ビワの魅力と失敗しない栽培方法 美味しい果実を収穫しよう!

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完熟した美味しい果実を収穫できるのは、家庭で果樹を栽培することの最大のメリット。昔から日本に自生してきたビワは環境に馴染みやすく、育てやすい果樹です。この記事では、オレンジ色の実が楽しめるビワの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、品種、育て方について、詳しく解説します。
目次
ビワの基本情報

植物名:ビワ
学名:Eriobotrya japonica
英名:loquat、Japanese plum、Chinese plum
和名:ビワ(枇杷)
科名:バラ科
属名:ビワ属
原産地:中国
形態:常緑性高木
ビワはバラ科ビワ属の常緑果樹です。原産地は中国で、古い時代に日本に伝わったと考えられています。放任してもよく育ちますが、開花期が冬のため寒さに当たると実つきが悪くなります。氷点下まで下がる地域では鉢植えにして、冬は暖かい場所で管理するとよいでしょう。自然樹形では2〜5mになりますが、毎年の剪定によって2m前後の樹高をキープすることができます。日本では昔から馴染みのある果樹で、奈良時代の文献にも登場しており、江戸時代頃から栽培されるようになりました。ビワは自家受粉するので、受粉樹を植える必要がなく、1本植えれば結実します。
ビワの花や実、葉の特徴

園芸分類:果樹
開花時期:11〜1月
樹高:2〜5m
耐寒性:やや弱い
耐暑性:強い
花色:白
ビワは11~1月にかけて、クリーム色がかった白い花を咲かせます。円錐花序にまとまって咲く花は地味な見た目ですが、甘い香りがあります。主に果実の収穫のために栽培されますが、葉もお茶に利用でき、また葉が濃く茂るため目隠しや庭木としても栽培されます。
ビワの果実

ビワの果実は熟すとオレンジ色になり、サイズは3〜4cmほどです。旬は5〜6月。柔らかい白い産毛で覆われた果実の中には、大きな種子があります。房州ビワや茂木ビワや甘香など一部の品種は、高級フルーツとしても知られています。産地は長崎、千葉、鹿児島などが有名です。
ビワの葉

ビワは常緑樹で、一年を通してみずみずしい葉を保ちます。葉はやや厚みがあり、楕円形で長さは15〜20cm。このビワの葉は昔からお茶にも利用されてきました。ほのかに甘みがあり、くせがなく飲みやすい風味です。
ビワの名前の由来や花言葉

ビワという和名は、果実や葉の形が楽器の琵琶に似ていることが由来とされています。ビワの花言葉は「治癒」「あなたに打ち明ける」「密かな告白」です。
ビワにまつわる迷信
「ビワを植えると早死にする」「ビワの木は縁起が悪い」などと聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。これはまったくの迷信で、科学的な根拠はないので心配ありません。このような言い伝えは、ビワの木は常緑で高さがあるため、家の日当たりが悪くなりやすいことを嫌ったものや、ビワの葉は薬用として使われていたため、ビワの葉を求めて病気の人が訪れることから生まれたのではないかなどという説があります。
ビワの代表的な品種

ビワの品種はいくつか出回っているので、ご紹介しましょう。
‘田中’は耐寒性がある晩成品種。果重は60〜80gほど。肉質はややかためですが、果汁は多めです。早採りすると酸っぱいので、完熟させることがポイントです。
‘茂木’は西日本でよく栽培されている品種です。果重は40〜50gほどで小ぶり。果皮をむきやすく、甘みが強いのが特徴です。
‘大房’は、ほかに比べて花が咲く時期が遅め。花が下向きに咲いて、寒さにあいにくいため比較的耐寒性があります。果重は80gほどで食べ応えがあり、酸味が少なくジューシー。
‘長崎早生’は、早く収穫できる早生品種です。果重は40〜60gほど。糖度が高めで、みずみずしい食感を楽しめます。寒さに弱いので暖地向き。
ビワの12カ月栽培カレンダー

開花時期:11〜1月
植え付け・植え替え:2月下旬〜3月
肥料:3月、6月、9月
収穫:5~6月
剪定:9月
ビワの植え付け適期は2 月下旬〜3月なので、この時期から栽培をスタートするのがベストです。
気温が上がると生育が旺盛になり、枝葉を伸ばします。前年の冬に開花していた場合は3〜4月に果実が大きくなり始めるので摘果、袋掛けを行い、5〜6月には収穫できます。
ビワは11月〜翌年1月に開花します。翌春の果実の収量を充実させるためにも寒さにあわせないことがポイントです。
ビワは生育旺盛に枝葉を伸ばすので、4月、7月、10月に芽かきをして日当たりや風通しをよくします。剪定は収穫後がよく、暑さが落ち着いた9月頃が適期です。
ビワの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たりがよく、風通しのよい場所で管理します。日照不足になると葉色が冴えなくなったり、収穫量が少なくなったりするので注意してください。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。ただし、果実は寒さに弱いので、寒冷地では鉢植えにして暖かい場所で管理するとよいでしょう。
【置き場所】水はけ・水もちのバランスがよい、ふかふかとして腐植質に富んだ土壌を好みます。
耐寒性・耐暑性
耐寒温度はマイナス10℃くらいですが、果実は寒さに弱いので注意が必要です。果実は氷点下になると落下したり傷んだりするので、寒冷地では鉢栽培にし、冬は暖かい場所に移動して管理するとよいでしょう。耐暑性は強く、特に夏越し対策の必要はありません。
ビワの育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付けの2〜3週間前に、直径・深さともに50cm程度の穴を掘りましょう。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。粘土質や砂質、水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めに入れるとよいでしょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
果樹用にブレンドされた、培養土を利用すると手軽です。赤玉土(小粒)7、腐葉土3の割合でよく混ぜ、配合土をつくってもよいでしょう。
水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温が高い昼間に与えると、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、木が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に行うようにしましょう。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、晴天が続いて乾燥が続く場合は水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。冬は生育が緩慢になるうえ、表土が乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。
肥料

【地植え・鉢植えともに】
3月、6月、9月に有機質肥料を与え、土によくなじませましょう。
注意する病害虫

【病気】
ビワの栽培で発症しやすい病気は、がんしゅ病、ごま色斑点病などです。
がんしゅ病は、25℃前後の時期に発生しやすくなります。細菌による病気で、芽、葉、枝、果実、幹、根のほとんどの部位で発病し、黒いかさぶた状の班点が現れます。病変が見られたらすぐに取り除くことが大切。傷口などから発症の原因となりやすいので、剪定後の切り口に癒合剤などを塗布しておくとよいでしょう。また、穴をあけて食害するカミキリムシなどの防除にも努めてください。
ごま色班点病は、4月中旬頃から発生しやすくなります。葉の表や裏にごまのような班点が生じるので発見しやすい病気です。病状が進むと班点がかさぶた状になり、葉を落として枝だけになることもあります。発病した葉を見つけたらすぐに切り取りましょう。落葉した葉を放置すると、そこで病原菌が越冬して翌年も発症する原因になるので、落ち葉を集めて処分しておきます。薬剤散布による防除も有効です。
【害虫】
ビワの栽培で発生しやすい害虫は、アブラムシ、モモチョッキリなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。
モモチョッキリはゾウムシの一種で、成虫の体長は1cmほど。光沢のあるピンクの甲虫で、長い口を持っているのが特徴です。ビワ、ウメ、モモ、リンゴ、ナシなどの果実について食害します。また、幼果に穴を開けて産卵しその後果柄に穴をあけるので「モモチョッキリ」の名前がつけられています。被害にあった果実の中には幼虫がいるので、早めに処分しましょう。防除するには袋掛けが有効です。
ビワの詳しい育て方
苗木の選び方
苗木を購入する際は、幹が太く、節間が詰まって、大きく元気な葉や芽が多くついたものを選ぶとよいでしょう。徒長したものや色艶が悪いものは避けたほうが無難です。
植え付け・植え替え

ビワの植え付け・植え替え適期は2月下旬〜3月です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぐとよいでしょう。最後にたっぷりと水を与えます。
幹が1本のみまっすぐに伸びている、幼い1年生苗を入手した場合は、地際から40〜50cmの高さで切り取りましょう。すると生育期に入って側枝が出やすくなります。
地植えの場合、環境に合ってよく育っていれば、植え替えの必要はありません。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、8〜10号鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから樹木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めてから植え付けます。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。根づくまでは、支柱を立てて誘引しておいてください。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えます。一年を通して日当たり、風通しのよい場所に置いて管理しましょう。
幹が1本のみまっすぐに伸びている幼い1年生苗を入手した場合は、地際から30〜50cmの高さで切り取りましょう。すると生育期に入って側枝が出やすくなります。
鉢植えで楽しむ場合は、成長とともに根詰まりしてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出し、軽く根鉢をくずして新しい培養土を使って植え直しましょう。
芽かき

芽かきとは、新しく出た芽を間引く作業です。ビワは、4月、7月、10月に新しい枝を伸ばします。1本の枝から3〜5本の枝が放射状について伸びていき、日当たりや風通しが悪くなるので、伸びてきたタイミングで3本くらいを残してほかの新芽は切り取りましょう。
剪定

ビワは毎年剪定をして、樹高をコントロールし、風通しをよくしましょう。ただし、ビワは強い剪定に弱いので、急にバッサリと枝を落とすことは避けたほうが無難です。
すでに実がついた木の場合、剪定の適期は9月頃です。
樹高や横への広がりを抑えたい場合、だいたいのアウトラインを決めて、はみ出している枝を分岐部まで遡って切り取ります。
また、木の内側に向かって伸びている「逆さ枝」、垂直に立ち上がっている「立ち枝」、勢いよく伸びすぎている「徒長枝」も元から切り取ります。1カ所から何本も枝分かれしている枝があれば、3本以内に間引いて枝を透かしましょう。
大きく伸びて邪魔になったからといって、急にバッサリと切りすぎてしまうと、太くて長い徒長枝をたくさん出して反発します。ビワは徒長枝には果実をつけないので、翌年から急激に収穫量が落ちてしまうので注意。ビワは大きくなりやすいので、毎年の剪定を忘れず行って、スマートな樹形を保ちましょう。
また、まだ実がなっていない若木の場合は、開花する2月頃に剪定すると、花芽を残して剪定しやすくなります。
増やし方

ビワは、接ぎ木、挿し木、種まきの方法で増やすことができます。
【接ぎ木】
接ぎ木の適期は2~3月。ビワの枝を、切り口が斜めになるように10cmほどの長さでカットし(穂木)、1時間ほど水に浸けておきます。種まきして作った台木を15cmほどの高さで水平に切り、縦に切り込みを入れて穂木を挿し込みます。接いだ部分は乾かないよう接ぎ木テープでしっかり留めます。
【挿し木】
挿し木の適期は2~3月。今年伸びた枝を、枝の切り口が斜めになるように、15~20cmほどの長さでカットします(挿し穂)。挿し穂は1~2日間水に浸けてから土に挿し、直射日光の当たらない日陰で水を与えながら根が出るまで管理しましょう。
【種まき】
食べ終えたビワの実の種子を洗って播くと、発芽して成長を始めます。ただし、種まきから育て始めると、果実がなるまでに8~10年ほどと長い期間が必要なため、果実の収穫を楽しみたい場合は苗から育てるとよいでしょう。
美味しいビワを栽培するには
ビワは放任しても育つ果樹ですが、少しの手間をかけると充実した果実を収穫することができます。ここでは、そのポイントについてご紹介します。
摘蕾(てきらい)

摘蕾とは、つぼみを摘み取る作業です。花房が多すぎて果実が小さくなるのを防ぐために行います。ビワは11月〜翌年1月に房咲きになるので、果実が大きくなる品種は下の2段、小さめの品種は4〜5段を残して、ほかのつぼみの房を切り取りましょう。
摘果(てきか)

摘果とは、果実を間引きする作業です。果実が多く実りすぎて一つひとつの果実が小ぶりになるのを防ぎます。3〜4月が適期で、果実が大きくなる品種は1房に1〜2個、小さめの品種は3〜4個残し、ほかはすべて切り取りましょう。
袋掛け

摘果した後には、果実に袋掛けをしておきましょう。袋掛けをすることで、病害虫による被害を防ぐことができます。袋はホームセンターなどで販売されているものを利用すると便利です。
収穫

ビワの収穫適期は5〜6月です。袋かけしておいた果実を取り出して、オレンジ色に色づいていたら切り取って収穫しましょう。
ビワ栽培で注意すべき点
ビワは放任してもよく育つ果樹で、果樹栽培の初心者にもおすすめですが、ここでは注意しておきたいポイントをご紹介します。
育ちすぎることがある

ビワは旺盛に枝葉を伸ばして生育するので、放任するといつの間にか大木に育ち、持て余してしまうこともあります。新梢を伸ばす時期に芽かきをし、毎年の剪定を欠かさずに行うことが大切です。
ビワの種子を食べない

ビワやモモなどのバラ科の植物の種子には、天然の有害物質のシアン化合物が含まれているので、食べないでください。幼児やペットの誤食にも注意しましょう。
収穫が楽しみなビワを育てよう

初夏に実るビワは、オレンジ色の果実をたわわに実らせます。栽培のポイントは芽かきと毎年の剪定で木が大きくなりすぎないようにすることと、寒冷地では寒さ対策を行うことです。庭にビワを植え付けて、甘くてジューシーな完熟果を楽しんではいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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