カモミールというと、ハーブティーを思い浮かべる人も多いでしょう。ヒナギクに似た、白く可愛らしいこの小花は、古くからエジプトやヨーロッパなどで薬草として使われてきました。カモミールと呼ばれるものには、ローマン種とジャーマン種という2つの代表的な品種があり、精油もその2種類があります。今回はリラックス効果の高いローマンカモミールの精油を使って、安眠を誘うピロースプレーを作ってみましょう。

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「大地のりんご」ローマンカモミール

ローマンカモミール
咲き広がるローマンカモミール。KielakRob/Shutterstock.com

ローマンカモミール(Chamaemelum nobile、別名Anthemis nobilis、和名ローマカミツレ) は、西ヨーロッパや北アフリカを原産とする、草丈15~30cmのキク科の宿根草で、初夏から夏にかけて花を咲かせます。花だけでなく葉も甘いりんごのような香りを持ち、よく香ることから、古代ギリシャ人は「大地のりんご(カマイメロン)」と呼びました。

花のない時期は地面に低く這い、踏まれても強いので、イギリスのガーデンではグラウンドカバーとして小径に植えられたり、香りを楽しむために、石製や木製のベンチの座面にクッションのように植え付けられたりします。芝草の代わりとしても使われ、その目的にふさわしい‘トレニーグ’という花のつかない品種もあります。カモミールの花言葉には「逆境における力」などがありますが、踏みつけられても耐えられる力強さから生まれた言葉なのでしょう。

ローマンカモミールは「植物の医者」とも呼ばれてきました。香りに虫よけの効果があるためか、果樹や野菜の近くに植えておくと植物を元気に保ってくれ、コンパニオンプランツとして有用です。

お茶で有名 ジャーマンカモミール

ジャーマンカモミールのハーブティー
ジャーマンカモミールのお茶でリラックスタイム。Diana Golysheva/Shutterstock.com

一方のジャーマンカモミール(Matricaria recutita、別名Matricaria chamomilla)は、ヨーロッパやアジアを原産とする、草丈30~60cmの一年草です。春から初夏に開花し、こぼれダネでまた生えてきます。

ローマン種とジャーマン種は同じキク科で、似たような姿をしていますが、異なる属に属する異なる植物です。ローマン種が低く這い広がる宿根草で、花も葉も香るのに対して、ジャーマン種は縦に伸びる一年草で、香るのは花だけ。また、ローマン種の花が500円玉サイズで中央の黄色い部分が比較的平たいのに対し、ジャーマン種の花は1円玉サイズと小さく、黄色い部分が山型に盛り上がって空洞になり、白い花びらは次第に反り返ります。長い歴史の中で、どちらも薬草として同じような使われ方をしてきたため、よく混同され、どちらが「本物の」カモミールかというのは議論があるようですが、イギリスでは、ローマンカモミールが「本物の」カモミールと考えられています。

しかし、ローマン種は苦みがあるため、カモミールティーとして一般的に広く飲まれているのはジャーマンカモミールです(イギリスではローマン種のお茶も飲まれているとか)。どちらのお茶もリラックス効果のある鎮静作用や、消化促進作用に優れ、民間薬として家庭でよく飲まれてきました。

英国の絵本作家、ビアトリクス・ポターの児童書『ピーターラビットのおはなし』でも、マグレガーさんの畑に忍び込んでたくさんの野菜を盗み食いし、それが見つかって命からがら逃げ帰ったピーターに、お母さんがカモミールのお茶を飲ませる場面があります。緊張や不安の気持ちを落ち着かせ、消化不良を改善するのに、カモミールはまさにぴったりのハーブティーです。

*注意:キク科やブタクサのアレルギーのある方、また、妊娠中の方は、飲用を避けてください。

ローマンカモミールの精油でリラックス

ローマンカモミールの花
ローマンカモミールの花は黄色い部分が平たく、ジャーマン種ほど盛り上がらない。kzww/shutterstock.com

花から抽出されるローマンカモミールの精油は、鎮静作用のあるエステル類が多いのが特徴です。精神的なショックやストレスを感じている気持ちを静めるほか、不眠や不安を和らげ、自律神経のバランスを整えて、落ち着いて眠るのを助けてくれます。

また、花粉症やアレルギー性鼻炎の緩和や、スキンケアではアトピー性皮膚炎の緩和を促し、肩こりや筋肉痛を鎮めるのにも役立ちます。

精油の主な産地はイギリス、イタリア、フランス、ハンガリー。1滴で驚くほどよく香るので、ブレンドの際には注意が必要です。1~5mlの少量での購入がよいでしょう。

*注意:ローマンカモミールは子どもから高齢者まで安心して使える精油ですが、キク科やブタクサのアレルギーのある方、また、妊娠中の方は、使用を避けてください。

真っ青なジャーマンカモミールの精油

ジャーマンカモミールの花
こんもりとした黄色い中央部分と反り返った花びらが特徴的なジャーマンカモミール。Bjoern Wylezich/Shutterstock.com

一方、ジャーマンカモミールの精油には、抗炎症作用、抗ヒスタミン作用に優れるカマズレンという成分が多く含まれます。この成分が水蒸気蒸留法によって抽出される際に青くなるため、精油は青いインクのように真っ青になります。胃腸の不調や消化不良、月経痛など、お腹の不調を整えるのに役立ち、また、皮膚炎やアレルギーなど、肌のかゆみや炎症を緩和する働きもあります。

精油の主な産地は、イギリス、エジプト、ドイツ、ハンガリー。こちらも1滴でよく香ります。ただ、個性的な特徴のある香りは、他の精油とのブレンドがなかなか難しいかもしれません。上級者向けの精油といえるでしょう。

*注意:ローマンカモミール同様、キク科やブタクサのアレルギーのある方、また、妊娠中の方は、使用を避けてください。

草原で眠りにつく ピロースプレー

ローマンカモミールの精油
ローマンカモミールの精油。1滴で十分香ります。Antonova Ganna/Shutterstock.com

ローマンカモミールを中心に、ピロースプレーを作ってみましょう。晴れた日のお花畑を軽やかに歩いていくようなイメージの香りです。

【材料】

  • 無水エタノール 10ml
  • 精製水 40ml
  • 精油
    ローマンカモミール 1滴
    ラベンダー 5滴
    ベルガモット(ベルガプテンフリーのもの)2滴
    ゼラニウム 2滴

*注意:
ベルガプテンフリー(もしくはFCF、フロクマリンフリー)とは、光毒性のあるベルガプテンという成分を除去してあることをいいます。
このレシピはピロースプレー用です。寝具に使って安心な配合ですが、肌には直接つけないでください。
キク科、ブタクサのアレルギーをお持ちの方、妊娠中の方は使用を避けてください。

【道具】

ビーカー、ガラス棒、スプレー瓶(50ml用)、ラベルシール

*アロマテラピーで使用する瓶は、青、茶、緑色などのガラス製の瓶がオススメです。遮光性があり、アルコール耐性のあるものを選びましょう。アロマテラピー専門店での購入が安心です。

【作り方】

  1. ビーカーに無水エタノール10mlを注ぐ。
  2. ビーカーに精油を分量通りにそれぞれ垂らし(精油のしずくが自然と落ちるのを待つ)、ガラス棒でよく混ぜる。
  3. 精製水40mlを加え、ガラス棒でよく混ぜる。
  4. スプレー瓶に移し、フタをする。ラベルシールにレシピ名、日付、総量(ml)、精油名などを書いて貼る(ビーカーに精油が残る場合は、ごく少量の無水エタノールを入れて溶かしてもよい)。

* スプレーする前にはボトルをよく振り、1カ月を目安に使い切る。

お休み前に、寝具やベッドルームの空間にスプレーしてみてください。草原のような、軽やかな花の香りに包まれて、ほっとした気持ちで眠りにつけますように。

カモミールの花
カモミールの花畑。yanikap/Shutterstock.com

*『おうちでアロマテラピー』シリーズ、その他のブレンドはこちらからどうぞ。

*精油はアロマテラピー専門店での購入が安心です。下記に取り扱い時の注意をまとめましたので、ぜひご一読ください。

〈精油を使用する際の注意〉
・ 原液を皮膚につけない。ついたらすぐ石鹸で洗い流す。
・飲用しない。目に入れない。
・火気に注意する。
・医師による治療や投薬を受けている場合は、必ず当該医療機関に相談する。
・3歳未満の乳幼児には芳香浴以外は行わない。また3歳以上であっても使用量を半分以下にし、十分注意を払う。
・高齢者、既往症のある方は半分以下の量を目安に。妊娠中は体調を考慮し、芳香浴以外のアロマテラピーを楽しむ場合は十分注意する。

〈精油の保管・保存について〉
・直射日光と湿気を避け、火気のない冷暗所に保管する。
・子どもやペットの手の届かないところへ保管し、誤飲に注意する。
・開封後1年以内を保存期間とし、柑橘系の精油は半年以下を目安にする。
・香りに異変を感じたら使わない。

〈精油の品質について〉
・次の内容を箱やラベル、使用説明書で確認できるものを選ぶ。ブランド名、品名、学名、抽出部分(位)、抽出方法、生産国(地)または原産国(地)、内容量、発売元または輸入元。

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Credit


アドバイス/Miho Takahata
AEAJ(公益社団法人 日本アロマ環境協会)アロマテラピー・インストラクター。香りとクラシック音楽が大好き。

文/萩尾昌美

〈参考文献・ウェブサイト〉
北野佐久子編(2005)『基本 ハーブの事典』東京堂出版
和田文緒(2008)『アロマテラピーの教科書』新星出版社
中村あづさアネルズ(2013)『中村あづさアネルズの誰も教えてくれなかった精油のブレンド学』BAB JAPAN
『みんなの趣味の園芸』(https://www.shuminoengei.jp/

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