自由奔放に伸びるしなやかなつると、美しい花が魅力のクレマチス。「つる性植物の女王」と呼ばれるほど種類もたくさんあるので、どの品種をどう仕立てるか迷いますね。ここでは、小さな庭でも咲かせて嬉しい、半日陰でよく咲く種類やバラと同時に咲くクレマチスなど、オススメの品種を前田満見さんがご紹介します。
目次
バラと開花時期が同じクレマチス(フロリダ系・インテグリフォリア系)で華やかに

30坪の私の庭で、5月初旬に咲き始める‘カーディナル・ドゥ・リシュリュー’は、赤紫から灰色を帯びた青紫へと移ろうオールドローズ。このバラと一緒にフェンスに誘引しているクレマチスは、白い花びらと花心のコントラストが美しい‘ビエネッタ’です。このクレマチスを選んだ理由は3つ。まず1つめは、バラと開花時期が同じこと。2つめは、房咲きのバラとバランスのとれた中輪多花性。3つめが、バラの花と花芯の色が同調していることです。

さらに‘ビエネッタ’は、白い花びらが散った後も赤紫色の花心が残り、ポンポン菊のような風情も楽しめます。観賞時期が長く、オールドローズをより華やかに演出してくれる名脇役です。

そして、ガーデンシェッドの小窓には、つるバラ‘ギスレヌ・ドゥ・フェリゴンドゥ’とクレマチス‘ビクターヒューゴ’を誘引しています。半つる性でほどよく小窓に絡まり、誘引も楽です。深い青紫と黒褐色の花心、細く整ったシックな花は、つるバラのアプリコットから、白色の柔らかなグラデーションの花びらとの対比が美しく、落ち着いた大人っぽい雰囲気を醸し出しています。
半日陰の庭には白花のクレマチス(フロリダ系)

北東の庭は、午前中しか日が当たらない半日陰の場所です。ここには、うっすらと黄緑色を帯びた‘白万重’を植えています。クレマチスは日当たりを好む植物ですが、意外にも‘白万重’は半日陰でも生育旺盛。ユスラウメの枝に上手に絡み、下草のギボウシやシダ、クリスマスローズの瑞々しい緑にもよく映えます。

また、庭の入り口に誘引しているスタージャスミンとの白花の競演もとても爽やか。ジャスミンの甘い香りと共に、庭へと優しく誘います。
窓辺を彩る可憐なベル型のクレマチス(ビチセラ系、テキセンシス&ビオルナ系)

ビチセラ系とビオルナ系のクレマチスは、わたしの一番好きな品種です。その特徴は、小輪多花性の四季咲きで、夏の暑さにも強く生育旺盛。さらに、この品種ならではのベル型やチューリップ型の可愛らしい花がたくさんあります。どれにしようかと迷った末にわが家に迎えたのが、ビチセラ系の‘エトワールローズ’、‘ベティーコーニング’、ビオルナ系の‘天使の首飾り’、テキセンシス系の‘カイウ’です。

ピンク色でベル型の‘エトワールローズ’と‘天使の首飾り’は鉢植えですが、つるがグングン伸びるので誘引してダイニングの窓辺に。ピンク色の濃淡の花が風に揺れる度に、「チリンチリン」と心地よい音を奏でてくれるようです。そんな愛らしい花を、キッチンに立っている時や食事をしながらふと目にするだけで、気分も明るくなります。

もう一つ、ダイニングの窓から見える場所に植えているのが‘カイウ’。小指の先ほどしかない、小さな小さなクレマチスです。この品種の中で唯一の白花ですが、あまりに小さくて目立たないので、つぼみを見つけたら毎日のように窓からチェック。まるで末っ子の成長を見守る母親の気分で、今か今かと一番花の開花を待ちます。

ようやく開花した白いベル型の花は、その想いに応えるかのように可憐で美しく、見かけによらずとても丈夫。しかも花弁が肉厚で花もちがよいので、咲き揃ったら切り花にしてより間近で愛でます。やはり末っ子は、目の中に入れても痛くないほど愛しいものです。

そして、数あるクレマチスの中で、珍しく微香を放つのが‘ベティーコーニング’。つるバラの照り葉に寄り添って咲く藤色の花は、穏やかな風情があり、ほのかな香りと相まってとても癒されます。地植えにしてからようやく3年目。年々花数も増えて、今年はさらに優しい花と香りに癒されそうです。
大輪のクレマチスは樹木に誘引してダイナミックに(パテンス系)

小さな庭で一番古株のクレマチス‘ワルシャワ・ニキ’は、かれこれ10年以上シンボルツリーのヤマボウシに絡み、毎年美しい花を咲かせてくれます。大輪でビロードの質感をもった輝きのある赤紫色の花は、とても華やか。ヤマボウシの枝にフワリと絡まる様はあまりに優雅で、つい見惚れてしまいます。どちらかというと、小輪〜中輪のクレマチスが好みですが、どっしりとした樹木にはこれくらい大輪の花の方が目立ち、アイキャッチ効果も抜群です。

数ある品種の特徴や剪定の仕方をきちんと理解しておけば、ほぼ病気や害虫の被害に遭うことなく、毎年美しい花を咲かせてくれるクレマチス。つるの誘引次第で、毎年違った景色を見せてくれます。今年はどんなドラマチックな景色を見せてくれるのでしょう。今から楽しみで仕方ありません。
Credit
写真&文 / 前田満見

まえだ・まみ/高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。
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