赤、ピンク、オレンジ、黄、白、紫など、愛らしい花をつけ、冬~早春の花壇を華やかに彩ってくれるプリムラ。その豊かな花色、かわいらしい花形が、プリムラの魅力です。ここでは、代表的な品種と、それぞれの特徴、見分け方を、NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。
目次
プリムラって、どんな花?
プリムラは耐寒性に優れ、初心者でも比較的育てやすい花です。
プリムラの基本データ
学名:Primula
科名:サクラソウ科
属名:サクラソウ属
原産地:欧州からアジアにかけた広範囲
和名:桜草(サクラソウ、またはセイヨウサクラソウ)
英名:Primrose
開花期:11~4月※品種により若干異なる
花色:赤、ピンク、白、黄、オレンジ、青、紫、複色
発芽適温:15~20℃
生育適温:15~20℃
初秋の9月ごろからさまざまな品種の苗が園芸店に並び、年末ごろには多くの品種が一斉に出回ります。まずは苗から育ててみましょう。種から育てる場合は、品種によって若干異なりますが、その多くが5~6月に種まきを行います。
プリムラの原種について知りたい!
プリムラの原種は、ヨーロッパからアジアにかけての広い範囲で自生し、その数は50種以上におよぶといわれています。日本にもサクラソウやカッコウソウ、クリンソウなど、約20種が自生。これらの原種をもとに品種改良が進み、現在では世界になんと500種以上ものプリムラが分布しています。
多くの園芸品種を生み出した原種のなかから主な4種を、紹介しましょう。
プリムラ・エラチオール
ヨーロッパ原産で、赤や黄、紫色の花を咲かせます。草丈は本来20~30㎝ほどですが、小さな鉢で栽培するとそれほど大きくならず、10㎝ぐらいでかわいらしく咲きます。
プリムラ・ベリス
ヨーロッパ原産で、別名カウスリップ。広がるように生育し、春に伸びた花茎の上部に、黄花を房状に咲かせます。芳香があるのが魅力。
プリムラ・ブルガリス
ヨーロッパ原産。イギリスでは、プリムローズと呼ばれ、古くから親しまれてきました。早春にレモンイエローのやさしい色合いの花を咲かせます。
プリムラ・ジュリエ
南コーカサス原産。草丈は低く(草丈5㎝ほど)で、カーペット状に広がるのが特徴です。春に紫色がかったピンクの小さな花を咲かせます。
特徴で、5つのタイプに分けられます
古くから品種改良が進められたプリムラは、前述のとおり、現在に至るまで、じつにたくさんの園芸品種が誕生しています。それらは、地中海性気候のヨーロッパから西アジアに分布。このため、プリムラは、ヨーロッパ系とアジア系に大別されます。現在、日本で市販されているプリムラの品種は、主に、ヨーロッパ系の「ジュリアン」と「ポリアンサ」、アジア系の「マラコイデス」、「シネンシス」、「オブコニカ」の5タイプです。この項では、それぞれがもつ特徴と魅力をまとめました。
ヨーロッパ系
プリムラ・ジュリアン
ジュリアンは花色も花形も、非常に豊富なのが特徴です。後述する、ポリアンサ系統に比べ、株がコンパクトなことから、寄せ植えなどのガーデニングに適しています。早咲きのものが多く、プリムラのなかでも特に早く開花します。もっとも早い品種は9月中下旬から開花します。南コーカサス原産のジュリエと、ポリアンサ系との交配によって誕生しました。
プリムラ・ポリアンサ
エラチオール、べリス、ブルガリスの3種の原種をベースに改良された、種間雑種です。ポリアンサは、先のジュリアンに比べ、花も葉もひと回りほど大きく、花弁に厚みがあります。色はピンク、黄、オレンジ、白、青、紫、複色など多彩。ひと重咲きのほか、華やかな八重咲きやフリル咲きのものが揃います。花苗は11月下旬ごろから、花店やホームセンターの店頭に並びます。
アジア系
プリムラ・マラコイデス
中国原産のマラコイデスは、ガクや葉の裏などに白い粉をつけるため、和名で化粧桜(ケショウザクラ)とも呼ばれています。色はピンク、白、青紫、紫が主流です。花はポリアンサに比べると小さく、小粒の花が段を作るようにたくさん開花するのが特徴。12月上旬頃から店頭に並び始めます。耐寒性が強い一方、夏の暑さや日本の湿気に弱いことから、一年草として扱います。翌年も楽しみたい場合は、種を採取しておきましょう。
プリムラ・シネンシス
中国原産種のシネンシスは、気品溢れる花姿が人気の品種です。色は赤、白、青などが主流です。葉の裏側が、赤みを帯びた銅葉となるのが、このタイプならでは。冬の寒さにも夏の暑さにも非常に強く、育てやすいプリムラです。
プリムラ・オブコニカ
オブコニカは、ガクの形がすり鉢状になることから、その名前には「円錐形」という意味があります。和名は、常盤桜(トキワザクラ)。ピンク、アプリコット、白など、淡くかわいらしい色が揃います。ほかのプリムラより、やや大ぶりな花が葉の間から伸びる茎に咲きます。
オブコニカの花や葉は、プリミンというアルカロイド成分を分泌し、これに触れると皮膚がかぶれることがあるので注意しましょう。最近は、プリミンフリーの品種も販売される様になりました。
プリムラの、種類ごとの違いと見分け方
プリムラの花のつき方(草姿)は、以下の3種です。「ジュリアン」、「ポリアンサ」、「マラコイデス」、「シネンシス」、「オブコニカ」の5タイプが、それぞれどの草姿にあたるのか、見分け方を覚えておきましょう。
ポリアンサ(茎立ち)
株元から太い主茎を伸ばし、その先端にいくつもの花をつけます。ポリアンサ、シネンシス、オブコニカが、こちらになります。
アコーリス
根元からたくさんの花茎を伸ばし、先端にひとつだけ花を咲かせます。ジュリアンのほか、ポリアンサにも、この花のつき方をするものがあります。
段咲き
マコライデスが、この咲き方です。花茎を伸ばしながら、数段の花を咲かせます。
※ポリアンサの草姿は2種あります。近年、ポリアンサとジュリアンの草姿が類似して、見分け方が非常に難しくなってきました。購入の際は、株についているラベルを参考にして、好みの花姿のプリムラを選ぶのがいいでしょう。
育てたいのはどれ? プリムラの人気品種
品種改良が進み、どんどん新しい園芸品種が誕生しているプリムラ。そのなかでも人気が高く、比較的手に入りやすい品種はこちらです。
プリムラ・ジュリアン系
まるでバラのような花弁と豊かな色合いをもつ「ピーチフロマージュ」。香りが強いのも特徴です。同じく、バラをイメージした、愛らしい花と草姿のバランスがよい「プリムレット」も人気があります。
プリムラ・ポリアンサ系
花弁の端から中心に向けて、ベールのようなフリルが美しい「マリアベール」、八重咲き品種で、ダイナミックな花姿が目を引く「パロマ」、7~10㎝の大輪「オーシャン」などがあります。
プリムラ・マラコイデス系
半八重咲きの白い小輪が咲く「メローシャワー」は、葉からほんのりメロンの香りがするという特徴があります。ピンク、白、赤紫色のミックスの花をつける「うぐいす」は、寒さに弱いマラコイデスのなかでも、耐寒性の強い品種。鉢ごと手のひらにのってしまうミニサイズ「ジョリーコビット」も人気です。
プリムラ・シネンシス系
花つきがよく育てやすい「サーティーワン」は、花弁の1枚1枚がハート形に見えるのが独特。
プリムラ・オブコニカ系
コスモスのような花姿の「タッチ・ミー」は、オブコニカのなかでもプリミンを含まず、肌が触れてもかぶれる心配がありません。鮮やかなピンクが特徴の人気種です。
Credit
監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
構成と文・角山奈保子
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