絶滅危惧種の山野草「オキナグサ」を庭で守り育てよう。育て方と枯らさないコツを解説
orihashi photo/Shutterstock.com
輝く銀色の産毛に包まれて、うつむき加減に咲く姿が愛らしい山野草「オキナグサ」。現在は絶滅が危惧される貴重な存在となっています。「育てるのが難しそう」と思われがちな山野草ですが、オキナグサは山野草の中では比較的丈夫で育てやすい種類です。
この記事では、花から綿毛へと姿を変えるオキナグサの不思議な魅力や栽培の注意点、ポイントになる夏越し方法を詳しく解説。自宅の庭で、貴重な植物を愛でつつ守る楽しみを始めてみませんか?
目次
オキナグサの基本情報

植物名:オキナグサ
学名:Pulsatilla cernua
英名:narrow-leaf pasque-flower
和名:オキナグサ(翁草)
その他の名前:白頭草(はくとうそう)、ネコグサ、ババシラガ、うずのしゅげなど
科名:キンポウゲ科
属名:オキナグサ属
原産地:日本(本州・四国・九州)
形態:宿根草(多年草)
オキナグサはキンポウゲ科オキナグサ属の山野草で、学名はPulsatilla cernua(プルサティア・セルヌア)。原産地は日本で、本州、四国、九州の日当たりのよい山野の草原に分布しています。多年草で、3月下旬頃から芽吹いて4月中旬〜5月に開花した後は晩秋まで葉姿で過ごし、11月下旬頃に落葉して休眠します。翌春には再び芽吹き、一度植え付ければ毎年開花を楽しめる息の長い植物です。草丈は30〜40cm。園芸店では近縁のセイヨウオキナグサも広く流通しています。
オキナグサの花や葉、種子の特徴

園芸分類:草花
開花時期:4月中旬〜5月
草丈:30〜40cm
耐寒性:やや強い
耐暑性:やや弱い
花色:暗赤紫色、赤紫色
オキナグサの開花期は4月中旬〜5月。花は細かい産毛で覆われており、赤褐色の花がうつむくようにして咲きます。ちなみに花弁のように見える部分はじつは萼片。花のサイズは3〜4cmで、花茎を伸ばした先に1輪ずつ咲くのが特徴です。葉は切れ込みが入った2回羽状複葉。花だけでなく、茎葉にも細かな産毛があるため、日差しを浴びると銀色に輝くように見える優雅な姿が魅力です。花後には綿毛が密集した痩果(そうか)ができます。
シードヘッドの美しさも魅力

花の愛らしさもさることながら、花後のユニークな美しさがオキナグサの大きな魅力。花茎が伸び、花後にできる実(痩果)がふわふわとした冠毛に包まれて、白髪のような風変りかつ幻想的な姿になります。このシードヘッドの状態は切り花やドライフラワーとしても人気があります。
風に揺れるオキナグサの仲間のシードヘッド。ri ye/Shutterstock.com
オキナグサの名前の由来と花言葉

オキナグサは漢字で「翁草」と書き、花後にできる種子には長い冠毛がついていることから、老人の髪の毛にたとえて名付けられたとされています。
オキナグサの花言葉は「何も求めない」「清純な心」「背信の愛」「裏切りの恋」「告げられぬ恋」などです。
オキナグサの魅力と育てる楽しさ
この章では、オキナグサの大きな魅力を3つお伝えします。
風にそよぐ優雅な花姿

花の愛らしさはもちろん、花後には冠毛がふわふわと風に揺れる姿も美しく、シードヘッドも観賞価値があります。
和風・自然風ガーデンとの相性

あまり主張しすぎることのない花色でどんな植物とも合わせやすく、和洋のスタイルを問わずよく馴染みます。楚々とした咲き姿は、ナチュラルガーデンやロックガーデンにも相性がよいです。
絶滅危惧種としての価値

オキナグサはかつて本州、四国、九州に分布していましたが、土地の開発や採集などによって現在は絶滅危惧種になっています。したがって、野山に自生しているものを採取して栽培するのは厳禁です。花苗店などで販売されているものは問題なく、種子で増やすことは容易なので自宅で栽培することは保護活動に参加できるという一面もあります。
オキナグサの代表的な種類

オキナグサの仲間は北半球の温帯~寒帯を中心に約45種が分布しています。代表的な品種をいくつかご紹介します。
オキナグサ

日本、中国、朝鮮半島に分布し、赤みがかったチョコレート色の花をうつむき加減に咲かせます。
ツクモグサ

北海道、本州の高山の一部にのみ自生する貴重な品種。クリーム色の花を上向きに咲かせます。
セイヨウオキナグサ

ヨーロッパ原産で、花色は暗紫、赤、ピンク、白など。丈夫で育てやすく、鉢植えでも地植えでも楽しめるため、初心者にもおすすめです。園芸品種も多く、八重咲きの品種もあります。
オキナグサの毒性と栽培のマナー

オキナグサの栽培で注意しておきたいことについてご紹介します。
オキナグサの毒性と子ども・ペットへの安全対策
オキナグサは全草にプロトアネモニンなどの毒成分を含み、触れると皮膚炎を起こし、食すと腹痛などの症状が現れるので、幼児やペットのいる家庭では触ったり、口に入れたりすることがないように管理しましょう。
絶滅危惧種としてのマナーと注意点
オキナグサは絶滅危惧種となっているため、自生地での採取は厳禁です。必ず花苗店で販売されている苗を購入しましょう。丈夫で育てやすく入手もしやすいセイヨウオキナグサを栽培するのも一案です。

オキナグサの栽培12カ月カレンダー
開花時期:4月中旬~5月下旬
植え付け・植え替え:3〜5月、10月頃
肥料:4月下旬~6月、9~10月
種まき:5月下旬〜6月
オキナグサの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】基本的には日当たりのよい場所を好みますが、夏の強い日差しにより葉焼け株が弱ることがあります。落葉樹の下など、夏は木漏れ日がチラチラとさす程度の半日陰になる環境を選ぶとよいでしょう。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】夏の高温や直射日光で弱りやすいので、朝のみ光が差し込む東側か、落葉樹の株元などで栽培します。真夏は鉢に植え替えて風通しのよい涼しい場所に移動して管理するのも一案です。また水はけのよい環境を好み、地植えの場合は植え付けの際に周囲より土を盛って少し高くしておくとよいでしょう。
耐寒性・耐暑性
オキナグサは耐寒性が強く、耐寒温度はマイナス15℃前後。特に防寒対策をしなくても冬越しし、冬に地上部が枯れても翌春に新芽を出して成長します。ただし、乾燥や強い凍結には注意が必要です。高温多湿は苦手なので、夏は涼しく風通しのよい半日陰などで管理しましょう。
オキナグサの育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付けの2〜3週間前に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕しておきます。水はけのよい環境を好むので、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めにすき込み、10〜20㎝くらい土を盛って周囲よりも高くしておくとよいでしょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の山野草用培養土を利用すると手軽です。
水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の土を狙って与えてください。
真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後はほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメとした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面がしっかり乾いたから、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬に地上部が枯れても、カラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
肥料

【地植え】
植え付け時に元肥として緩効性肥料を施します。追肥は4〜6月、10月に2週間に1度くらいを目安に液肥を与えるとよいでしょう。
【鉢植え】
植え付け時に元肥として緩効性肥料を施します。生育期は、真夏を除いて2週間に1度くらいを目安に液肥を与えるとよいでしょう。鉢栽培の場合は水やりと共に肥料成分が流亡しやすいので、株の状態を見て勢いがないようであれば、液肥を施して様子を見守ってください。
注意する病害虫

【病気】
オキナグサに発生しやすい病気は、白絹病、軟腐病などです。
白絹病はカビが原因の周囲に伝染しやすい病気です。根や茎に発生しやすく、発症初期は地際あたりに褐色の斑点が見つかります。病状が進むと株元の土に白いカビがはびこり、やがて株は枯れてしまうので注意が必要。病株を発見したら、周囲に蔓延させないためにただちに抜き取り、土ごと処分してください。土づくりの際に、水はけのよい環境に整えることが予防につながります。
軟腐病は細菌性の病気で、高温時に発生しやすくなります。特に梅雨明けから真夏が要注意。
球根や成長点近くの茎、地際の部分や根が腐って悪臭を放つので、発症したのを見つけたら、周囲に蔓延しないようにただちに抜き取り、周囲の土ごと処分してください。予防としては、連作を避け(同じ科に属する植物を同じ場所に植え続けないようにすること)、水はけをよくしていつもジメジメとした環境にしないこと。また、害虫に食害されて傷ついた部分から病原菌が侵入しやすくなるので、害虫からしっかり守ることもポイントになります。
【害虫】
オキナグサに発生しやすい害虫は、ナメクジ、アブラムシなどです。
ナメクジは花やつぼみ、新芽、新葉などを食害します。体長は40〜50㎜で、頭にツノが2つあり、茶色でぬらぬらとした粘液に覆われているのが特徴。昼間は鉢底や落ち葉の底などに潜んで姿を現しませんが、夜に活動します。植物に不快な粘液がついていたら、ナメクジの疑いがあるので夜にパトロールして捕殺してください。不可能な場合は、ナメクジ用の駆除剤を利用して防除してもよいでしょう。多湿を好むので風通しをよくし、落ち葉などは整理して清潔に保っておきます。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4㎜の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
オキナグサの詳しい育て方
苗の選び方
苗を購入する際は、節間が短くがっしりと締まって、勢いのあるものを選んでください。
植え付け・植え替え

オキナグサの植え付け・植え替え適期は3〜5月または10月頃です。ただし、植え付けの適期以外にも苗が店頭で販売されていることもあります。入手したら早いうちに適地に植え付けましょう。植え付けの際は、根を傷つけないように注意します。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に苗よりもひと回り大きな穴を掘り、根鉢をくずさずに植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、30〜40cmほどの間隔を取りましょう。最後に、たっぷりと水やりします。
地植えの場合、環境に合えば植え替えの必要は特にありません。しかし、夏の暑さに弱る場合は鉢に植え替え、風通しのいい涼しい場所に移動して夏越しさせるとよいでしょう。
【鉢植え】
鉢の大きさは、5〜6号鉢を準備しましょう。底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから山野草用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢に仮置きし、高さを決めたら、根鉢をくずさずに植え付けましょう。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出したら主根を傷つけないように根鉢をくずし、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。
日常の手入れ

【花がら摘み】
終わった花は花茎の元から摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながります。また、いつまでも終わった花を残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次々に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【枯れ葉の除去】
枯れ葉をそのままにしておくと病害虫を招く原因となるので、見つけたらこまめに取り除き、株まわりを清潔に保ちましょう。
夏越し・冬越し

●夏越し
【地植え】
一日中、日差しが強く照りつける場所では遮光ネットを張り、株元に敷きワラをして暑さ・乾燥対策をするとよいでしょう。真夏は鉢に植え替えて、風通しがよく涼しい場所で夏越しするのも一案です。
【鉢植え】
強い日差しが照りつけ続ける暑い環境にさらされると弱るので、風通しのよい涼しい半日陰で管理しましょう。
●冬越し
【地植え】
寒さには強いほうですが、強く凍結する地域は敷きワラをして寒さ対策をしておきます。
【鉢植え】
常に寒風が吹き付ける場所を避け、夜に凍結しない軒下などで管理します。
増やし方

オキナグサは一般的に種まきで増やすことが可能です。
【種まき】
オキナグサの種まきの適期は、5月下旬〜6月です。種子は乾燥すると発芽しにくくなるため、採種後すぐに播く「採りまき」をするのがおすすめです。3号ほどの黒ポットに湿らせた市販の山野草用培養土を入れ、数粒ずつまきます。1㎝ほど覆土し、たっぷりと水やりしましょう。水切れしないように管理し、発芽後は日当たりがよく、風通しのよい場所で管理してください。本葉が3〜4枚出たら、植えたい場所に定植します。種まきから開花までには2〜3年ほどかかるので、気長に待ちましょう。
オキナグサ栽培の注意点

過湿による根腐れ
多湿にすると根腐れしやすい特性があるので、地植えの場合は水はけのよい土壌づくりがポイント。植え付け前に有機質資材や土壌改良資材を施し、盛土をして周囲より高くするなどの対策をしておきます。鉢植えの場合は水の与えすぎに注意し、長雨にあてないように管理しましょう。
葉焼け
夏に強い日差しを浴びると葉焼けして、葉が茶色く変色することがあります。地植えの場合は遮光ネットを張るのがおすすめ。鉢植えの場合は風通しのよい半日陰に移動して管理します。
オキナグサが教えてくれる静けさと美しさ

春の庭にささやかな自然の美をもたらし、花後のシードヘッドも愛らしいオキナグサ。楚々とした咲き姿は和洋問わずどんなスタイルの庭にもよく馴染むので、庭やベランダに迎え入れてはいかがでしょうか。
参考文献/
『NHK趣味の園芸ガーデニング21 育ててみたい山野草』久志博信・監修(日本放送出版協会)
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!
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