ミントとローズマリーのストーブトップポプリ【ルーシーのおいしい暮らし】

気温が上がり、イキイキとしてきた植物たち。そのなかでも、ハーブガーデンの基本ともいえる「ミント」と「ローズマリー」は、栽培が容易で収穫量も多く、料理以外にも大活躍するハーブです。今回はハーブや柑橘類を鍋で煮立てて、お部屋の空気を爽やかにする、気軽で簡単な「ストーブトップポプリ」を神奈川県葉山で植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんに教えていただきます。においがこもりがちな梅雨時のハーブ活用法です。
目次
ストーブトップポプリとは

「ストーブトップ」とは、「コンロや薪ストーブの上」という意味。今回ご紹介する「ストーブトップポプリ」は、フレッシュ&ナチュラルな「ルームフレグランス」。庭で摘んだハーブ、食べ残したフルーツの皮やスパイスを鍋に投げ入れて、コトコト煮込む「鍋で温めるポプリ」のこと。アロマディフューザーよりも香りが素早く広がり、あっという間に家中がよい香りに包まれます。

温かい太陽と恵みの雨を交互に浴び、スクスクと成長期を迎えるミントやローズマリー。料理やハーブティーだけではもったいないほどに、ゴージャスな香りを放つハーブたちです。ハーブは料理だけではなく、日々を豊かにしてくれる暮らしのパートナー。今回はそんなミントやローズマリーをたっぷり使った「ストーブトップポプリ」を楽しみましょう。
「ひらめき」や「インスピレーション」を授けるミント

私たちの生活に最も馴染みのあるハーブ「ミント」。飲料水、ガム、歯磨き粉などの生活用品や掃除用品にも多く使われています。誰からも好まれ、嗅ぐだけで気分が爽快になり元気が出る香りです。新約聖書によると、パリサイ人は税金の一部を「ミント」や「ディル」「クミン」で納めていたと記されています。古代から重宝されていたミント、うーん! ロマンを感じちゃう♡

伝統的にミントは「予見」のハーブとされ、予知夢をもたらす力があると考えられていました。外からの情報で曇ってしまった心をクリアにして「ひらめき」や「インスピレーション」を授けてくれるミント。香りのイメージそのままに「スッキリ」とするハーブです。

おそらく、ミントは最も栽培が容易なハーブといえるでしょう。地下茎でどんどん広がる、丈夫な多年草。挿し芽や株分けで魔法のように増えていくハーブです。放っておいてもグングン伸びて、気付いたら庭中にミントが広がっていたなんてことも。この現象を「ミントテロ」というそうです。私の経験上、特にアップルミントがかなりタフ。おかまいナシにどんどんテリトリーを広げます。栽培は簡単ですが、一度根付いてしまったら元気すぎてアウトオブコントロール! ミントだって、私たち人間同様に一長一短、表裏一体な性質を持っています。控えめに、おしとやかに育てたければ、鉢に入れて、箱入り娘ならぬ「鉢入り娘」として栽培しましょう。

とはいえ、いつでも元気いっぱいのミントは、鉢の中でもすぐ根が張ってしまいます。パンパンで苦しそうにしていたら、鉢から出してハサミでばっさり切断!

固まった根と土をほぐして、それぞれ一回り大きな鉢に植え替えましょう。これがミントの必殺技「分身の術」またの名を「株分け」。元気に増えて、気付けば子沢山のビッグファミリーに。
伝説や逸話に満ちた「ローズマリー」

こちらもお馴染みのハーブです。ふわっと手が触れただけでも、香りが鼻から脳天へ急上昇。「スーッ」と強烈なほどに清々しい、自己主張強めのハーブ「ローズマリー」ちゃん。ローズマリーは古くから浄化やヒーリングに用いられ、神聖な役割を果たしてきた「スピリチュアル」な植物です。世界中のさまざまな儀式(結婚式やお葬式など)で、ローズマリーを使う習慣が見られます。

古代エジプトのお墓からはローズマリーのブーケが発見され、古代ギリシャでは悪霊を払う薫香として使われていました。数えきれないほどの伝説や逸話に満ちた、不思議な植物です。こうなると、神聖でありがたいハーブに聞こえますが、一年を通して栽培でき、基本放ったらかしでも大丈夫。常緑なので、庭やベランダで栽培していると本当に便利なハーブです。我が家では、お肉料理や根菜類のグリルなどに役立っています。

ローズマリーは挿し木で増やすことができ、鉢植えでも気軽に栽培が可能です。しかし、植え替えは嫌う頑固者。成長が早いので、あらかじめ大きめの鉢に植えるとよいでしょう。基本的に肥料は必要ないので、ガーデニング初心者やハーブガーデンにもおすすめです (植え替えの後や元気がない時は肥料をあげましょう)。
室内の香りを瞬時にチェンジ「初夏のストーブトップポプリ」

当たり前ですが、家の中が「いい香り」だと、シンプルに心地がよい! 好みの香りを嗅ぐと、無意識に呼吸が深くなります。深い呼吸は血行促進にも繋がり、忙しい心も一休み、心も身体も喜ぶ習慣です。今回は、梅雨の「ジメジメ」としたメランコリックな気分を払拭し、初夏の訪れにイエーイ! と心躍るような、3種類のブレンドをご紹介します。ストーブトップポプリに難しい技術と材料は必要ありません。遊び心と純粋な心で香りを楽しんでみてください。エンジョイ♡
①「ローズマリーとレモンでレッツ! リフレッシュ」

ローズマリーと柑橘がスッキリ香る、気分爽快コンビネーション。バニラの香りが甘く優しく、リラックスできる組み合わせです。
<材料>
- ローズマリー 1束
- レモンやライム 2個
- バニラエッセンス 小さじ1
- 水 適量
②「ミント&オレンジで太陽みたいな私にアップリフティング」

ミントとオレンジの元気いっぱいコンビネーション。アーシーなシナモンの香りが残る心地のよい組み合わせです。
<材料>
- ミント(今回はスペアミント) 1束
- オレンジ 2個
- シナモンスティック 2本
- 水 適量
③「ラベンダーと八角でエキゾチック&セクシーに」

甘くて爽快、時々エキゾチックな大人の香りに。スパイスで重厚感を「足し算」することで、落ち着いた香りになります。
<材料>
- ラベンダー 適量 (乾燥でもフレッシュでも)
- 八角 数個
- ローズマリー 1束
- バニラエッセンス 小さじ1
- 水 適量
作り方はとても簡単、鍋に全ての材料を入れてコトコト煮るだけ。いい香りに「うっとり&うっかり」して、火の側を離れないでくださいね。少し火元を離れる予定があれば、IHコンロやスロークッカーが安心です。
作り方

- 材料を全て鍋に入れ、沸騰させる
- 沸騰したら弱火にして、好きなだけ煮込み、火を消す (10分くらいで家中に香りが広がります)
※柑橘類の芳香成分は皮にあるので、皮だけでも十分に香ります。
※数日間はそのまま使えるので、寝る前や朝起きたときに加熱し直すのもよいでしょう! 水や材料を足しながら使ってみてください。

ほかにも、ハーブはレモンバームやタイム、バジル、セージ、レモングラスなどもおすすめです。スパイスはクローブやシナモンなどがよいでしょう。コツは「ハーブ」「柑橘」「スパイス」を組み合わせること。フレッシュなハーブでなくても、乾燥ハーブや古くなったハーブティーなどでも代用可能です。
料理の香りが残っていたり、ペットのにおいがしたり、自分の家のにおいって気付きにくいですよね。特に梅雨時はにおいがこもりがち。来客前にもおすすめです。香りは気分を変えるスイッチ! ぜひ「ストーブトップポプリ」をお試しください。でもね、雨の日のお出かけも嫌いじゃないわ! お気に入りの長靴を履いて街へ出かけましょ。イヤホンから流れるのは、ウェザーガールズの「ハレルヤハリケーン」。心の梅雨はご免だもの♡
Credit
写真&文 / ルーシー恩田

ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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