つるを旺盛に伸ばして生育するハツユキカズラ(初雪カズラ)は、白やピンクの新芽が展開し、カラーリーフプランツとして重宝する植物です。フェンスなどの面をみずみずしく彩ったり、グラウンドカバーとしての利用、ハンギングバスケットやプランターの寄せ植えに取り入れて動きのあるラインを出したりと、用途の幅が広いのが特徴です。この記事では、ハツユキカズラについて、基本情報から育て方まで詳しく解説します。
目次
ハツユキカズラ(初雪カズラ)とは? 基本情報
植物名:ハツユキカズラ
学名: Trachelospermum asiaticum ‘Hatsuyukikazura’
英名:Asiatic Jasmine Variegated, Hatsuyuki Kazura
科名:キョウチクトウ科
属名:テイカカズラ属
原産地:日本、朝鮮半島
分類:樹木
ハツユキカズラは、キョウチクトウ科テイカカズラ属の常緑性つる植物。テイカカズラを品種改良した園芸品種で、学名はTrachelospermum asiaticum ‘Hatsuyukikazura’です。
原種のテイカカズラの原産国は、日本、朝鮮半島。古くから日本に自生してきたテイカカズラを品種改良したハツユキカズラももちろん、日本の気候によくなじんで、寒さ暑さに強く、手をかけずとも丈夫に育つ植物です。寒さに強いとはいっても、耐寒性はマイナス5℃くらいまでなので、それよりも気温が下がる寒冷地では、冬は鉢上げして暖かい場所に移動するとよいでしょう。
テイカカズラのライフサイクルは、以下の通りです。4月頃に新芽が動き始めて葉を展開し、5月中旬〜6月中旬に開花。その後も新芽が展開して秋まで成長し続け、晩秋になると葉に赤みが増して紅葉してきます。冬にも葉を落としませんが、寒くなると生育が止まるようです。寒風にさらされると葉が傷んで枯れこむことがありますが、枯れたと判断して掘り上げて捨てないでください。冬を越せば、また春に新芽を出して生育期に入ります。このように、ハツユキカズラは一度植え付ければ毎年楽しませてくれるコストパフォーマンスに優れた育てやすい植物なのです。
ハツユキカズラの花や葉の特徴
園芸分類:庭木・花木
開花時期:5月中旬〜6月中旬
草丈:高さ10〜30cm、つるの長さ50cm以上
耐寒性:やや弱い
耐暑性:強い
花色:ピンク、白
ハツユキカズラは、ピンクや不定形の斑が混じる新葉が展開するのが特徴で、主に葉の美しさを楽しむ植物です。新葉はピンクから白の斑入り葉へ変化し、やがては緑一色になりますが、生育期は次々と新葉が出るため、一株でも変化に富んだ葉色を展開します。また、落葉せずに冬もみずみずしい葉を保つため、一年を通して観賞できるのも魅力です。花期は5月中旬〜6月中旬で、カザグルマのような形をした白い5弁花が咲きます。花径3cmほどの小さな花ですが、開花すると嬉しいものです。
ハツユキカズラはつる性の枝を伸ばして、匍匐しながら覆うように茂っていく植物です。草丈は10〜30cm程度ですが、つるの長さは50cm以上になります。街中をさんぽすると、塀などに茂るその姿を目にすることも多いのではないでしょうか。美しい新芽はカラーリーフプランツとしても、草花の引き立て役としても魅力を発揮。ハンギングバスケットやコンテナの寄せ植えでは、縁取りに利用すると、つる性植物特有の流れるようなラインを作り出し、動きのある景色を演出してくれます。
ハツユキカズラの花言葉や名前の由来
ハツユキカズラの名前は、新芽に白い不定形な斑が入る様子が、うっすらと雪をかぶったように見えることから、「初雪」を連想して名付けられたとされています。「カズラ」は、古くからつる植物を指す言葉です。
ハツユキカズラの花言葉は、「化粧」「素敵になって」「心の灯」など。いずれも、ピンクや白がほんのりとのる新葉の美しさを表現しているようです。
ハツユキカズラの種類・品種
ハツユキカズラは、テイカカズラを品種改良して作られた園芸品種です。テイカカズラの園芸品種として、他にも葉に白い斑が入る‘ニシキテイカカズラ’、葉が黄色くなる‘オウゴンニシキ’、ピンクや白などの斑が入る‘ゴシキカズラ’などがあり、葉の色にバリエーションがあります。
「ハツユキカズラを植えてはいけない」と言われる理由とは?
ネットで「ハツユキカズラ」と検索すると、しばしば「植えてはいけない」「毒性」「デメリット」などの関連キーワードが出てきます。その理由は何でしょうか。
増えすぎる恐れがあるから
ハツユキカズラはつる性の枝を伸ばして這うように広がる植物です。適切な管理を怠った場合は、生育範囲を広げ、気根を出しながらつるを伸ばしてコンクリートにまで張り付くなど、庭や家屋の外壁を覆ってしまったり、他の植物を飲み込んでしまう恐れがあります。とはいえ生育速度はそこまで速くないので、植えっぱなしで手入れをしない、などということがなければ、ハツユキカズラの繁殖力はメリットとも捉えられます。
ハツユキカズラを育てる際は、植え方に注意したり、増えすぎないように適宜剪定をするなどの管理が大切です。
毒性があるから
ハツユキカズラはキョウチクトウ科の分類ですが、「キョウチクトウ」は強い毒性のある植物として知られています。そして、その仲間であるハツユキカズラも有毒植物と言われており、キョウチクトウほどの強い毒性はないものの、小さな子どもやペットがいる家庭では取り扱いに注意するとよいでしょう。
ハツユキカズラの栽培12カ月カレンダー
開花時期:5〜6月
肥料:4〜10月
植え付け:4〜6月、9〜10月
挿し木:5〜7月
ハツユキカズラの栽培環境
日当たり・温度
【日当たり/屋外】日当たり、風通しのよい場所を好みます。基本種のテイカカズラは、半日陰の場所でも生育しますが、ハツユキカズラの美点である斑入り葉を十分に発色させるには、日当たりのよい場所で管理するのがポイントです。植え替え初期のうちは、真夏の強光線にさらされると葉が焼けて茶色く枯れ込んでくるケースがありますが、株が充実して環境に慣れてくると耐性がつく傾向にあるようです。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】暑さ寒さに耐えて戸外で越年する丈夫な性質ですが、寒風が吹きつける場所では葉が傷むことがあります。地植えにする場合は北風が吹きつける場所を避け、鉢植えの場合は冬は暖かい陽だまりに移動して管理するとよいでしょう。
耐寒性・耐暑性
耐寒性はやや弱いですが、-10~-5℃程度までは耐え、南東北ぐらいまでは一年を通して戸外で管理できます。
ハツユキカズラの育て方のポイント
用土
【地植え】
ハツユキカズラは乾燥するのが苦手で、適度に水はけ・水もちのよい土壌を好みます。植え付けの際は、腐葉土や完熟堆肥などの有機質資材を土壌にすき込んで、ふかふかの土作りをしておきましょう。
【鉢植え】
赤玉土(小粒)6、腐葉土3、バーミキュライト1の割合でブレンドした土がおすすめです。または赤玉土(小粒)6、腐葉土4の割合にしてもOK。ビギナーなら市販の草花用に配合された培養土を利用すると便利です。
水やり
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は地中から水が上がってくるため、自然に降る雨に任せてほぼ問題ありません。ただし、真夏に晴天が続いて乾燥しすぎる場合は水やりをして補いましょう。真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
また、真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないようにします。気温が上がっている昼間に水やりすると、水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝夕の涼しい時間帯に行うことが大切です。冬は鉢内が乾きにくくなるので、水やりを控えめにして管理します。
肥料
ハツユキカズラは、一度植え付ければ毎年新芽を伸ばす息の長い植物のため、肥料を補って株の勢いを保ちましょう。美しい斑が入る新芽を盛んに出して生育し続けることが、見映えを保つポイントです。地植え、鉢植えともに、4〜10月の生育期に1〜2カ月に1度を目安に緩効性肥料を与えます。
注意する病害虫
ハツユキカズラは病気や害虫に強いため、ガーデニングの初心者におすすめの植物です。
ただし、繁茂しすぎて風通しが悪くなると、アブラムシやカイガラムシがつきやすくなります。アブラムシ対策として、土壌に混ぜておくタイプの薬剤を植え付け時に施しておくと安心です。カイガラムシは、見つけ次第ハブラシなどでこすり落として駆除します。密に茂りすぎるのを避け、定期的に剪定して風通しよく管理しましょう。
ハツユキカズラの詳しい育て方
ピンクや白がのる新芽が美しいハツユキカズラについて、ここまで特性や基本情報、花言葉やその他の種類などについてご紹介してきました。ここからは、ガーデニングの実践編として、育て方や手入れの方法について詳しく解説していきます。年中美しいエバーグリーンを楽しめるハツユキカズラの栽培に、ぜひチャレンジしてみてください。
苗の選び方
苗を選ぶ際には、葉が黄変しておらず、色艶がよくがっしりした株を選んで購入しましょう。
植え付け
ハツユキカズラの植え付けは4〜6月か、9〜10月が適期です。これ以外の時期に花苗店などで買い求めた場合は、植える場所へ早めに定植します。
【地植え】
土作りをしておいた場所に、入手した苗の根鉢より1〜2回り大きな穴を掘って、軽く根鉢をほぐして植え付けましょう。つるを伸ばして生育するので、複数株を植え付ける場合は50cm以上あけて、広めの間隔を取っておきます。最後にたっぷりと水やりをしましょう。
【鉢植え】
鉢の大きさは、6〜7号鉢に1株を目安にするとよいでしょう。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。ハツユキカズラの苗をポットから取り出して軽く根鉢をほぐして鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら用土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
置き場所は、日当たり、風通しのよい環境を選びます。暑さ寒さに強いので、一年を通して戸外に置いて越年できますが、真夏は半日陰の涼しい場所、真冬は暖かい陽だまりに移動するのが無難です。
剪定・切り戻し
生育が旺盛なため、どこで切ってもかまいません。込みすぎて風通しが悪くなっている部分があれば、適宜切り取ってスッキリさせましょう。また、伸びすぎて邪魔になる場合も適宜カットし、全体のバランスを整えます。ハツユキカズラの開花を楽しみたい場合は、花が終わった後の6月下旬以降に剪定しましょう。
植え替え・鉢替え
ハツユキカズラは根の生育が旺盛で、鉢植えの場合は根詰まりしやすくなります。根詰まりすると斑の発色が悪くなるので、鉢栽培の場合は植え付け適期である4〜6月か、9〜10月に植え替えるのがよいでしょう。
増やし方
繁殖力が強く旺盛に生育するハツユキカズラは、簡単に株を増やすことができます。ここでは、2つの増やし方についてご紹介します。
【挿し木】
5〜7月が適期です。勢いのある茎葉を5cmほど切り取り、清潔な挿し木用の培養土を育苗用トレイなどに入れて、採取した茎葉(挿し穂)を挿しておきます。切り戻して切り取った茎葉を使ってもOKです。水切れしないように管理すると、しばらくして発根するので、黒ポットなどに植え替えて育苗しましょう。株が大きくなったら、植えたい場所に定植します。挿し芽のメリットは、採取した株のクローンになることです。
【取り木】
ハツユキカズラは伸びたつるが土につくと、そこから根を出す性質があります。その発根した部分を掘り取って枝を途中で切り分け、別の場所に植え付けると簡単に増やすことができます。伸びているつるに土をかぶせて、発根を促してもよいでしょう。取り木のメリットは、採取した株のクローンになることです。
夏越し・冬越しはどうする?
【夏越し】
ハツユキカズラは暑さに強いので、特に対策は必要ありません。植え付けた後に真夏の強い日差しにさらされると葉焼けを起こすことがありますが、株が充実すると環境に慣れて順応していきます。
【冬越し】
ハツユキカズラは耐寒性も強いほうで、-5℃までは耐えられます。霜が降りたり雪が降ったりしても、問題なく戸外で越冬可能です。強い北風にさらされると葉が傷むことがありますが、春になれば再び新芽を出して生育を始めるので心配ありません。
ハツユキカズラが枯れる原因
ハツユキカズラは生命力旺盛で大変丈夫なため、メンテナンスの手間はかかりませんが、枯れてしまうのにはそれなりの原因があります。一番のポイントは、水やりのタイミングです。「ハツユキカズラは乾燥に弱い」という特性に注意がいきすぎ、水を与えすぎて枯らしてしまうことが多いといいます。
ハツユキカズラは乾燥を嫌うとはいっても、いつもジメジメとした多湿の状態にしてしまうと根腐れするので注意しましょう。鉢植えで栽培している場合は、「表土が白く乾いたのを確かめてから、鉢底から水が流れ出すまでたっぷりと与える」のを目安にしてください。
寄せ植えやハンギングバスケット、グラウンドカバーに人気のハツユキカズラを育ててみよう!
一年を通して美しいエバーグリーンを楽しめるハツユキカズラ。新芽には白やピンクがのって美しく、晩秋に昼と夜の温度差が大きくなると紅葉する姿も楽しめます。つるを仕立てて壁面などを彩ったり、コンテナやハンギングバスケットの縁取りとして取り入れたり、主役にも脇役にもなる用途の広いハツユキカズラを、ぜひ庭に取り入れてみてください。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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