まえだ・まみ/高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。
前田満見の記事
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ガーデン

旅して感じたイングリッシュガーデンと日本庭園の共通点
日本庭園を巡って感じた共通点を探る 2年前の6月、イングリッシュガーデン巡りの旅を終えた時、なぜか心にふと芽生えた日本庭園への想い。その理由を確かめるために、翌年、同じ時季に京都の日本庭園を巡りました。 イングリッシュガーデンと日本庭園。それまでは、どちらかというと接点がないように感じていましたが、実際に訪れてみると、いくつか共通点を見つけることができました。 重厚な門構え 訪れた庭園の入り口には、どこも素晴らしい門構えがありました。中でも印象的だったのが湖水地方のホッカー・ホール&ガーデンと、大徳寺の塔頭高桐院です。ホッカー・ホール&ガーデンは、重厚な褐色の石壁とエレガントな鉄製の門扉が、いかにも貴族の庭園らしく、シンメトリーに設置された品のよい色彩のコンテナとオブジェにイギリスらしさが溢れていました。 高桐院は、大胆に組まれた大木と瓦が力強く凛とした佇まい。ひと枝ひと枝手入れされた松とみずみずしい苔の緑が鮮やかでした。石と木、鉄と瓦、素材やデザイン、植栽の相違はありますが、どちらも堂々たる風格。互いの伝統と美意識がひと目で伝わってくる門構えです。 また、その他にも、一直線に伸びた石畳と芝生アプローチ、竹と常緑樹のシンプルな植栽など、類似した景色をいくつか見ることができました。 歴史ある建物と植栽の調和 回訪れたイングリッシュガーデンは、20世紀のイギリスを代表する有名な庭園ばかり。庭園内の建物も100年以上経過した歴史あるものでした。例えば、ヒドコートマナーガーデンの茅葺きの家、シシングハーストカースルガーデンの塔や母屋、キフツゲートコートガーデンやバーンズリーハウスガーデンのエレガントな館など。古い雰囲気を損なうことなく修復された建物が、イギリスの風土に合った草花のクラシカルな植栽と調和し、得も言われぬ美しさを醸し出していました。 同じように、日本庭園でも歴史ある貴重な建物を見ることができました。京都御所から移築された平安神宮神苑の橋殿と尚実館、南禅寺の山門や永観堂の本堂です。ここでは、松や桜、モミジなどの日本古来の樹木が多用されていました。選び抜かれた植物と色彩を抑えた植栽が、格式高い日本建築と調和し、清らかで凛とした空気が漂っていました。 歴史ある建物とその国の風土に合った植栽が調和しているからこそ、このような素晴らしい景観が生まれるのですね。 魅力ある壁面 イングリッシュガーデンの魅力の一つは、壁面の華やかさ。味わいある蜂蜜色や褐色のレンガ壁を、さらに魅力的に演出しているのが、つるバラやクレマチス、つるアジサイなどのつる性植物です。壁一面に誘引された満開の花々が咲く様は、もはや芸術。その美しさに幾度となく目を奪われました。 日本庭園の壁面は、主に漆喰や石、木材が用いられています。モノトーンの上、イングリッシュガーデンのように壁面を花で彩ることもないので、どちらかというと地味な印象。 けれども、埋め込まれた瓦が美しい文様を刻む漆喰塀、端正な石積みなど、随所に丁寧な職人技が光る素晴らしいものでした。そんな壁面の背景に清々しく映えていた青モミジ。イングリッシュガーデンも日本庭園も、どちらも壁と植物とのバランスが美しく、魅了されます。 心和む自然と一体化した景色 イングリッシュガーデンを訪れて特に心に残ったことの一つは、自然と一体化した景色です。不思議なことに、日本庭園でも同じような景色を見ることができました。 例えば、ヒドコートマナーガーデンで見た、鬱蒼とした樹木に囲まれた場所でひっそりと咲いていたピンクや白の可憐な野花。その景色にとてもよく似ていたのが、平安神宮神苑の巨木に囲まれた池に群れ咲く花菖蒲と睡蓮です。 どちらも、まるで森の中のオアシス。一瞬、ここが庭園であることを忘れてしまうほど自然に溶け込み、秘密の場所を見つけたようなワクワク感を味わえました。 そのほかにも、草木で覆われた先が見えない小径や南禅寺の天授庵の池にかかった橋は、自然の奥深くへ誘われるような神秘的な景色でした。 今まで経験したことのない感動を与えてくれたイングリッシュガーデン。実際に目と肌で感じた美しさは、想像を遥かに超えていました。そして、その感動は、改めて日本庭園の素晴らしさに気付かせてくれました。 イングリッシュガーデンと日本庭園に間違いなく共通していたのは、国の伝統や文化、美意識、自然への敬意。「イングリッシュガーデンにようこそ!」と、誇らしい笑顔で迎えてくれたイギリスの人たちのように、わたしも日本人として日本庭園を誇れるように、もっと見聞を広めていきたいと思いました。 Credit 写真&文/前田満見 高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。 Instagram cocoroba-garden
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暮らし

小さな庭と花暮らし「快適に過ごすための夏支度」
思い出の詰まった七夕飾り 日増しに夏の陽射しが眩しくなる7月上旬。 二十四節気の半夏生を迎えると、いよいよ我が家も夏支度。恒例の七夕飾りを準備し、室内や庭のしつらえを整えます。 子どもたちが幼い頃、待ちかねて一緒につくった七夕飾りも今では寂しいかな、わたし一人の手作業に。毎年、心のどこかで「もうやめようかな…」と思うのですが、まっさらの折り紙を買い足していざつくり始めると、子どもたちとの思い出がよみがえり、「笹の葉サラサラ〜♪」なんて口ずさむほど楽しくなります。 流石にここ数年は、お飾りもシンプルに輪っかと折鶴の短冊だけになりましたが、でき上がった短冊にはいつの間にかちゃっかり娘の願いごとが….。何だか都合のいい話ですが、まだ恒例行事として大切にしてくれているのかなと思うと、それだけでちょっと嬉しくもあります。 庭の夏椿の枝に吊るした色とりどりの七夕飾りは、翠緑の草木に映えて花が咲いたよう。楽しげに風にそよぐさまを目にすると、「あ〜、今年も夏が来たな」と、しみじみ感じます。 涼を奏でる風鈴を窓辺に 昔から、蒸し暑い夏を少しでも快適に過ごせるようにと日本人に親しまれてきた風鈴。今でもこの時季になると、風鈴祭りや店先で素材や形の違うさまざまな風鈴を目にします。もちろん我が家でも風鈴は夏に欠かせません。愛用しているのは錫製の風鈴。小ぶりながら重厚感もあり、和洋どちらにも馴染むシンプルなデザインが気に入っています。風をはらんだ透き通る音色が耳に心地よく、窓際で涼を奏でるその風情に一時暑さを忘れます。 涼やかな緑の葉物をしつらえて 蒸し暑さが堪えるこの時季は、花は控えて涼やかな葉物をしつらえます。オススメはシダ類。手のひらサイズのシダの苔玉をガラスのコンポートに載せたり、庭のつる性のカニクサ(シダ類)をガラスの器に無造作に挿します。 レースのように繊細で軽やかな葉とガラスの器は清涼感抜群。カニクサは、水に強いので沈めて水草のような楽しみ方もできます。こまめな水やりと水替えで、しばらく楽しめるのも嬉しいですね。 室内から見えるテラスのテーブルの上には葉物の寄せ植えを。縦縞の班が入る十和田アシ、細い茎のトクサ、丸いフォルムが愛らしいウォーターマッシュルームの湿地植物を合わせると、水辺の景色が生まれます。そこは、小さな木陰のオアシス。涼しげな景色に癒されます。
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ガーデン&ショップ

日本庭園巡りの旅へ 京都・瑠璃光院
瑠璃光院 京都市内の「出町柳駅」から叡山電車で約15分。風光明媚な八瀬比叡山にひっそりと佇む瑠璃光院は、平安時代から武士や貴族に愛されてきた保養所だったそうです。数年前から、春と秋の期間限定で拝観できるようになって、年々人気が高まり多くの人が訪れるようになりました。 端正な石張りと枝垂れもみじが迎える山門 「八瀬比叡山駅」から高野川の清流に沿って歩き、吊り橋を渡ると、瑠璃光院の山門が見えてきます。小雨降る生憎のお天気でしたが、ひんやりと湿った空気に、山間の八瀬の青葉がいっそう映えていました。途中、絶え間なく聞こえてくる蛙の声も心地よく、吊り橋を渡った瞬間、別天地へ足を踏み入れたような感覚を覚えました。 石張りの小階段と木塀の端正な山門は、しっとりと落ち着いた雰囲気。ゆるりと枝垂れるもみじが優しく迎えてくれました。階段を上ると、玄関へ続く苔ともみじの参道がありました。雨粒に混じって空から降ってくるかのような青もみじの葉と、足元に敷き詰められた苔の何と美しいこと。一歩一歩前へ進む度に、身も心も清められるようでした。 苔の緑潤う瑠璃の庭 数寄屋造りの書院から見える「瑠璃の庭」は、瑠璃色に輝く浄土の世界を表した主庭。数十種類の苔の合間をぬって、一筋のせせらぎが静かに流れています。たっぷりと雨水を含んだ苔はこんもりと鮮やか。もみじが羽を広げたように苔に寄り添う光景は、穏やかで優しい雰囲気に満ちていました。そして、見れば見るほど、「光が射すと、この景色はどう変わるのかな」「せせらぎは、浄土への道標を表現しているのかな」と、想像が膨らみます。きっと、シンプルで無駄のない植栽だからこそ、見る者は想像力を掻き立てられ、どんどんその世界へ引き込まれていくのかもしれません。 そして、この瑠璃の庭のもう一つの見所は、書院の2階からの眺めです。階段を上るやいなや目に飛び込んでくるのが、窓ガラス一面の青もみじ。さらに、薄暗い室内に置かれた黒塗りの机の天板に反射した緑が、一瞬、水面をたゆたう水草のように見えました。この光景を何と表現したらよいのでしょう。息を呑む緑のグラデーションの美しさに、しばらく言葉を失ってしまいました。こんな「窓に映る景色を室内に反射させて愛でる」風情ある見せ方に、ただただ、感動しました。 水と石の臥龍の庭 瑠璃光院のもう一つの庭が、「臥龍の庭」。この庭は、天にかけ昇る龍を水と石で表現した池泉式庭園で、人の心を解放し昇運の兆しをもたらすといわれています。斜面に沿って設えられた自然石の間を流れる水は、比叡山の清水なのだとか。 その先に設えられた池には、ひらひらと泳ぐ錦鯉。まるで、一幅の絵画を鑑賞しているような気分でした。そして、絶え間なく聞こえる水音と雨音のハーモニーに、身も心も洗われ癒やされました。 今回の日本庭園巡りの旅で、一番最後に訪れた瑠璃光院。どの庭園よりも青もみじの滴る緑と、苔の美しさを余すことなく堪能できた庭園でした。願わくば、今度は木漏れ日に輝く瑠璃の庭を見てみたい。そして、この青もみじが一斉に紅葉する秋に、もう一度訪れたいと思いました。 Credit 写真&文/前田満見 高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。 Instagram cocoroba-garden
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暮らし

小さな庭で育てるジューンベリー 暮らしで楽しむ「飾り方・食べ方」
小さな庭で収穫する赤い果実 もう10年以上前のこと、わが家の庭に一本のジューンベリーの若木を植えました。それから毎年、早春には可憐な白い花を、初夏には鮮やかな果実を楽しませてくれます。 5月下旬〜6月上旬、早朝からヒヨドリの賑やかな鳴き声が聞こえてきたら、収穫の合図。彼らは、ちゃんと食べ頃を知っているのです。あれよあれよという間に先を越されてしまうので、負けじと手早く収穫します。 ガラスの器に挿して楽しむ ひと房に幾つも鮮やかな赤い実がなるジューンベリー。その様子は何とも愛らしく、すぐに食してしまうのはもったいないので、枝ごと切り花にして室内で楽しみます。できるだけ自然の枝ぶりを活かしてナチュラルに。高さのあるガラスの器に挿すと、初夏の風を感じる爽やかな花あしらいになります。 短い脇枝は一輪挿しに。真っ赤な実の可愛らしさがさらに際立って、思わずにっこり。玄関やダイニングの窓辺に飾って、次第に熟していく色の変化を眺めるのも楽しいものです。 そのまま食して美味しいジューンベリー フレッシュなジューンベリーの実は、少し黒ずんだ赤褐色に熟したものが美味しくいただけます。ちょうど同じ時期に熟するユスラウメの実と一緒に、水切りヨーグルトやアイスクリーム、ケーキに添えるだけで、かわいくて見た目もおしゃれなデザートに。家族は食べ慣れていますが、お客さまにお出しすると、「かわいい! この実は何?」と必ず聞かれます。ちょっとしたサプライズなおもてなしに最適です。 ジューンベリージュースで夏を乗り切る 収穫したジューンベリーの実を、できるだけ長く楽しむために必ずつくるのが、ジューンベリーのシロップ。つくり方は、とても簡単です。 鍋に洗ったジューンベリーの実と水を入れて中火にかける。 沸騰して実がはじけるまで煮たら火を止めて粗熱をとる。 こし器でこす(タネと皮を除くため)。 再び鍋に戻し入れ、砂糖とレモン汁を入れてひと煮立ちさせる。 ジューンベリーの実と水は同量ですが、砂糖の量は好みの甘さで。 氷とシロップを入れたグラスに炭酸水を注ぐと、庭の恵みがギュッと詰まったジューンベリージュースのでき上がり。赤紫色も目に鮮やかで、爽やかな酸味と甘みが蒸し暑いこの時期にピッタリです! ちなみに、シロップは冷凍保存できます。たくさんつくったら小分けにして冷凍しておくと、夏中楽しむことができます。手づくりだからこそ味わえる季節の味。贅沢ですね。 併せて読みたい
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みんなの庭

小さな庭に咲かせるクレマチスのオススメ品種と仕立て方
バラと開花時期が同じクレマチス(フロリダ系・インテグリフォリア系)で華やかに 30坪の私の庭で、5月初旬に咲き始める‘カーディナル・ドゥ・リシュリュー’は、赤紫から灰色を帯びた青紫へと移ろうオールドローズ。このバラと一緒にフェンスに誘引しているクレマチスは、白い花びらと花心のコントラストが美しい‘ビエネッタ’です。このクレマチスを選んだ理由は3つ。まず1つめは、バラと開花時期が同じこと。2つめは、房咲きのバラとバランスのとれた中輪多花性。3つめが、バラの花と花芯の色が同調していることです。 ‘カーディナル・ドゥ・リシュリュー’(右上)と‘ビエネッタ’。 さらに‘ビエネッタ’は、白い花びらが散った後も赤紫色の花心が残り、ポンポン菊のような風情も楽しめます。観賞時期が長く、オールドローズをより華やかに演出してくれる名脇役です。 そして、ガーデンシェッドの小窓には、つるバラ‘ギスレヌ・ドゥ・フェリゴンドゥ’とクレマチス‘ビクターヒューゴ’を誘引しています。半つる性でほどよく小窓に絡まり、誘引も楽です。深い青紫と黒褐色の花心、細く整ったシックな花は、つるバラのアプリコットから、白色の柔らかなグラデーションの花びらとの対比が美しく、落ち着いた大人っぽい雰囲気を醸し出しています。 半日陰の庭には白花のクレマチス(フロリダ系) ‘白万重’ 北東の庭は、午前中しか日が当たらない半日陰の場所です。ここには、うっすらと黄緑色を帯びた‘白万重’を植えています。クレマチスは日当たりを好む植物ですが、意外にも‘白万重’は半日陰でも生育旺盛。ユスラウメの枝に上手に絡み、下草のギボウシやシダ、クリスマスローズの瑞々しい緑にもよく映えます。 また、庭の入り口に誘引しているスタージャスミンとの白花の競演もとても爽やか。ジャスミンの甘い香りと共に、庭へと優しく誘います。 窓辺を彩る可憐なベル型のクレマチス(ビチセラ系、テキセンシス&ビオルナ系) ‘天使の首飾り’ ビチセラ系とビオルナ系のクレマチスは、わたしの一番好きな品種です。その特徴は、小輪多花性の四季咲きで、夏の暑さにも強く生育旺盛。さらに、この品種ならではのベル型やチューリップ型の可愛らしい花がたくさんあります。どれにしようかと迷った末にわが家に迎えたのが、ビチセラ系の‘エトワールローズ’、‘ベティーコーニング’、ビオルナ系の‘天使の首飾り’、テキセンシス系の‘カイウ’です。 ‘エトワールローズ’ ピンク色でベル型の‘エトワールローズ’と‘天使の首飾り’は鉢植えですが、つるがグングン伸びるので誘引してダイニングの窓辺に。ピンク色の濃淡の花が風に揺れる度に、「チリンチリン」と心地よい音を奏でてくれるようです。そんな愛らしい花を、キッチンに立っている時や食事をしながらふと目にするだけで、気分も明るくなります。 ‘カイウ’ もう一つ、ダイニングの窓から見える場所に植えているのが‘カイウ’。小指の先ほどしかない、小さな小さなクレマチスです。この品種の中で唯一の白花ですが、あまりに小さくて目立たないので、つぼみを見つけたら毎日のように窓からチェック。まるで末っ子の成長を見守る母親の気分で、今か今かと一番花の開花を待ちます。 ようやく開花した白いベル型の花は、その想いに応えるかのように可憐で美しく、見かけによらずとても丈夫。しかも花弁が肉厚で花もちがよいので、咲き揃ったら切り花にしてより間近で愛でます。やはり末っ子は、目の中に入れても痛くないほど愛しいものです。 ‘ベティーコーニング’ そして、数あるクレマチスの中で、珍しく微香を放つのが‘ベティーコーニング’。つるバラの照り葉に寄り添って咲く藤色の花は、穏やかな風情があり、ほのかな香りと相まってとても癒されます。地植えにしてからようやく3年目。年々花数も増えて、今年はさらに優しい花と香りに癒されそうです。 大輪のクレマチスは樹木に誘引してダイナミックに(パテンス系) ‘ワルシャワ・ニキ’ 小さな庭で一番古株のクレマチス‘ワルシャワ・ニキ’は、かれこれ10年以上シンボルツリーのヤマボウシに絡み、毎年美しい花を咲かせてくれます。大輪でビロードの質感をもった輝きのある赤紫色の花は、とても華やか。ヤマボウシの枝にフワリと絡まる様はあまりに優雅で、つい見惚れてしまいます。どちらかというと、小輪〜中輪のクレマチスが好みですが、どっしりとした樹木にはこれくらい大輪の花の方が目立ち、アイキャッチ効果も抜群です。 数ある品種の特徴や剪定の仕方をきちんと理解しておけば、ほぼ病気や害虫の被害に遭うことなく、毎年美しい花を咲かせてくれるクレマチス。つるの誘引次第で、毎年違った景色を見せてくれます。今年はどんなドラマチックな景色を見せてくれるのでしょう。今から楽しみで仕方ありません。
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ガーデン&ショップ

日本庭園巡りの旅へ 京都・天授庵と高桐院
天授庵と高桐院 天授庵(てんじゅあん)は、京都でも指折りの格式を誇る臨済宗大本山南禅寺の塔頭の一つ。東庭の枯山水庭園と、南庭の池泉回遊式庭園の2つの庭園があります。数年前に、両親とこちらを訪ねた時、池泉回遊式園の幽玄で神秘的な景色に心を奪われました。以来、いつかもう一度訪れたいと思っていました。 そして、今回初めて拝観した高桐院(こうとういん)は、臨済宗大徳寺の竹林の片隅にひっそりと佇む塔頭。千利休邸の書院を移築した西庭と、本堂前の「楓の庭」があります。 天授庵〜庭園へ誘う木漏れ日の門 滴るようなカエデの新緑と、木漏れ日に輝く苔の絨毯に包まれながら敷石を進むと、木戸の門が見えてきます。ここが天授庵の池泉回遊式庭園の入り口。柔らかな光と心地よい静寂が心を鎮め、簡素な門が、訪れる者を優しく迎えてくれます。 天授庵〜神秘的な緑の世界 庭園に入ると、まず目に飛び込んでくるのが空を埋め尽くすほど鬱蒼とした樹木。重なり合う緑の隙間から見える青空とのコントラストの何と美しいことでしょう。その景色が、睡蓮が浮かぶ池の水面に映り込み、天と地が混ざり合うような幽玄美を醸し出していました。 また、池の桟橋に立ち水面を覗くと、空中に吸い込まれるような感覚に。しばらく眺めていると、不思議な力で守られているような安らぎを感じました。天授庵は、その名前の通り「天を授かれる」神秘的な体験ができる庭園です。 さらに、紅葉の頃には、この緑一色の世界が真っ赤に染まり、夕暮れにはライトアップされるのだとか。闇夜に浮かび上がる錦秋の天授庵….。きっと、燃えるようなパワーに満ちた景色に包まれることでしょう。 高桐院〜心地よい緊張感の一直線の参道 襖絵のような枝振りのよい松と苔が配置された高桐院の入り口は、何ともいえない品のよさが漂っています。ここから鍵の路に進むと見えてくるのが一直線に伸びた石畳の参道。高桐院で一番有名な景色です。 左右に植栽された真っ直ぐに伸びた竹とカエデ、一本の青竹の柵、エッジの効いた石畳の佇まいに、すっと背筋が伸び快い緊張感に満たされます。 高桐院〜「詫び」の精神を感じる庭 「利休七哲」の一人、細川忠興によって創建された高桐院には、かの有名な千利休邸から移築された書院のある庭があります。「詫び茶」を好んだ利休らしい簡素なつくりの書院は、当時の暮らしぶりを垣間見られる貴重な建物。室内から見える庭もまた、あっさりと落ち着いた雰囲気でした。 その中で、一際目を引いたのが一本のカエデの大木。瑞々しい青葉のカエデは見事な枝振りで、室内の何処にいても見えるように植栽されていました。今ならシンボルツリーというところでしょうか。きっと、四季折々に移ろうカエデの風情を室内から楽しんだことでしょう。 もう一つ目にとまったのが、細い竹を組み合わせてシュロ縄で結んだ利休垣。天然素材の程よい透け感の垣根は見た目も涼しげで、竹とカエデが多用されているこの庭にしっくりと馴染んでいました。簡素な書院と調和のとれた植栽や利休垣。閑寂(詫び)を好んだ庭主の精神と暮らしぶりが身近に感じられました。 高桐院〜「楓の庭」に見る余白の美 高桐院の本堂前に作庭された「楓の庭」は、竹薮を背景にカエデと苔のみを植栽した、これまで見た日本庭園の中で最もシンプルな様式です。本堂の深い軒下に設えられた縁側に座ってこの景色を見ると、カエデの配置や枝振り、葉の一枚一枚までが明確で、足元に絶妙に配された一基の石灯籠が圧倒的な存在感を放っていました。 それは、削ぎ落とされたシンプルな植栽デザインだからこそ際立つ、まさに余白の美。日本画に見るような日本人特有の美意識が表現されていました。その美しさの中に、わたしは深い寛容と無限の癒しを感じました。「楓の庭」は、静かに自身の心と向き合いながら、いつまでも眺めていたくなる庭でした。 『イングリッシュガーデン旅行を終えて〜日本庭園への想い〜』 『日本庭園巡りの旅へ 京都・東山「永観堂禅林寺」』 もご覧ください。 Credit 写真&文/前田満見 高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。 Instagram cocoroba-garden
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ガーデン&ショップ

日本庭園巡りの旅へ 京都・東山「永観堂禅林寺」
東山の古刹 永観堂禅林寺 永観堂禅林寺は、東山のふもとに建つ歴史ある古刹。古今和歌集に「もみぢの永観堂」と詠まれる京都屈指の紅葉の名所で、境内には、約3,000本ものイロハモミジやヤマモミジが植えられています。 植栽と一体となった長い回廊 このお寺には、御影堂や釈迦堂、阿弥陀堂といった諸堂が点在しており、それらすべてが、経年変化の檜の滑らかな木肌と、滴るような青モミジに囲まれた長い回廊で結ばれていました。 また、所々に設えられた縦格子の建具の端正な佇まいは、翠緑を切り取る額縁のよう。 内外を曖昧に仕切る和の建具の美しい意匠が、味わい深い風情を醸し出していました。雨風をしのぎ、強い陽射しを遮るだけでなく、四季折々の自然の景色を屋内からも愛でることができる和の建具は、自然への敬愛と日本人ならではの繊細な感性が生み出した伝統建築。わが家にも取り入れたくなりました。 圧巻の臥龍廊 数ある回廊の中でも圧巻だったのが、山の斜面に建てられた開山堂へ続く臥龍廊です。その廊下は、急斜面の地形に合わせて曲線を描く特殊なつくりとなっていて、その名の通り、あたかも龍が臥せているような形状でした。一瞬、足がすくむほどの迫力に圧倒されながら上っていくと、畳4帖ほどの小ぢんまりした開山堂がありました。 このお堂には、永観堂の開山の像が祀られていました。そういえば、古来より龍は神様の化身、もしくは使者といわれています。この臥龍廊は、開山の像(神)を拝むなら、ここを通って心身を清めよという意味合いがあるのかもしれません。また、お堂の窓から、荘厳な屋根瓦に映えるモミジと、遠くに京都の山並みが垣間見え、初夏の爽やかな風に擦れるモミジの葉音や、時折聞こえる野鳥の声が、なんとも心安らぐ空間でした。 自然の景色を凝縮した庭園 諸堂の中心にある御影堂には、深い軒下の縁側に腰掛けると、庭全体が見渡せる程よい広さの日本庭園があります。目を惹くのは、いぶし銀の瓦を施した壁面に、清然と植えられたモミジの高木と赤松。いかにも日本庭園らしい組み合わせですが、不思議と堅苦しさを感じないのは、山の中に自生しているような樹形と、型にとらわれない剪定にあるような気がしました。また、その足元には、自然石を配した池と白い玉石を敷いた枯山水を彷彿とさせる景色が。 白い玉石は、山間から緩やかに流れる湧き水のように木漏れ日に輝き、池には白いスイレンが、水辺にはハナショウブとカキツバタが季節の彩りを添えていました。 そんな、自然の景色が凝縮したような庭を眺めていると、ふと、「無作為の作為」という言葉が脳裏に浮かびました。「無作為の作為」とは、自然な雰囲気を生かして、かけたのが分からないような手間をかけること。ある京都の老舗造園屋さんがおっしゃっていた言葉です。そして、「われわれのモットーは、庭ではなく景色を売ること。そのために、無作為の作為を行う」と。 人知れず手間をかけ真心を込める庭仕事。だからこそ、こんなにも心が和むのですね。 日本庭園の奥深さを、またひとつ目の当たりにしたような気がしました。 3,000本もの青モミジが紅葉する秋。どんなにか素晴らしいことでしょう。いつか、赤く染まるモミジの永観堂も訪れてみたいものです。 併せて「イングリッシュガーデンを巡る旅」のシリーズや、『イングリッシュガーデン旅行を終えて〜日本庭園への想い〜』もご覧ください。 Credit 写真&文/前田満見 高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。 Instagram cocoroba-garden
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みんなの庭

小さな庭の春の使者「スミレ」の花を楽しむ
小さな庭に咲くスミレたち 暖かな陽射しに、新緑がほころぶ3月。 小さな庭のあちこちでスミレの花も咲き始めます。もともと、この土地に自生していたタチツボスミレ、いつの間にか根づいていた西洋スミレ、そして、あまりの愛らしさにポット苗を買って植えたヒゴスミレとミスズスミレ。落葉樹の足元や、水仙やプリムラにそっと寄り添うように咲く健気さに、心が和みます。 鉢に植え替えてハンギング仕立てに スミレの中でも強健なタチツボスミレと西洋スミレは、こぼれ種でどんどん増えるので、間引きを兼ねて鉢に植え替えて楽しみます。例えば、ランタンのフレームに合う浅鉢に株を寄せ植えしてハンギング仕立てに。表面に苔を敷いてナチュラルに仕上げます。夏椿の枝先に、紫色の小さな灯りが揺れる春のランタン。とても可愛らしく、わたしのお気に入りです。 小ぶりの器に挿して楽しむ 指先ほどのスミレの花を切り花で楽しむ時は、食器棚にある小ぶりの器が大活躍。花丈に合ったリキュールグラスや小ぶりのピッチャーなどが活けやすく、形の可愛らしさも花の雰囲気にピッタリです。「スミレの花束」のような花あしらいは、目にするだけで、自然と笑みがこぼれます。 また、水を張ったお皿にスミレの花を浮かべると、可憐な花の美しさが際立ち、とてもロマンティック。庭や道端で目にする野草の風情とは違う、甘美な花姿にうっとりです。 ティータイムが華やぐスミレの砂糖漬け そんなスミレの花を、より優雅に堪能できるのが砂糖漬け。摘みたてのスミレの花と葉を軽く洗い、水気を切って乾かします。一輪ずつ卵白をつけたらグラニュー糖をたっぷりと。バットに並べて冷蔵庫で数日乾かします。 砂糖をまとったスミレの花は、キラキラとガラス細工のよう。紅茶に浮かべたり、ケーキや焼き菓子に添えると、季節を味わう華やかなティータイムになります。来客時のおもてなしとしても喜ばれるので、たくさんつくって冷蔵庫に保存しています。 スミレの花言葉は、「小さなしあわせ」。待ちわびた春の暮らしに、小さなしあわせをたくさん咲かせましょう。
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ストーリー

イングリッシュガーデン旅行を終えて〜日本庭園への想い〜
イギリスの庭巡りで感動をくれた場所 私たちが訪れた憧れのイングリッシュガーデンは、想像を遥かに超えた素晴らしい庭園ばかりでした。優雅なガーデンデザインや華やかで美しい植栽はもちろん、特に感銘を受けたのが「歴史が刻まれた建物と植栽の調和」です。 例えば、湖水地方の「ホッカー・ホール&ガーデン」で見た格調あるお屋敷と白藤、コッツウォルズ地方の「ヒドコート・マナー・ガーデン」の茅葺き屋根と蜂蜜色の建物に絡むオールドローズや多年草。そして、「シシングハースト・ガーデン」の赤褐色の塔と清楚な白い花々……。必要以上に手を入れない古い建物の雰囲気や特徴に合った植栽は、いつまでも見飽きない心地よいものでした。 そして、もう一つが「庭園と自然の風景との一体化」です。庭園の順路に沿って奥へ進むと、いつのまにか目の前に広がっていた自然の景色。「庭は、自然の一部」という、庭づくりで一番大切なことを、改めて学んだような気がしました。まさに、イングリッシュガーデンは、自然の慈しみに満ちた地上の楽園でした。 その感動は、旅が終わりに近づくにつれ、「今度は、日本庭園を見なくては」という想いに変わっていきました。何故なら、イングリッシュガーデンと日本庭園が、どこか似ていることに気づいたからです。 日本庭園を巡る旅へ〜平安神宮神苑〜 イギリスガーデン旅行の翌年、青紅葉が美しい京都を訪れました。2泊3日の滞在中に拝観した日本庭園は、約10カ所。その中で、イングリッシュガーデンの景色と重なった庭園をいくつかご紹介したいと思います。 平安神宮といえば、朱色の大鳥居と堂々たるご社殿が有名ですが、ご社殿の裏に約1,000坪の広大な日本庭園があることは、案外知られていないのではないでしょうか。この庭園は、明治の有名な造園家7代目小川治兵衛によって作庭された池泉回遊式庭園。ご神殿を囲むように、西神苑、中神苑、東神苑があります。 訪れた6月上旬は、ちょうど中神苑の2,000株のハナショウブが見頃を迎えていました。樹木の深緑を背景に、白〜濃紫色の優雅な花びらを揺らすハナショウブ、水面に浮かぶコウホネとスイレン。そこは、まるで森の中のオアシスのよう。思わず深呼吸したくなるような心和む光景に、ふと、「ヒドコート・マナー・ガーデン」の、白いマーガレットとピンク色のシレネが一面に咲いていたメドウガーデンが重なりました。 その先の東神苑は、この庭園の象徴である「橋殿(泰平閣)」を中心に、松や枝垂れ桜、モミジなどが植栽され、手入れされた一本一本の樹形の何と美しいこと。特に、松の割れた幹と複雑に絡み合った枝ぶりの風格ある佇まいに圧倒されました。また、大正元年に京都御所から移築されたという橋殿越しには、東山連山を借景とした神々しい眺めが広がり、橋殿の天井や柱に施された装飾もこのうえなく優美。中に入って庭園を眺めていると、ふと、平安京の時代にタイムスリップしたような雅な気分になりました。 作庭から100年以上経た平安神宮神苑は、歴史ある日本建築物と厳選された和の植物の調和を極めた、誇るべき日本庭園でした。 併せて、「イングリッシュガーデンを巡る旅」のシリーズもご覧ください。 Credit 写真&文/前田満見 高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。 Instagram cocoroba-garden
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樹木

ガーデナーに大人気のアジサイ‘アナベル’の楽しみ方
みずみずしい黄緑色の花とクレマチス 咲き始めの淡い黄緑色の花は、ちょうど同じ頃に咲くクレマチスとの相性がぴったり。藤色や紫色のクレマチスと共に、初夏の庭を爽やかに彩ります。日ごとに白味を帯びてゆく花は、とても風情があります。 雨に映える純白の花 梅雨の時期、アナベルは大輪の白い手鞠のよう。雨粒をまとうと、さらに美しくなります。山アジサイと束ねてブーケをつくるなど、ひと時の花遊びを楽しみます。じめじめして、ちょっぴり憂鬱な気分も晴れていくような気がします。 涼しげな夏のインテリア ヤマユリやオニユリが夏の到来を告げる頃、アナベルは、再び緑色へと褪色します。どこか灰色を帯びた緑色の花は、少しカサっとした感触。こうなれば、思う存分カットして部屋のあちこちに飾ります。 大輪の花をアケビの籠にバサッと無造作に活けると、アナベルらしい野趣あふれる存在感が味わえます。また、ガラスの器に活けると、ニュアンスのある緑色と透明なガラスが、とても涼しげです。 秋はカゴいっぱいのドライフラワーに 夏の間にカットしたアナベルは、ほぼ色褪せることなくドライフラワーになります。リースベースを土台にしてリースをつくったり、ガラスの瓶やカゴに入れて置いておくだけでも、不思議と様になります。時を経たアナベルの深い色合いに、心も和みます。



















