【初心者必見】ゲラニウム(フウロソウ)の育て方完全版! 可憐な宿根草で理想の庭に

Alex Manders/Shutterstock.com
春から初夏にかけて、風に揺れる可憐な小花を咲かせるゲラニウム(フウロソウ)は、低く茂って広がるように育つ宿根草。バラとの相性もよく、ナチュラルガーデンやイングリッシュガーデンでもよく育てられている長年ガーデナーに愛されている植物です。耐寒性が強く丈夫で、初心者でも育てやすいのも魅力です。この記事では、ゲラニウムの基本情報から、名前の由来、代表的な品種、詳しい育て方まで幅広く紹介します。
目次
ゲラニウムの基本情報

植物名:ゲラニウム
学名:Geranium
英名:Geranium
和名:風露草(フウロソウ)
その他の名前:ゲラニューム
科名:フウロソウ科
属名:フウロソウ属
原産地:ヨーロッパ、アジア、ヒマラヤ~中国南西部
形態:多年草
ゲラニウム(フウロソウ科)とは、日本ではフウロソウとも呼ばれる多年生のガーデンプランツ。名前が似たゼラニウムと混同されることがありますが、非常に種類が多く、フウロソウ属には100以上の種類があります。園芸店やホームセンターなどでよく販売されているのは、欧米で品種改良された園芸品種ですが、ゲンノショウコやアケボノフウロなどの日本の在来種もあります。初夏から初秋にかけて、左右対称の整った5弁花を咲かせます。

ゲラニウムの花や葉の特徴

園芸分類 草花、山野草
開花時期 4~6月
草丈:15~60cm前後
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:紫、ピンク、白、青、複色
ゲラニウムには主に、草丈が高くなる高性種と、草丈が低く、高山地帯を原産とする高山性の種類とに分かれます。今回写真とともにご紹介するゲラニウムは、一般にイメージされやすい高性種。高山性のものは暑さに弱く、栽培する時には高山植物や山野草の仲間として扱うため、温暖な地域ではやや栽培が難しくなりますが、北国ではグラウンドカバーのように使え、冬越しもできる品種もあります。
風にそよぐゲラニウム‘ロザンネイ’。winyuu/Shutterstock.com
ゲラニウムの名前の由来と花言葉

ゲラニウムは、細長い鶴のくちばしに似た実を付けます。このため、ギリシア語で鶴を意味する「géranos」が花名になったとされています。
ゲラニウムの花言葉は、明るく鮮やかな花にふさわしい前向きな言葉が多く、「変わらぬ信頼」「友情」「陽気」「慰める」などがあります。
ガーデンに取り入れやすいゲラニウム

ゲラニウムは、柔らかく広がる草姿と繊細な花で、野に咲くような風情があり、植えるだけで庭が優しい印象になる宿根草のひとつで、長年ガーデナーに愛されている植物です。イングリッシュガーデンでもよく植えられていて、ナチュラルガーデンやコテージガーデンにぴったり。
バラにはなかなかない青系の花はローズガーデンのアクセントにもなり、清楚な小花と豪華なバラの相性も抜群。バラと花期が揃うので、初夏にはそれぞれの花が引き立て合って美しい景色が生まれます。また、グラス類など、風を捉えて揺れる草花と組み合わせるのも素敵です。

種類によりますが、5月〜初夏に咲くものから、秋まで断続的に咲くものまであります。咲き終わった後に軽く刈り戻すと、再び花が咲いたり葉がきれいに茂ったりするのも嬉しいポイント。
日向〜半日陰まで対応できる品種が多く、宿根草ボーダーの株元や、木陰などでも活躍するので、場所を選ばず使いやすい植物とも言えます。
花だけでなく、細かく切れ込んだ葉も美しいため、他の植物の引き立て役としても活躍します。品種によっては、紅葉や葉の模様も楽しめるものもあります。
ゲラニウムは多くが宿根草で、毎年よく育ち、株が大きくなっていく様子も楽しみの一つ。主張しすぎず、でも確かな存在感がある庭の縁の名脇役です。
ゲラニウムの代表的な種類
ゲラニウム‘ジョンソンズ・ブルー’
Geranium ‘Johnson’s Blue’

ブルー系の花を咲かせるゲラニウムの代表品種。やや早咲きで、中大輪の透き通った美しい青紫の花を咲かせます。
ゲラニウム‘ロザンネイ’
Geranium ‘Rozanne’

青紫の花は、気温の高い時期はピンクに、気温が低くなると青みを増します。寒冷地では真夏も咲き、初夏から晩秋まで長期間楽しめます。
ゲラニウム・プラテンセ‘スプリッシュ・スプラッシュ’
Geranium pratense ‘Splish Splash’

白花に青いラインがランダムに入る個性的な品種。白や青の単色の花も混ざり、花色に幅があります。
ゲラニウム・ファエウム
Geranium phaeum

別名クロバナフウロ。濃い赤紫色のシックな花を咲かせます。白花品種の‘アルバム’も爽やかで素敵。
ゲラニウム・サンギネウム・ストリアタム
Geranium sanguineum var. striatum

淡いピンク色の美しい花は、大きめで存在感があります。比較的コンパクトでふんわりまとまる品種。サンギネウム系はアケボノフウロという名でも流通しています。
ゲラニウムとゼラニウムの違い

ゲラニウムと花名が似ている植物に、ゼラニウムがあります。英語表記はどちらも「Geranium」ですが、日本でゼラニウムと呼んでいる花は「ペラルゴニウム」を指し、欧米にはゼラニウムという花名はありません。かつては、どちらの花もゲラニウム属に属していたため、属名が流通名として定着し、このように紛らわしい状況になりました。
現在では、ゼラニウムはテンジクアオイ属(ペラルゴニウム属)に分離され、「ペラルゴニウム」とも呼ばれるようになっています。
ゲラニウムの12カ月栽培カレンダー

開花時期:4~6月
肥料:3〜9月
植え付け:2月〜3月上旬
種まき:2月〜3月上旬
ゲラニウムの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】
夏の日差しが直接当たる場所は、日焼けや高温障害の原因になるため避けましょう。半日陰の風通しのよい場所がおすすめです。
【日当たり/屋内】
屋内でも日当たりがよすぎる場所は避け、明るい日陰か、午前中だけ日が当たり、午後は半日陰になる場所がよいでしょう。
【置き場所】
一年を通して直射日光が当たり続ける場所は避けましょう。寒さには強いものの、冬は北風に当たらない場所に置きましょう。
耐寒性・耐暑性
ゲラニウムは耐暑性が弱く、耐寒性は強い植物です。寒冷地であれば、一年を通して基本的な手入れだけで十分です。夏は暑さで弱ってしまうことがあるので、風通しのよい場所を選び、必要に応じて遮光ネットや日よけグッズなどを使い、日差しが当たりすぎない環境で育てるようにしましょう。
ゲラニウムの育て方のポイント

用土
ゲラニウムは水はけの良い土を好むので、市販の培養土や山野草用の土に軽石や赤玉土を混ぜて使うことをおすすめします。寒冷地であれば、水はけの良い腐植質が豊富な用土であれば、そのまま植えても問題ありません。暖かい地域の場合は、レイズドベッドなどを用いて通気性と水はけを良くしておくと、暑さで根が傷むのを防げるでしょう。
水やり
水やりの際は、過湿にならないようやや乾燥気味に育てたほうが管理しやすいです。
真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がって株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
【地植え】
根付いた後は、下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、乾燥が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
鉢栽培では、水切れに注意し、鉢の表面が乾いたら水やりを忘れずに管理しましょう。ただし、いつもジメジメとした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまうので過湿に注意します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。
肥料

基本的に肥料は必要ありませんが、与える場合は、植え替え時に緩効性化成肥料、花の開花と花後に液体肥料を控えめにやりましょう。与え過ぎると肥料焼けを起こす場合があるので、注意が必要です。
注意する病害虫
【病気】
ゲラニウムがかかりやすい病気には、うどんこ病や軟腐病などがあります。うどんこ病は葉に白い斑点が出る病気で、発症した葉を早めに取り除くことで重症化を防げます。軟腐病は、葉や茎が軟化して腐ってしまう病気で、腐った部分から異臭がします。水はけの良い用土に変えたり、薬剤を散布したりすることで予防できます。
【害虫】
注意が必要な害虫は、ヨトウムシ、アブラムシ、ハダニなどです。アブラムシは繁殖力が強いので、春から夏にかけて葉の裏をこまめにチェックし、見つけたら大量発生させないように専用の殺虫剤で駆除しましょう。夏のハダニも重症化しやすいので、葉水や殺虫剤を用いて早めに駆除しましょう。
ゲラニウムの詳しい育て方

苗の選び方
苗を選ぶ際は、枝元から葉が芽吹いていて、葉が萎れることなく、艶があってみずみずしい状態のものを選びましょう。
植え付け・植え替え
ゲラニウムの植え付けは、真冬と真夏以外に行いましょう。秋に植え付けると、冬の間に根付いて、翌春には花を楽しむことができます。
ゲラニウムの株は大きく成長するため、定期的に株分して植え替えるとコンティションよく保てます。鉢植えの場合は、2~3月、または9~10月に一回り大きい鉢に植え替えましょう。地植えの場合は、3~5年に1度、株を傷つけないよう注意しながら掘り上げて、傷んでいる根や茎を切って整理します。
一株が大きく増えたら、分割して移植することもできます。自然に分かれている部分を優しく手で分離したり、株元をナイフなどで切り分ける株分けは、株を若返らせ、増やす効果があります。植え替えと同時に行うのがよいでしょう。
日常のお手入れ

株が広がりやすいので、開花した茎が倒れるようなら支柱を立てるのも方法ですが、自然にまかせて広がる様子を楽しむのがおすすめです。開花後も軽やかな葉が広がって、庭に彩りをプラスしてくれます。
剪定・切り戻し
花が咲き終わったら、株の形を整えるように伸びた枝を1/3ほど剪定しましょう。また、古い葉や傷んだ葉は、株元が混まないように株元から取り除きましょう。
夏越し
多くのゲラニウムは高温多湿を苦手としているため、夏の暑さが厳しい地域では暑さ対策を講じないと弱ってしまいます。夏は風通しのよい半日陰の場所に植えるか、植えたあとに日差しが強くて葉が焼けそうと気づいた際は、日陰になるような植物をそばに植えるなど対策しましょう。
増やし方
ゲラニウムの増やし方には、株分けと種子から育てる方法があります。株分けの方法は、植え替え時に根茎を分けて、それぞれを植え付けます。分ける際は、根茎が自然に分かれている部分で分けるとよいでしょう。分け目がない場合は、芽を切り落とさないようにナイフなどで切り分けるのも一案です。

種子から育てる場合は、花後に採取した種子を冷蔵庫で保管しておき、翌年2~3月に播きます。ただし、ゲラニウムの種子は外皮が厚く発芽率が悪いため、皮をヤスリで削る「剥皮処理」をしてから播くとよいでしょう。種まき後から開花するまでは、2年ほどかかります。
種類豊富なゲラニウムを咲かせて庭を彩ろう

育てやすく、清楚で可憐な小花をふわふわと咲かせるゲラニウム。風に揺れるナチュラルな姿は、どんな庭にもよく似合い、他の花と組み合わせやすいのも魅力。種類も多いので、コレクションするのも楽しみです。ぜひお気に入りの品種を選んでガーデンで育ててみましょう。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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