5株でも見応えあり! 簡単寄せ植え#11 晩春

狭い場所でも、地植えできない場所でも、気軽に季節の花を楽しめる「寄せ植え」。たった5株の苗を組み合わせることで、花の愛らしさと葉の調和によって、うるおいのある一鉢ができます。見応えある寄せ植え作りを紹介してくださるのは、グリーンギャラリーガーデンズの堀田裕大さん。初心者でも簡単に作れる晩春の寄せ植えのコツと花苗選びについて教えていただきます。
目次
寄せ植え作り【5苗の役割】
寄せ植えの作り方は、用途や製作者によって多少異なりますが、植えた草花の成長も楽しむためには、ある程度ゆとりのある容器に植え込むことがポイントです。ここではあちこちに置けて汎用性が高い、内径21cmのコンテナを使いますが、それには9cmポット苗なら5株ほどがちょうどいいボリューム。植物それぞれには、主役、準主役、脇役(引き立て役)といった役まわりを持たせて植え込みます。
主 役:1種類/花が大きくて目立つなど存在感を放つ植物。
準主役:2種類/主役に次ぐ、存在感を放つ植物。
脇 役:2種類/主役・準主役を引き立てつつ、全体を調和させたり、動きを出したりする植物。
※主役が2種類あって、準主役がないことも。今回は準主役が1種類、脇役が3種類です。
◆今回使う5株の花苗

- ペチュニア‘ジュリエット ノーブルホワイト’ ……主役
- アキレギア‘ウィンキーダブルローズホワイト’ ……準主役
- フクシア(カラーリーフタイプ) ……脇役1
- シレネ‘ナッキーホワイト’ ……脇役2
- メキシカンスイートハーブ ……脇役3
では、今回セレクトした5種の魅力をご紹介しましょう。
【今回使った植物紹介】

ペチュニア‘ジュリエット ノーブルホワイト’
ナス科多年草
草丈:10~20cm
開花期:4~10月
花色:白
白花弁の奥にシックなえんじ色がにじみ、縁がうっすらピンクがかる上品な印象の八重咲きのペチュニア。気温によって花色が変化する。茂ってきたら、一度思い切って茎全体を10cmほどに切り戻すと、蒸れの心配なくきれいに育てられる。

アキレギア‘ウィンキーダブルローズホワイト’
キンポウゲ科多年草
草丈:30~50cm
開花期:4~6月
花色:白×ピンク
コロンとした愛らしい八重咲きの西洋オダマキで、距が短めで上を向いて花を咲かせる。高温多湿の環境では夏越しできないことも多いので注意して。

フクシア(カラーリーフタイプ)
アカバナ科半耐寒性低木
草丈:30~150cm
開花期:5~10月
花色:白、ピンク、赤、紫、オレンジ、複色
天使、もしくは貴婦人のイヤリングと謳われるユニークな形のあでやかな花を吊り下げる低木。花径は種類によって異なり、1~8cm。枝はしなやかでやわらかいラインを描く。夏の強光と寒さに弱い。カラーリーフタイプは特に葉が美しいが、花も楽しめる。

シレネ‘ナッキーホワイト’
ナデシコ科多年草
草丈:約20cm
開花期:4~6月
花色:白
細い花茎の先にふっくらとした白花をつけるシレネの斑入り品種。這うように枝が伸び広がる。基本的に丈夫だが高温多湿を嫌うので、蒸れないように注意して。

メキシカンスイートハーブ
クマツヅラ科多年草
草丈:20~30cm
開花期:4~7月、9~10月
花色:白
仲間のグラウンドカバーで人気のリッピア同様繁殖力が旺盛で、横へと地下茎を伸ばして増えていく。葉にはステビアの数倍の甘み成分を持つ。小さな花も咲く。
◆寄せ植えに使うコンテナと基本の道具

どんな植物ともよくなじむ、色が薄くシンプルなデザインの素焼きのコンテナを使います。床に直置きでも何かの上に置いても、違和感のない大きさなのもポイントです。サイズは、高さ23cm、内径21cm。

- 土入れ用トレイ/植え付け時の土がこぼれるのをキャッチ。
- 土入れ/狭い場所に土を注ぎ入れるのにも便利。
- 鉢底ネット/土の流出や、ナメクジなどの害虫が鉢内に侵入するのを防ぐ。
- 植え替え棒/植え付け時に、根株の隙間に培養土がきれいに入るようにつつくための棒。
- 園芸用ハサミ/枯れた花や葉を摘んだり、茂りすぎた枝葉を整理するのに使います。
- 肥料/鉢内で植物が成長するのに必要な栄養。
- 鉢底土/水はけをよくするために、鉢底に敷く軽石。
- 培養土/植物が成長するための土壌。園芸店やホームセンターで販売されている草花用を使用しましょう。
晩春の寄せ植え作り【植え付け手順】

1. 植え込む前に、苗を並べてイメージのデザインを確認しておく。
2. コンテナの穴に鉢底ネットを置く。

3. 鉢底土をコンテナの2割ほどまで入れる。
4. 培養土に元肥を混ぜ込んでおく(※肥料によって、入れる量は異なります。パッケージに記載された規定量を使いましょう)。

5. 鉢底石が入ったコンテナに、土入れで培養土を入れる。
6. 苗の根鉢が入る程度のスペースを残しておく。

7. 植え替え棒を使って、根鉢をほぐすようにしながら崩していく。
8. 根鉢の肩の部分も削り、写真の程度まで崩す。

9. 主役のペチュニアを向かって中央左に植える。ペチュニアの株元は蒸れやすいので、水やり時に跳ね返りで土が葉につかないように、下葉を取り、根鉢の上面の土を多めに取りのぞく。
10. 丈のあるアキレギアを後方に植える。

11. ふわりと広がるシレネは、鉢の縁から垂れるようにペチュニアの右に植える。
12. 数本の枝が挿し木されたフクシアの苗は分割して使う。植え替え棒で固まった根をほぐして半分に割る。

13. フクシアの根が固くて割りにくい部分はハサミでカット。シレネの後ろのスペースに植える。

14. メキシカンスイートハーブを鉢の前面に植える。
15. 全部の苗が入ったら土を入れ込んでいく。ウォータースペース(水やり時に水や土があふれてこないようにとる、土の表面から鉢の上縁までの空間)として、2cm程度あけること。

16. 植え替え棒で根鉢のすき間を軽くつついて、しっかり土を入れ込む。
17. でこぼこした土の表面を指でならし、葉やつるの重なりを直して、見栄えを整える。
18. 完成!!

淡色の花でまとめながら、斑入りや赤みがさすコンパクトなリーフ類を合わせて、涼しげなひと鉢に仕上げました。大輪のペチュニアに繊細なフォルムの草花を合わせることで、主役の上品な存在感を引き立てています。また、アキレギアで高さを出しながら周りの植物をふわりと下垂させ、気持ちのよいのびやかなラインを描きました。

【デザインのポイントまとめ】
◇主役のペチュニアが大輪なので、その他の花はコンパクトに。
→メリハリをつけながら、主役を引き立てる。
◇白花のペチュニアとシレネ、ピンクがかるアキレギアの花とフクシアの葉の色を呼応させる。フクシアは葉がピンクがかるカラーリーフタイプをセレクト。
→ペールトーンで揃えながら、まとまりを生む。
◇シレネとフクシアをアレンジの脇に植える。
→動きをもたらす。
【置き場所や管理のポイント】

大ぶりのコンテナとアンティークのミルク缶台車を左右に並べて、リズミカルにレイアウトしました。背景に濃緑色のアイビーを枝垂れさせて、淡いアレンジの美しさを引き立てています。傍らには小鳥のオーナメントを置いて愛らしさをアップ! 小さすぎないものを2つ置くことがポイントです。
蒸れを防ぐために、日当たりと風通しのよい場所に置きましょう。
花がらや枯れた葉はこまめに摘むようします。
ペチュニアは肥料を好むので、株が弱ったり花数が減ったりしないように、液肥なら1週間に1回施しながら、粒状の肥料を1カ月に1回追肥しましょう。
Credit

制作&アドバイス/グリーンギャラリーガーデンズ 堀田裕大
グリーンギャラリーガーデンズ店長。切り花の業界で学んだデザインのノウハウを生かした寄せ植えづくりに定評があり、2017年日比谷ガーデニングショーの寄せ植えコンテストで農林水産大臣賞を受賞。園芸誌などでも活躍中。
グリーンギャラリーガーデンズ紹介記事はこちら
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SHOP DATA
東京都八王子市松木15-3
TEL:042-676-7155
営業時間;10:00~19:00 (火曜日10:00~17:00)
http://www.gg-gardens.com/
文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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