アイスプラントの育て方 ペットボトルで水耕栽培も可能な新感覚野菜!

Brandon Gushiken/Shutterstock.com
多肉植物に分類されるアイスプラントは、キラキラとした粒に覆われており、食べると塩気を感じる新感覚の野菜。耐塩性が高く、塩水でも栽培できるユニークな植物です。この記事では、アイスプラントの基本情報や特徴、美味しい食べ方、タイプ別の育て方など、多岐にわたってご紹介します。
目次
アイスプラントの基本情報

植物名:アイスプラント
学名:Mesembryanthemum crystallinum
英名:iceplant、common ice plant、crystalline ice plant
和名:アイスプラント
その他の名前:アイスプランツ、ソルトリーフ、クリスタルリーフ、プッチーナ、バラフなど
科名:ハマミズナ科
属名:メセンブリアンテマ属
原産地:南アフリカ
形態:宿根草(多年草)
アイスプラントはハマミズナ科メセンブリアンテマ属の多肉植物で、地上部の葉を収穫する野菜です。自生地では本来は多年草ですが、日本の厳しい夏を苦手とし、夏越しが難しいので一年草として扱われることが多いようです。原産地は南アフリカのナミブ砂漠で発芽適温は20℃前後、生育適温は5〜25℃です。春と秋に種まきして栽培できます。アイスプラントには茎葉にキラキラとした透明な粒に覆われており、まるで凍っているように見えます。
アイスプラントの葉や花の特徴

園芸分類:野菜
開花時期:7〜8月
草丈:20〜30cm
耐寒性:やや強い
耐暑性:弱い
花色:白
アイスプラントは塩分を含んだ土壌でも栽培ができることから、「吸塩植物」とも呼ばれています。茎葉の表面に透明でキラキラとしたブラッターと呼ばれる細胞を持っているのが特徴で、水滴のような粒がつくユニークな見た目です。このブラッター細胞にはミネラルが含まれており、口に含むとプチプチとした食感と塩味が感じられます。
また、アイスプラントは多肉植物に分類され、体内に水分を蓄える性質があります。そのため乾燥には強いものの、多湿な環境を苦手としています。

アイスプラントは夏に白い花が咲きますが、葉先が赤く色づいてくるのが開花の合図。収穫を長く楽しみたい場合は花芽を摘み取りましょう。開花後には種子ができるので、種まきして株を増やすこともできます。
アイスプラントの名前の由来と花言葉

アイスプラントは、茎葉がキラキラとした透明な粒に覆われており、まるで凍っているように見えることが名前の由来。アイスプラントの花言葉は「冷淡」「あなたの容姿は私を凍らせる」などです。
アイスプラントの栄養価

アイスプラントはミネラルを多く含む植物です。カリウムやマグネシウム、βカロテンを含むほか、抗脂肪肝ビタミンのイノシトール類や、ピニトールなどの機能性成分が含まれています。
アイスプラントの楽しみ方

アイスプラントは、サラダに利用するのが一番。流水で軽く洗って一口大に切って生食します。葉についているプチプチの食感と塩気を楽しみましょう。好みのドレッシングをかけるほか、生ハムやスモークサーモン、チーズなどをトッピングしてもおいしくいただけます。
煮物などの加熱料理は形が崩れてしまうのであまり向いていませんが、天ぷらにすると食感と塩気をそのまま楽しめます。
アイスプラントによく似た植物

アイスプラントと同じく食用できる多肉植物に、アロマティカスがあります。アロマティカスはシソ科の常緑多年草で、ミントのような香りがあるためハーブとして利用されています。多肉質のぷくぷくとした見た目が可愛らしく、インテリアとしても人気。生食できることからサラダの材料にするほか、加熱調理もできるので、オムレツやパスタなどに入れてもおいしいハーブです。
アイスプラントの栽培12カ月カレンダー
開花時期:7〜8月
植え付け:3〜5月、10~11月
肥料:特になし
種まき:2月中旬〜3月、9~10月
アイスプラントの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たりと風通しのよい場所を好みます。ただし、夏の強い日差しで傷むことがあるので、夏は遮光して風通しのよい場所で栽培したほうが、夏越しできる可能性が高まります。
【日当たり/屋内】日当たりがよい場所であれば、屋内でも栽培できます。ただし、夏の強い日差しで傷むことがあるので注意しましょう。
【置き場所】適した土壌酸度はpH6.0〜6.5で、酸性に傾いた土壌を苦手とするので、苦土石灰を散布して土壌改良しておきましょう。有機質に富んで水はけ、水もちのよいふかふかとした土壌を好むので、植え付け前に堆肥などの有機質資材を散布して土に混ぜ込んでおきます。
耐寒性・耐暑性
アイスプラントの生育温度は5〜25℃程度で、マイナス5℃程度まで耐えるため、戸外での越冬も可能です。ただし、霜にあたったり土が凍結すると枯れてしまうので注意しましょう。多肉質で乾燥に強い反面、暑さや多湿に弱く、夏は30℃を超えると下葉が枯れ始めます。風通しがよく涼しい日陰で管理すると夏越しできる可能性は高まりますが、枯れてしまうことが多いので、一年草と割り切って種まきで更新するほうが管理しやすいでしょう。
アイスプラントの育て方のポイント
種まきと間引き

種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなります。ただし、アイスプラントの苗は花苗店やホームセンターなどで入手できます。手軽にスタートしたいなら、苗の植え付けからのスタートがおすすめです。「2〜3株あれば十分だから、苗の植え付けから始めたい」という方は、次項に進んでください。
アイスプラントの発芽適温は20℃前後で、種まきの適期は、「春まき」が2月中旬〜3月、「秋まき」が9〜10月です。まず、種まき用のセルトレイに野菜用にブレンドされた市販の培養土を入れます。中央にくぼみをつけて種子を2〜3粒ずつ播き、軽く土をかぶせましょう。種子が小さいので流れ出さないように、浅く水を張った容器にセルトレイを置き、底から吸水させます。春まきする場合、気温が低い時期は育苗用の簡易フレームや加温器を利用するとよいでしょう。
発芽までは明るい半日陰で管理し、乾燥しないように底面から吸水させましょう。発芽後は日当たりのいい場所に置きます。本葉が2〜3枚出て葉が触れ合うくらいに成長したら、比較的弱々しい苗を間引いて1本のみ残し、本葉が4〜5枚つくまで育苗します。
土づくり

【菜園】
植え付けの2〜3週間以上前に、苦土石灰を1㎡当たり約100g散布し、よく耕して土に混ぜ込んでおいてください。
さらに植え付けの1〜2週間前に、畝の幅を約50cm取り、目印をつけてよく耕します。畝の長さはつくりたい量や広さに応じて自由に決めてかまいません。耕したのち、畝を作る場所に1㎡当たり堆肥2㎏、緩効性化成肥料(N-P-K=8-8-8)100gを均一にまき、よく耕しましょう。
土づくりは植え付け直前ではなく、数週間前に行っておくことで、分解が進んで土が熟成し、植物の生育がよくなります。
【プランター栽培】
野菜の栽培用にブレンドされた市販の培養土を利用すると便利です。
植え付け

植え付けの適期は3〜5月、または10~11月。苗を購入する場合は、節間が詰まってがっしりと締まった、勢いのあるものを選びましょう。
【菜園】
土づくりをしておいた場所に、幅約50cm、高さ15〜20cmほどの畝を作り、マルチフィルムを張ります。畝の中央に約60cmの間隔を取って植え穴をあけ、苗を植え付け、最後にたっぷりと水やりをしましょう。
【プランター栽培】
アイスプラントを鉢栽培する場合は、標準サイズの長方形型プランターを準備してください。底穴に鉢底網を敷き、底が見えなくなるくらいまで鉢底石を入れ、その上に野菜用にブレンドされた培養土を入れます。水やりの際に水があふれ出さないように、ウォータースペースを鉢縁から2〜3cm残しておきましょう。20〜30cmの間隔を取って苗を植え付け、最後に底から流れ出すまでたっぷりと水やりをしましょう。
水やり

株が蒸れるのを防ぐために株全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
【菜園】
アイスプラントは乾燥に強く多湿に弱いため、基本的には乾燥気味に管理します。ただし、生育期間中はよく水を吸ってぐんぐん成長するため、水切れしないように管理しましょう。根付いた後は、下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続いて乾燥しているようなら、水やりをして補います。
アイスプラントに塩味をつける場合は、海水と同程度の5%程度までの濃度を目安に食塩水を与えます。しかし、菜園の場合は土に塩分を含ませると後作に生理障害が発生することがあるので、普通の水やりのほうがよいでしょう。調理の前に塩水に浸して塩味をつけるのも一案です。
【プランター栽培】
日頃の水やりを忘れずに管理します。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。成長期を迎えてぐんぐん茎葉を広げるようになると、水を欲しがるようになります。気候や株の状態に適した水やりを心がけましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。アイスプラントに塩味をつける場合は、5%程度までの食塩水を与えます。塩水は間隔をあけて与えるようにし、葉が縮れてきたら中止します。塩分濃度は好みに合わせて調整するとよいでしょう。
追肥

【菜園】
土づくりの際に元肥を施していれば、特に追肥の必要はありません。
【プランター栽培】
苗の植え付けから約2週間後と約4週間後を目安に、2回に分けて追肥します。緩効性化成肥料(N-P-K=8-8-8)約10gを株の周囲へ均一になるようにばらまいて、軽く土になじませましょう。
収穫

【菜園・プランター栽培ともに】
種まきからおよそ2カ月後、わき芽が多数広がってきたら収穫を始めます。10cmほどになった葉を付け根で切り取りましょう。すると下からわき芽が出て繰り返し収穫を楽しめます。葉が大きくなりすぎると食感が悪くなるので、若くてやわらかいうちに収穫するとよいでしょう。
アイスプラントは多年草ですが、日本の夏の暑さに弱く、夏越しはしにくい性質をもっています。一通り収穫を終え、暑さで株が弱ったら抜き取って処分しましょう。
注意する病害虫

【病気】
アイスプラントは病気に強いほうですが、まれにうどんこ病を発症することがあります。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気で、葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になります。放置するとどんどん広がって光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。チッ素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると発生しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分しましょう。
【害虫】
アイスプラントに発生しやすい害虫は、アブラムシやハダニなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。
ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間です。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期には葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけておくとよいでしょう。
冬越し

【菜園】
春まき、秋まきともに5℃を下回る時期は防寒用シートを利用して寒さ対策をしておきましょう。畝幅に約60cm間隔で園芸用支柱をアーチ状に設置して骨組みを作り、防寒用シートを被せて両端を結び、周囲に土を盛って隙間のないように固定します。高温には弱く、30℃を越えると株が弱るので日中は換気をし、十分に気温が上がったら防寒シートを撤去しましょう。
【プランター栽培】
最低気温が10℃くらいになったら、温室や室内の日当たりのよい場所に移動して管理します。
ペットボトルでの水耕栽培

アイスプラントは、水耕栽培することもできます。専用のキットが販売されていることもありますが、身近な素材のペットボトルを利用してもOK。スーパーなどで食材として購入したものを挿し木して栽培をスタートすることも可能です。定期的に塩水を与えれば、塩気を感じることができます。
ペットボトルを使った水耕栽培の方法
ペットボトルを使ったアイスプラントの栽培では、まずラベルを剥がしたペットボトル、ハイドロボール、アルミホイル、アイスプラントの苗、水耕栽培用の液体肥料を準備しましょう。ペットボトルを利用した基本的な鉢の作り方や栽培方法は次のとおりです。
① ペットボトルを流水できれいに洗い、上から1/3くらいで水平にカットします。
② 上から1/3で切った部分を逆さにし、飲み口を下にして重ねます。
③ 藻が発生するのを防ぐため、全体をアルミホイルで覆います。
④ アイスプラントの苗をポットから出して土を落とし、根を洗います。
⑤ 飲み口側のボトルに苗を入れ、ハイドロボールを入れて根を固定します。
⑥ 重ねた下のボトルに水を入れ、毎日水を入れ替えて管理します。液体肥料はなくても育つほどなので、控えめに与えましょう。
⑦ 収穫が近くなったら、5%の食塩水を入れると塩気を感じる葉になります。
⑧ 葉が育ったら、順次収穫します。
アイスプラントを水耕栽培するときの注意点

ペットボトルを利用したアイスプラントの水耕栽培は気軽にスタートすることができますが、管理の面でいくつかのポイントがあります。ここではメンテナンスのコツについてご紹介します。
日当たりを好むが、夏場は半日陰の涼しい環境にする
日当たりのよい窓辺などに置いて管理しましょう。アイスプラントの生育適温は5〜25℃ほどです。気温が25℃を越えるようになったら直射日光が当たるのを避け、レース越しの光を当てて遮光し、涼しく管理するとよいでしょう。
温度管理をする
アイスプラントの生育適温は5〜25℃なので、真夏や真冬の置き場所に注意します。夏は遮光して温度が上がるのを防ぎ、冬は窓辺から少し離して外気の冷たい空気が伝わらないようにしましょう。
できれば毎日水を交換する
水耕栽培では毎日水を交換することが大切です。難しい場合でも、2〜3日に1度は交換するようにしましょう。
注目のニューフェイス「アイスプラント」の栽培を始めてみよう

塩分を含んだ土壌で栽培できることで知られるアイスプラント。家庭菜園ではもちろん、プランターでも栽培できる手軽な野菜の一つです。自家採取なら新鮮なうちに食べられるのも魅力。サラダなどで美味しくいただけるアイスプランツをぜひ育ててみてください。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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