色鮮やかな花が春から秋まで楽しめる! ゼラニウムの特徴や育て方を解説
太陽の光を受けて鮮やかに咲き誇るゼラニウムの花。春から秋まで楽しめるので、庭植えはもちろん、花壇やプランターボックス、ハンギングバスケット、寄せ植えと大活躍してくれる宿根草です。丈夫で育てやすいので、園芸ビギナーにもおすすめ! さまざまな花色・花形、下垂するつる性品種、香りを楽しむハーブ系など、じつに多種多様。近年では日本の高温多湿にも強い品種も増えているので、いろいろと育ててみたくなりますよ。
目次
ゼラニウムってどんな植物?
ヨーロッパの街並みを鮮やかに彩る花といえば、まず思い浮かべるのがゼラニウムではないでしょうか。南アフリカ原産のゼラニウムは、乾燥に強く丈夫な植物。夏場でも高温多湿になりにくいヨーロッパでは栽培しやすく、プランターや吊り鉢、ウィンドウボックスなどあらゆる場所で活用されています。
ゼラニウムはフウロソウ科ペラルゴニウム属(Pelargonium、和名はテンジクアオイ属)の植物を交配してつくられた園芸植物の総称。かつてゼラニウムはゲラニウム属(Geranium、和名はフウロソウ属)に分類されていました。当時の属名を英語読みした「ゼラニウム」が、現在も呼称(園芸名)として残っています。
ペラルゴニウム属は南アフリカのケープ地方を中心に多くの野生種があります。それらが17世紀末から18世紀にかけてヨーロッパに渡り、19世紀に入ると本格的に品種改良が進み、園芸植物化されました。
園芸植物として普及しているペラルゴニウム属の植物は、大きく4つのグループに分けられます。①ゼラニウム、②アイビーゼラニウム、③センテッドゼラニウム、④ペラルゴニウムです。以下にそれぞれの特徴をまとめました。
①ゼラニウム
南アフリカ・ケープ地方原産のペラルゴニウム・ゾナレ(P. zonale)とペラルゴニウム・インクイナンス(P. inquinans)との交配をもとに改良が進められた系統。18世紀初頭にイギリスで品種改良されて以降、ドイツやアメリカで多くの品種が作出されてきました。P. zonaleは和名が「モンテンジクアオイ」というように、葉に輪紋があるのが特徴。園芸品種の中にも輪紋葉を持つものが多いのは、この血を受け継いでいるからでしょう。一方、P. inquinans譲りの特徴は、「ゼラニウム・レッド」と呼ばれる独特な鮮紅色。欧米では、この鮮やかな色が、ゼラニウムを象徴する花色として愛されています。
ゼラニウムは四季咲き性のため、温度さえ保てれば一年中美しい花が楽しめます。茎は多肉質で太く、高性種では半低木状になります。花色が豊富で、鮮紅色、暗赤、ピンク、サーモン、白、赤紫、淡黄色などがあります。花形も一重咲きのほか、半八重咲き、八重咲き、花心まで花びらが重なる千重咲きとバラエティ豊富です。
当初は挿し木で増やす栄養系品種が主流でしたが、1960年代から種子から育てても早期に開花する品種が開発されて、現在では花壇やプランターに適した実生系品種が主流となっています。
②アイビーゼラニウム
南アフリカのケープ地方原産のペルターツム(P. peltatum)を中心に改良された品種グループ。西洋ヅタのように光沢のある葉を持ち、枝が下垂することから「アイビーゼラニウム」「ツタバゼラニウム」と呼ばれています。茎は細く多肉質にならず、横に這う性質があるので、地植えには向きませんが、ウォールバスケットやハンギングバスケット、脚付きのコンテナなどに植えると、あふれるように花を咲かせて見栄えがします。
③センテッドゼラニウム
葉に芳香を持つ品種群で、「ハーブゼラニウム」「ニオイゼラニウム」とも呼ばれています。開花期は主に春から初夏ですが、花はおおむね地味で、“ハーブ”の名にふさわしく野趣あふれる姿が特徴です。改良種の中にはやや大輪の花も見られますが、そうすると葉の香りが弱く、「芳香を楽しむ」とはいかなくなるようです。欧米では、庭や玄関先などにセンテッドゼラニウムを植えて、通るときに葉をなでて香りを漂わせて楽しむ風習があります。香りの成分によって、ローズ、ミント、レモン、アップル、パイン(松ヤニ)などに分けられ、エッセンシャルオイルやお菓子の材料などに利用されています。
④ペラルゴニウム
南アフリカ・ケープ地方原産のククラーツム(P. cucullatum)とグランディフロールム(P. grandiflorum)を主な親とし、これにほか数種を交雑して作り出された品種群。多くが春から夏にかけて咲く一季咲きで「ナツザキテンジクアオイ」の和名を持ちます。アザレアのような大輪の花を房状に咲かせ、弁の縁がフリルのように波打つものが多くゴージャスな印象を与えます。深紅色や藤色など他のゼラニウムにはない花色、花弁の中心に黒や赤色の斑紋や線状の模様が入る花、ビオラに似た小輪花、センテッド系との交配種など種類が豊富です。
ゼラニウムを管理するポイントは?
日当たりを好む半面、高温多湿を嫌うという性質はあるものの、ほとんどの種類は丈夫で育てやすいゼラニウム。美しくきれいな花を咲かせるための栽培方法のコツをご紹介します。
置き場所
園芸品種として出回っているゼラニウムの仲間は、南アフリカのケープ地方原産の品種が親となっているため、乾燥した気候を好みます。亜熱帯性植物なので、凍結すると枯死しますが、凍らなければ冬でも枯れることはありません。寒冷地では霜が降りる前に室内に取り込む必要がありますが、温暖地では「軒下に入れる」など、ちょっとした防寒対策をすれば、戸外での越冬も可能です。
生育に十分な日光を必要とする陽性植物なので、できれば半日以上は日が当たる場所が理想。屋外に植え付けるなら、3~4時間程度は日が当たる場所に。室内なら、十分に日が差し込む窓際などに置きましょう。
高温多湿を嫌うので、一年を通して風通しがよい場所に。特に弱りやすい真夏は、西日が当たらない場所に移動するなど注意が必要です。
植え付け・植え替え
多湿を嫌うので、通気・水はけのよい土が適しています。酸性に傾いた土壌では生育が悪くなるので、鹿沼土ではなく弱酸性の赤玉土を使用するとよいでしょう。赤玉土6に、腐葉土またはpH調整済みのピートモス3、水はけをよくするバーミキュライトなどを少々混ぜます。用土1リットルにつきスプーン2杯程度の苦土石灰を混ぜておくとよいでしょう。市販の草花用培養土を使用することもできます。
真夏と真冬を避ければ、いつでも植え付け・植え替えができますが、多くの品種が出揃い、コンディションがよい株が入手しやすいのは、春から初夏にかけて。枝葉が硬くしっかりと締まり、つぼみが多くついた株を選ぶのがポイントです。
1年以上植え替えをしていない株は、3月に入ったら植え替えを行います。「下葉が黄色くなった」「すぐに鉢土が乾く」「株を持っても鉢から抜けない」といった状態が見られたら根詰まりを起こしている合図。鉢から抜いて根鉢を崩したら、根を1/3程度切って一回り大きな鉢(大きくしたくない場合は同じ鉢)に、新しい培養土で植え付けます。植え付け後は水をたっぷりと与え、1~2週間程度は強い日差しや強風を避けて養生させましょう。一方、一季咲きのペラルゴニウムの植え替えは、花後の6月頃が適期。春には根詰まりがひどい株のみ、根鉢を崩さないように注意して鉢増しするとよいでしょう。
水やり
過湿を嫌うものの、生育が旺盛になる春から秋に水が不足すると成長が悪くなるため、この期間は、鉢土の表面が乾き始めたら、鉢底から水が出てくるまでたっぷりと与えます。とはいえ梅雨から真夏にかけては過湿になると根腐れを起こすので、やりすぎは厳禁。また、花に水がかかると、灰色カビ病を誘発しやすくなるので、株全体にかけるのではなく、根元に注ぎ込むように与えるのがコツです。成長が鈍る冬は、寒くなるにつれ水やりの回数を徐々に減らして、乾燥気味に管理します。鉢土の表面全体が乾いてから、温度が上がってくる午前中に与えましょう。
剪定
成長しながら枝の先端に花芽をつけるゼラニウムは、植え付けて半年以上経過すると草姿が乱れてくるため、剪定を行います。枝の下のほうに新芽が出ていたら、新芽を残すように切り詰めればOK。新芽が見えないときは、葉を数枚残すように切り詰めておくと、やがて新芽が出てきます。とはいえ花芽が付く4月以降に強い剪定をしてしまうと、見頃に花を楽しめなくなるので、伸びすぎた枝を揃える程度にしましょう。センテッドゼラニウムやペラルゴニウムなど一季咲きのものは花が終わった後に剪定しておくと、新芽がよく伸びます。
また、咲き終わった花をそのままにしておくと、見た目が悪いだけでなく、灰色カビ病の原因にもなるため、花がらは適宜摘み取ります。花房の一部をピンセットなどで取り除くか、ほとんど咲き終わった花房は、花茎の付け根を押さえながらもぎ取ると簡単に取り除けます。
肥料
植え付けのときに、リン酸を多く含む緩効性化成肥料を用土に混ぜておくとよいでしょう。油かすのように窒素分の多い肥料は、葉や茎ばかりが茂って、花付きが悪くなるので与えません。花付きをよくするためには、リン酸分の含有量が高い草花向けの液体肥料を1,000倍に薄め、月に数回与えます。真夏や冬越し前の秋には、カリ分の多い液体肥料に切り替えます。また、三要素等量の錠剤型緩効性肥料を施しておくのもよいでしょう。こちらは3カ月程度効果が持続します。成長が緩やかになる冬期は、温室などで管理する以外、肥料を施す必要はありません。
ゼラニウムの病害虫対策は?
真夏の高温期に、葉が斑入り葉のように黄白色になることがありますが、これは高温による障害で病気ではなく、秋になって涼しくなると自然に戻ります。
病気
ゼラニウムでしばしば見られるのが、株元の茎が黒変してつぶれたようになり、やがて上部まで枯れてしまう「茎腐病(ブラックレッグ)」です。症状がある茎を付け根で切り落として処分します。過湿状態や窒素分の多い肥料を与えると発生しやすくなるので、水はけのよい土を使い窒素肥料を控えます。
芽先が委縮して本来の花が咲かなくなるのは「モザイク病」の可能性があります。ウイルス性の病気のため、治療法はなく処分するしかありません。発病した株を切ったハサミで、他の健康な株を切ると伝染するので、ハサミを使うときにはその都度消毒するようにしましょう。
害虫
害虫の被害を最小限にするためには、虫が幼齢のうちに退治することが大切。その姿を探すより、葉や鉢の周りに残った糞や、食害を見つけるほうが簡単なので、日頃からよく観察する習慣をつけましょう。
春から夏にかけて葉の一部が巻いたり、引きつったりする症状が見られるのはハマキムシが原因。また、葉にかじられた痕があるのはヨトウムシによるもので、春から初冬にかけて発生しやすくなります。幼虫は見つけ次第捕殺して、オルトラン水和剤などの殺虫剤を散布します。またアブラムシやワタカイガラムシもつくので、こちらは粒剤タイプの浸透移行性殺虫剤を鉢土の表面に撒いておくと予防になります。
気を付けるべきは、冬の寒さよりも、夏の高温多湿
からりと乾燥した気候を好むゼラニウムは、高温多湿の日本の夏が苦手。梅雨の時期は湿度が高く鉢土も乾きにくくなるため、水やりは控えめに。盛夏に水を切らすと株が弱るので、1日1回はたっぷりと水やりを。ただし土が乾いていないのに与えると根腐れの原因になるので、こまめなチェックを心がけましょう。
秋になっても元気がないようであれば「夏バテ」を起こしていることも。「新芽が伸びない」「鉢土が湿っているのに葉がしおれ気味」「葉の色が悪くなってきた」といった症状があれば、根腐れを起こしている可能性が大。古土と傷んだ根を落として、新しい培養土でやや小さめの鉢に植え替えましょう。蒸散を抑えるために地上部を軽く切り戻すことも忘れずに。切り取った枝から挿し穂を取り、挿し木をしておけば、「もしもの時の保険」にもなって一石二鳥です。
ゼラニウムの増やし方は?
ゼラニウムの繁殖は挿し芽が一般的ですが、花後に種子が付いていたら、採って播くこともできます。一代交雑種の種子からは、親とは異なる性質の株が生まれるので、我が家だけのオリジナルの花を楽しむことができます。ここでは、種まきと挿し芽の手順をご説明します。
種子から育てる
ゼラニウムの仲間の種子は、なかなかユニークな形をしています。以前の属名Geraniumはギリシャ語で鳥の「ツル」の意味、一方、現在の属名Pelargoniumは「コウノトリ」を意味します。これは、両属の植物ともに、実の先端に長い針状の突起があることから、ツルやコウノトリの長いくちばしを連想してつけられたといわれています。熟すと傘のように広がり、羽毛状の毛がついた種子を飛ばします。種子にはらせん状の突起があり、着地するとネジのようにくるくると回りながら土中に潜ります。
播種するときは、毛と突起は取り除いておくと発芽が揃います。採取したての鮮度のよいものを播くときには、つけたままでも発芽率は悪くないようです。小粒の赤玉土にバーミキュライトを等分で混ぜたもの、または市販の種まき用土に、その種子が重ならないように置き、種子が隠れるように薄く土をかけます。発芽するまで2水を切らさないように。鉢皿に水を張り、鉢底をつけておく底面灌水がおすすめです。2週間程度で発芽するので、本葉が出揃ったら培養土を用いて3号程度のポリポットに鉢上げします。
播種の適期は4~5月、または9月下旬~10月にかけて。高温期の夏は適さないので、秋播きするときには採種後に冷暗所などで保管します。また、年内に播かない場合は、冷蔵庫に保管しておきましょう。
挿し木で育てる
丈夫な品種では、切り花のように水に挿しておくだけでも発根するゼラニウム。お気に入りの花を増やしたいのであれば、挿し木がおすすめです。挿し木の適期は春と秋。八重桜が咲く頃から5月が最も活着しやすく、梅雨の前まで可能です。一方秋挿しの適期は9月下旬~10月下旬にかけて。センテッドゼラニウムやペラルゴニウムは、春ではなくこの時期のみが適期となります。
挿し穂を取るのは、硬くしっかりと育った枝から。開いた葉が3~4枚ついた長さで茎頂部を切り取り、切り口を鋭利な刃物で切り戻しておきます。種まきと同様の土に、下の1節が埋まり挿し穂が倒れない程度に浅く挿します。
2~3週間程度で発根が始まりますが、この期間は日が当たらない場所に置き、水を切らさないように。根が出揃うまでは、種まきと同様の底面灌水がいいでしょう。ピートモスを原料に作られた圧縮ピートでもよくつきますが、その場合、発根後鉢上げするときには培養土にピートモスを混ぜないと新根の活着が悪くなることがあります。
芽先が伸び始めたら、根が生え揃ってきた合図。培養土を用いて4号程度の鉢に鉢上げします。作業の2日前から水やりを止め、鉢土を乾き気味にしておくと根切れを防ぐことができます。植え終わったら水をたっぷりと与え、頭頂部を切る摘心をしておくと、脇芽が伸びてボリュームのある株に仕上がります。
大事に育てれば長く咲く! ゼラニウムの花を楽しもう
夏越しに失敗しなければ、丈夫で育てやすいゼラニウム。数年かけて育て上れば、たくさんの花をつけて見応えも十分な株に仕立てられます。近年人気のある低木性やアイビー系の品種は、寄せ植えやハンギングバスケットなど、季節の草花と組み合わせて植えても素敵です。お気に入りの品種を見つけてみてはいかがでしょうか。
Credit
文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
Photo/ 1) David Franklin 2) MaCross-Photography 3) OksanaBgn 4) Florence Zamsky 5) Ariene Studio 6右) Sulla Mino 6左) simona pavan 7) MaCross-Photography 8) alybaba 9) aniana 10) aniana 11) Derek Harris Photography 12) Jose Juan Nogueron 13) Tony_Traveler85 14) Tibanna79 15) Okrasiuk 16) Whiteaster 17) Toru Arioka 18) Sarah2 19) ChiccoDodiFC 20) Natalia van D 21) Nataliamarc 22) Zanete 23) iva 24) Ratda 25) Taiga /Shutterstock.com
参考文献:『NHK趣味の園芸 よくわかる栽培12か月 ゼラニューム』(柳宋民著・NHK出版刊)
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