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北国のガーデン案内「北海道ガーデン街道は活動10周年!」〜前編〜

北国のガーデン案内「北海道ガーデン街道は活動10周年!」〜前編〜

国土交通省が、地域の活性化と庭園文化の普及を図るために創設したガーデンツーリズム登録制度。令和元年5月30日に第一回目となる、その登録証を交付された注目のスポット「北海道ガーデン街道」は。十勝~富良野~大雪を結ぶ全長250キロの花の道を巡り、8カ所もの美しい庭に癒やされるという新しい取り組みです。その8つのガーデンの一つ「上野ファーム」のガーデナー、上野砂由紀さんに、第1回の今回は4つのガーデンの見どころを案内していただきます。

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2019年、北国にも春がやってきた!

上野ファームの春

今年の旭川は雪解けが遅く心配でしたが、5月下旬には驚くほどの速さでチューリップが満開となりました。6月上旬にはアリウムの白やカンボクの木などが爽やかに咲き揃い、北国にも本格的なガーデンシーズンがやってきました。上野ファームの植物たちも、びっくりするような勢いで伸び始め、ガーデンの花たちが次々と開花を始めています。

6月上旬の上野ファーム
アリウムや灌木の新緑が爽やかな2019年6月上旬の上野ファーム。
北海道ガーデン
ガーデン巡りのルートの途中に出会う壮大な風景も魅力。Thanya Jones/Shutterstock.com

ご存じのように、北海道には、たくさんの観光庭園や花の名所があります。中でも、上野ファームも活動に参加している”十勝~富良野~大雪を結ぶ全長250キロの花の道「北海道ガーデン街道」”は2019年、ついに活動10周年を迎えます。アッという間の10年でした。

北海道ガーデン街道

北海道の花の魅力やガーデン観光を盛り上げたい気持ちで、民間のガーデンが個々に集まり、協議会として立ち上げた取り組みを、たくさんの方に知っていただくまで、かなりの時間がかかりました。もちろんまだまだ知らない方もいらっしゃるかと思います。そこで今回は、これからシーズンを迎える北海道ガーデン街道の8つの庭から、まず4つをご紹介します。

※後編はこちら

Garden1
「大雪 森のガーデン」

大雪森のガーデン
「森の花園」の8月。春から秋まで、さまざまな花がバトンリレー。

スキージャンプの原田選手や高梨選手の出身地でもある上川町の素晴らしいロケーションにあるガーデンです。森の中の花の楽園をイメージした「森の花園」エリアは、私も植栽デザインに協力させていただきました。上野ファームよりも、さらに標高が高い位置にある庭なので、平野部とは少し開花期が違っていて、とても新鮮に見ることができます。

雪解けも一番遅いガーデンですが、寒暖差がはっきりしているためなのか、花の発色の美しさはガーデン街道一といっても過言ではありません。

大雪森のガーデン

目の前に大雪山が見える場所なので、北国ならではの高山植物のエリアなどもあります。本格的な登山をしなくても、珍しい高山植物を楽しめるのも魅力です。

北海道のひまわり畑

庭を一歩出ると、美しい山々を見渡す素晴らしいロケーション。この周辺はCMの撮影でもよく利用されているんですよ。

花園エリアを抜けてさらに森の奥へと進むと、美しいグリーンが迎えてくれるのが「森の迎賓館」エリア。ここでは、野草や冷涼な気候でしか咲かせることのできない幻の青いケシを見ることができます。今年は森の迎賓館の奥に、新しく子どもたちが遊べるエリア「遊びの森」がオープンしました。自然の中で、子どもたちも一緒にガーデンを楽しむことができます。

大雪森のガーデン
「森の迎賓館」は 緑と野草に囲まれる癒しの空間。
ヒマラヤの青いケシ
森の中で貴重なメコノプシスに出会えるのは7月上旬くらい。
大雪森のガーデン
日本で一番初めに紅葉が始まるのはこのガーデンだと思います。秋も素敵です。

雄大な山を目の前にした「大雪 森のガーデン」には、おしゃれなカフェやレストラン、宿泊コテージもあるので、ぜひのんびり滞在をオススメします。

Garden2
「風のガーデン」

風のガーデン

同名のテレビドラマの舞台となった「風のガーデン」は、今年で11年目を迎えます。私がこの庭のデザインを脚本家の倉本聰先生から依頼されたのが2006年のこと。約2年をかけてたくさん悩みながら、壁にぶつかりながら、北海道に合う新しい庭のスタイルをつくりたいとデザインしたのが、この「風のガーデン」です。ドラマからかなりの月日が経ちましたが、今もドラマのファンの皆さんから愛されて、庭としても成熟し、新しい取り組みを始めています。

風のガーデン

ドラマを撮影した小屋や部屋はそのままの状態で残り、公開されています。新富良野プリンスホテルの敷地内にあるので、滞在しながらゆっくりとガーデンを楽しめます。

最初は、365品種の植物から始めたガーデンですが、その後、庭の雰囲気は壊さずに植物はどんどん新しい品種を取り入れています。毎年同じ表情はないくらい、ガーデナーが日々工夫を凝らして、新しい風をこの庭に運んでいます。

風のガーデン

ドラマの後から、さらに新しいテーマでつくった庭が「薔薇の庭」です。

一般的なローズガーデンではなく、「風のガーデン」でしか表現できないバラの庭をつくり出したくて、ここには素朴で力強い原種系を多く取り入れました。バラが持つ本来の力、ワイルドな雰囲気を楽しんでいただいています。また、このドラマをきっかけに生まれた特別なバラ、登場人物の名前をつけた「ルイの涙」と「岳の夢」というバラが、この庭には植えられています。まるでバラの森のような野生味あふれる「薔薇の庭」では、ワイルドローズならではの秋のローズヒップの季節も必見です。

北海道風のガーデン
さまざまな表情をもつローズヒップと秋の植物が共演する素敵なエリアに成長。

今、新たに取り組んでいるのが「野の花の散歩道」です。ガーデンという考え方から少し離れて、「風のガーデン」の世界観をもっと広げていくためにつくった新エリアです。ここはあえてガーデナーがあまり手を入れずに、野の花を自由に成長させています。増えたり、増えすぎて消えてしまったりと、植物は毎年のように力関係が変わり、カオスとなり変化し続けるので、とても面白い野原になります。昔歩いた懐かしい散歩道を思い出すような、自然な雰囲気を大切にしています。

北海道風のガーデン

ノラニンジンやリンドウ、北海道でよく見かける道端の草花たちも、ここでは主役。どの庭とも違う新しい取り組みです。

Garden3
「十勝千年の森」

北海道十勝千年の森
大地を北海道スケールでデザインしている「アースガーデン」。

これぞ北海道スケールと驚く、ダイナックな自然と、日本でもいち早くナチュラリステックプランティングを実践している庭が、「十勝千年の森」です。世界でも活躍するガーデンデザイナー、ダン・ピアソン氏と高野ランドスケーププランニングによる設計は2002年から始まり、壮大なスケールで北海道を表現した素晴らしい空間に成長しています。

単純な花と構築物で構成されたガーデンというイメージを超え、今までにない感情が湧き起こる場所です。

北海道十勝千年の森

今、世界中のデザイナーが注目している”ナチュラリスティックプランティング”をいち早く庭で表現しているメドウガーデン。季節の変化やグラスの美しさは、ため息が出るような空間です。一度だけでは本当の意味での素晴らしさが伝わらないので、何度も季節を変えて訪ねていただきたいガーデンです。

北海道十勝千年の森
メドウガーデンの秋。オーナメンタルグラスとシードヘッドのコントラストが芸術的。

十勝千年の森は、イギリスのガーデンデザイナーズ協会が主催する大賞を受賞したガーデンで、「21世紀で最良のガーデンデザイン」として高く評価されました。現在、世界中から注目されているガーデンです。ヘッドガーデナーを務める新谷みどりさんは、若手ガーデナー憧れの存在でもあり、ガーデナーの育成にもとても力を入れている方です。私も彼女に会うたびに、これからのガーデンについて話が盛り上がり、いつもエネルギーをもらっている存在です。どのガーデンもそうですが、素晴らしいガーデナーがいるからこそ、素晴らしい庭が存在すると常々思っています。

心落ちつく森を抜けて、メドウガーデンで風を感じ、キッチンガーデンや可愛いヤギたちに出合うこともできます。ここで作られたヤギのチーズも名物です!

北海道十勝千年の森

ガーデン以外にもアクティビティも充実しています。「アースガーデン」を駆け抜けるセグウェイ体験は毎日大人気ですよ。

北海道十勝千年の森

美しいローズガーデンもキッチンガーデンとあわせて見ることができます。おしゃれなキッチンガーデンは私も大好きです。

Garden4
「十勝ヒルズ」

北海道十勝ヒルズ
「アニーカの庭」は優しい色合いのハーブや花も印象的。ナチュラルな雰囲気の植栽が見どころです。

季節によってさまざまな表情を見せてくれる「十勝ヒルズ」は、十勝でもとても有名な豆を扱う会社が運営している、食と農をテーマにしたガーデンです。美しい花木が庭のいたるところに植えられていて、トンボがたくさん集まる池もあります。子どもたちには、虫取り網やカゴの貸し出しもしているので、私の子どもたちもこの庭でのトンボ取りをとても楽しみにしているほど。動物たちも見ることができて、家族みんなで行ってもワクワクがいっぱいのガーデンです。

北海道十勝ヒルズ

「スカイミラー」は空を映し出したような、ブルー系の花が特徴のエリアです。シンボルの白樺も爽やかで、北海道らしい風景をつくり出しています。

北海道十勝ヒルズ

驚くほどのトンボの種類が見られる「トンボ池」は、子どもたちも大興奮の場所です。

北海道十勝ヒルズ

今年の異常な雪の少なさと寒さで、十勝地方のバラも大きな被害を受けてしまい大変だったようですが、十勝ヒルズにも、とてもよく手入れされたローズガーデンがあります。厳しい北海道の冬を越すには本当に苦労が多く、その時の気候によって栽培がとても難しいものですが、丹精込めて手入れをすると必ず応えてくれるバラたち。香りをテーマにした、さまざまな芳香バラがここに集まっています。

北海道十勝ヒルズ

可愛いキッチンガーデンもあり、家庭菜園の参考にもなります、そして、何よりもオススメなのが、ここでしかいただけない食事! 花より団子ではありませんが、「ファームレストラン ヴィーズ」のコースランチは、十勝野菜や豆をふんだんに使ったもので、農業の盛んな十勝の豊富な食材を美しいコースで楽しめます。美しい花を見て、美味しい食事を堪能できる、素敵なガーデンです。

以上、「北海道ガーデン街道」の8つのガーデンのうち、4つをご案内しました。北海道地域は、本当に素晴らしい庭園がたくさんあります。こんなにも庭が集中している地域は珍しいと思います。観光庭園や個人の美しいオープンガーデン、また自然の花たち、すべての植物たちが、魅力ある北海道をつくっています。北海道の庭めぐり、ぜひ、たくさんの方にお越しいただきたいと思います。

10周年記念のスペシャル企画開催

北海道ガーデン街道

2019年の「北海道ガーデン街道」は、活動10周年を記念して、今までにないスペシャル企画がスタートしています。ガーデン街道の4つのガーデンがお得に回れるチケットをご購入いただくと、オリジナルのワイルドフラワーのタネをプレゼント! さらにそのタネ袋を関係施設、ガーデンで見せると、何といろんなプレゼントや割引が受けられるという、”特典付き種袋”です。

北海道ガーデン街道

さらに、北海道ガーデン街道の8つのガーデンをすべて回ってスタンプを集めると、10周年特別記念クリアファイルを最後に訪れたガーデンでプレゼントしています。

10年の歩みの中で、私たちガーデナーもより素晴らしいガーデンになるよう、切磋琢磨してきました。スタート時とはさらに雰囲気を変えて、どのガーデンも素晴らしい仕上がりの10年目。昨年2018年は、台風の直撃や震災などもあり、北海道全体が肩を落とす年となりましたが、これからがベストシーズンの北海道に、ぜひ遊びにいらしてください。花たちと一緒にお待ちしております‼

北海道ガーデン街道サイト

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