挿し木とは? なぜ植物は挿し木で増えるの? 挿し木の方法・コツをご紹介!

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みなさまは挿し木(さしき)をしたことはありますか? 挿し木は切り取った枝から根を出させ、同じ性質を持った植物を増やす方法です。自分のお気に入りの植物を一度にたくさん増やすことができたら、とても素敵ですよね。ただ、すべての植物が挿し木で増やせるわけではありません。挿し木に向いている植物とそうでない植物があるので、注意が必要です。本記事では挿し木のやり方のほか、なぜ枝から根が生えるのか、挿し木とはどういうものなのかについて詳しくご紹介します。
目次
挿し木とは

挿し木とは、植物の枝をカットし、カットした部分を用土や水に挿して発根させ、人工的に増やす方法です。挿し木は多くの植物で行うことができますが、球根植物のような分球して増えるようなタイプの植物では難しい場合があります。また挿し木による発根率は植物によって異なり、とても簡単に根が出るものから、ホルモン剤などを使わないと難しいものまでさまざまです。挿し木をするために親株からカットしたものを「挿し穂(さしほ)」と呼び、その挿し穂を挿すための用土を「挿し床(さしどこ)」と呼びます。
挿し木のメカニズム

なぜカットした枝から根が出るのでしょうか? その理由は、カットした枝には根としても成長できる、未分化の細胞があるためです。条件が整うとその細胞が活性化し、根として変化します。植物によってはその条件がシビアなものもあり、こうしたものが挿し木で増やしにくい植物。一般に根よりも先に葉が出る植物や、病害に弱くて挿し穂が腐りやすいもの、また細胞を活性化させるためのホルモンの値が低いものは難しいです。また、カットした茎の部分が挿し木に適した体力や栄養分を蓄えているかどうか、枝をいつ採取したかによっても発根能力にばらつきが生まれます。
挿し木の種類

挿し木の方法には枝挿し、葉挿し、根挿しの3種類があります。枝挿しとは枝の一部分をカットし、挿し穂として利用する一般的な方法です。カットした挿し穂は切断面を水に1時間ほどつけておき、よく吸水させると発根率が上がります。
葉挿しは、葉1枚から個体を増やすことができます。生育は他の方法と比べると遅いですが、多肉植物などでよく用いられる方法です。枝挿しよりも一度に多くの増殖株を得ることができます。葉挿しもカットした部分から根が出ます。
根挿しは根の一部をカットし、カットした部分から新しい芽を出させる方法です。根伏せともいいます。
挿し木のメリット・デメリット

挿し木はとても便利な方法で、手軽に好きな植物を増やすことができます。では、挿し木のメリットとデメリットにはどんなことが挙げられるのでしょうか。ここではそれらについて解説したいと思います。
挿し木のメリット

挿し木のメリットは、自分で既存の株を増やすことができるので、新しく苗や種を購入する必要がなく、コストの削減に繋がります。挿し木の場合、種を播いて育てるよりも短期間で多くの苗を作ることができるので、手間や時間を削減することもできます。また、挿し木で作った株は親株と同じ性質を持つため、ばらつきのない苗を大量に増やすことができます。そのため、例えば花を観賞目的とした場合、親株と同じ形質の成長した姿が想定でき、不安要素なく育てることができます。
挿し木のデメリット

挿し木のデメリットは、親株と同じ形質を持つため、元の株が病気にかかりやすかったり、感染していた場合などは、そのままその性質も引き継いでしまうことです。また初心者は挿し木の成功率が低く、安定して根がしっかり張るまでには、ある程度の経験と技術の習得が必要となります。
また、挿し木に限らず植物を増やす際の注意として、増やした株を無許可で販売したり、譲渡したりしないようにしましょう。品種によっては種苗法で制限されている場合があります。あくまで個人で楽しむ範囲で増やすようにしましょう。
挿し木の方法

挿し木は比較的簡単な手順で行うことができます。まずはじめに挿し木にする枝を見定めてカットし、挿し穂を作ります。挿し穂は1、2時間水につけたあと、折らないように挿し床に丁寧に挿します。このとき、あらかじめ挿し床に植え穴をあけておくと安心です。その後は水をたっぷりと与え、風通しがよく明るい日陰で管理をしましょう。ただし、多肉植物の場合は乾いた挿し床に挿し穂を挿し、発根が確認できるまでは水やりはしないようにしてください。
挿し木のコツ

初心者には少し難しい挿し木ですが、コツを知ればその成功率は高くなります。ここでは、そのコツについて解説します。
挿し木に適した土

挿し木をするにあたり、重要になるのは土です。挿し床に病原菌がいた場合、すぐにカビが発生してしまいます。まずは病原菌のいない清潔な土を用意しましょう。具体的にはピートモスやパーライト、バーミキュライトのような殺菌された用土や、鹿沼土のような保水性と排水性のバランスがよいものが適しています。また市販の挿し木用の用土もよいでしょう。挿し木を発根させるときは養分が不要で、腐葉土や肥料を配合する必要はありません。肥料分があるとカビが発生したり、むしろ発根を遅らせる原因にもなるため注意しましょう。
挿し木に適した時期

挿し穂として使いたい植物の生育期が、挿し木の適期です。生育期は活発に成長しようとする時期なので細胞も分化しやすく、挿し穂からの発根も比較的容易です。特に梅雨どきなどは適度な湿度も確保でき、最適な時期といえるでしょう。反対に休眠期や気温の高い時期は細胞の活性が弱く、発根するまで挿し穂が持たない可能性があるので注意しましょう。
適したカットや処理方法

挿し穂の発根を促すためには、カットする部分とその後の処理を適切に行うことが大切です。発根しやすくするポイントとしては、一般的にはある程度成長している枝の中間部分を利用することです。また枝が水を吸い上げやすいように、切断面が広くなるように斜めにカットします。このときに切断部分がつぶれてしまうとうまく吸水できず、発根まで挿し穂がもたないので、切れ味のよい刃物できれいに切るのがコツ。その後、市販の発根促進剤を使うと、よりよい成果が期待できます。
上で説明したのは「管挿し(くだざし)」という枝の中ほどを使う方法ですが、ほかに枝の先端を使う「頂芽挿し(ちょうがざし、ちょうめざし)」といった方法もあります。
枝の途中を使って挿し木をする場合は、挿し床に挿す際に上下を間違えないように注意しましょう。先端側を挿すと発根しません。また、枝の途中に葉がついていた部分があれば、そこが土に埋まるように挿すと発根しやすい植物もあります。
適した管理方法

挿し木は挿した後の管理が悪いと、発根することなく枯れてしまいます。管理する上での注意点として、まずは強い風雨に当てないこと。挿し穂からの発根初期は、とても繊細な時期です。雨水や突風による挿し穂のわずかな動きで発根先端部分がつぶれ、それ以上成長しなくなってしまいます。自然界では、折れた枝は地面を転がったり、川で流されている間は根を出しません。そうした状況で根を出しても根づくことができず、体力を浪費して枯れてしまうだけだからです。挿し穂が動かないようしっかりと挿し床に挿して、軒下など直射日光の当たらない明るい場所で管理し、また用土が乾燥しないよう注意しましょう。また観葉植物の挿し木や、土ではなく水に枝を挿す「水挿し(みずざし)」をする場合は、室内で管理するのがおすすめです。室内で管理する場合は用土の乾きが悪いので風通しに注意し、水挿しの水はこまめに新鮮な水に換えましょう。
挿し木で植物を増やそう

挿し木は、方法を覚えてしまえば一度にたくさん植物を増やすことができる便利な方法です。ここまでご紹介したようなポイントさえ押さえれば、誰でも行うことができ、根が出てきたときや新しい芽が見えたときの達成感は格別です。みなさまもお気に入りの植物を挿し木で増やしてみてはいかがでしょうか?
Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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