毎日の花飾りに使うガラス器 ダリアを3タイプの器にアレンジ

フラワーアレンジに欠かせない器の中でも、ガラス製の花器は一年を通じて重宝するフラワーベースです。ここでは、夏から秋へと季節が移り変わるシーズンに涼しげな雰囲気を演出するアレンジメントを、ダリア‘ムーンワルツ’を主役にして3タイプ、海野美規さんに教わります。気取らない毎日の花を小さなガラスの器に活けて、暮らしを彩りましょう。
一年を通じて重宝するガラスの花器

ガラスの花器は、夏はもちろん、一年を通して重宝に使えるフラワーベースです。大きなもの、小さなもの、背の高いもの、直線的なもの、丸みのあるもの、シンプルなもの、デコラティブなものなど、いろいろなバリエーションがありますね。ガラス製の器に活けると、どんな花でも間違いなく映えます! だから私は大好きです。
まだまだ残暑が厳しい時期ではありますが、ガラスのベースを使って初秋の花を飾り、涼しく楽しみましょう。
花器の水替えを朝の習慣にしましょう

ガラスの花器で一番気になるのは、中が透けて見えること。茎の見え方、水の見え方に気を配りたいところですね。ガラスの器は、透明感がポイントになりますから、水が新鮮であることはとても重要です。
ところが、夏は毎日水を替えても、夕方には濁って見えることがあります。エアコンの効いた部屋であれば、それほど濁らないのですが、それでもやはり気になりますよね。
ある雑誌で「朝の儀式」というテーマの連載がありました。そこには、各分野で活躍されている素敵な女性たちの、朝の時間の過ごし方が紹介されていました。「庭の手入れをする」とか「花を活ける」「花瓶の水を替える」と挙げている方々もいらっしゃいました。それを読んで、やはり朝は植物に触れる人が多いのだなぁと思いました。

花瓶が1つでも2つでも、大きくても小さくても、必ず部屋に花が活けてある、花のある暮らしをしているのっていいなと思いますし、その花瓶の水を替えることから、その日一日をスタートさせるのは、とても気持ちのよいことだなと思います。ぜひ、花を活けることとセットで、朝の水替えを習慣にしていけるといいですよね。
私はといえば、コップ一杯の白湯を飲んで、犬を起こして散歩に行くことから一日が始まります。
ガラスの器の中に入れる水の量

じつは、花器に入れる水の量に、茎が腐らず、水が濁りにくくなるコツがあります。花器にたっぷりの水を入れて花を活けると、水に浸かっ ている茎の面積が大きいため、バクテリアが繁殖しやすく、水が腐りやすくなります。
暑い季節は、気温(室温)が上昇すると、花瓶の水の温度も上がってぬるくなります。このぬるい水が、バクテリアが繁殖するのに好条件となってしまうのです。バクテリアが繁殖した水に花を活けていると、バクテリアが茎に入り込み、植物が水を吸いづらくしてしまうのです。
花それぞれには、適切な水の量があります。花器に数センチ程度の「浅水」に適している花と、たっぷりの水を入れる「深水」に適している花に分けられます。
「浅水」に適している花は、茎にうぶ毛が生えているヒマワリやガーベラ、ダリアなどのキク科の植物、茎が柔らかいカラー、それからカーネーションやトルコキキョウなども浅水にします。また、チューリップ、ヒヤシンスなどの球根花は、吸収がよすぎて早く咲き終わってしまうので、浅水にしたほうがゆっくり楽しめます。
「深水」に向いている花は、アジサイやライラック、バラといわれています。その他、細くて硬い茎は、深水でも大丈夫なようです。

できれば、毎日の水替えの時に合わせて「切り戻し」(茎の切り口を1~2cmカット)をすると、切り口が新鮮に保てます。その際、水中で切る(「水切り」をする)とより効果的です(切り口から空気が入ると導管内で気泡となり、水の移動が止まってしまうことがあるため)。
花器の中の水の量と、水替えや切り戻しをして、いつも清潔にすることが大切です。
ダリアを使った3つのガラス器のアレンジ

秋に見頃を迎えるダリアは、2000年頃から切り花として盛んに流通するようになったそうです。大輪の華やかなダリア、ポンポン咲きのカラフルなダリア、どのタイプも目を引く美しい花ですね。世界中の人々に人気があるのもうなずけます。
中輪でスイレン咲き、淡いフラミンゴのような色の‘ムーンワルツ’という素敵な名前のダリアを、3つのガラスの器に活けてみました。
タマゴ形の大ぶりな器に「一種活け」

中輪のダリアで、茎も長めの50cmというサイズ。長さを生かして、高さのある器にダリアだけを一種、活けました。
存在感のある花ですので、一種活けでもボリュームたっぷりです。花同士がなるべく重ならないように、あちこち向くようにすると、花びらが蒸れず、平面的な印象にもなりません。
ダリアは高温多湿が苦手ですので、まだ気温が高い季節でしたら、風通しをよくするように気をつけます。
口のつぼまった器に「ナチュラルにアレンジ」

ダリアは、庭に咲く花ともよく合いますので、色が緑色に変化してきたアナベルとセージ、少し小ぶりなオレンジ色のダリアと合わせてアレンジしました。
口径が広く低い器に「短くカットしてアレンジ」

アナベルと、オレンジ色のダリア、白のダリアと、ムーンワルツの3色のダリアを、こんもりとドーム形にまとめました。
私の好きな球形のガラスの器

いろいろあるガラスの花器の中で、私が一番好きなものはというと、球形の丸い器です。丸いフォルムが優しい雰囲気で、意外とどんな花にも似合います。
このボール形の器は、イギリス人フラワーデザイナーのジェーン・パッカーさんが来日してレッスンをされた時に使われたものです。東京・銀座にジェーン・パッッカーフラワースクールがあった頃、ご本人が来日して直接指導してくださるというレッスンを、私は2度ほど受講したことがあります。その2回とも、この球形の器を使ってのレッスンでした。

一回は、チューリップを使ったアレンジ、もう一回はトピアリー風のアレンジだったか、こちらは記憶が曖昧なのですが、チューリップのアレンジのほうは大好きなデザインでしたので、今でもよく覚えています。もう10年以上前のことになるでしょうか。
ジェーン・パッカーさんは、ロイヤルウエディングのブーケを手がけたり、ロンドンオリンピックのヴィクトリーブーケもデザインされて、世界的にとても人気のあるフラワーデザイナーでした。

初めてジェーン・パッカーさんのアレンジを見たとき、これまでのフラワーアレンジメントとはぜんぜん違うスタイルで、とても驚きました。そのときの印象は、「葉っぱがない!」「花がいっぱい!」。バラの花首だけを揃えて活けるデザインや、同じ種類で同じ色の花を集めて活ける(グルーピング)デザインは、ジェーン・パッカーさんの特徴的なスタイルといわれています。
とても華やかで可愛らしく、フェミニンな雰囲気のアレンジに、私はすっかり魅了されてしまいました。
ジェーン・パッカーさんは、世界中の人に新しい素敵な花の世界を広げてくださり、2011年に若くしてこの世を去ってしまいました。
気取らない毎日の花活けには、小さなガラスの器で

私は、庭で摘んだ花などを活けるのが好きです。小さなガラスの器に小さな花を活けるのは、毎日気軽に楽しめる、気取らない花アレンジです。こういうアレンジには、ガラスの器がとても重宝します。
いつも母は、庭に咲いている花を3~4本摘んで、コップやおまけで付いてきたようなワイングラスにポンと入れて、テーブルや台所の窓辺に飾っています。

子どもの頃からその様子を見てきた影響でしょうか。私もいつの間にか、母がしている、ガラスに小さな花を活ける習慣を真似するようになっていました。
じつはこのスタイルが、一番心地よい私の花活けのスタイルのように思っています。
Credit
写真・文/海野美規(Unno Miki)
フラワー&フォトスタイリスト。ハーバルセラピスト。愛犬あんとの暮らしを通じて、動物のための自然療法を学ぶ。パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
http://www.annegarden.jp
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