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【庭づくり】ローメンテを目指す庭づくり 〜ベーシック編〜 庭づくりの考え方&おすすめ植物

【庭づくり】ローメンテを目指す庭づくり 〜ベーシック編〜 庭づくりの考え方&おすすめ植物

Photo/田中敏夫

毎日丹精し、どの季節にも豪華な花がいっぱいに咲く庭は素敵ですが、手間がかかりすぎてせっかくのガーデニングが楽しめなくなってしまっては元も子もありません。そんなお悩みがある方は、手入れの時間が少なくて済む庭づくりを上手に取り入れて、もっと気軽に楽しんでみませんか? 自身の庭づくりの決まり事として「手入れは週2回、各2時間」という田中敏夫さんが、ローメンテナンスな庭づくりのコツと、植えっぱなしでも長く楽しめる、丈夫で育てやすいおすすめの植物をご紹介します。

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実践ローメンテナンスガーデニング

我が家の庭は、玄関前からぐるりと家の周りを回った、全体で20坪ほど。大きくはないけれど、小さくもない庭です。

7号サイズのポット植えも多いので、水やりは忘れないよう心がけていますが、害虫駆除などの必要が生じた時などの例外を除けば、手入れは週2回、それぞれ2時間くらいで済ませることを自身の“庭づくりの決まり”としています。

ローメンテナンスな庭づくりの心得

ローメンテナンスな庭づくりを楽しむためには、

  1. 主に美しく長く咲く花を選ぶ
  2. 花がない時期でも葉色や樹形を愛でることができる植栽を心がける
  3. 植物同士のコンビネーションを忘れない
  4. 何よりも手入れが楽

この4つを目安としています。

ローメンテナンスガーデンにおすすめの植物選びと花壇の設え

花壇づくりにあたっては、まず“フラワー・アイランド(花の小島)”をつくることにしています。

“フラワー・アイランド”とは、先にご紹介した①~④の条件を満たす草花をいくつか組み合わせてユニットにするということです。庭にその小島をいくつか配置し、空いたスペースに季節を飾る草花を植えています。

例を1つご紹介します。

ローメンテナンスガーデン

高性のバーベナ・ボナリエンシスとガウラ・リンドヘイメリで高さを出し、横広がりするアルテミシア ‘ポウィスキャッスル’、ゲラニウム ‘ロザンネ’、カラミンサ・ネペトイデスを下草とする案です。

このようにローメンテナンスな植物を組み合わせたユニットをつくることにより、あまり手をかけなくてもきれいに見える状態を保ちやすくなります。

ここからは、こうしたフラワー・アイランドをつくるのに向く、ローメンテナンスな庭づくりの条件を満たす植物をご紹介します。

バーベナ・ボナリエンシス(Verbena bonariensis

バーベナ・ボナリエンシス
Tom Meaker/Shutterstock.com

クマツヅラ科クマツヅラ属、耐寒性多年草(冬季半常緑~落葉)
花期:初夏~秋
草丈:70~100cm
耐寒性:強、耐暑性:強、日照:日向
原産地:南アメリカ

“三尺バーベナ”と呼ばれることが多い多年草です。三尺は約1mのこと。春、地際から直立する枝を伸ばし、初夏に開花します。細いけれどしっかりした花茎は倒れ込むことが少ないので、手間がかかりません。

切らなくてもいいですが、終わった花茎をこまめに剪定してあげると、初夏から晩秋までいつでも咲いているという印象です。寒くなると立ち枯れますが、しばらくシードリングを楽しんだのち、地際で切り詰めておくと、春、また地際から新芽を伸ばし始めます。

こぼれ種でもよく増えますが、株幅はそれほど出ないので、他の草花とよく調和し、邪魔になりません。

Verbenaはクマツヅラのラテン名から、bonariensisは自生地がアルゼンチンのブエノスアイレス(Buenos Aires)に近在することから命名されたとのことです。原産地が南米であることが分かります。

同属で、葉や茎が銅色となるバーベナ ‘バンプトン’(Verbena officinalis ‘Bampton’)も丈夫な多年草です。

Verbena officinalis 'Bampton'
tamu1500/Shutterstock.com

銅葉系のカラーリーフとしても使えるので便利です。やはり、初夏から晩秋まで長く開花が楽しめますが、どちらかというと横広がりする草姿で、ボナリエンシスのように花茎が直立しません。バンプトンもこぼれ種でよく増えます。

ガウラ・リンドヘイメリ(Gaura lindheimeri

ガウラ
Nahhana/Shutterstock.com

ヤマモモ科(アカバナ科)ガウラ属、耐寒性多年草(冬季落葉)
花期:初夏~秋
草丈:90~120cm
耐寒性:強、耐暑性:強、日照:日向
原産地:北アメリカ

高く伸びた花茎に白く咲く花が風に揺れる姿がとても美しいです。その風情から“白蝶草”と呼ばれることがあります。

バーベナ・ボナリエンシスと同様、初夏から晩秋まで長く開花しますが、ボナリエンシスに比べると、花茎は倒れやすい傾向にあるように思います。開花をしばらく楽しんだら、1/3~1/2の高さに切り詰めると、そこから花茎が伸びてきて、秋まで開花を楽しむことができます。

晩秋から初冬にかけて立ち枯れしますが、枯れ姿はあまり美しいとは思いません。地際で切り詰めるほうがいいと思っています。やがて地べたに葉がロゼット状に展開して冬越し姿になります。

原種リンドヘイメリは、つぼみや花弁縁にわずかにピンクが出ることが多いのですが、真っ白となる園芸種 ‘ソーホワイト(So White)’や、逆に全体にピンクとなる選別種もあります。いずれも、長い開花を楽しむことができます。

ガウラ
Debu55y/Shutterstock.com

最近、30~60㎝ほどの矮性のガウラも出回るようになりました。

科名Gauraはギリシャ語のgaurosu(豪華な)から、属名のlindheimeriは発見者、アメリカのフェルディナンド・ヤコブ・リンドハイマー(Ferdinand Jacob Lindheimer)にちなんでいます。

アルテミシア ‘ポウィスキャッスル’(Artemisia ‘Powis Castle’)

アルテミシア
Photo/田中敏夫

キク科ヨモギ属、耐寒性多年草(半木立性、冬季常緑)
花期:夏~秋(常緑の青みを帯びたシルバー・リーフ)
草丈:40~60cm
耐寒性:強、耐暑性:強、日照:日向~やや半日陰
原産地:ヨーロッパ

各地の野原などでよく見かけるヨモギの仲間です。青灰色の香り高い常緑葉を一年中楽しむことができます。

イギリス、ウェールズにあるポウィス城の名を冠した園芸種ですが、ヨーロッパからシベリア、北アメリカなど世界中で広く繁殖しているワームウッド(wormwood、ニガヨモギ)を交配親とした園芸種だと思われます。ワームウッドの丈夫さをそっくりそのまま受け継いでいるという印象ですが、ワームウッドは時に高さ100cmを超えるほどの大株となったり、株姿が乱れがちになる傾向にあります。この‘ポウィスキャッスル’は小さめの草姿にまとまるので扱いやすいです。

成長すると枝が木質化してきます。くねくねした枝ぶりも風情がありますが、乱れすぎと感じたら切り戻して整えるといいでしょう。

アサギリソウ(朝霧草)としておなじみのアルテミシア・スキミドティナ ‘ナナ’(A. schmidtiana)のほうが、‘ポウィスキャッスル’よりもなじみ深いかと思います。

アサギリソウ
アサギリソウ。roollooralla/Shutterstock.com

‘ポウィスキャッスル’より清楚な葉色で、よりやさしげな草姿で風情があります。株もやや小さめです。とても丈夫ですが、冬季は地上部が枯れこみ、オーナメントとして使うには少し不便があります。しかし、それゆえに春、地際からわき昇るようにシルバーブルーの新芽が展開するのを観賞できる楽しみもあります。

アルテミシア・ルドビシアナ(A. ludoviciana)は‘ポウィスキャッスル’と比べると、葉幅はより広く、より明るいシルバーグレーになります。

アルテミシア
Flower_Garden/Shutterstock.com

草姿も立性で高さ90cmほどになることもありますが、‘ポウィスキャッスル’よりも高温多湿への耐性は低いように感じています。

科名、属名のArtemisiaは、ギリシャ神話に登場する豊穣と多産を象徴する女神アルテミスにちなんでいます。後に月と狩猟を象徴する女神セレネと同一視され、弓をたずさえ鹿などの獣を連れた姿で描かれるようになりました。

アルテミスはゼウスと女神レトとの間に、太陽神アポロンとの双生児として生まれました。生まれたばかりにもかかわらず、アルテミスは助産婦として弟アポロンの誕生の手助けをしたと伝えられています。そのことから、出産を控えた女性の信仰を集めました。産後に効用があるとされるヨモギにふさわしい名前です。

ゲラニウム ‘ロザンネ’(Geranium ‘Rozanne’)

ゲラニウム
Iva Vagnerova/Shutterstock.com

フウロソウ科フウロソウ属、耐寒性多年草(冬季半常緑~落葉)
花期:初夏~晩秋
草丈:40~60cm
耐寒性:強、耐暑性:中、日照:日向~やや半日陰
原産地:ユーラシア~北米

フウロソウは大好きな花です。優雅に横広がりする草姿ばかりでなく、ブルーなど清楚な色合いの花が春開花する様子はとても魅力があります。インクブルーの花が見事な‘ジョンソンズブルー(Jonson’s Blue)’や、白い花弁に淡い青いラインが入るプラテンセ系の品種‘スプリッシュスプラッシュ(Splish Splash)’、小さな花が密集して咲く‘ビルウォーリス(Bill Wallis)’や‘サマースノー(Summer Snow)’などに夢中になった時期もありました。

しかし、夏越しに失敗するばかりで長く楽しむことができませんでした。夏越ししやすいサンギネウム系(アケボノフウロ)や黒花フウロ(G. phaeum)なども試してみましたが、どれも満足できませんでした。

ゲラニウム
‘ジョンソンズブルー’。Mariola Anna S/Shutterstock.com
アケボノフウロ
サンギネウム系(アケボノフウロ)。Marek Durajczyk/Shutterstock.com

2013年、チェルシー・フラワー・ショーでフウロソウ‘ロザンネ’がプラント・オブ・センチュリー賞を受賞し、華々しく登場しました。

夏越しも容易な強健種であるばかりでなく、初夏から晩秋まで長い期間開花している、安心して“放置”できるフウロソウでした。ただ一つ、春のブルーの花色は高温期にはピンクに変化してしまうという点は残念です。現在、‘ロザンネ’の色変わり種として‘ライラックアイス(Lilac Ice)’ や‘アズール ラッシュ(Azure Rush)’、またPWのロゴで多花性の‘ブルームミー’も市場に出ていますが、“色変化”という性質は改まっていないようです。

国内では、ここでご紹介したフウロソウ属のものを“”ラニウム、ペラルゴニウム属で四季咲きのものを“”ラニウムと呼び、一季咲きのものをペラルゴニウムと呼ぶことが多いです。いずれもフウロソウ科(Geraniaceae)に属しているので近縁種ではあるのですが、とても紛らわしいので整理しておきます。

フウロソウ科フウロソウ属フウロソウ、ラニウム
フウロソウ科ペラルゴニウム属四季咲きラニウム
フウロソウ科ペラルゴニウム属一季咲きペラルゴニウム

カラミンサ・ネペトイデス(Calamintha nepetoides

カラミンサ
Nancy J. Ondra/Shutterstock.com

シソ科カラミンサ属、耐寒性多年草(冬季落葉)
花期:初夏~晩秋
草丈:30~50cm
耐寒性:強、耐暑性:強、日照:日向~やや半日陰
原産地:ヨーロッパ

初夏から晩秋まで、6カ月に及ぶほど長い期間咲いています。白または淡いライラック色の小花と、香り高いシルバーの葉とのバランスが絶妙で、華やかさはないものの清冽さを感じさせる美しい宿根草です。

花弁が散り始めたら切り戻し、肥料を与えるという作業を怠らなければ、晩秋までずっと咲いてくれます。

イヌハッカという別名で呼ばれることも多いキャットミント(Nepeta cataria)も、カラミンサと同じように下草として使用できます。園芸種’ウォーカーズロー(Walker’s Low)’は美しいパープリッシュ・ブルーとなる花色が魅力です。

丈夫で開花期間の長い品種ですが、カラミンサと比べると多少開花期間が短いことが多いです。

キャットミント
キャットミント’ウォーカーズロー’。Photo/ cultivar413 [CC BY SA-20 via Wikimedia Commons]

カラミンサ、キャットミントともに丈夫な宿根草ですが、関東以西の高温多湿の気候のもとでは消耗が激しく、美しい花姿を楽しむことは難しいというのが現実です。

ユーフォルビア
ユーフォルビア‘ダイアモンドフロスト’。Open_Eye_Studio/Shutterstock.com

真夏の庭を彩るには、PWのユーフォルビア‘ダイアモンドフロスト’など、耐暑性の強い品種を植えるのもいいかもしれません。耐寒性は5℃ほどで、関東以西では地植えのままの越冬が難しいのですが、春から晩秋まで開花してくれます。

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