
増えてきているアスチルベの種類
アスチルベは優しい雰囲気の花姿が注目されて人気が高まっており、近年園芸品種が増えてきています。ピーチカラーが愛らしい‘ピーチブロッサム’、新葉と花茎がブロンズ色で、白い花とのコントラストが美しい‘カプチーノ’、高性でチェリーカラーの花色がシックな‘マイティチョコレートチェリー’、咲き始めは白で咲き進むとピンクになり、花の終わりは茶色くならずにグリーンになる‘ビジョンインフェルノ’などが人気です。
アスチルベを育てるのに適している場所は?
【地植え】
日当たりのよい場所を好みますが、半日陰の環境でもよく育ちます。水はけ・水もちのよい環境を好むので、腐葉土や堆肥を多めにすき込み、有機質に富んでふかふかとした土づくりをしておくとよいでしょう。
暑さには強いほうですが、近年の酷暑のもとでは葉焼けして株が弱ってしまうことがあるようです。午前中だけ日が差すような東側か、木漏れ日がチラチラと差す落葉樹の足元など、半日陰の涼しい場所で夏越しさせるのがおすすめです。また、真夏は日照りによる乾燥で株が弱ることがあるので、バークチップなどで株元にマルチングをしておくとよいでしょう。冬は葉を落とし休眠して越年しますが、寒さには強いので、植えっ放しにしてかまいません。冬に低温を経験することで翌年の開花につながるので、温室などには移動しないでください。
【鉢植え】
基本的に、日当たり・風通しのよい場所に置いて管理します。真夏は暑さに弱ってしまうことがあるので、風通しのよい半日陰など涼しい場所に移動してください。寒さには強いので、戸外に置いて越冬できます。
アスチルベを上手に育てるには!?
ここまで、アスチルベの基本情報や種類、栽培に適した場所など、多岐にわたってご紹介してきました。では、ここからはガーデニングの実践編として、アスチルベの育て方について詳しく解説します。
アスチルベを植えるのに適した用土
【地植え】
植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕しておいてください。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の山野草用の培養土を利用すると手軽です。自身でブレンドする場合は、赤玉土小粒6、腐葉土4の割合で配合し、水はけのよい土を作るのがおすすめです。
アスチルベの植え付け時期と植え付け方は?
アスチルベの植え付けの適期は、3〜4月か10〜11月です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢をくずさずに植え付けましょう。最後にたっぷりと水を与えます。複数の苗を植える場合は、40〜60cmくらいの間隔を取っておきましょう。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、入手した苗よりも1〜2回り大きな鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから山野草用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出し、根鉢をくずさないよう鉢の中に仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて、植え付けていきます。水やりの際にあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
アスチルベの水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏に水やりする場合、気温の高い昼間はすぐに水の温度が上がって株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方は凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。アスチルベは乾燥するとつぼみがつかなくなったり、株が弱ったりするので、水切れに注意してください。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬でもカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
アスチルベの肥料の与え方
【地植え・鉢植えともに】
植え付け時に元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。
その後は、生育期に入る3〜4月と、暑さがおさまった10月に、緩効性肥料を株の周囲にばらまき、軽く耕して周囲の土に馴染ませます。
アスチルベの剪定や切り戻しは?
【花がら摘み】
アスチルベの終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【剪定】
自然に株姿がまとまるので、基本的に剪定は不要です。冬には地上部が枯れて休眠するので、地際で刈り取っておきましょう。
アスチルベの植え替え時期と注意点
アスチルベの植え替えの適期は、3〜4月か10〜11月です。
【地植え】
地植えの場合は、毎年植え替える必要はありません。しかし3〜4年経つと大株に育ち、根が込んで株が老化してくるので、掘り上げて根を切り分け、植え替えましょう。
【鉢植え】
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して古い根を整理し、根鉢をくずして新しい培養土に植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずして植え替えてください。
アスチルベの増やし方
アスチルベは株分けして増やすことができます。作業の適期は10月頃です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りをはかります。株を掘り上げて数芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿の株が増えていくというわけです。あまり細かく分けると開花しにくくなるので注意してください。
アスチルベは種まきからでも栽培できますが、種子の販売はほぼありません。花に種子をつけさせてとりまきすることもできますが、個体差が出やすいため、親と同じ花が咲くとは限らない点に注意しましょう。アスチルベは強健で株が太りやすいので、株分けして同じ個体を増やすほうが手軽でおすすめです。
アスチルベを育てるうえで注意すべき病気と害虫
【病気】
アスチルベの栽培で注意したい病気は、白絹病、灰色かび病などです。
白絹病はカビが原因で周囲に伝染しやすい病気で、根や茎に発生しやすく、発症初期は地際あたりに褐色の斑点が見つかります。病状が進むと株元の土に白いカビがはびこり、やがて株は枯れてしまうので注意が必要。病株を発見したら、周囲に蔓延させないためにただちに抜き取り、土ごと処分してください。土づくりの際に、水はけのよい環境に整えることが予防につながります。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下で発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
アスチルベの栽培で注意したい害虫は、アブラムシ、ハダニなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、シャワーではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5道ほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要です。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期には葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけてやるとよいでしょう。
ガーデニングにぜひ取り入れたいアスチルベ!
アスチルベは草丈がやや高くなるので、花壇では中段〜後段向き。花穂を長く立ち上げて開花するので、草丈の低い植物を手前に植えると背景として活躍します。また、半日陰の環境でも育つ性質を生かし、シェードガーデンに取り入れるのもおすすめ。葉の質感も繊細なので、花の少ない時期の庭でも存在感を発揮します。
アスチルベを上手に育てておしゃれな庭をつくってみよう
半日陰の環境に馴染んでよく育ち、生命力旺盛なアスチルベ。開花期が長く次々と花が咲き、初夏の庭を華やかに彩ってくれます。ビギナーでも育てやすい植物なので、ぜひ庭やベランダに取り入れてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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