2019年4月、平成が終わり、5月からは新たな元号である令和の時代が始まります。この機会に、平成の園芸とガーデニングを彩った象徴的な3つのガーデニングプランツ、バラ・クレマチス・クリスマスローズを、ベテランガーデナーの遠藤昭さんと一緒に振り返ってみましょう。

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園芸からガーデニングが生まれた「平成」の時代

ガーデンのクリスマスローズ

間もなく平成という時代が終わろうとしている。平成時代は、正しくガーデニングの時代だった。それは”園芸”が”ガーデニング”と呼ばれるようになり、内容的にも大きく変化した変革の時代だった。平成が幕を閉じ、年号が令和に代わる、この機に当たり、平成時代の園芸を振り返ってみたい。

昭和時代、園芸は「盆栽・菊・洋蘭」に代表される男性の趣味の世界が中心だった。それが、平成時代が終わろうとしている現在は、ガーデニングは女性中心の世界に大きく変化した。園芸の世界でも、平成時代に男女平等社会が進んだのだ。

さて、それはいつから始まったのだろうか?

バラとデルフィニウム

一つの大きなきっかけとされているのが、1990年、つまり平成2年の大阪花博、正式には「国際花と緑の博覧会(The International Garden and Greenery Exposition, Osaka, Japan, 1990)」、俗に「花の万博」「花博」「EXPO’90」である。この花博のテーマが「花と緑と人間生活のかかわりをとらえ 21世紀へ向けて潤いのある豊かな社会の創造をめざす」であり、何と、2,312万人もの入場者があった。この花博で多くの家庭園芸向きの西洋の草花が紹介され、女性たちが園芸の世界に入るきっかけになったようである。

また、第1回目の世界らん展日本大賞が開催されたのが1991年(平成3年)で約40万人の来場者があった。この世界らん展日本大賞は、平成31年には、「世界らん展2019 花と緑の祭典」へと進化した。この世界らん展も、かつて男中心の蘭の世界に女性が「見学」に来る大きなきっかけになった。

更に当時は、NHK『趣味の園芸』も全盛時代で、平成1年のテキスト発行部数は、毎号90万部と現在の13万5千部とは比較にならないほど、園芸番組の人気があったのだ。

やがて、『園芸ガイド』や『BISES』等の園芸分野の雑誌が発行され、1997年(平成9年)には「ガーデニング」が流行語大賞を受賞し、1999年(平成11年)には第1回国際バラとガーデニングショウが開催され、ガーデニングが大ブームとなった。このガーデニングブームを牽引したイベントも昨年、2018年に20回で幕を閉じた。平成と共に生きたイベントだった。

平成を彩った3つのガーデンプランツ
「バラ・クレマチス・クリスマスローズ」

バラとクレマチス

僕も『趣味の園芸』テキストは、この40年余り購読しており、他の園芸雑誌もよく購読したが、平成時代の人気記事は「バラ・クレマチス・クリスマスローズ」だったように思う。実際、出版関係者から、この「バラ・クレマチス・クリスマスローズ」を特集すると販売部数が伸びると聞いたことがある。

何故、バラ、クレマチス、クリスマスローズの3種のガーデンプランツは人気が出たのだろうか? かねてより人気の園芸植物である菊や蘭に共通するところは、品種数が多いことである。その点、この3種は、その要件を満たしているのだ。そしてブームに火をつけたのが、女性向け園芸雑誌である。その購読者の多くの女性たちが、これらのガーデンプランツを庭に取り入れ、お洒落なガーデンライフスタイルを実践したのだ。

クリスマスローズ

そして、もう一つの平成園芸の背景は、最近のSNSの「インスタ映え」という言葉があるように、インターネットが一般化したことによるネット通販の普及や、ホームセンターの台頭による流通革命だろう。バラやクレマチス、クリスマスローズのような品種の多い植物は、店頭在庫を抱えるには適さず、ネットを通して購入するのに向いている。ネットの普及が、「バラ・クレマチス・クリスマスローズ」を平成園芸三種の神器にのし上げたと言っても過言ではないと思う。

バラとクレマチス

僕は、十数年前から、この「バラ・クレマチス・クリスマスローズ」を、「平成園芸三種の神器」と呼んでいる。ガーデニングブームに乗ったガーデン愛好家たちも、この3種は平成時代の必須植物と捉え、競って買って育てていたようである。僕自身は、流行は追わない主義なのだが、ふと気づいて見ると、自分の平成時代のブログ『男庭日記』には、オージープランツの次に「バラ・クレマチス・クリスマスローズ」の記事が多くアップされているのである。

まあ、この三種の神器のお陰で、僕自身も平成園芸を楽しませていただいたのだ。ということで、平成最後のGarden Storyの記事は、この平成園芸の時代を共に駆け抜けた、我が家の平成園芸三種の神器「バラ・クレマチス・クリスマスローズ」の写真でお送りしたい。

バラが彩った、平成の我が家の庭風景

バラ‘クィーン・エリザベス’ バラ‘クィーン・エリザベス’

まず、僕が大切にしてきたバラが、母が遺したこの‘クィーン・エリザベス’だ。もともと、僕が高校生の頃に、タキイの通販で購入し、挿し木苗を分けてもらった。既に30年以上経ち、平成という時代を共に生きた大切なバラだ。鉄砲虫に喰われ瀕死の時期もあったが、復活した。

キモッコウバラ

キモッコウバラも平成の代表的なバラだ。

白バラ‘アイスバーグ’

純白の花を咲かせる‘アイスバーグ’は、オーストラリアに暮らしていた時代の思い出のバラ。オーストラリアで一番多く見かけたバラが、この‘アイスバーグ’だ。オージープランツ感覚で「思い出」と共に育てた。

つるバラのアーチ

つるバラの魅力は、アーチ仕立てなどにすると、狭い庭でも空間を有効に使用できること。このアーチに絡めた‘スーベニール・ドゥ・ドクタージャメイン’は香りが素晴らしい。

そしてバラは、デルフィニウムと共に、イングリッシュガーデンらしさを醸し出すには最適だった。

バラとデルフィニウム

クレマチスが彩った、平成の我が家の庭風景

つる植物であるクレマチスも、庭の空間演出に欠かせないガーデン素材だ。品種のバリエーションも多く、僕のガーデンにもいくつもの品種が育っている。

クレマチス‘白万重’
クレマチス‘白万重’。

しかし、こうして写真で振り返ってみても、バラとクレマチスは改めて相性の良い植物だと思う。たくさんのツーショット写真がある。

クレマチス‘ワルシャワ・ナイキ’とバラ‘ロジャー・ランベリン’
クレマチス‘ワルシャワ・ナイキ’とバラ‘ロジャー・ランベリン’。
バラ‘バロン・ジロン・ドゥ・ラン’とクレマチス
バラ‘バロン・ジロン・ドゥ・ラン’とクレマチス。
バラとクレマチス バラとクレマチス
クレマチス・アーマンディ。
クレマチス・アーマンディ。

なお、クレマチスはバラの季節以外にも、1月のアンシエンシス(アンスンエンシス)、3月のアーマンディなど、花のない時期に咲いてくれる品種があるのも魅力だ。

クレマチス・アンシエンシス
冬咲きのクレマチス・アンシエンシス。

クレマチス・アーマンディはいち早く春の訪れを知らせてくれる。成長が速いので大きくなりすぎないように注意が必要。

クリスマスローズが彩った、平成の我が家の庭風景

そして、バラとクレマチスとは開花の季節が異なるが、もう一つ平成時代にブームを引き起こしたのがクリスマスローズだ。まず、クリスマスローズという名前が魅力的である。そして、常緑で、花の少ない冬から春にかけて、さまざまな色や形の花が庭を華やかにしてくれるので、ガーデニングの素材として人気が出たのだ。さらに、交配で新品種を自分で簡単に作り出せるところも人気の秘密だろう。

平成の我が家のクロスマスローズのある景色をご紹介しよう。

ガーデンのクリスマスローズ クリスマスローズ
クリスマスローズ
八重咲きで花弁の縁にピンクの覆輪が入るクリスマスローズ。

我が家のクリスマスローズは、平成を駆け抜けて大株に育ってくれた。令和の時代も楽しみだ。

クリスマスローズ

室内で楽しむガーデンプランツ

これら平成園芸三種の神器は、ガーデンではもちろん、部屋の中でも楽しめる。

バラを切り花で楽しむ

庭のバラを切り花にして活けるのも、ガーデニングの醍醐味の一つ。日差しが強い時期は、切り花の方が長もちすることもある。

クリスマスローズのコケ玉

クリスマスローズを苔玉にするのも楽しい。白花のクリスマスローズには、楚々とした魅力がある。

クリスマスローズを活ける

クリスマスローズは、終わりかけた花を切り取った後、もったいないので生け花にしてもおしゃれな雰囲気。

バラ・クレマチス・クリスマスローズの育て方カレンダー

バラとクレマチス

最後に、僕の庭でのバラ・クレマチス・クリスマスローズの栽培の年間スケジュールを簡単にご紹介しようと思う。育てている品種や栽培環境によっても違いが出るが、これを栽培の際の一助とし、平成時代のガーデニングを象徴するガーデンプランツ、バラ・クレマチス・クリスマスローズの栽培を楽しんでもらえれば幸いだ。

バラ・クレマチス・クリスマスローズの育て方(年間管理)

バラ クレマチス クリスマスローズ
1月 施肥(寒肥)・剪定
大苗植え付け・鉢植え替え
たくさんの系統があり、花期等、それぞれ異なった特徴がある。施肥(寒肥) 葉切りと施肥
つぼみに光をあてる、霜よけ
1000倍の液肥
2月 施肥(寒肥)・剪定
大苗植え付け・鉢植え替え
落葉性タイプは、剪定やつるの整理。旧枝咲き、新枝咲き、新旧両枝咲きにより、剪定は異なる 開花
寒肥
交配育種
3月 追肥 アーマンディ開花
追肥
露地植えつけ
鉢増し
花がら摘み
4月 病害虫対策(うどん粉病) 旧枝咲きは4~5月に開花が多い。新旧両枝咲きは主に4月下旬~10月 お礼肥
病害虫予防
種房の袋かけの準備
5月 病害虫対策(うどん粉病・黒星病・アブラムシなど) モンタナ開花 タネの採取・病害虫対策 ダニ・ アブラ虫防除など
6月 追肥・花がら切り、挿し木
病害虫対策
カザグルマ開花
白万重開花
追肥、挿し木の適期
夏越しの準備
日除け対策
肥料切り
7月 病害虫対策
鉢バラの暑さ対策
花後の剪定で年2~4回楽しめる 直射日光からの遮光方法
8月 病害虫対策 暑さ対策 水切れ注意・花芽形成
9月 追肥・夏剪定
病害虫対策‘
剪定 タネ播き、株分け
鉢増し
10月 つるバラシュート仮誘引
花がら切り
病害虫対策
シルホサ開花
追肥
施肥 日向へ移動
生育期
11月 大苗植え付け・鉢植え替え
花がら切り
植え替え(休眠期に実施) 古い葉を切る(無茎種のみ)
12月 大苗植え付け・鉢植え替え
つるバラ剪定
アンシエンシスなど冬咲き系開花 ニゲル種開花
施肥 つぼみに日を当てる

僕自身が、平成時代にガーデニングに目覚め、趣味で楽しみ、そして定年退職後の平成最後の10年間はプロとして、植物と向き合ってきたが、やはり、「バラ・クリスマスローズ・クレマチス」の三種の神器のお陰で、豊かなガーデニング生活が送れたと思う。

令和の時代には、また新しい植物たちが登場し、人気が出て「令和園芸三種の神器」が誕生するのが楽しみだ。

*注
三種の神器とは?
天皇が皇位の璽 (しるし) として代々伝えた3種の宝物、八咫鏡(やたのかがみ)・草薙剣(くさなぎのつるぎ)・八坂瓊曲玉(やさかにのまがたま)のこと。
また、1950年代の家電三種の神器は、白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫。現在の新・三種の神器は、食洗器・全自動洗濯機・掃除ロボットを指すことが多い。

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Credit

写真&文/遠藤 昭
30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。現在は、川崎市緑化センター緑化相談員を担当しながら、コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施。園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)。

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