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じつは暑さに弱い⁉︎ トマトの連作障害と尻腐れ病を防ぐプロの土づくり

じつは暑さに弱い⁉︎ トマトの連作障害と尻腐れ病を防ぐプロの土づくり

JLM Photos/Shutterstock.com

「トマトは夏に強い」と思っていませんか? 
じつは、高温が続くと実がならなかったり、尻腐れ病が出たりと、トマトは暑さに弱い野菜です。
さらに、同じ場所で育て続けることで起きる連作障害も、家庭菜園ではよくある悩み。
でも、そんなトラブルを防ぎ、トマトを健康に育てる方法があります。
それが、微生物の力を活かした「土づくり」。プロの現場で実証されているこの方法なら、暑さや病気にも負けない土が家庭でも再現できます。
この記事では、連作障害・尻腐れ病・高温障害を未然に防ぐ、プロ農家が実践する“微生物の土づくり術”を詳しく解説します。

トマトがうまく育たない原因は?

じつは暑さが苦手なトマト

トマトは「夏野菜」なので暑さに強いと思われがちですが、過度な高温には非常に弱い植物です。とくに日中の気温が30〜35℃以上続く時期は要注意。

  • 30℃以上では光合成が低下し、逆に呼吸が活発になってエネルギー消耗が激しくなる。
  • 高温によって花粉が機能しなくなり、受粉・着果がうまくいかなくなる。
  • 蒸散バランスが崩れることで、必要な栄養素が届かなくなる。

高温障害を防ぐためには、温度管理・水分管理・栄養バランスがカギになります。

連作障害とは? 同じ場所で育てることで起こる問題

トマト栽培を毎年同じ場所で続けていると、年々うまく育たなくなることがあります。これは「連作障害」と呼ばれる現象で、主に以下のような原因によって起こります。

  • 土壌中の養分バランスが偏る
  • 病害虫が蓄積する
  • 微生物の多様性が失われる

とくにトマトは連作障害の影響を受けやすく、実がならなかったり、株が弱ったりするなどの症状が出やすい作物です。

尻腐れ病の原因と予防法とは?

トマトの尻腐れ病
トマトのおしり部分が黒くなる「尻腐れ病」。Mila Makhova/Shutterstock.com

もうひとつ、トマト栽培でよく見られるのが「尻腐れ病」。
実の先端(お尻の部分)が黒く変色して腐ってしまう症状です。

原因の多くは、土中のカルシウム不足や吸収不良。特に高温時や乾燥時に起こりやすく、有機肥料の過剰施用や土壌のアンバランスが背景にあります。

プロが選ぶ「微生物の土」とは?

肥料だけでは防げない!土壌の健康を守る“微生物”の役割

植物を健やかに育てるには、肥料だけでなく「土の中の微生物バランス」が重要です。
微生物は、以下のような役割を果たします。

  • 有機物を分解して植物に吸収しやすい形にする
  • 病原菌の活動を抑える
  • 根のまわりを健全に保ち、ストレスを減らす

つまり、微生物が豊かな土は「病気に強く、植物の根が元気になる」土といえます。

「東京8」「ミラクルバイオ肥料FDS」の特長と働き

東京都清瀬市の横山園芸が導入しているのが、以下のバイオスティミュラント資材です。

バイオスティミュラント資材
横山さんが使っているバイオスティミュラント資材。
  • 東京8:1500以上の多様な好気性菌を含み、土壌に酸素を供給しながら、団粒構造を育む。連作障害や病気の発生を防ぐ。
  • ミラクルバイオ肥料FDS:栄養だけでなく、有効菌を活性化させる有機資材。肥料焼けが起こりにくく、植物の根張りを促進。
肥料とバイオスティミュラント資材の違い

「肥料」がチッ素、リン酸、カリなどの栄養を植物に直接与えるのに対し、「バイオスティミュラント資材」は微生物や有機酸などの力によって、植物の環境への適応力を上げたり、免疫の活性化など、植物自身の力を引き出すように作用します。

これらの微生物資材を組み合わせることで、土壌中の善玉菌の働きを活性化し、病原菌が増えにくい環境をつくります。

横山園芸で実証された驚きの効果

トマトが連作しても病気知らず!尻腐れもなし

横山園芸のイタリアントマト
スクスクと育つ横山園芸のイタリアントマト。

横山園芸では、同じ畑でトマトを何年も栽培していますが、連作障害は出ていません。
しかも、尻腐れ病の発生もほぼゼロ。これは、微生物を活用した土づくりが功を奏している証拠です。

ドライトマトになる⁉ 冠水しても腐らない驚異の実例

地面に落ちたトマト
土に落下してもカビが生えず腐らないトマト(左)。観察を続けるとドライトマトになっていった(右)。写真/横山さん提供

驚くべきことに、夏のゲリラ豪雨で畑が冠水しても、落果したトマトが腐らず乾燥し、自然にドライトマト化したケースもあるとのこと。

東京8の散布比較
水没した畝の左側のみ「東京8」を100倍で灌注と1,000倍で葉面散布。右側は無処理。左側の畝の生育が圧倒的に良好。写真/横山さん提供

「水が引いたあと、ガックリしながら畝を歩いていたら、あれ? と思ったんです。土に落ちたトマトの中に、腐っていかないものがあったんです。普通なら高温多湿のこの時期、落果したトマトはすぐに腐り始めるはずです。でも、そこから数日経っても、一向にそのトマトは腐りませんでした」。

これは微生物の力が大きく働いていると気づき、水没被害からトマトを救うために追加でバイオスティミュラント資材を投入。おかげでその年もたくさんのトマトを無事収穫、出荷できました。

バイオスティミュラント資材が高温期のトラブルに有効な理由

バイオスティミュラント資材は、植物のストレス耐性を底上げし、高温による障害が出にくくなる“環境を整える”効果があります。

  • 高温や乾燥などの「非生物的ストレス(abiotic stress)」に対して、植物の抗酸化作用や自己防衛反応を強化する。
  • 高温時に根が弱ると、植物体全体の温度調整が困難になりますが、バイオスティミュラントは根の成長と活性維持をサポートします。
  • 高温期に起こりやすいカルシウム吸収の乱れにも、有機酸・微生物資材が吸収効率を高める働きをします。

菌の多様性がポイント!トマト以外の花もスクスク

バイオスティミュラント資材
クリスマスローズの生産にも「東京8」や「ミラクルバイオ肥料FDS」を使用。生育旺盛でプラスチック鉢を破って成長するクリスマスローズ。

横山さんは世界的なクリスマスローズの育種者・生産者として知られますが、10年ほど前からエディブルフラワーを手がけ始めたことが菌や微生物に着目する大きなきっかけになったと話します。

「エディブルフラワーでは使える農薬がごく限られていて、病害虫が予想以上に発生し、2年間は出荷できるものが作れませんでした」。

横山園芸のエディブルフラワー
試行錯誤のうえに化学農薬に頼らず独自の方法で栽培・出荷しているエディブルフラワーは高い評価を得る。

そこで農薬に頼らずに健全なエディブルフラワーを栽培するために、自ら書籍や論文で菌を学び、さまざまな資材を試してきました。白絹病に効くとされる菌資材を投入した際には、特定の菌が増えすぎて土壌バランスが崩れ、思わぬ失敗も経験したといいます。

有用菌を利用したガーデニング
菌の席取り合戦。有用菌を先に住まわせることで悪玉菌を抑えられるが…。

「植物の周りにはたくさんの菌がいて、いい菌もいれば悪い菌もいます。彼らはいつも植物の周りで席取り合戦を繰り広げていて、先に席を取ったほうがそこで増えるんです。だから、有用菌を先に植物につけておくことで病気を防ぐことができるんですが、有用菌の中にもいろいろなキャラクターがいて、すぐに別の菌に席を譲ってしまったりする菌もいる。だから菌の多様性というのがとても重要なんですね」

有用菌を利用したガーデニング
すぐに席を他の菌に譲ってしまい、定着しない菌も。

ガーデニングなどでも善玉菌入りの資材を使っても「定着しない」「すぐいなくなる」というケースが多いのは、いわば“お人好しで優しい”菌たちのキャラクターによるものです。

こうした経験を経て、最終的に横山さんが辿り着いたのが前述の「東京8(エイト)」と「ミラクルバイオ肥料FDS」の組み合わせです。これにより、横山園芸のエディブルフラワーは化学農薬不使用を実現し、名だたるシェフがその味や香りを絶賛。今や海外のレストランからも声がかかるほどです。

家庭菜園でもできる!微生物肥料の活用法

どこで手に入る?ネットで買える土壌資材

東京8やミラクルバイオ肥料FDSは、園芸専門の通販サイトなどで入手可能。
一般のホームセンターではあまり見かけないため、「微生物肥料 東京8」「ミラクルバイオFDS」などで検索するのがおすすめです。横山園芸の通販サイトでも販売中です。

家庭菜園での使い方と注意点

ミラクルバイオ肥料FDS
ミラクルバイオ肥料FDSは、開花前の生育期に表土にひとつまみのせるだけ。葉色が生き生きし、病気にかかりにくくなり、開花期間も長くなる。
バイオスティミュラント資材
横山園芸では「東京8」の希釈液を2週間に1回ほどの間隔で水やり時に。

【ミラクルバイオ肥料FDS】

  • 土づくりの際に混ぜ込む(植え付け2〜3週間前が理想)
  • 開花の前の生育期に土壌の上にひとつまみのせる

【東京8】

  • 植え付け時に希釈液に根をつける。
  • 希釈液を2週間に1回水やり時に。
  • 生育期に希釈液を株全体にスプレー噴霧。

また、バイオスティミュラント資材は通常の化成肥料や堆肥との併用も可能です。微生物肥料はあくまで「環境を整える」役割。肥料の代わりではなく、“基盤”として活用しましょう。

まとめ|トマト栽培の失敗を減らすカギは“微生物の土”

トマト
トマトの収穫はもうすぐそこ。トラブル対策をして収穫を楽しもう! JLM Photos/Shutterstock.com

トマトの連作障害や尻腐れ病に悩んでいるなら、土壌の微生物環境に目を向けてみましょう。
プロが実践する「微生物の土づくり」は、家庭菜園でも十分に応用できます。

健康な土が、病気に強いトマトを育て、収穫の喜びを支えてくれます。
今年こそ失敗しないトマト栽培、始めてみませんか?

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