みなさんはアロマティカスがどんな植物かご存じですか? アロマティカスは、分類上は多肉植物でありながら、ハーブとしても利用されている観葉植物です。この記事では、たくさんの魅力があるアロマィカスの特徴や育て方について詳しくご紹介します。
目次
大人気の観葉植物! アロマティカスの基本情報
植物名:アロマティカス
学名:Plectranthus amboinicus
英名:Aromaticus、Cuban oregano、Mexican mint、Spanish thyme、Indian borage
和名:アロマティカス
科名:シソ科
属名:プレクトランサス属
原産地:インド、南アフリカ
分類:常緑多年草
アロマティカスはシソ科プレクトランサス属に分類される植物で、学名はPlectranthus amboinicus 。室内で観葉植物として楽しまれている、プレクトランサスの仲間です。英名は日本で呼ばれているのと同じAromaticus、原産地はインドや南アフリカです。
冒頭にもあるように、アロマティカスは多肉質のハーブ。ハーブティーや料理にも利用できるうえ、育てやすいことが魅力の初心者向けの多年生植物です。
アロマティカスの花や葉の特徴
園芸分類:ハーブ、多肉植物
開花時期:4〜8月
草丈:20〜60cm
耐寒性:弱い
耐暑性:普通
花色:薄紫
アロマティカスの葉っぱは、柔らかい細い毛で覆われていて、丸く、ぷにぷにとした質感です。触れるとミントに似た爽やかな香りがし、ハーブティーなどにも使われます。虫除けの効果があるとも期待されており、インテリアとして飾ってもオシャレな人気の植物です。
日本では花が咲くことは珍しいですが、春から夏ごろに花径1cmほどの淡い薄紫色の可愛い花を咲かせることがあります。
なお、アロマティカスは寒さに弱い性質なので、地植えにすると冬越しが難しくなります。気温や日差しに合わせて移動できるように鉢植えのほうが長く育てることができます。また、成長期は旺盛に育つので地植えの場合、増えすぎることがあります。管理しやすくするためにも鉢植えにするのがおすすめです。
アロマティカスの花言葉や名前の由来
アロマティカスの名前は旧学名で英名のAromaticusに由来しています。また、アロマティカスのほかに、キューバンオレガノ、スープミント、プレクトランサス・アンボイニクスという別名ありもます。
アロマティカスの花言葉は「友情」「鎮静」。「鎮静」は、その葉がやけどの治療に使用されていたことに由来するといわれています。
アロマティカスと近縁の種類
アロマティカスと近縁の仲間をいくつかご紹介します。
プレクトランサス
プレクトランサスには斑入りなどカラフルな葉を持つものが多く、観葉植物として扱われるものが代表的ですが、‘モナ・ラベンダー’のように美しい花が楽しめる品種もあります。草丈は5~80cm。
コリウス
コリウスは主に葉を観賞するカラーリーフで、緑、赤、オレンジ、ピンク、黄、茶など、非常に豊富なカラーバリエーションが揃います。丈夫で育てやすく、寄せ植えや花壇の花材として人気があります。草丈は20~100cm。一年草扱い。
アロマティカスの栽培の12カ月カレンダー
開花時期:4〜8月
植え付け・植え替え:4〜6月
肥料:基本的に不要
入手時期:通年
アロマティカスの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】基本的には日当たりがよく、風通しのよい場所を好みます。日当たりの悪い場所では、葉色が冴えずに成長が衰えてくるので注意しましょう。ただし、夏の強い直射日光に当て続けると、葉焼けしたり、枯れる可能性があるため、日差しが強い時期は、半日陰に移動したり、日除けを設置して半日陰にするとよいでしょう。
【日当たり/屋内】室内ならば日当たりのよい窓辺も栽培が可能です。耐陰性はない性質なので、ずっと日陰になるような場所だと徒長したり成長が止まってしまうことがあります。
【置き場所】多湿に弱いため、水はけがよく風通しのよい場所。
耐寒性・耐暑性
アロマティカスは寒さに弱く、最低温度は5℃くらいです。霜や凍結にあうと枯死することがあるので注意します。晩秋から冬になり温度が下がってきたら、寒さに当たらないように室内や温室などに移動するとよいでしょう。温度が低い時期は、成長はゆっくりになります。庭植えにしている場合は、鉢に植え替えて室内の窓辺や温室などに置いて冬越しさせましょう。越冬後に暖かくなって室内から外へ出す際に、強い日差しにいきなり当てると葉が傷むので、徐々に慣らしていくとうまく順応します。
アロマティカスの育て方のポイント
用土
土はハーブ用のものを使うのがおすすめです。自分で用土を配合するなら、赤玉土6:腐葉土4の割合に。水はけをよくしたいときは、1割程度小粒の軽石を混ぜるとよいでしょう。
アロマティカスは乾燥を好み、蒸れには弱いので、水はけのよい土で育てることが大切です。多肉植物用や観葉植物用の土でも育ちますが、赤玉土や鹿沼土、軽石や砂を混ぜてもいいでしょう。
水やり
アロマティカスの水やりには、ちょっとした注意が必要です。具体的には、多湿に弱いため、水をやりすぎると根腐れなどを起こし、株が弱ってしまいます。土が完全に乾いてから水やりをしましょう。アロマティカスの葉は肉厚ですが、これは乾燥しているときにも生きていられるように水を蓄えているためです。もともと乾燥しやすい場所に自生している植物なので、多少の水切れは成長を妨げません。水やりに関しては、セダムのような多肉植物よりもやや乾かし気味にするのが適切です。
肥料
アロマティカスには基本的に肥料は必要ありません。
4〜5月にかけての春頃に葉色が悪い場合は、根元に軽く肥料を与えるとよいでしょう。
注意する病害虫
アロマティカスは丈夫で、あまり病気や害虫の心配はありませんが、カイガラムシやナメクジは発生しやすいです。
カイガラムシは葉について栄養分を吸う、白や茶色の粒状の害虫です。これらは株を弱らせるため、見つけ次第殺虫剤などを用いて駆除します。
ナメクジは葉を食べる害虫です。土の中に潜んでいることが多いので、石灰などをまいておくと被害を減らすことができます。
アロマティカスの詳しい育て方
苗の選び方
アロマティカスの苗は、ホームセンターや園芸店などで購入できます。葉の色が明るい緑色で、肉厚の葉が茎にたくさんついている元気の良いものを選びましょう。病害虫などの痕跡がないか、ひょろひょろと徒長していないかなどもチェックします。苗の大きさは、9cmポットサイズから販売されていますが、鉢植えをする場合、2ポット以上植え付けると見栄えがよくなります。
植え付け・植え替え
アロマティカスは寒さに弱い植物なので、真夏を除く春から秋にかけて植え付けを行います。また、外気温が10℃以下になる地域では地植えよりも鉢植えにして室内などに移動できるようにするとよいでしょう。
【植え付け】
入手した苗よりも1〜2回り大きいサイズの鉢底にネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢の中に仮置きし、高さを決めたら、根鉢を軽くくずして植え付けましょう。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
【植え替え】
鉢植えは、成長とともに根詰まりして、放っておくと生育が衰えて茎がひょろひょろと徒長してくるので、2年に1度は植え替えることが大切です。植え替える時期は、成長がゆっくりな秋から春までの間に。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出し、根鉢をくずして新しい培養土を使って植え直しましょう。
剪定・切り戻し
アロマティカスは生命力が強く、適した環境で育てていると成長が進んで茂りすぎたり伸びすぎて、風通しが悪くなって、次第に株が弱ってきてしまいます。そのため、茎を切り戻したり、茎の本数を減らす間引き剪定をして風通しを保ち健康に育てましょう。切る時期は、湿度が上がる梅雨前までに済ませておくとよいでしょう。
また、枝の先端の芽を摘む「摘心(てきしん)」を行うと、枝数が増えてこんもりとした株姿になります。植え付けの際に摘心をするのもおすすめです。
剪定の際に切りとった茎を使えば、挿し木で増やすことができます。挿し木に使用する場合、茎の切り口を斜めに切り、水を入れたコップに挿しておきましょう。
増やし方
アロマティカスは、種子の流通はほぼないので、苗から育てて、挿し芽・葉挿し・水挿し、株分けで増やすことができます。
【挿し芽・葉挿し・水挿し】
アロマティカスは発根しやすく、挿し芽や葉挿し、水挿しで増やすことができます。
挿し芽・葉挿し・水挿しに適した時期は4~6月、9〜10月です。
挿し芽とは、葉が数枚ついた状態の剪定した茎をそのまま用土に直接挿して育てることで、挿した茎はおよそ1~2週間で根付き始めます。挿した茎に根が出ているか確認するために抜いてしまうと、せっかく伸びてきた根が切れてしまうので水切れをしないように見守ることも大切です。
葉挿しとは、1枚の葉を挿して増やす方法ですが、葉と茎の間に新芽が出やすいので、葉と茎がついている部分を残して土に挿すのが成功のポイントです。
水挿しとは、剪定した茎を水につけて発根させる方法で、そのまま水耕栽培で育て続けてもよいですし、根が出たタイミングで土に植え付けて育てるのも方法です。
【株分け】
植え付けた後、2〜3年経って鉢に収まらないほど育ったら、株の更新も兼ねて株分けをすれば、1鉢から2鉢、3鉢と増やすことができます。株分けの適期は、成長がゆっくりな早めの春か秋です。まず、鉢から株を取り出して根鉢の土を落としながら絡まった根をほぐします。数本の茎の束をイメージして、茎の根本を両手で持ち、左右にゆっくり分けるように引っ張ると、自然に分割されれば株分け作業は完了です。根が乾く前に新しい鉢に植え付けて、数日は直射日光に当てないよう半日陰の場所に置き、水切れに注意して管理しましょう。
夏越し
アロマティカスは高温多湿な日本の夏には弱いため、夏越しの際は湿気のこもりにくい風通しのよい場所で管理しましょう。ただし日差しが強すぎる場所では葉焼けを起こしてしまうので、夏の晴れた日などは注意が必要です。
基本的には明るい場所で管理しますが、気温が高くなる午後に強い日ざしを浴びると株が傷むことがあります。夏の間は、戸外であれば午前中だけ日が当たる明るい場所や、終日木漏れ日が当たる明るい木陰、または日除けを設置するなど、気温が上がる時間帯に直射日光にさらされない場所を選んで置くようにしましょう。近年の猛暑日は、7月から観測される傾向があり、特にタイルなどで床が熱せられる日の当たるベランダやテラスでは、葉焼けに加え、鉢が熱っせられて株を傷める可能性があるので、注意が必要です。
冬越し
アロマティカスは寒さに弱く、10℃以下になると枯れてしまいます。屋外での越冬は難しいため、冬は10℃以上の室内で育てるようにしましょう。特に霜や雪にはあたると葉の水分が凍り、春になると腐ってしまうので、3月ごろまでは暖かい場所で管理します。ハーブというと、戸外の畑や花壇などで育てるイメージがあるかもしれませんが、アロマティカスは観葉植物のような扱い方をしたほうがよい植物です。
アロマティカスの木質化したらどうする?
アロマティカスを長い期間育てていると、地際付近の太い茎が樹木のように硬くなって木質化してきます。木質化が進むと、本来あった柔らかい雰囲気や香り成分が減ってきてしまうようです。そのため、定期的な切り戻しで株を若返らせると木質化が防止できます。もし、木質化してしまったら、それよりも上の部分を使って刺し芽をし、再度育て直すのも1つの方法です。
ハーブとしてのアロマティカスの効果・効能
アロマティカスは、ゴキブリやコバエを寄せ付けないハーブとしても注目を集めています。葉や茎に含まれる成分によって虫除け効果が期待できるため、バラや草花などのコンパニオンプランツとして植えるのもおすすめです。
アロマティカスの活用方法
アロマティカスはシソ科の植物で、葉っぱを揉むとミントを思わす爽やかな香りがします。キューバン・オレガノという別名もあるように、ハーブと同様に食用にすることができます。例えば、生の葉をポットに入れて熱湯を注いだらハーブティーとして楽しめ、ソーダやお酒など飲み物、デザートのトッピングに使うこともできます。オレガノやミント、バジルなどその他のハーブと寄せ植えをしておけば、好きな時に収穫してオリジナルの使い方を試せます。まだスーパーなどでも扱いが少ないハーブなので、育てながら新しい利用法にチャレンジできるハーブ界のニューフェイスといえます。
アロマティカスを育ててみよう!
アロマティカスは比較的育てやすく、初心者にもおすすめの植物です。
ぷっくりとした葉や、ハーブとしても使えるなど、とても魅力の多い植物なので、この機会に育ててみてはいかがでしょうか?
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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