秋は、越冬場所を探すカメムシが家の周辺や建物で目につきやすくなる季節です。庭の植物にカメムシを見つけると、「植物が枯れる?」「臭くなる?」と心配になる人も多いでしょう。でも、カメムシを見つけたからといって、すぐに大きな被害が出るわけではありません。大量発生しなければ植物へのダメージが限定的なものも多く、なかにはイモムシなどの害虫を食べてくれる益虫“庭の味方”もいます。そこで今回は、カメムシを見つけたときに「すべきこと・しなくていいこと」をまず整理。そのうえで、庭で出会う個性豊かなカメムシたちの世界をご紹介します。
目次
庭にカメムシが! まず知っておきたい「心配なこと・心配しなくていいこと」

結論として、庭でカメムシを数匹見つけたからといって、すぐに植物が枯れるわけではありません。また、カメムシといえば「クサイ!」というイメージがありますが、これもむやみに触ったりしなければ、必ず臭うわけでもありませんし、種類によっては臭くないものもいます。多くは植物の汁を吸いますが、大量発生しなければ致命的な被害になるケースは多くありません。
さらに、カメムシの中には、イモムシなどの害虫を食べてくれる「庭の味方」の益虫もいます。つまり、「カメムシを見つけた=すべて害虫として即駆除」という必要はないのです。
出会うと条件反射的に嫌がってしまう人も多いかもしれませんが、じつはその反応、もったいない! 適度な距離感さえ保てば、友達とまではいかないものの、無害な隣人、中には頼もしい庭友達として接することもできるのがカメムシなのです。まずは数や植物の状態を見ながら、被害が出ているかどうかを判断することが大切です。
こんなときは注意。カメムシを放っておかないほうがいいケース

- 同じ植物に多数集まっている
- 花や実、野菜などに多数吸汁被害が出ている
- 花の色や形がおかしくなっている
- 家庭菜園で作物の品質低下が見られる
近年、東京都心部の公園では殺虫剤等の使用を控えるケースも多く、カメムシを始めとした植物を食べる「害虫」ともある程度共生している方が増えてきました。無論あまりに増え過ぎた時は捕殺することもあるようですが、その辺りの適したバランス感覚(どこまで駆除するのか?)などは、現地でお手入れしているガーデナーの方などに直接話を聞いてみても参考になりそうです。
家の中に入ってきたカメムシはどうする?
秋には、越冬場所を探すカメムシが家の中に入り込むこともあります。見つけても、叩いたり潰したりするのはNG。カメムシのクサイ臭いは防御反応なので、刺激を受けると強い臭いを出すことがあります。透明のコップなどの容器をそっとかぶせ、厚紙を差し込んで捕まえ、屋外へ出しましょう。掃除機で吸うと本体内部に臭いが残る場合があるため、おすすめしません。
侵入を防ぐには、網戸やサッシ、換気口などの隙間をチェックし、洗濯物を取り込む際にもカメムシが付いていないか確認しましょう。
じつはカメムシにはメリットも! 害虫を食べてくれる「肉食系カメムシ」

意外かもしれませんが、カメムシの中には、植物ではなくほかの昆虫を食べて暮らす種類もいます。その代表がサシガメの仲間。一般的なカメムシと同じように針状の口を持っていますが、植物の汁ではなく、ほかの昆虫に口を突き刺して体液を吸います。庭ではイモムシやハムシなどを捕食することもあり、植物を育てる人にとっては、害虫を減らしてくれる“味方”になることがあります。
写真はアカサシガメといい、この系統の昆虫としては比較的よく見る代表種の一つ。頭の形と色にハッキリした特徴がある上に名前も短いので、益虫として覚えておきましょう。ずんぐりして丸っこい一般的なカメムシと比べると、ほっそりとした体形で特に頭部が小さくなっています。
サシガメにはこの他にもたくさんの種類がおり、益虫とはいえちょっとした付き合い方のコツもあるので、後ほど詳しくご紹介します。まずは、庭でよく見かけるカメムシについて、ご紹介していきます。
代表種1:セリ科の植物に現れる、赤と黒のストライプ模様のアイツ

カメムシを知るには、まず遭遇率の高い代表種を知ることが肝要です。
私がここ数年、都内の宿根草園を訪ねた際に一番よく見るのが、この赤と黒の縞模様が特徴のアカスジカメムシ。セリ科の植物の汁を吸う種で、初夏にはオルレア、真夏にはフェンネルなどによく付きます。ハナウドやエリンジウム、あるいはニンジンなども同じくセリ科なので、よく本種が発生するようです。
他にはない独特のカラーリングは、恐らく一度見たら忘れないはず。サイズはせいぜい全長1cmくらいで、動きは比較的のんびりとしています。

アカスジカメムシのこの縞模様には、鳥などの外敵から狙われにくくなる効果があると言われています。そうした外敵対策の手段を持っているためか、他のカメムシと比べると、あまり臭くない傾向。集団になるとややグロテスクな気もしますが、少なくとも「ニオイ」という点では、そんなに嫌な虫ではありません。

カメムシの仲間は不完全変態で、卵→幼虫→成虫という形で成長する昆虫です。チョウやカブトムシと違って間にサナギの期間を挟まないため、成虫と幼虫はほぼ同じような外見をしています。上の写真では、右上にいる模様や色の違う3匹が幼虫です。 アカスジカメムシは、他のカメムシの幼虫と比べても独特の外見をしていますし、基本的にセリ科の植物にしかいないので簡単に識別できることでしょう。
代表種2:お洒落な模様はまるで芸術! 縞々の触角が名前の由来

庭や花壇でよく見られるカメムシをもう一種類挙げるとすれば、このブチヒゲカメムシ。左右対称の幾何学的な模様が特徴で、サイズは見ての通り指先程度。そしてセリ科の植物ばかりを偏食するアカスジカメムシと違い、マメ科やキク科、ダイコンなどの野菜に至るまでいろいろな植物の汁を吸うため、ガーデン内のあちこちに分布しています。
左写真はオミナエシに来たところ。こうした夏の花からも汁を吸いながら生活しているため、花の観察をしていて遭遇することも多いのではないでしょうか?
こちらは臭いがきついため、その点ではアカスジカメムシより嫌われている……かも?

ブチヒゲカメムシに限りませんが、カメムシに汁を吸われた植物は花の色や形がおかしくなったり、家庭菜園であれば作物の質が劣化するなど、確かな実害が発生します。一方で、余程大量発生でもしない限りは、そう簡単に枯死することはありません。
よく見る緑色のカメムシに、今ある変化が起きている?

さて、皆さんが「カメムシ」と聞いて真っ先に想像する色は何でしょうか? ここまでに紹介してきた種はいずれも派手なカラーリングでしたが、大抵の方はまず緑色の丸っこい姿を想像するかもしれません。実際、緑のカメムシは今も昔も結構よく花壇で見かけます。
中でも特に名前が知られており、子ども向けの図鑑などにもよく掲載されているのは、アオクサカメムシという種です。時にはカメムシ全体の代表種みたいな扱いをされることもあるアオクサカメムシですが、今、東京都心部ではその数が激減しています。でも、上写真のような緑のカメムシはいまだよく見かけます……これは一体どういうことなのでしょうか?

写真はいずれも都内の宿根草園で撮影したカメムシですが、これらはミナミアオカメムシといい、名前の通り元々は南方系で、近年の温暖化に伴って徐々に北へと分布を拡大しています(正確に識別するには翅の下の腹部の色などをチェックする必要があります)。
それが原因なのかは確かではありませんが、元々関東にいたアオクサカメムシは近年減少傾向にあり、ミナミアオカメムシにとって代わられようとしているようです。カメムシ界隈でも、どうやら気候変動の影響は如実に出始めています。

一方で、今も昔も安定して見られる「緑のカメムシ」も存在します。それがこのチャバネアオカメムシ。もしかしたら「緑のカメムシ」と聞いて本種のビジュアルを思い出す人も多いかもしれません。
写真はハマナスの実(ローズヒップ)で食事をしているところ。カメムシの口は針状で、固い植物の表皮も貫いて中の汁を吸います。右の個体は、口吻を実に刺しているのが分かるはず。これは木に口吻を刺して樹液を吸うセミと同じ……というか、そもそもセミはカメムシ目の昆虫だったりします。形もサイズもついでに人気も(笑)違うのでご存じない方も多いようですが、食事方法の共通点に目を向けると、近い仲間であるというのも何となく頷けるのではないでしょうか?
害虫退治の心強い味方? 肉食性のカメムシも覚えよう

こちらは前述したアカサシガメです。植物に害を及ぼす他の昆虫を捕食するため、頼もしい存在ではありますが、付き合い方にはちょっと注意が必要です。というのも、サシガメの頭部は小さいですが、口吻は鋭くて結構太め。普段は写真のようにくるりと巻かれる形で収納されていますが、狩りの際にはこれを伸ばして獲物に突き刺します。そしてこの口吻、実は人に対しても防御目的で使用してくることがあり、もし刺されれば、ハチの針以上の太さも相俟って悶絶するほど痛いとの専らの噂です(私はまだ刺されたことはないですが、怖くて到底試すことができません(汗))。
毒はないので命に別状はないものの、もし刺されたら大ごと。お庭で見かけても手を出さず、そっと見守るようにしましょう。イモムシやハムシの仲間などの害虫を捕食してくれることもあるため、安易に触れたりしない限りは心強い味方にもなり得ます。

よく見るサシガメをもう一種類。これはシマサシガメといい、脚の付け根付近にある白い縞模様が特徴です。鋭い口吻も健在で、テントウムシなどの昆虫の硬い身体も貫いて捕食してしまいます。ちなみに幼虫も肉食性。上で紹介した一般的なカメムシと同じく、サシガメも成虫と幼虫が同じ形をしていますが、食性もまた同じとなっています。

特徴的なものをもう一つ。こちらはシロヘリクチブトカメムシといい、サシガメの仲間ではありませんが肉食性のカメムシです。成虫も幼虫もイモムシなどを捕食するため、ガーデニングをする際には益虫といえる存在です。元は関西などの暖かい地域に分布していたものですが、近年の気候変動に伴って徐々に東京周辺でも見られるようになってきました。ちなみにサシガメほど凶暴ではないようですが、一応刺されないように注意しましょう。
【番外編】お庭や花壇の外にも、こんなカメムシが!

カメムシの暮らす環境は花壇やお庭だけでなく、雑木林や草原などにも幅広く分布しています。バッタと一緒に草むらに隠れているクモヘリカメムシや、標高の高い丘陵~山岳域でないとまず会えないオオヘリカメムシやツノアオカメムシ、最近都会の街路樹に増えてきた外来種のキマダラカメムシなど、その外見や生態は実にバリエーション豊富です。
上に挙げた6種類はあくまで一部分。自然公園や地方の観光地などに足を運べば、さらに多彩なカメムシが暮らしています。その地域ごとの特性や色の多彩さなどに目を向けると、嫌われ者とは違う新しいカメムシの側面が見えてくることでしょう。

さて、カメムシに限らず多くの昆虫は、食事場所だけでなく身を隠す場所の多いところを好む傾向があります。そのため、街や公園でも背丈の低い一年草花壇より、高低差のある宿根草主体の花壇で会うことが多いです。
これらの花壇では使われる植物の種類が多い分、そこを訪れる昆虫の種類も多様になるもの。どのカメムシがどの植物を好むのかを探るにはうってつけです。好奇心を持って観察・撮影するもよし。逆に庭での虫害の予防策に活かすもよし。色々なカメムシを知るためにも、ぜひ近くの宿根草園に行って観察してみてはいかがでしょう。カメムシを「知る」ことで、潜在的な嫌悪感を和らげ、庭仕事やガーデン散策などで草花と接する際に、無用な「嫌な思い」をすることがなくなりますよ。
Credit
写真&文 / 中村 桂祐

1982年3月生。東京理科大学大学院 応用生物科学専攻終了。小学生の頃に地元の植物園に行ったり『昆虫記(今森光彦著)』などの図鑑を多数読んだことから動植物に興味を持つ。2012年4月より㈱マルモ出版で雑誌「マイガーデン」および「ランドスケープデザイン」の編集・ライターおよび広告営業など多彩な仕事に従事。2020年4月より自然環境ジャーナリストとして独立し、それまで個人ブログとして更新してきた『首都圏生きものめぐり』を2021年4月よりツアー講座として展開し、首都圏の昆虫や野鳥などを案内するガイドを務める。現在は業界専門誌「グリーン情報」で編集担当を務め、生物多様性関連の連載記事も執筆中。
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