やざわ・ひでなる/園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
矢澤秀成

やざわ・ひでなる/園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
矢澤秀成の記事
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宿根草・多年草
グロリオサに必要な肥料について、正しい与え方と注意点を知りましょう
グロリオサを育てる前に知っておきたいこと グロリオサは、半蔓性の球根植物です。鉢植え、地植え、どちらにも向いていて、巻きひげ状になった葉先が他のものに絡んで伸びていきます。蔓が伸びてきたら、鉢植えの場合はアサガオなどによく使われる円筒形の器具に、地植えの場合は支柱やフェンスなどに誘引する必要があります。 グロリオサの基本データ 学名:Gloriosa 科名:イヌサフラン科 属名:グロリオサ属(キツネユリ属) 原産地:熱帯アジア、アフリカ 和名:狐百合(キツネユリ)、百合車(ユリグルマ) 英名:Gloriosa lily、Glory lily 開花期:6~9月 花色:赤、ピンク、黄、オレンジ、白、紫、複色 発芽適温:20~30℃ 生育適温:20~30℃ 切り花の出回り時期:オールシーズン 花もち:7~10日 グロリオサを育てるのは、それほど難しくはありません。熱帯原産のため高温を好む植物なので、植えつけは少し暖かくなってから、4月下旬~5月下旬が適期です。植えてから約2か月で花が楽しめます。 グロリオサには栄養を補うための肥料が必要です 植物が生きていくためには、光、水、そして栄養が必要です。 植物は動物のように、栄養を得るために動き回ることができません。そのため、生きるための栄養を自分で作る必要があります。それが光合成です。光合成によって、植物は酸素と炭水化物を作っています。しかし、植物の体を作るためにはこれだけでは足りません。タンパク質、チッ素、リン酸、カリなど、自分で生み出せない数多くの養分を、他から得なければいけないのです。植物は、こうした必要な養分を、根を通して土から吸収しています。 とはいえ、どこの土にもこうした養分が十分にあるわけではありません。土の種類にもよりますが、いくつかの養分が足りない場合がほとんどです。こうなると、足りない養分を補う必要が出てきます。これが植物に肥料を与える理由です。 不足しがちなのは、チッ素、リン酸、カリという3つの要素です。これらは多量に必要な養分です。植物が生長する間は必要に応じて、これらを肥料として与える必要があります。 種類を知ることが、適した肥料選びの近道 肥料にはさまざまな種類があり、それぞれに特性があります。グロリオサへの肥料の与え方を説明する前に、肥料について、基本的なことを知っておきましょう。 ホームセンターや園芸店には、たくさんの肥料が売られています。「草花用」や「花と野菜の肥料」などと書かれているものです。こう書かれていると、植物によっては、どの肥料を買ったらよいか迷ってしまいます。しかし、肥料の種類と特性を知っておけば、自分が何を選ぶべきか判断することができますし、不必要にいくつもの肥料を買い込んでしまうことはありません。 肥料は、有機質肥料、無機質肥料(化学肥料)のふたつに大別されます。 有機質肥料 油かす、魚かす、骨粉、鶏ふん、牛ふんなど動植物を原料とするものを「有機質肥料」といいます。天然肥料と呼ばれることもあります。有機質肥料には、肥料成分以外のさまざまな要素も、微量に含まれているのが特徴です。土壌中の微生物によって分解されたあと植物に吸収されるため、効果が出るまでには時間がかかります。 無機質肥料 石油や硫酸などの原料から化学的に合成したものや、鉱物、貝殻などの天然資源から製造された肥料を「無機質肥料」といいます。前述のチッ素、リン酸、カリのうち、1種だけのものを単肥、2種以上をバランスよく含むものを化成肥料といいます。肥料の効き方や期間が、コントロールされているので初心者でも扱いやすく、効果が早く現れるものが多いです。 肥料は、その効き方でも、緩効性肥料、遅効性肥料、速効性肥料と、3種類に分類されます。 緩効性肥料 肥料の効果が緩やかに持続するタイプが「緩効性肥料」です。適切に施せば、成分が一気に溶けることはないので、肥料やけをおこす心配はありません。後述する元肥、追肥のどちらにも使えます。 遅効性肥料 肥料を与えたあと、ゆっくりと効果が出ます。有機質肥料の大部分が、この遅効性肥料です。効き始めるのは遅いですが、効果は長もちします。主に元肥として使用します。 速効性肥料 肥料を与えると素早く吸収され、効きめがすぐに出るのが「速効性肥料」です。ただし、効果の持続性はありません。定期的に施す追肥として使われます。 肥料はその形状によっても分類されます。土に置いたり混ぜ込んだりして使用するタイプの固形肥料と、規定倍率に水で希釈して使用するタイプの液体肥料(液肥)とがあります。 液体肥料に似たもので、活力剤があります。活力剤は人間の食事にたとえると、サプリメントや栄養ドリンクのような補助的な役割をする製品。肥料の代わりにはなりません。 植物に必要な、肥料の三大要素 植物が育つためには、さまざまな栄養素が必要です。なかでも必要量が多いのに不足しやすく、特に重要な3種類を「肥料の三大要素(三要素とも)」といいます。それが、チッ素(N)、リン酸(P)、カリ(K)です。市販されている肥料の袋に、大きく「10-8-7」などと数字が記載されているのを、見たことがありませんか? この数字は、肥料全体を100としたときの、そこに含まれる三大要素「N-P-K」の割合(重量%)を表しています。書かれた数字が「10-8-7」であれば、この肥料はチッ素、リン酸、カリがそれぞれ10%、8%、7%という割合で配合された肥料であることを示しているのです。 N:窒素(nitrogenous) 一般に「チッ素」と呼ばれています。枝や葉を茂らせる働きがあり、“葉肥(はごえ)”ともいいます。 P:リン酸(phosphate) 一般に「リン」あるいは「リン酸」と呼ばれています。花や実のつきをよくする働きがあり、“花肥(はなごえ)、実肥(みごえ)”とも。 K:カリウム(kalium) 一般に「カリ」と呼ばれています。茎や根を丈夫にする働きがあり、“根肥(ねごえ)”ともいわれます。 N-P-K以外に必要な要素は? 三大要素に対し、必要量は少ないものの極端に不足すると生育に影響するものとして、ミネラル類があります。中量要素と微量要素に分類され、中量要素にはカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg・苦土)、イオウ(S)が、微量要素には亜鉛(Zn)、塩素(Cl)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ホウ素(B)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)があります。先の三大要素に、これらの中量要素、微量要素を加えた肥料がいろいろ市販されています。 こんなタイプの肥料が、グロリオサにはおすすめ グロリオサは、花が咲くまでは長期間効果が続く緩効性化成肥料を与えます。草丈が伸びてきたら、さらに追肥(下記参照)として速効性の液体肥料を与えます。株の全体的な生育を促すために、10-10-10の肥料が基本です。 花が終わったあとは、球根を太らせるためにカリが多い液体肥料を施しましょう。 肥料を与え始める、時期とタイミング 肥料は与える時期によって、「元肥」「追肥」のふたつに大別されます。 元肥 植物を植えつけるときや植え替えるときに、あらかじめ土に施しておく肥料のこと。植物の初期生長を促します。長く穏やかな効果が続く、粒状の緩効性肥料を使うのが一般的です。 追肥 植物の生育途中で施す肥料のこと。植物は生育するにつれて多くの栄養を必要とします。元肥の栄養分だけでは途中で足りなくなってしまうので、不足分を補うために与えるのが追肥です。速効性または緩効性肥料を使います。 肥料は植物の生育期に与えるのが原則で、元肥も追肥もそのための肥料です。ほかに、生育するための準備として、休眠している樹木や多年草に与える「寒肥」、新芽が出る前に与えるチッ素をメインにした「芽だし肥」、花や果実の収穫後に与える「お礼肥」などがあります。 お礼肥は、果樹、球根植物、多年草など、数年にわたって栽培する植物に、消費した養分を補う目的で与えます。グロリオサなどの球根植物の場合は、特に球根の肥大を促すカリが多めで、速効性のある肥料を選びましょう。 グロリオサへの肥料の与え方が知りたい それでは実際に、グロリオサを育てる過程での肥料の与え方を、季節ごとに見てみましょう。 春(鉢植え、地植え) グロリオサの球根は、4月下旬~5月が植えつけの適期です。グロリオサは球根植物なので、発芽に必要な養分はすでに球根に蓄えられています。植えつけの際は元肥として、暖効性化成肥料を施すといいでしょう。 鉢植えの場合は、暖効性化成肥料を土の表面にばらまきます。地植えの場合は、土に混ぜて施すか、発芽点の近くに半分埋めるようにします。芽が出ていない球根の場合は、芽が出てから肥料を与えてください。 夏~初秋(鉢植え、地植え) グロリオサはたくさんの肥料を好む植物です。生育中に肥料が不足すると花も球根も育ちが悪くなるので、草丈が伸びてきたら2週間に1回くらい追肥として、速効性の液体肥料を与えます。最初に施した緩効性化成肥料は、45~60日程度で効果が切れるので、9月いっぱいくらいまでは追肥を与え、肥料を切らさないようにします。 グロリオサに肥料をあげるときの注意点 花が咲いている間はもちろん、咲き終わっても、9月いっぱいくらいまでは肥料を与えておいてください。グロリオサは肥料が切れると、花が咲いている途中でも葉が黄色くなって枯れてきて、通常より早く休眠に入ってしまいます。株が早く休眠に入ると、新しくできる球根が十分太らない可能性があります。球根のための肥料も、忘れないようにしたいものです。 ただし、グロリオサに肥料を与えるときは必ず、正しい使用量と使い方を守ってください。市販肥料には、袋や添付されている説明書に、その肥料の成分や効果、使用量の目安、使い方(土に混ぜる、水で希釈するなど)が記載されています。これを守らずに植物に肥料を与えると、健康的に育つどころか、かえって成長を妨げることがあります。 肥料をあげすぎると「肥料やけ」が起きます 「肥料やけ」とは、肥料を多く与えすぎることで起こる現象です。土中の肥料成分が高濃度になり過ぎると根が傷み、株が元気をなくしたり、根腐れを起こして枯れてしまったりすることがあります。肥料は、使用量の目安と使い方を守ること。特に、鉢植えの場合は土の量が限られており、肥料成分が高濃度になりやすいので、肥やけが起きやすくなります。 Credit 記事協力 監修/矢澤秀成 園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長 種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。 構成と文・高梨奈々
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一年草
知りたい! プリムラの種類や品種、それぞれの特徴と見分け方
プリムラって、どんな花? プリムラは耐寒性に優れ、初心者でも比較的育てやすい花です。 プリムラの基本データ 学名:Primula 科名:サクラソウ科 属名:サクラソウ属 原産地:欧州からアジアにかけた広範囲 和名:桜草(サクラソウ、またはセイヨウサクラソウ) 英名:Primrose 開花期:11~4月※品種により若干異なる 花色:赤、ピンク、白、黄、オレンジ、青、紫、複色 発芽適温:15~20℃ 生育適温:15~20℃ 初秋の9月ごろからさまざまな品種の苗が園芸店に並び、年末ごろには多くの品種が一斉に出回ります。まずは苗から育ててみましょう。種から育てる場合は、品種によって若干異なりますが、その多くが5~6月に種まきを行います。 プリムラの原種について知りたい! プリムラの原種は、ヨーロッパからアジアにかけての広い範囲で自生し、その数は50種以上におよぶといわれています。日本にもサクラソウやカッコウソウ、クリンソウなど、約20種が自生。これらの原種をもとに品種改良が進み、現在では世界になんと500種以上ものプリムラが分布しています。 多くの園芸品種を生み出した原種のなかから主な4種を、紹介しましょう。 プリムラ・エラチオール ヨーロッパ原産で、赤や黄、紫色の花を咲かせます。草丈は本来20~30㎝ほどですが、小さな鉢で栽培するとそれほど大きくならず、10㎝ぐらいでかわいらしく咲きます。 プリムラ・ベリス ヨーロッパ原産で、別名カウスリップ。広がるように生育し、春に伸びた花茎の上部に、黄花を房状に咲かせます。芳香があるのが魅力。 プリムラ・ブルガリス ヨーロッパ原産。イギリスでは、プリムローズと呼ばれ、古くから親しまれてきました。早春にレモンイエローのやさしい色合いの花を咲かせます。 プリムラ・ジュリエ 南コーカサス原産。草丈は低く(草丈5㎝ほど)で、カーペット状に広がるのが特徴です。春に紫色がかったピンクの小さな花を咲かせます。 特徴で、5つのタイプに分けられます 古くから品種改良が進められたプリムラは、前述のとおり、現在に至るまで、じつにたくさんの園芸品種が誕生しています。それらは、地中海性気候のヨーロッパから西アジアに分布。このため、プリムラは、ヨーロッパ系とアジア系に大別されます。現在、日本で市販されているプリムラの品種は、主に、ヨーロッパ系の「ジュリアン」と「ポリアンサ」、アジア系の「マラコイデス」、「シネンシス」、「オブコニカ」の5タイプです。この項では、それぞれがもつ特徴と魅力をまとめました。 ヨーロッパ系 プリムラ・ジュリアン ジュリアンは花色も花形も、非常に豊富なのが特徴です。後述する、ポリアンサ系統に比べ、株がコンパクトなことから、寄せ植えなどのガーデニングに適しています。早咲きのものが多く、プリムラのなかでも特に早く開花します。もっとも早い品種は9月中下旬から開花します。南コーカサス原産のジュリエと、ポリアンサ系との交配によって誕生しました。 プリムラ・ポリアンサ エラチオール、べリス、ブルガリスの3種の原種をベースに改良された、種間雑種です。ポリアンサは、先のジュリアンに比べ、花も葉もひと回りほど大きく、花弁に厚みがあります。色はピンク、黄、オレンジ、白、青、紫、複色など多彩。ひと重咲きのほか、華やかな八重咲きやフリル咲きのものが揃います。花苗は11月下旬ごろから、花店やホームセンターの店頭に並びます。 アジア系 プリムラ・マラコイデス 中国原産のマラコイデスは、ガクや葉の裏などに白い粉をつけるため、和名で化粧桜(ケショウザクラ)とも呼ばれています。色はピンク、白、青紫、紫が主流です。花はポリアンサに比べると小さく、小粒の花が段を作るようにたくさん開花するのが特徴。12月上旬頃から店頭に並び始めます。耐寒性が強い一方、夏の暑さや日本の湿気に弱いことから、一年草として扱います。翌年も楽しみたい場合は、種を採取しておきましょう。 プリムラ・シネンシス 中国原産種のシネンシスは、気品溢れる花姿が人気の品種です。色は赤、白、青などが主流です。葉の裏側が、赤みを帯びた銅葉となるのが、このタイプならでは。冬の寒さにも夏の暑さにも非常に強く、育てやすいプリムラです。 プリムラ・オブコニカ オブコニカは、ガクの形がすり鉢状になることから、その名前には「円錐形」という意味があります。和名は、常盤桜(トキワザクラ)。ピンク、アプリコット、白など、淡くかわいらしい色が揃います。ほかのプリムラより、やや大ぶりな花が葉の間から伸びる茎に咲きます。 オブコニカの花や葉は、プリミンというアルカロイド成分を分泌し、これに触れると皮膚がかぶれることがあるので注意しましょう。最近は、プリミンフリーの品種も販売される様になりました。 プリムラの、種類ごとの違いと見分け方 プリムラの花のつき方(草姿)は、以下の3種です。「ジュリアン」、「ポリアンサ」、「マラコイデス」、「シネンシス」、「オブコニカ」の5タイプが、それぞれどの草姿にあたるのか、見分け方を覚えておきましょう。 ポリアンサ(茎立ち) 株元から太い主茎を伸ばし、その先端にいくつもの花をつけます。ポリアンサ、シネンシス、オブコニカが、こちらになります。 アコーリス 根元からたくさんの花茎を伸ばし、先端にひとつだけ花を咲かせます。ジュリアンのほか、ポリアンサにも、この花のつき方をするものがあります。 段咲き マコライデスが、この咲き方です。花茎を伸ばしながら、数段の花を咲かせます。 ※ポリアンサの草姿は2種あります。近年、ポリアンサとジュリアンの草姿が類似して、見分け方が非常に難しくなってきました。購入の際は、株についているラベルを参考にして、好みの花姿のプリムラを選ぶのがいいでしょう。 育てたいのはどれ? プリムラの人気品種 品種改良が進み、どんどん新しい園芸品種が誕生しているプリムラ。そのなかでも人気が高く、比較的手に入りやすい品種はこちらです。 プリムラ・ジュリアン系 まるでバラのような花弁と豊かな色合いをもつ「ピーチフロマージュ」。香りが強いのも特徴です。同じく、バラをイメージした、愛らしい花と草姿のバランスがよい「プリムレット」も人気があります。 プリムラ・ポリアンサ系 花弁の端から中心に向けて、ベールのようなフリルが美しい「マリアベール」、八重咲き品種で、ダイナミックな花姿が目を引く「パロマ」、7~10㎝の大輪「オーシャン」などがあります。 プリムラ・マラコイデス系 半八重咲きの白い小輪が咲く「メローシャワー」は、葉からほんのりメロンの香りがするという特徴があります。ピンク、白、赤紫色のミックスの花をつける「うぐいす」は、寒さに弱いマラコイデスのなかでも、耐寒性の強い品種。鉢ごと手のひらにのってしまうミニサイズ「ジョリーコビット」も人気です。 プリムラ・シネンシス系 花つきがよく育てやすい「サーティーワン」は、花弁の1枚1枚がハート形に見えるのが独特。 プリムラ・オブコニカ系 コスモスのような花姿の「タッチ・ミー」は、オブコニカのなかでもプリミンを含まず、肌が触れてもかぶれる心配がありません。鮮やかなピンクが特徴の人気種です。 Credit 記事協力 監修/矢澤秀成 園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長 種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。 構成と文・角山奈保子
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樹木
ブーゲンビリアに必要な肥料について、正しい与え方と注意点を知りましょう
ブーゲンビリアを育てる前に知っておきたいこと 「情熱」という花言葉を持つブーゲンビリアは、鉢植えのほか庭木としても人気の高い植物です。まずは、ブーゲンビリアがどのような花なのか、育てる前に知っておきたいことをみていきましょう。 ブーゲンビリアの基本データ 学名:Bougainvillea 科名:オシロイバナ科 属名:ブーゲンビリア属 原産地:中央アメリカ、南アメリカ 和名:筏葛(イカダカズラ) 英名:Bougainvillea 開花期:4~5月、10~11月(育て方により異なる) 花色:赤、ピンク、黄、オレンジ、白、紫、複色 発芽適温:20℃前後 生育適温:5℃以上 管理の仕方次第で、年に2~3回花を咲かせてくれます。寒さにはやや弱いところがあり、10℃以下になると葉が黄色くなり落葉しやすくなります。また、5℃以下になると枯死することがあります。 ブーゲンビリアには栄養を補うための肥料が必要です 私たちが日々の生活の中で食事をするように、植物が生きていくためには光や水、そして栄養となる肥料が必要です。野山に生えている植物なら、落ち葉や枯れ枝・動物の糞などが肥料となりますが、家庭の庭や植木鉢で育てる場合にはそうはいきません。 限られた環境の中でブーゲンビリアを育てるには、肥料を施して人工的に栄養を補う必要があるのです。適切な施肥は、株を充実させ、葉や花を色鮮やかにするのに役立ちます。 種類を知ることが、適した肥料選びの近道 一口に肥料と言っても、いくつかの種類があります。正しい施肥のために、各肥料について解説していきます。 原料による分類 植物の肥料は、大きく分けて有機質肥料と無機質肥料に分けられます。 有機質肥料 主に草木や油かす、鶏や牛のふん、魚の骨粉などを発酵させて作られます。植物の育成に重要な三大要素(チッソ・リン酸・カリ)が含まれていますが、原料によって含有量に差があります。良い土づくりができる反面、害虫が発生しやすく、値段はやや高めです。 無機質肥料 さまざまな鉱物を原料に科学的に合成して作られ、化学肥料とも呼ばれます。三大要素に加えてマグネシウムや鉄分・カルシウムなども適度に含まれているのが特徴です。 水に溶けやすく即効性がある反面、定期的な追肥を必要とします。また、有機物がほとんど含まれていないため、土壌障害を起こすこともあります。 効き方による分類 即効性肥料 与えてすぐに効果があらわれる肥料です。効果の持続期間は1週間程度なため、頻繁に与える必要があります。吸収が早いので、肥培管理がしやすく、主に追肥として用いられます。 緩効性肥料 与えてからある程度の期間、効果が続きます。ただし、三大要素の効果が平均して続くものと、特定の成分のみの効果が続くものがあるので、選ぶ際に注意が必要です。元肥・追肥、いずれにも用いられます。 遅効性肥料 与えても、すぐには効果が出るわけではありません。吸収のために微生物による分解が必要な有機質肥料や、成分が水に溶けにくい不溶性の肥料などが該当します。主に植え込みの際の元肥として用います。 形状による分類 固形肥料 固形・粒状・粉状の肥料を指します。骨粉や油かすなどを固めた有機質のものと、チッソ・リン酸・カリなどを化学合成した無機質のものがあります。液体肥料に比べてゆっくりと効果があらわれ、持続性があるのが特徴です。 液体肥料 文字通り液状の肥料で、小さな容器でそのまま土に指して使うタイプと、水で希釈して使うタイプがあります。吸収が早いので、違う目的の液肥を短期間に与えられるメリットがあります。また、水で希釈するタイプのものは、葉面散布に使うこともできます。 植物に必要な、肥料の三大要素 肥料に含まれるチッソ(N)・リン酸(P)・カリ(K)は、植物の生育に欠かせない三大要素です。それぞれどのような働きがあるのか見ていきましょう。 チッソ(N) 別名葉肥(はごえ)と呼ばれ、葉や茎を大きく色濃く成長させるのに必要な成分です。植物が光合成をする際に必要な葉緑素は、チッソを元に作られます。また植物のタンパク質を作るのにも必要不可欠です。 リン酸(P) リン灰石を元に作られるもので、肥料以外にも医薬品や洗剤などの原料などに広く用いられています。肥料としてのリン酸は実肥(みごえ)とも呼ばれ、植物の枝葉や花などの生育に欠かせない要素です。リン酸の不足は、開花や結実に影響を及ぼします。 カリ(K) カリとは、カリウムの略です。根肥(ねごえ)とも言われるカリは、植物の根や球根を丈夫にし、充実させる効果があります。カリが不足すると、葉のフチから少しずつ色が抜けるような、特徴的な枯れ方をします。また、マグネシウムとの拮抗作用(きっこうさよう ※1)があるため、与えすぎるとマグネシウム欠乏を引き起こすことがあります。 ※1:2つの要因が、お互いに効果を打ち消しあって働く作用のこと。 N-P-K以外に必要な要素は? 先の項で挙げたチッソ(N)・リン酸(P)・カリ(K)は必須三大要素ですが、それだけで植物が元気に育つわけではありません。 この他に必要な代表的なものに、カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)・イオウ(S)の3つがあります。三大要素ほど多量ではないものの、植物には大切な要素になります。緩効性化成肥料にはカルシウム等を含むものがあります。 カルシウム 植物内の細胞同士を強固に結び付ける役割があり、根の発育には欠かせない成分です。また酸性の土を中和する時にも用います。 マグネシウム チッソと同じく、葉緑素を構成する重要な成分です。 イオウ 植物内の酸化・還元や成長の調整に関わりがあり、不足すると十分に育つことができません。チッソと同じく、植物のタンパク質の主成分です。 こんなタイプの肥料が、ブーゲンビリアにおすすめ 園芸店に行くと数多くの肥料が並んでいて、どれを選べばよいのか迷いがちです。 ブーゲンビリアにおすすめなのは、緩効性の肥料(特に粒状が良い)や、油かすや骨粉を固形にしたものなど、ゆっくりと長期間栄養を与えられる肥料です。中でもリン酸が多いものが良く、チッソやカリが多い肥料では花が付きづらくなります。 肥料を与えはじめる、時期とタイミング 肥料を与える時期やタイミングも、正常な生育には大切です。肥料には、栽培前や株の定植時に土に混ぜ込んで与える元肥と、成長に合わせて必要な栄養を与える追肥の2種類があります。 ブーゲンビリアへの施肥に適した時期は、鉢植えでは4~10月、地植えの場合は5月過ぎ~9月の終わりまでです。休眠期に当たる冬場は肥料はほとんど必要はありません。また、追肥の間隔は基本的に1~2カ月おき程度ですが、使用する肥料により多少の差があります。 「元肥」の適期 ブーゲンビリアに元肥を与える最適なタイミングは、4~6月に行う植え替えや植え付けの時です。緩効性の化成肥料を、土に混ぜ込んで与えましょう。これは地植え・鉢植え共に同じです。 ただし、鉢植えやプランターで市販の培養土を使用する場合には、元肥は必要ありません。 「追肥」の適期 元肥を与えた株に追肥を与える最適なタイミングは、植え付けや植え替えから2カ月ほど後です。追肥には、固形の置き肥や粒状の緩効性肥料を根元から離して与え、水やりの際に少しずつ土に吸収されるようにします。 その後は1~2か月おき(※肥料により期間に差があり)に追肥していきますが、株の成長度合いをよく観察し、枝葉が伸びすぎるようであれば控えめにします。 ブーゲンビリアへの肥料の与え方が知りたい それでは実際に、ブーゲンビリアを育てる過程での肥料の与え方を見てみましょう。 まず、株の植え替えや定植をする際に、元肥として緩効性肥料を土に混ぜ混んで与えます。植え付け時に根が直接肥料に接するのを防ぐため、ある程度根が成長してから肥料にたどりつくよう、土の下の方に入れると良いでしょう。 その後は、元肥の効果が切れてくる2~3か月後(※期間は肥料により異なるので、説明を読んで使用してください)を目安に、根元から少し離した場所へ追肥を与えていきます。 園芸店などで鉢植えを購入した場合には、咲いている花が終わって次の花が出てきたタイミングで、緩効性の肥料や油かすなどを与えましょう。鉢の大きさや肥料によって量は違うので、注意書きに従って与えてください。 すでに定植した鉢植えを持っている場合には、春に新芽が出て開花してきたタイミングで、同じように緩効性肥料などを与えます。その後は株の状態を確認し、枝葉が育ちすぎないように調整しましょう。 肥料を与えるのは鉢植えでは4~10月、追肥の間隔は2か月おき程度です。地植えの場合は追肥はほぼ不要と考えて良いでしょう。また、鉢植え・地植え共に休眠期に入る冬は、基本的に施肥は必要ありません。 ただし、室内など10℃以上で管理している鉢植えで葉や花が付いている場合には、緩効性肥料を少量与えても良いでしょう。 ブーゲンビリアに肥料を与えるときの注意点は? 肥料を与える時の注意点は、とにかく与えすぎないということです。ブーゲンビリアは肥料が多すぎると、花付きが悪くなります。花よりも株を大きく育てたいなら問題はありませんが、花を咲かせたい場合には、控えめに与える方が良いでしょう。 施肥が少なすぎて肥料切れを起こしている場合には、葉の色が黄色っぽくなります。追肥の目安にしてください。 肥料をあげすぎると「肥料やけ」が起きます 植物に肥料をあげすぎると、土と根の濃度を一定にしようとする働きが起こります。土壌の肥料の濃さを薄めるために根の中の水分が土壌に流れ出て、しなびた根はやがて枯れてしまうのです。 これが、俗にいう「肥料やけ」です。特にブーゲンビリアは肥料やけをしやすいと言われているので、鉢植えへの施肥の際には十分に注意しましょう。 肥料やけをしているかどうかの見分け方としては、「株全体に元気がなく花が全く咲かない」「葉に全く艶がない」「葉の色が異常に濃い」などがあります。 肥料やけを確認したら、すぐに鉢からブーゲンビリアを取り出し、傷んだ根は落とします。水でしっかりと根を洗い、新しい用土で植え替えましょう。その際、元肥を入れたり肥料入りの培養土を使用したりするのは厳禁です。 植え替え後は全ての葉を落とし、新芽が出てくるのを待ちましょう。新しく芽吹いたのを確認したら、緩効性の化成肥料を少量与えるようにします。 近年、夏期の気温が上がり、夏の得意なブーゲンビリアにとっても厳しい環境となることが多くなりました。酷暑期間の施肥は根を傷めますので注意しましょう。 Credit 記事協力 監修/矢澤秀成 園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長 種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。 文・ランサーズ
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一年草
プリムラの育て方。コツとお手入れ、植え替えや寄せ植えを一挙紹介します
プリムラを育てる前に知っておきたいこと プリムラは耐寒性に優れ、初心者でも比較的育てやすい花です。 プリムラの基本データ 学名:Primula 科名:サクラソウ科 属名:サクラソウ属 原産地:欧州からアジアにかけた広範囲 和名:桜草(サクラソウ、またはセイヨウサクラソウ) 英名:Primrose 開花期:11~4月※品種により若干異なる 花色:赤、ピンク、白、黄、オレンジ、青、紫、複色 発芽適温:15~20℃ 生育適温:15~20℃ 初秋の9月ごろからさまざまな品種の苗が園芸店に並び、年末ごろには多くの品種が一斉に出回ります。まずは苗から育ててみましょう。種から育てる場合は、品種によって若干異なりますが、その多くが5~6月に種まきを行います。 種類を知ると、選び方がわかります プリムラは、パンジーやビオラに引けを取らないほど、カラフルな色彩が揃っています。花形もひと重咲き、八重咲き、フリル咲き、サクラの花弁のような形まで多彩。草姿は、株元から太い主茎を伸ばし、その先端にいくつもの花をつける「ポリアンサ(クキ立ち)」タイプと、根元からたくさんの花茎を伸ばし、先端にひとつだけ花を咲かせる「アコーリス」タイプの2種類に分かれます。 プリムラは古くから品種改良が進められ、じつにたくさんの園芸品種が誕生しています。現在、日本で販売されているプリムラの主な品種は、大きく分けて5つです。ヨーロッパ原種をもとにした「ジュリアン」と「ポリアンサ」、アジア原産種をもとにした「マラコイデス」、「シネンシス」、「オブコニカ」です。 プリムラ・ジュリアン コーカサス原産のジュリエと、ポリアンサ系との交配種がジュリアン系統です。ジュリアンは花色も花形も豊富で、ポリアンサ系統に比べ株がコンパクトなことから、寄せ植えなどの花壇用材料に適しています。苗の出荷の最盛期は10月半ばですが、最近では品種改良により育成された極早生品種が9月中下旬ごろから店頭に並び始めます。 プリムラ・ポリアンサ 現在、品種改良を重ねたポリアンサの原種となっているのは、エラチオール、べリス、ブルガリスの3種類です。ジュリアンに比べ、花も葉もひと回りほど大きく、花弁に厚みがあり、花もちがいいのが特徴です。花色も非常に豊富です。ひと重咲きのほかに、華やかな八重咲きやフリル咲きもあります。12月上旬ごろ、苗が店頭に並びますが、近年は出荷時期が11月上旬に早まりつつあります。 プリムラ・マラコイデス マラコイデスは中国原産種で、和名でケショウザクラとも呼ばれています。小粒の小さい花がたくさん開花するのが特徴です。苗は12月ごろに店頭に並び始めます。耐寒性が強く、冬から春に開花します。一方で夏の暑さや日本の湿気に弱いことから、一年草として扱います。種は採取しておきましょう。 プリムラ・シネンシス 中国原産種のシネンシスは、葉の裏側が赤味を帯びた銅葉となるのが特徴です。白花のステラ系、赤花や橙花、青紫花などが咲くフィンブリアタ系があります。冬の寒さにも夏の暑さにも非常に強く、育てやすいプリムラです。 プリムラ・オブコニカ オブコニカはガクの形がすり鉢状になることから、その名前は「円錐形」という意味です。和名の「トキワザクラ」とも呼ばれています。ほかのプリムラよりもやや大きめなのが特徴。オブコニカの花や葉はプリミンというアルカロイドを分泌し、皮膚がかぶれることもあるので注意してください。最近では、プリミンの分泌を抑えた品種も出回っています。 苗に付いているラベルを参考にして、好みの花姿のプリムラを選びましょう。 ※以下の育て方、お手入れ、水やり、肥料の施し方などについては、一般的に流通している「ジュリアン」、「ポリアンサ」、「マラコイデス」を中心に紹介します。「オブコニカ」の育て方等は「マラコイデス」に準じるので、これを参考にしてください。 プリムラを育てるときに必要な準備は? プリムラの苗を購入したら、なるべく早く植え替えることが大事なポイントです。購入後、長期間そのままにしておくと、根がポット内いっぱいに広がり、水切れがおきやすくなります。また、薄いポットは冬の寒さが根に直接当たるため、根に障害がおきたり、苗が弱りやすくなったりします。植え替えの際には、根をやさしくねじるように、ポットから苗を取り出します。 育てるときは、以下のものを前もって用意しましょう。 ・プリムラの苗 ・ポットより、ひと回り大きいサイズの鉢またはプランター ※花壇に直接植えるのも可 ・土(市販の培養土または赤玉土が7:腐葉土が3の割合がベター) 素焼き鉢を使用する場合は、網で鉢底をふさぎ、その上に鉢底石を敷いておきます。初秋に植え替える場合は、根を軽くほぐしましょう。晩秋から冬に植え替える場合は、根を崩さずにそのまま植え替えます。 適した土作りが、育てるコツの第一歩 土は植物の生育を大きく左右します。そのため、適した土作りが、プリムラを上手に育てる第一歩になります。プリムラの栽培には、水もちのよい土が向いています。苗を購入後、鉢またはプランターに移し替える際、あらかじめブレンドした土を用意しておきましょう。混ぜる割合は下記を参考にしてください。 ・赤玉土(小粒)が6、腐葉土が3、酸度調整済みピートモスが1 赤玉土はふるいにかけて、みじんを取り除いておきます。腐葉土は手で揉むなどして、細かく砕いておくと、ほかの土と混合しやすくなります。 庭植えの場合は、庭土を20㎝ほど掘り返し、根くずや石を取り除き、3~4割程度の腐葉土をすき込んでおきましょう。 プリムラの育て方にはポイントがあります プリムラの育て方には、種から育てる方法と、市販の苗を購入して育てる方法があります。植物栽培に慣れていない方、プリムラを育てるのが初めて…という方は、まずは苗から育て始めましょう。 プリムラは戸外で栽培するのに適した園芸植物です。なかでも「ジュリアン」や「ポリアンサ」は耐寒性に強く、雪が多い場所でも育ちます。ただし、雪が少なく凍結するような地域では、凍結と融解を繰り返すことで枯れてしまうことも。冷え込みが厳しい日は、室内に取り込むなどの対策が必要です。やむを得ず室内で栽培する場合は、陽の当たる明るい窓辺などに置きましょう。 プリムラの育て方~株から始める~ プリムラの苗の選び方 初秋の9月ごろから年末にかけて、じつに多種多様な品種の苗が園芸店に並びます。苗にはそれぞれ開花イメージの写真ラベルがついていることが多いので、好みの花姿で選んでみましょう。プリムラの苗を選ぶポイントは、以下の5点です。 ①葉色 葉色の薄いものは、肥料切れの可能性があります。葉色が濃く、色鮮やかなものを選びます。 ②つぼみ 小さいものから大きいものまで、つぼみがたくさんついている苗を選びましょう。判断しにくい場合は、指でそっと株元を開いて、つぼみの数を確認します。 ③下葉 茎の付け根や根元近くについている下葉をチェックしましょう。下葉が枯れている苗は肥料不足、苗が弱っている、病気にかかっていることがあります。下葉が枯れていない苗を選びます。 ④葉先 葉先が枯れている苗は、いちど水切れをした可能性があるので避けましょう。また、葉先が黄色くなっているものも肥料切れの恐れがあります。 ⑤根元 根元がぐらぐらしているものは、根元から病気が入り、腐ってしまうことがあります。根元がしっかりとしたよい株を選びます。 プリムラの育て方~種から始める~ プリムラの種まき時期 「ジュリアン」、「ポリアンサ」の種まき時期は、通常5~6月、但し暖地では9~10月でも可能です。暑さが苦手な「マラコイデス」は9~10月が適しています。 発芽しやすくさせるコツ プリムラの種は、発芽するまで乾燥させないよう注意しましょう。種をまく前に受け皿に水を張り、水を吸わせます。 プリムラの種まき方法 ビニールポットの底に鉢底網を敷き、土を入れます。種まき用の土は、下記を参考に配合してください。 ・市販の播種用土または酸度調整済みピートモス1、赤玉土小粒1 水を張った大きめの受け皿にビニールポットを置き、土が水を吸い上げるのを待ちます。続いて、1ポットあたり5~6粒の種を土の上にばらまきます。発芽には光が必要なので、種の上に土をかぶせる必要はありません。最後に土の表面が乾燥するのを防ぐため、新聞紙などで覆って輪ゴムで固定し、明るい場所で管理します。夏場を越す場合は、できるだけ涼しい場所で管理しましょう。 丈夫に育てるための、植え替え時期と方法 無事に夏を越したプリムラの株は、少し涼しくなり始める彼岸花が咲く頃に植え替えを行います。鉢やプランターは、ひと回り大きなサイズを用意してください。 種まきを5~6月に行った場合、9月中下旬ごろには苗が大きくなり、植え替えの時期を迎えます。ビニールポットから鉢やプランター、庭に移し替えましょう。 冬を越すプリムラは寒さに順化させます 店頭に並んでいるプリムラの苗の多くは、温かいハウスで温度を上げて育てられています。購入後、いきなり戸外で栽培すると、葉がしおれたり葉先が焼けたり、という現象が起こる場合があります。「順化」という作業を行うことで、これらを防ぐことができます。「順化」とは、生物が異なる土地に移された場合に、その気候条件に適応、または気候条件の変動に次第に適応させるという意味です。 購入後、昼間は戸外の寒風の当たらない場所に置き、夜間は室内の玄関などに置きます。寒い日は室内の明るい場所に移動します。これを10日間ほど続け、徐々に寒さに慣らしていきましょう。 プリムラと仲よくなる、日々のお手入れ プリムラの水やりのタイミング 「ジュリアン」、「ポリアンサ」の鉢植えの場合は、鉢土の表面が乾いたら、暖かい日の午前中を選んで水をたっぷり与えます。「マラコイデス」の鉢植えは、水を入れた大きめの容器に鉢の底面を付け、下から吸い上げる方法で行います。上から与える場合は霧吹きなどを使います。 庭植えの場合、基本的に水やりは必要ないですが、晴天が続いて乾燥するようであれば水やりしてください。このとき、花や葉に水がかからないよう、先の細い水差しで株元に水を与えるようにしてください。 冷え込みが続く真冬には、やや乾かし気味に管理する必要があります。 プリムラの肥料の施し方 「ジュリアン」、「ポリアンサ」の鉢植えは、葉の色が薄くなったり、花の数が減ってきたりしたら、規定濃度の液体肥料または適量の緩効性化成肥料を施します。「マラコイデス」の鉢植えは、規定濃度を2倍に薄めた液体肥料を週に1回、施すようにします。庭植えの場合は、適量の緩効性化成肥料を使います。 プリムラの花が咲いたら… 花つきをよくするためにも、花が咲いたあとは、こまめに花がら摘みを行います。摘み方は、咲き終わった花の茎の付け根からハサミを入れ、花がらを切り取ります。手で引っ張ると、株が浮いて根を傷つける恐れがあるので、必ずハサミを使いましょう。枯れ葉も同様に、こまめに取り除きます。 プリムラの増やし方が知りたい! プリムラは種まき、株分けで増やすことができます。 種まきは通常5~6月に行い、発芽した苗はビニールポットに植え、夏場はできるだけ涼しい場所で管理します。育った苗は9月中下旬ごろに鉢やプランター、庭に植え替えます。 無事に夏越しした株は、株分けで増やせます。ひと回り大きくなった株を鉢から根ごと抜き取り、軽く根鉢をくずして土を落とします。株元をしっかりと持ち、手でふたつに引き分けていきます。細かく分けすぎると生育が遅れる場合があるので、株の大きさや芽が付いているかどうかを確認したうえで行いましょう。 毎日の観察が、病気や害虫を防ぐコツです 暖かい時期に入り、気温が上がるとアブラムシやヨトウムシなどの害虫が発生しやすくなります。害虫を発見したら、こまめに駆除することが大切です。ひどい場合は、市販の薬剤を株元に散布し、防除しましょう。高温乾燥が続くと、ハダニが発生することがあるので、防止策として霧吹きで葉の表と裏に水をかけるようにしましょう。ナメクジの発生にも注意しましょう。 害虫以外に考えられるプリムラの病気は、主に以下の2つです。 軟腐病 高温多湿の時期に、植物に発生するメジャーな病気のひとつです。発病すると急にしおれはじめ、地面と接するクキや葉などが腐ります。腐った部分はドロドロになり、独特の異臭を放つようになります。発病後、回復させることが難しいため、発見したら素早く抜き取って処分します。予防法としては、枯れた下葉をまめに取り除き、通気性を保つことです。日々の除草も軟腐病を防いでくれます。雨による泥の跳ね返りを防ぐため、ビニールなどでマルチングを行いましょう。 灰色かび病 高温多湿の時期に、灰色のカビに侵され、腐敗する病気です。開花後の花弁が株内に落ちている場合、発病の可能性が考えられます。予防法は、こまめな換気と枯れ葉や花がら摘み、除草を行うことです。 プリムラと相性のよい寄せ植えの植物 さまざまな品種、色、花形をもつプリムラは、多種多様な寄せ植えが楽しめる花です。「ジュリアン」と「ポリアンサ」は花の位置が低いため、プリムラより背の低い素材を選ぶのがポイントです。使いやすい素材は、「シュガーバイン」、「ハツユキカズラ」、「ワイヤープランツ」、「プミラ」などのグリーンです。カラフルなプリムラの花を引き立てるのはもちろん、葉に入った斑のコントラストが白や黄色のプリムラにも良く合います。これらをプリムラの株と株の間に挟み、鉢やコンテナから這わせるように垂らすと、寄せ植えに動きが出ます。 プリムラは蒸れに弱いので、寄せ植えにする場合は株と株の間を5cmほど空け、プリムラの葉と葉がふれないように気をつけましょう。 Credit 記事協力 監修/矢澤秀成 園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長 種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。 構成と文・角山奈保子
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育て方
コキアに必要な肥料について、正しい与え方と注意点を知りましょう
コキアを育てる前に知っておきたいこと コキアは、ユーラシア大陸に広く分布する植物です。日本へはアジアから中国経由で渡来し、1000年以上前から栽培されていたという記録が残っています。江戸時代には広く栽培され、枯れ枝はホウキの材料に、若い枝や果実は食用として使用されてきました。和名の「箒木(ホウキギ)」は、ホウキとして利用していたことに由来しています。 コキアの基本データ学名:Bassia scoparia(Kochia scoparia)科名:ヒユ科属名:ホウキギ属原産地:西アジア、中央アジア和名:箒木(ホウキギ)、箒草(ホウキグサ)、英名:Bassia(kochia)開花期:8月上旬~9月上旬発芽適温:15℃以上生育適温:20~35℃ 観賞期は6~11月と非常に長いうえ、10~11月は紅葉により、まっ赤に色づいた様が楽しめます。コキアは主に、葉と草姿を愛でる植物ですが、夏~初秋には花が咲きます。1~2㎜程度の小さな花で、茎の葉のつけ根に2~4輪まとまって咲きます。花はあまり目立たないため、観賞には向きません。 樹高は50~100㎝と大きくなりすぎないので、庭などに低めの生垣を作りたいときにおすすめです。 コキアは大別すると、樹形が丸くまとまるタイプと、細長く伸びるタイプの2種類があります。 コキアには栄養を補うための肥料が必要です コキアをはじめ、植物は土、水、光、空気、養分を得ることで元気に生長します。植物は土中に根を張り、そこから水分や養分、空気を摂取します。そのため、土は非常に大切です。その土に、植物が元気に育つための養分を補うこと、それが肥料の役割です。 家庭の庭や鉢植えで植物を育てる場合は、基本的に肥料が必要です。 自然界では、落ち葉や枯れた植物、昆虫の死骸などが微生物の働きによって分解され、養分になります。一方、庭や鉢植えの土では養分が十分ではないため、コキアの生育に影響を及ぼすことがあります。足りない栄養素は、肥料で人工的に補う必要があるのです。 種類を知ることが、適した肥料選びの近道 肥料には化学的に合成して作られた「化成肥料」、自然の動植物素材などを発酵させて作る「有機質肥料」の2種があります。有機質肥料はゆっくり時間をかけて土質を変える効果がありますが、化成肥料には即効性があります。 化成肥料は、固形タイプと液体タイプがあります。まずは固形タイプから紹介します。 緩効性化成肥料緩効性化学肥料は、徐々に溶けるように加工された肥料です。肥料の表面が樹脂などでコーティングされたもの、錠剤型や球状で成分が溶け出す量をコントロールしているものなどがあります。 追肥(植えつけ後に施す肥料、不足した栄養分を補う)に適した大粒と、元肥として使う小粒の2種類があります。肥料の効果は数か月から数年と幅広く、必要に応じて使い分けます。 速効性化成肥料速効性化学肥料は、数種類の単肥を配合し、粒状にしたものです。低濃度から高濃度まで段階があり、文字どおり速効性に優れています。 一方、すぐに溶けるため、肥料障害が起こる可能性があり、使用量に注意する必要があります。 もう一方の液体肥料は、固形タイプよりもさらに速効性に優れ、追肥に適しています。液体肥料には水で薄めて使用するもの、そのまま使用するものの2種類があります。 水で薄めるタイプは、生育ステージなどによって濃度を変えられるという利点があります。通常、7~10日ほどで効果がなくなるので、定期的に与える必要があります。また、液体性肥料には、水やりのときに水と一緒に肥料を与えるという方法もあります。 このほか、葉から養分を吸収させるための葉面散布用のスプレータイプの肥料があります。葉色が悪い、根が弱って肥料を正常に吸収できない…といった場合に使います。ほかには、鉢やプランターに直接差し込むスティックタイプの肥料、肥料と殺虫剤を混合し、いちどでふたつの効果が得られる薬剤入り肥料もあります。アブラムシなどの被害が発生したときには、この種の薬剤入り肥料を使用します。 覚えておきたい液体肥料の薄め方水で薄めるタイプの液体肥料は、決められた量を正確に守ることが大切です。ピペットと計量カップ(購入時の肥料に付属していることもあり)、目盛りつきのバケツを用意しましょう。少量を作る場合は、バケツの代わりによく洗った牛乳パックやペットボトルを代用すると便利です。肥料は一般的に500倍、1000倍、2000倍に薄めます。 目安としては水1ℓに対し、500倍なら肥料は2㏄、1000倍なら1㏄、2000倍なら0.5㏄となります。 なお、肥料は作り置きできません。水で薄めた状態で長期間放置しておくと、成分が変質する、菌が繁殖するなどのトラブルが生じます。ちょっと面倒でも毎回、必要な分量を作りましょう。 植物に必要な、肥料の三大要素 植物を育てるのに必要な栄養素のなかでも、“肥料の三大要素”と呼ばれるのが「チッ素(N)」、「リン酸(P)」、「カリウム(K)」の3つです。略して「N-P-K」と呼ばれています。 植物を育てている間は、この三大要素をバランスよく与える必要があります。それぞれの役割を説明します。 N:窒素(nitrogenous) 一般的に「チッ素」と呼ばれます。タンパク質を作り、葉緑素の元になるのが窒素です。「葉肥」といわれ、葉や茎を大きく育てます。不足すると葉が黄色く変色したり、クキの伸びが悪くなったりするなどの障害が起きます。 P:リン酸(phosphate) 一般的に「リン」あるいは「リン酸」と呼ばれます。植物の細胞質を作る成分です。「花肥」「実肥」といわれ、花つきや実つきをよくする働きがあります。リン酸が不足すると、植物自体が弱くなってしまいます。 K:カリウム(kalium) 一般的に「カリ」と呼ばれます。植物全体の成育を調整し、根の発達を促進する「根肥」です。葉や茎を丈夫にする働きがあります。不足すると植物自体の抵抗力が低下し、害虫の被害に遭いやすくなります。 三大要素の次に必要なのが、“中量要素”と呼ばれる「カルシウム(Ca)」、「マグネシウム(Mg)」、「イオウ(S)」の3つです。ただし、カルシウムやマグネシウムは土に含まれているため、基本的に不足することはありません。 ほかには、人間にとってのビタミン類にあたる“微量要素”が「鉄(Fe)」、「銅(Cu)」、「亜鉛(Zn)」などの7種類あります。 特定の成分だけを施しても、植物は正常に育ちません。人間の食事のバランスと同様に、バランスのとれた肥料が大切です。これらを適した時期に与えることで、植物は健全にすくすくと育つことができます。 コキアには、こんなタイプの肥料がおすすめ コキアに適した肥料は、カリ(カリウム)成分の多い肥料です。コキアは根が途中で分かれることなく、まっすぐに伸びる性質をもつ「直根性」の植物です。このまっすぐな根を育てるために必要なのが、根の発達を促進する「根肥」=カリです。コキアにカリ成分の多い肥料を与えると、草姿がしっかり育ちます。 植えつけのときの緩効性肥料、追肥、ともにカリ成分の多い肥料を選びましょう。 肥料を与えはじめる、時期とタイミング 肥料には「元肥(もとひ、もとごえ)」と「追肥(ついひ、おいごえ)」があります。元肥とは、植えつけや植え替えを行うときに前もって土に混ぜておくもので、土自体に栄養を与える効果があります。一方、追肥は植えつけた後に与える肥料です。追肥には植物の生長期間、足りなくなった養分を肥料で補うという役割があります。 元肥の適期 鉢植えの場合、植えつけのときに、緩効性肥料を均等になるよう土に混ぜ込みます。市販の培養土を使用する場合は、もともと土に肥料が入っているので、元肥は必要ありません。 追肥の適期 鉢植えの場合、生長期には3か月に1回ほど、元肥と同じ緩効性肥料を株の周りの土の上にばらまきます。カリ成分の多い肥料を与えると、しっかりした草姿に育ちます。 地植えの場合は、肥料を施さなくても育ちますが、大株に育てたいときは、6月、または7月に置き肥をしておきます。 コキアへの肥料の与え方が知りたい 植物は生育ステージによって、それぞれ必要とする養分が異なります。必要な時に必要な養分を与えることで、植物は健やかに生長することができます。実際にコキアを育てる過程での肥料の与え方を見てみましょう。 鉢植えの場合の与え方 鉢植えの場合、苗の植えつけに適した時期は5~6月頃です。植えつけの際、元肥として緩効性肥料を均等になるよう混ぜ込んでおきます。 その後、1か月半から2か月に1回、株の周りの土の上に追肥として緩効性肥料をばらまきます。追肥の目安は、用土1ℓ当たり8gです。追肥は生育の様子を見て、株に元気がないときに施しましょう。 地植えの場合の与え方 地植えの場合は、日当たり、水はけのよい場所を選べば、基本的に肥料なしでも十分に育ちます。株を大きくしたいときは、6月か7月に置き肥を施します。置き肥の目安は、1㎡当たり250gです。 コキアに肥料を与えるときの注意点は? 養分、栄養素として与える肥料ですが、肥料のあげすぎはトラブルの原因となる場合があります。特に化成肥料をいちどに大量に使うと、かえって土壌が劣化してしまいます。これは、土壌中の微生物が食糧としていた有機物の減少が原因です。 土壌の微生物は、有機物が豊富にあることによって増えていきます。この微生物が活発に活動することで、柔らかく上質な土壌ができるのです。化成肥料をいちどに大量に使用すると、有害な硝酸体窒素が蓄積され、その結果、土壌の微生物が減ってしまうことがあります。化成肥料は、必ず適量を守って使いましょう。 肥料をあげすぎると、「肥料やけ」がおきます。 株元近くに肥料を与えると、株が枯れてしまうことがあります。これは地上部に近いところにある根の細胞が、濃度の高い肥料成分によって破壊され、根が養分と水分を吸収できなくなってしまうためです。これを「肥料やけ」と呼びます。 株元から少し離れたところに肥料を施せば、濃度の薄くなった肥料成分が深いところにある根にゆっくりと届くため、肥料やけを起こす可能性を減らすことができます。肥料は株元から少し離れたところに施しましょう。 万が一、肥料やけを起こした場合、土壌の養分を洗い流すように鉢穴から流れ出るくらいたっぷり水やりをします。その後、しばらくは肥料を施さずに水だけで管理します。根や新芽が伸び始めたのを確認してから、再び肥料を与えるようにしてください。 肥料の管理と購入の際の選び方 肥料は基本的に劣化しにくく、特に使用期限はありません。その理由として、水に溶けることで分解、変性するように設計されているので、そのままでは変化しないからです。化学肥料はもちろん、有機質肥料も劣化しません。 ただし、極端に保存状態が悪いと、変質してしまうことがあります。湿気や水分に触れることで、分解、変性が起こり、有機質肥料はカビが生えてしまうことも。また、日光などの強い光により、劣化や変質が起こることがあります。 肥料は直射日光が当たらない冷暗所で保管し、開封後はきちんと密閉しておきます。また、開封後はなるべく早く使い切ったほうが安心です。購入の際は、製品に記された製造年月日をチェックし、あまりにも古い製品は買わないように気をつけてください。
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育て方
コキアの育て方。コツとお手入れ、植え替えや寄せ植えを一挙紹介します
コキアを育てる前に知っておきたいこと コキアは、ユーラシア大陸に広く分布する植物です。日本へはアジアから中国経由で渡来し、1000年以上前から栽培されていたという記録が残っています。江戸時代には広く栽培され、枯れ枝はホウキの材料に、若い枝や果実は食用として使用されてきました。和名の「箒木(ホウキギ)」は、ホウキとして利用していたことに由来しています。 コキアの基本データ学名:Bassia scoparia(Kochia scoparia)科名:ヒユ科属名:ホウキギ属原産地:西アジア、中央アジア和名:箒木(ホウキギ)、箒草(ホウキグサ)、英名:Bassia(kochia)開花期:8月上旬~9月上旬発芽適温:15℃以上生育適温:20~35℃ 観賞期は6~11月と非常に長いうえ、10~11月は紅葉により、まっ赤に色づいた様が楽しめます。コキアは主に、葉と草姿を愛でる植物ですが、夏~初秋には花が咲きます。1~2㎜程度の小さな花で、茎の葉のつけ根に2~4輪まとまって咲きます。花はあまり目立たないため、観賞には向きません。 樹高は50~100㎝と大きくなりすぎないので、庭などに低めの生垣を作りたいときにおすすめです。 コキアは大別すると、樹形が丸くまとまるタイプと、細長く伸びるタイプの2種類があります。 コキアの種類を知ると、選び方がわかります 観賞用に栽培されているのは、変種のハナホウキギ(トリコフィラ)。主な栽培種は、下記の2種類です。 ハナホウキギ(トリコフィラ)丸い形のコンパクトな草姿で、秋には美しく紅葉します。淡い黄緑色の花をつけますが、花は非常に小さくて目立たちません。 アカプルコ・シルバーコキアの名前で流通しますが、マイレアナ属に分類される、オーストラリア原産の常緑低木。斑(まだら)入り葉になる、シルバーリーフの品種です。「ダイヤモンドダスト」も、この仲間です。半耐寒性で、コンテナの寄せ植えなどに利用されています。 コキアを育てるときに必要な準備は? コキアは育てやすいことで、人気の植物です。コキアには苗から育てる方法と、種から育てる方法のふたつがあります。 まずは育てる前に、以下のものを用意しましょう。 準備するもの(鉢植え、地植え共通)・コキアの種、または苗・土・肥料(カリ分の多いもの)・支柱・ラベル・土入れ、またはスコップ・ジョウロ 幼い苗は強風などで倒れやすく、折れてしまうことがあるので、支柱を立てましょう。 *鉢植えの場合は、下記のものも用意・8号か10号鉢、または横長プランター・鉢底ネット・鉢底石 コキアは日当たりがよく、水はけのよい土壌を好みます。真夏の直射日光にも負けないほど暑さに強い植物ですが、寒さに弱い一年草です。 適した土作りが、コキアを育てるコツの第一歩 土は植物の生育を大きく左右します。コキアは比較的、土質を選ばない丈夫な植物ですが、日当たり、水はけ、水もちのよい土を好みます。 鉢植えの場合、酸性が強いと育たないため、弱酸性、または中性の用土を使用します。自分で土作りをする場合は、赤玉土7、腐葉土3の割合で混ぜておきます。赤玉土は小粒のものを選び、みじんを取り除いておきましょう。腐葉土は手で揉むなどして、細かく砕いておくと、ほかの土と混合しやすくなります。市販の草花向け培養土を利用することも可能です。 地植えの場合は、広めに植え穴を掘った土に、腐葉土や堆肥を2~3割混ぜ込み、2~3週間ほど寝かせておきます。水はけがポイントになるので、砂利を混ぜておくのも、ひとつの手です。 コキアの育て方にはポイントがあります コキアは日当たり、水はけのよい場所を選んで育てるのがポイントです。日陰だと枝が弱々しくなるだけでなく、葉の枚数が少なくなり紅葉の見栄えが悪くなります。 コキアの育て方~苗から始める~ 苗の選び方 コキアの苗の植えつけ適期は、5~6月頃です。購入する際は、根がしっかりと発達した、元気のよい苗を選びます。本葉が、3枚くらいになっているものがよいでしょう。 植えつけ時期と方法 苗を購入したら、できるだけ早く植えつけを行います。コキアの苗は、根が詰まると老化してしまうので、ポットのままで長く放置しないよう注意します。手順は以下のとおりです。 ① ビニールポットよりひと回り以上大きな鉢、またはプランターを用意。鉢穴をふさぐための鉢底ネット、軽石などの鉢底石を入れておきます。②赤玉土と腐葉土を7:3の割合で混ぜ込んだ新しい土を、鉢、またはプランターの4分の1ほど入れます。③ 土を崩さないようにビニールポットからそっと苗を抜き、土を入れた鉢に入れ替えます。④ 鉢と苗との隙間を埋めるように少しずつ土を加え、苗を安定させます。⑤ 鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと水やりします。 鉢植えの場合は、できるだけ大きな鉢を用意してください。8号、または10号鉢ひとつに対し、苗はひとつが目安です。小さな鉢だと大きく育たなくなります。大きく育てたいときは、地植えするようにしましょう。 直根性であるコキアは、根が傷むと枯れてしまいます。植えつけのときは、根が傷つく恐れがあるため、土を押さえないようにしてください。 コキアの育て方~種から始める~ 種まき時期 コキアの種まきの適期は、4月中旬~5月中頃です。種まきは7月頃までできますが、寒くなると枯れてしまうので、そのぶん、観賞期が短くなってしまいます。 発芽のコツ コキアの種は、15℃以上まで気温が上がると発芽します。発芽には、とにかく日当たりのよい場所で育てることが大切です。日光が少ないと、そのぶん生育が悪くなってしまいます。 種まき方法 コキアの種はポットにまくか、直まきします。鉢植えやプランターで育てたい場合は「ポットまき(セルトレーまき)」、庭などに地植えする場合は「ばらまき」、または「すじまき」、いずれかの方法になります。それぞれの手順を紹介します。 ポットまき(セルトレーまき)①ポットまたはセルトレーに、湿った土をすりきり1杯入れておきます。②土に指で穴を開け、種を入れます。穴は指の第一関節程度が目安です。③種を入れ、上から軽く土をかぶせます。 ばらまき①あらかじめ十分に土を湿らせたうえで、種が重ならないように均等にばらまきます。②まいた後は、土をかぶせないか、ふるいで軽くかぶせる程度にします。 すじまき①湿った土に、支柱などを押し付けて「溝」をすじ状に作ります。二列以上にする際は、列の間隔をとっておきます。②種が重ならないよう指でつまみながら、まいていきます。③溝の両側を手で挟むようにして、種に軽く土をかぶせます。 コキアの種は非常に小粒です。土の上にまいたあとは、少しだけ土をかぶせます。コキアは発芽に光が必要な、好光性種子植物。かぶせる土は、あくまでも乾燥を避けるためのものなので、かぶせすぎないように注意しましょう。 コキアと仲よくなる、日々のお手入れ 水やりのタイミング 鉢植えの場合は、土の表面が乾き始めたら、たっぷりと水やりをします。夏場は水切れを起こしやすいので、注意が必要です。夏は朝と夕方の2回、しっかりと水を与えてください。 地植えの場合は、ほとんど水やりの必要はありません。 コキアは過湿にはやや弱いので、水の与えすぎには十分に注意しましょう。特に、高温多湿の時期は要注意です。 肥料の施し方 鉢植えの場合は、植えつけの際に、土に緩効性肥料を均等になるよう混ぜ込みます。市販の培養土を使用するときは、肥料が入っているのでそのまま使います。そのあとは、生長期に1か月半から2か月に1回、同じ肥料を同量、株の周りの土の上にばらまいて追肥します。 地植えの場合は、肥料を施さなくても育ちますが、大株に育てたいときは、6月、または7月に置き肥をしましょう。 カリ成分の多い肥料を与えると、草姿がしっかりします。 植え替えは、コキアには適しません 植物は根の性質によって、苗の扱い方が異なります。 コキアは根が途中で分かれることなく、まっすぐに伸びる性質をもつ「直根性」の植物です。直根性の植物は、根を少しでも痛めてしまうとダメージが大きく、うまく根付づきせん。植え替えによって根を傷つけてしまうことがあるため、コキアの植え替えは難しいと考えてください。 このような理由から、直根性の植物の育て方として理想的なのは、種を直まきする地植えということになります。 コキアは、剪定の必要がありません コキアは自然にこんもりとした樹形へと育つので、基本的に剪定の必要はありません。枝が乱れている部分を見つけたら、カットして形を整えます。 紅葉の時期や種をつける時期を考えて、枝をカットする場合は8月中旬までに終えましょう。 知りたい! コキアの増やし方 種の採取の時期と方法 コキアは地面に落ちたこぼれ種から、翌年、自然に幼苗が育っていることがあります。コキアを増やすには、種を採取しておきましょう。 一年草であるコキアは、8月上旬以降には花芽が多くなり、8月下旬頃には伸長はほとんど止まります。9月下旬には種が実り始め、10月下旬頃には枯れ始めます。紅葉を過ぎて葉が茶色くなったら、種を採取するタイミングです。 種を採取するには、新聞紙、または白い大判の紙を用意します。根元から切り取った株を紙の上で振るか、軽くたたき、種を落とします。こうすることで、ゴマよりも小さい種がたくさん採取できます。 採取した種は、翌年の4~5月まで紙袋などに入れて、通気性のよい日陰で管理しましょう。 手作りホウキを作り方 別名ホウキグサと呼ばれるコキア。種を採り終えた株で、ホウキを作ってみませんか。 ①株から枯れ葉や細い枝を刈り取ります。指ですくと、きれいに取ることができます。②適当な本数にまとめます。③根元を麻紐などできっちりと結びます。④長さが足りない場合は、持ち手を取り付けたらできあがりです。 見た目がかわいい手作りのホウキ。玄関など、ちょっとしたスペースの掃除に役立ててみましょう。 毎日の観察が、病気や害虫を防ぐコツです 育てるときに注意したい病気 コキアは病気の心配がほとんどない、丈夫な植物です。ただし、ジメジメした多湿な環境で育てると、うどんこ病などの病気にかかることがあります。 うどんこ病植物の葉などが、粉をまぶしたように白くなるのが「うどんこ病」です。最初は軽く白い粉をまぶしたように見えますが、被害が進むと葉全体が真っ白になり、やがて植物全体に広がります。原因は目に見えないサイズのカビ(糸状菌)によるもので、夏以外の梅雨や気温差の激しい時期に発生しやすくなります。 予防策として、普段から風通し、日当たりには十分気をつけましょう。また、重層1gを500~1000mℓの水で薄めた重層液をスプレーしておくという予防法もあります。 育てるときに注意したい害虫 コキアは成長後、虫の心配がほどんどありません。ただ、まいたばかりの種がダンゴムシに食べられてしまうことがあります。また、幼苗のうちは、ダンゴムシやナメクジに食い荒らされる危険や、アブラムシやシロオビメイガという害虫が発生します。くれぐれも注意してください。 アブラムシ春頃、新芽を狙って発生します。アブラムシは葉の裏につくので、葉の裏をこまめにチェックします。見つけたら、専用の殺虫剤などを使って駆除しておきましょう。 シロオビメイガシロオビメイガの幼虫は葉の裏につきます。表皮を残して葉肉のみを食べるため、被害に遭った葉は表面が透けるように見えます。成虫になると糸を吐いて葉をつづり合わせ、中に潜んで食害します。初夏頃から発生しますが、秋の発生がもっとも多く、気温が高いと多発します。こまめに葉裏をチェックし、幼虫のうちに駆除します。 コキアと相性のよい寄せ植えの植物 もこもこした姿が愛らしいコキアは、さまざまな植物との寄せ植えが楽しめます。鮮やかなグリーンが秋には華やかな赤に変わるので、色の組み合わせを工夫したいところです。 下記にコキアと相性のいい植物をピックアップしてみました。寄せ植えの参考にしてみてください。 ・アスター・スイートハーブメキシカン・センニチコウ・ナスタチウム・ニチニチソウ・バーベナ・ペンタス・ポーチュラカ・マリーゴールド 併せて読みたい
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育て方
ラベンダーの剪定は品種ごとに微妙に時期が違う!育て方のコツとお手入れ、植え替えや寄せ植えを一挙紹介
ラベンダーを育てる前に知っておきたいこと ラベンダーの原産地は、地中海沿岸。原種はおよそ30種類で、これに変種や亜種、栽培品種を加えると、数え切れないほどの品種が存在します。ラベンダーの育て方を知る前に、基本的なことを見てみましょう。 ラベンダーの基本データ学名:Lavandula科名:シソ科属名:ラバンデュラ属原産地:地中海沿岸和名:ラベンダー英名:Lavender開花期:アングスティフォリア系4月下旬~6月中下旬、ラバンディン系6月上旬~7月下旬、ストエカス系4月上旬~6月中旬、プテロストエカス系とデンタータ系:四季咲き花色:ピンク、白、紫発芽適温:20℃前後生育適温:15~20℃切り花の出回り時期:5~7月花もち:5〜7日程度 種類を知ると、選び方がわかります ラベンダーの原種は、大きく「アングスティフォリア系」、「ラバンディン系」、「ストエカス系」、「デンタータ系」、「プテロストエカス系」の5つのグループに分類することができます。それぞれの特徴を知り、自身のライフスタイルや育て方に合ったラベンダーを選びましょう。 アングスティフォリア系ラベンダーの代表格的なグループです。ラテン語で、アングスティは細い、フォリアは葉を意味するとおり、細く、繊細な葉をもつことが特徴です。耐寒性はありますが、高温多湿な環境には弱いため、長く育てるのは難しいとされています。 ラバンディン系アングスティフォリア系と、シャープな香りをもつスパイクラベンダーの交雑によって生まれたグループで、長い花穂と花茎が特徴です。寒さに強く、また、高温多湿な環境や病気に強いため、初心者でも育てやすいといえます。 ストエカス系原産地は、カナリア諸島やスペイン、トルコなどで、フレンチラベンダー、スパニッシュラベンダーの別名があります。花穂の先端に、長くてかわいらしい苞葉をもつことが特徴。開花期間が長いうえ、たくさんの花を咲かせてくれます。 デンタータ系原産地は、アフリカ北部やスペイン東南部、カナリア諸島などで、フリンジトラベンダー、キレハラベンダーといった別名をもちます。ラテン語で、デンタータは歯のような、という意味。その名前のとおり、まるで歯のように鋭い切れ込みがある葉があります。気温が低くなるにつれて、花色が濃く、美しくなるという性質も。ただし、-5℃以下の環境は避けましょう。 プテロストエカス系地中海、北アフリカ、アラビア半島西部などに広く分布しています。美しく、華麗な花と特色のある葉がありますが、香りは他のグループに比べると弱いです。四季咲き性であるものの、寒さに強くないため、鉢で育て、冬の間は室内に置くといいでしょう。 ラベンダーを育てるときに必要な準備は? ラベンダーを育てる場合、苗、または鉢植えの株を購入するといいでしょう。ラベンダーの種には交雑しているものが混ざっているため、種から育てることは、あまりおすすめできません。苗や鉢植えは、ホームセンター、園芸店、街のフラワーショップなどで購入できます。 ラベンダーは、前述した、いずれのグループの品種も日当たりと風通しがよい場所を好みます。土も水はけのいいものを選んでください。 準備するもの(鉢植え、地植え共通)・ラベンダーの苗、または鉢植え・土・肥料・ラベル *鉢植えの場合は、下記のものも用意・鉢、または横長プランター・鉢底ネット・鉢底石 適した土作りが、育てるコツの第一歩 鉢植え、地植えともに、水はけのよい土を意識します。腐葉土4:赤玉土(小)3:日向土(小)2:パーライト1の混合土に苦土石灰を加えたものや、腐葉土4:赤玉土(小)3:軽石(小)2:パーライト1の配合土に苦土石灰を加えたものなどが、おすすめです。苦土石灰は、小さじ1杯程度の少量に抑えるようにしましょう。 地植えの場合、堆肥や腐葉土といった有機物をすき込むと、ラベンダーの根が育ちやすくなります。 ラベンダーの育て方にはポイントがあります ラベンダーの育て方〜苗から始める〜 苗の選び方 苗を選ぶときは、前述したグループによって色や形などに違いはありますが、葉や茎をよく見てください。葉色がよく、茎の節間が詰まった、しっかりした苗を選ぶことがポイントです。茎が細長く、ひょろひょろと伸びているものや、土の表面にコケが発生している苗は、しっかり育たなかったり、根腐れしたりする可能性があるため、避けるようにしましょう。 植えつけ時期と方法 アングスティフォリア系は寒さに強い半面、暑さに弱いため、秋に定植して初夏までにしっかりと根を成長させるとよいでしょう。 ラバンディン系は寒さに強く、暑さにも比較的強いので、3月中下旬から育てることができます。 一方、ストエカス系、デンタータ系、プテロストエカス系は寒さにあまり強くないため、八重桜が開花する頃から育てるようにします。 鉢植えの場合の手順①鉢に鉢底ネットを入れ、鉢底石を敷きます。②培養土、または用土に肥料を混ぜたものを、鉢の半分量入れます。③苗をポットから抜き、植えつけ、土を苗の周囲にかぶせます。棒で軽く土をつき、土の隙間がなくなるようにします。④葉が濡れると蒸れてしまうことがあるため、株元のみにたっぷり水やりをします。⑤品種名や植えつけ日を書いたラベルを挿しておきましょう。 地植えの場合の手順①日当たりと風通しのよい場所を選定します。あらかじめ、土作りしておいた場所に深さ30㎝くらいの穴を掘ります。②穴にポットごと苗を置き、土の表面よりも苗の土の表面が20㎝ほど高くなるよう、穴に土を戻します。③株元に、たっぷりと水を与えます。④品種名や植えつけ日を書いたラベルを挿しておきましょう。 ラベンダーと仲よくなる、日々のお手入れ 水やりのタイミング ラベンダーの原産地は、地中海沿岸地方で、乾燥した場所です。乾燥ぎみに育てたほうがよいため、特に水のやりすぎに注意します。 水やりのタイミングは、用土の表面が乾いた頃。日中は避け、朝にたっぷりと水やりをします。葉に水がかかると乾きにくく、蒸れる原因となるため、株元のみに水をかけましょう。 肥料の施し方 植えつけ時や植え替え時に、元肥として緩効性化成肥料を施します。加えて、春の芽が伸びる3月頃と、夏を超えた9月中旬頃に、追肥として緩効性化成肥料を施すといいでしょう。 花が咲いたら… ストエカス系、デンタータ系の場合、株の疲労を防ぐため、早めに花を収穫します。収穫する際のポイントは、わき芽の上から切り取ることです。 アングスティフォリア系の花に含まれる精油は、満開を迎えると揮発するという性質があります。そのため、花が5輪ほど咲いたら収穫するといいでしょう。乾燥させて、ポプリに仕立てるのもおすすめです。 立派に育てるための、植え替え時期と方法 株が大きく成長したら、植え替えを行いましょう。 また、水を与えてもすぐに乾燥してしまったり、鉢穴から根がはみ出したりしてしまっている場合は、根詰まりを起こしているため、植え替えが必要となります。 ラベンダーの場合、植え替えは、前述した植えつけと同様の手順で行います。 剪定を行うときは、時期に注意しましょう 小低木のラベンダーは、だんだんと小枝が老化し、花つきが悪くなる傾向があります。2年に1回ほど剪定を行うことで、若々しい状態を維持することが可能です。品種ごとの、剪定を行う時期や方法を紹介します。 アングスティフォリア系、ラバンディン系12月上旬〜2月下旬の間に剪定を行います。株元から1/3までを残し、園芸用ハサミでカットします。 デンタータ系9月中旬〜下旬の間に剪定を行います。全体の2/3を残し、園芸用ハサミでカットします。 プテロストエカス系ところどころ枝が伸びるなど、樹形が乱れている場合、剪定を行います。花が枯れる10月下旬が、もっとも適した時期です。全体の2/3を残し、園芸用ハサミでカットします。 ストエカス系ところどころ枝が伸びるなど、樹形が乱れている場合、剪定を行います。11月上旬頃が、もっとも適した時期です。株元から1/2までを残し、園芸用ハサミでカットします。また、枯れた枝や細い枝は、根元から切り取るようにしましょう。 知りたい! ラベンダーの増やし方 ラベンダーは、挿し木で増やすことができます。 挿し木の時期と方法 5月上旬〜6月上旬、もしくは9月中下旬〜10月中旬に行うと、健康な根が育ちやすくなります。 ①茎の部分が硬くなった、若い枝を切り取ります。②7〜8㎝の長さに切り分け、30分ほどコップの水に浸します。③ナイフで挿し口を斜めに切ります。④平らな鉢に赤玉土(小)を入れます。棒で差し口を作ってから、③の挿し木を入れます。その後、土をかぶせて固定します。⑤4〜5日間は明るい日陰に置き、その後、日当たりと風通しのよい場所に移動させます。 毎日の観察が、病気や害虫を防ぐコツです 育てるときに注意したい害虫 カイガラムシ香りの強いラベンダーにはほとんど虫がつきませんが、冬季にカイガラムシという害虫がつくことがあります。カイガラムシはラベンダーを弱らせ、最終的には枯らしてしまうため、見つけたらすぐに駆除します。歯ブラシでこすり落とすなどしましょう。 ヨトウムシ春〜初夏にかけての時期や秋に、ヨトウムシに茎や葉をかじられてしまうことがあります。幼虫を見つけたら、すぐに取り除きましょう。 アブラムシ、ハダニ4〜5月にかけて、アブラムシやハダニがつくことがあります。見つけ次第、殺虫剤で駆除します。 ラベンダーと相性のよい寄せ植えの植物 ラベンダーは乾燥ぎみの環境を好みます。他の草花と寄せ植えにすると、まめな水やりが必要になり、ラベンダーは過酷な環境にさらされることに。加えて、ラベンダーには風通しのよい環境を好む性質もあるため、寄せ植えにすると蒸れやすくなってしまいます。つまり、ラベンダーは寄せ植えには向かない植物なのです。 寄せ植えではなく、ラベンダーの鉢と他の植物の鉢を組み合わせて置く「置き合わせ」が、おすすめの楽しみ方です。 構成と文・アマナ/ネイチャー&サイエンス ラベンダーについてよくある質問 花が咲いたラベンダーは、いつ頃切り戻せばいいのでしょうか。 ラベンダーの切り戻しは、花の収穫も兼ねて夏前に行いましょう。ラベンダーは高温多湿に弱く、特に雨が続く梅雨時は、蒸れて弱りやすくなります。梅雨に入る前に、切り戻しと剪定で風通しを良くしておくと、夏越しがしやすくなります。伸びた花茎の下、葉を数対つけて花穂を切り取りましょう。収穫後にポプリやドライフラワーにするのであれば、2~3分咲きの咲き始めの時点で切り取ります。ラベンダーは比較的ドライにしやすい花なので、自然乾燥でも簡単にドライフラワーにすることができます。収穫後に葉を取り除き、直射日光が当たらない風通しの良い場所に吊るしておくと、2~3週間ほどで乾燥します。ドライフラワーにしない場合でも、花が終わる前に早めに切ることで株への負担を減らすことができます。切り戻しの際には、花穂の収穫と併せて傷んだ枝や葉も摘み取り、株を透かしておくことも、夏越しのための準備になります。 ラベンダーは食べられますか? ハーブの代表格として有名なラベンダーはシソ科の植物です。ラベンダーオイルやサシェなどの精油としての役割の印象が強いですが、ハーブティや肉料理の香り付けなど料理にも使われます。中でもラベンダーやさまざまなハーブの栽培で有名な南仏で有名なのが「エルブドプロバンス」というスパイスです。家庭によって色々なハーブをミックスしたスパイスですが、そこに乾燥ラベンダーがミックスされることもあります。ラベンダー料理でおすすめなのはラム肉や豚肉のグリルです。ラベンダーを一緒にグリルするだけで、独特の香りと肉の旨みが引き出され、おもてなし料理にぴったりの味になります。ただし、ラベンダーは少量でも香りを発揮するので、使うときの量に気をつけましょう。あまり入れるすぎると、逆に料理の風味を損ねてしまいます。