庭のあるご家庭では、家の象徴となるシンボルツリーや、家族の誕生日や結婚記念日などに記念樹を植えることも多いでしょう。ただし、庭木を選ぶ場合は、木であれば何でもいいというわけではありません。庭の日照や土壌など環境条件や広さに見合う、適した性質、生育スピード、手入れのしやすさなどを吟味する必要があります。今回は、外部からの目隠しや生け垣などに向き、管理がしやすい常緑樹(じょうりょくじゅ)に絞ってご紹介。おすすめの品種や選び方のポイントなどを詳しく解説します。

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ほかの樹木とどう違う? 常緑樹の特徴とは 

常緑樹

常緑樹とは、秋に一斉に落葉することなく、一年中葉を保つ樹木のことです。庭に数本植えておくと、冬もみずみずしい姿を楽しむことができます。とはいえ、常緑樹の葉はずっと枯れない訳ではありません。葉の寿命は種類によって異なりますが、一定の期間を過ぎれば枯死して落葉します。しかし、次々に新しい葉が芽吹くため、常に葉が茂っているように見えるのです。木が生きている限り、葉の新陳代謝は行われていますが、冬は生育が止まって既存の葉が残るのみとなります。

さて、常緑樹は常緑広葉樹と常緑針葉樹の2つに分類されます。常緑広葉樹は、カシやシイなどのように広くて光沢のある葉を持ち、もともとは熱帯~暖温帯の暖かい地域がルーツで、寒さが苦手。常緑針葉樹は、コニファーなどのように小さくて細い葉を持ち、主に冷温帯~亜寒帯などの寒い地域に自生することが多い樹木です。

常緑樹が庭木としておすすめな理由 

秋に葉を一斉に落とす落葉樹は、冬になると幹や枝があらわになって、寂しい雰囲気を与えてしまいがち。常緑樹なら、冬でも美しい葉姿を楽しめるのが魅力です。落ち葉掃除などのメンテナンスが楽なうえ、外からの目隠しや境界線となる生け垣に利用できるというメリットもあります。

栽培や手入れにあまり手間がかからない 

常緑樹の手入れ

常緑樹は落葉期がないために、落葉樹に比べて落ち葉掃除の手間がかからないといわれます。しかし「新陳代謝によって次々と葉が入れ替わるのなら、手間は同じでは?」と疑問に思うかもしれません。でも、落葉樹が毎年秋に一斉に葉を落とすのに比べ、常緑樹の葉の寿命は一般的に2~5年くらいなんです! 落ち葉の掃除もその分ラクになるという訳です。また、もともと日本に自生する種類も多いため、環境に馴染みやすい樹種を選べば、手をかけずともすくすくと育ちます。

常緑樹は目隠しになる 

常緑樹の目隠し

常緑樹に限らず、樹木は低木・中木・高木と、成木になった時の樹高によって分類することができます。外から自宅に向けての視線を遮りたい場所に、ちょうどよい樹高の常緑樹を植えれば、周年葉をつけているので立派な目隠しとして重宝します。隣の家と密接していて視線が気になる場合や、交通量の多い道路に面した部分などには、一年中葉をつける常緑樹を植えるとよいでしょう。ツゲやサワラ、ドウダンツツジ、ウバメガシなどは葉を密に茂らせるので、生け垣にして「緑のフェンス」として利用するのもおすすめです。

庭木におすすめな常緑樹5種類 

メンテナンスがしやすく、目隠しとしても利用できる常緑樹。ここでは、庭木として取り入れやすく、人気の高い常緑樹を5種、ピックアップしました。成長に合わせて必要な剪定のポイントも併せて解説しています。

1.シラカシ

シラカシ

シラカシはブナ科コナラ属の常緑高木で、自然樹高では15mにも達するほどです。公園にもよく植栽される樹木で、強健で冬の寒さに強い性質があります。秋にはドングリを実らせるので、クラフトにも活用できそうです。強い生命力を持ち、葉を密に茂らせるので、刈り込みバサミで剪定すれば、生け垣にも利用できます。一方で、生育スピードが速いので、6~7月上旬と9月の年に2回を目安に、しっかりと剪定をして樹形をコントロールすることが大切です。茂りすぎると内側から枯れ込んでくるので、古い枝や内側に向かって伸びる枝などを付け根で切り取りましょう。込み合っている部分をすいて風通しよく管理することで、病害虫の発生を抑制することにもつながります。

 2.コニファー

コニファー

コニファーは針葉樹の総称です。樹高が高くなる種類もあれば、這うようにして広がる種類もあるほか、葉の色もシルバーグリーンやイエローグリーン、ブルーグリーンなど多様。庭の雰囲気に合わせて選べる種類の豊富さが魅力です。ただし、樹形や生育スピード、耐寒性の強弱なども多様なため、前もって育てたいコニファーの性質をよく調べてから取り入れることが大切。自然に樹形が整いやすいものの、剪定が不要な訳ではなく、生育スピードに合わせた剪定も必要です。庭木として取り入れやすい、ポピュラーなコニファーは、ニオイヒバ‘スマラグ’(エメラルドグリーン)、‘グリーンコーン’、コロラドトウヒ‘ホプシー’、ジュニペルス‘ブルーアロー’など。

3.キンモクセイ

金木犀

キンモクセイ(金木犀)は、キンモクセイ科モクセイ属の常緑高木。オレンジ色の小花をたっぷりと咲かせ、芳香を強く漂わせるので、秋の風物詩となる庭木です。自然にまとまりやすい樹形ですが、自然樹高は約6mにも達するので、ある程度の高さになったら毎年剪定をして、樹高をコントロールしましょう。キンモクセイは春から伸びる新梢に8月頃に花芽がついて、9月下旬~10月に開花するので、花芽のない時期を選べばいつでも剪定できます。ただし、寒さにやや弱い性質があるので、生育期に入った春頃に行うのが無難です。長く伸びた枝や、込み合っている部分の枝を切り、前年くらいまでのサイズに戻しましょう。和風庭園なら、刈り込んで円筒状に仕立てることもできます。

4.シマトネリコ 

シマトネリコ

シマトネリコは、モクセイ科トネリコ属の常緑高木。軽やかな照り葉がサラサラと風に揺れる姿はたおやかで、シンボルツリーとしてもよく、近年特に人気の高い常緑樹です。地際から数本の細い枝を立ち上げる、株立ち種が流通のほとんどで、この繊細な樹形も人気の理由です。ただし、生育スピードが速く、自然樹高では10mにも達するほど。剪定を怠ると株立ちの幹が太くなって、最初のスマートな姿とはほど遠い印象になってしまいます。生育期は4~11月で、剪定の適期は3、6、9月頃。枝が込み合っている部分があれば、剪定して風通しをよくしましょう。主枝が希望の高さより高くなったら、側枝との分岐点で主枝を切り、側枝を短く切り返します。

5.ゲッケイジュ

月桂樹

ゲッケイジュ(月桂樹)は、クスノキ科ゲッケイジュ属の常緑高木です。別名ローリエの名も持ち、葉に爽やかな芳香があるためハーブとしても利用されています。雌雄異株の性質を持っていますが、日本で出回っているのは雄株が多く、雌株の流通量は少ないようです。自然樹高は15mに達するので、庭でバランスよく調和する高さにまで成長したら、適宜剪定をして樹形を整えましょう。真冬以外ならいつでも剪定でき、長く伸びている枝をカットして前年のサイズくらいまでに切り戻します。込み合いすぎている部分があれば、適宜間引き剪定をして、風通しよく管理しましょう。カイガラムシがつきやすいので、見つけ次第ハブラシなどでこすり落としたり、適応する薬剤を利用したりと、早めの防除が大切です。

失敗しない常緑樹の選び方 

一年中みずみずしい葉をつけて、生命力あふれる姿を楽しめる常緑樹。庭木として迎えるには、どんな樹種を選べばいいのかは、楽しむ目的や庭の環境によっても異なります。ここでは、常緑樹の選び方についてご紹介します。

【選び方その1】目的を決める 

常緑樹

一口に常緑樹といってもさまざまな種類があります。「種類がありすぎて、どんな樹種を選んだらいいのか分からない」なら、まずは庭に取れ入れる目的を整理してみましょう。シンボルツリーが欲しい場合は、比較的樹高が高くなる、存在感のある樹種が適しています。また、家族の誕生日や結婚記念日の訪れを告げる、記念樹にしたい場合は、そのシーズンに花や実が見頃になる樹種を選ぶとよいでしょう。目隠しに利用したいなら、低木は向いていませんね。人の視線の高さよりも大きく育つ樹木が適し、比較的葉を密につける樹種を選ぶようにします。「夏の暑さをしのぐために、庭に緑陰をもたらす庭木が欲しい」なら、たっぷりと枝葉を伸ばす樹形が向いていますし、「冬にクリスマスツリーの飾りつけがしたい」場合は、コニファーを選ぶのも一案。まずは、どんな目的で庭木を取り入れたいのかを整理すると、おのずと樹種も絞られてきます。

【選び方その2】生育環境を確認する

庭木の選び方

庭木を選ぶ際、事前にチェックしておきたいのは、自邸の庭の環境に合うかどうか。極端なたとえをすれば、もともと暑い熱帯地域に自生しているような植物を、雪が多く降る寒い地域で育てようとしても、1年ももたずに枯れてしまうでしょう。庭木も同様で、暑さや寒さに耐えるか、日照時間はどれくらい必要なのか、どのような土壌を好むのか、といった樹種に関する情報を調べて、環境に合うものを選ぶことが大切です。常緑広葉樹は、もともとは熱帯~暖温帯の暖かい地域がルーツで、寒さを苦手とするものも多くあります。一方で、ツバキやサザンカ、ツゲ、ツツジ、キンモクセイなど日本で古くから親しまれている樹種は、放任しても環境に馴染みやすいものです。また、コニファーも属する常緑針葉樹は寒さに強いイメージがありますが、なかには耐寒性に優れない樹種もあります。こちらも、前もって樹種の適した生育環境や性質を調べておきましょう。

【選び方その3】スペースが十分にあるか確認する 

庭木の選び方

庭木を選ぶ際には、庭にスペースが十分にあるかどうかも確認しておきましょう。購入した時には、か弱く小さい苗木でも、環境に適応してしっかり根を下ろした後は、生育スピードが一気に速くなり、ぐんぐん枝葉を伸ばしていきます。シンボルツリーとして利用するなら、樹高はもちろん樹冠(樹木の枝が四方に伸びる範囲)も想定しておくことが大切です。「屋根やカーポートに当たって邪魔にならないか」「隣家の敷地まで侵入してしまわないか」など、どれだけの周囲のスペースを確保できるかを確認しておきましょう。常緑樹であれば特に、樹冠の足元が一年中日陰になりやすく、取り入れる下草の種類も限られてきます。ただし、「自然樹高が10~15mにも達する高木は、庭には取り入れられない」と諦めるのは尚早です。毎年の剪定をきちんと行い、正しくメンテナンスをすれば、樹高をコントロールできます。

美しい樹形を保つには剪定が必要 

剪定

庭に樹木を植えたら、必ず剪定のメンテナンスが必要になります。放任するとどんどん枝を伸ばして「気がついたら鬱蒼として、手がつけらない状態になってしまった」ということも。毎年剪定をして美しい樹形を保つことが、庭を美しく保つことにもつながります。庭木の剪定には、必ず適した時期があるので、樹種の「剪定適期」を確認しましょう。常緑広葉樹は寒さが苦手なことが多く、冬に剪定すると寒さで木が傷むことがあります。花を楽しむ樹種の場合は、花芽がつくられる時期に剪定すると、花が咲かなくなるので注意が必要です。常緑針葉樹のコニファーは、新梢が伸び始める前の3~4月が適期。剪定の際は、だいたいのアウトラインを決めて、大きくはみ出る枝を切り取って樹高をキープします。枝が込み合っている部分があれば、適宜間引き剪定をして、風通しをよくしましょう。

庭木にも「縁起」がある? 気になる場合は要チェック

日本では「縁起植物」として、お正月飾りにも用いられる庭木を育てる文化があります。その一方で、「縁起の悪い植物」として嫌われる植物も。ここでは、昔から伝わる、庭木に取り入れるとおめでたいとされる常緑樹と、庭木には避けられてきた常緑樹をご紹介します。

縁起がよいとされる常緑樹

縁起がよい木

縁起がよいとして重宝される常緑樹の一つに、ナンテン(南天)があります。「難転(難を転ずる)」とされ、古くから魔除けや厄除けとして鬼門に植えられてきました。お正月飾りの花材としてもポピュラーですね。小さな赤い実をつけ、常緑樹でありながら赤く紅葉する姿も楽しめます。ユズリハも縁起植物の一つで、新葉が出揃ったら、古い葉が一斉に散るために「譲り葉」と呼ばれています。子孫繁栄を願って、こちらもお正月飾りによく使われます。ただし、ユズリハは生命力旺盛で枝をぐんぐん伸ばすので、毎年の強剪定が必要です。また、マツは「松竹梅」の一つとして知られる縁起物で、寿命が長いために健康長寿をもたらしてくれるとされています。

縁起が悪いとされる常緑樹 

縁起が悪い木

縁起が悪いとして嫌われる常緑樹は、ツバキが代表的。花が終わると、花弁を散らさず花首ごとポトリと落ちるので、「首が落ちる」ことを連想させるからです。特に武家社会では「庭に植えるものではない」と嫌われたようです。ビワは古くから「庭に植えると病人が絶えなくなる」と伝えられる常緑樹。その理由は、根が広がりやすく家の基礎を壊す原因になるため、植えないように理由づけられたとか、常緑のため大きく育つと日陰になって湿気を呼び、健康を害しやすい、などの諸説がありますが、今となっては迷信ですね。ジンチョウゲ(沈丁花)も嫌われ者で、漢字に「沈む」という文字が使われることから、家が没落するといったことが連想されたようです。早春を告げる甘い香りが魅力のジンチョウゲ、可愛い花ですけれど。

常緑樹でお気に入りの庭をつくろう

常緑樹の庭

四季を通してグリーンが絶えない常緑樹は、冬枯れた景色の中で凛とした美しい葉を見せてくれるため、庭にぜひ取り入れたいものです。周年葉を茂らせるために、外部からの視線が気になる場合は目隠しとしても重宝し、樹種を選べば生け垣に利用することもできます。日本に古くから自生してきた樹種なら、放任しても旺盛に生育し、初心者でも育てやすいのも嬉しいところ。豊富な常緑植物の中から自分好みの樹種を選んで、一年中みずみずしいエバーグリーンを楽しめる庭にしてはいかがでしょうか?

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Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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参考文献:
上条祐一郎『切るナビ! 庭木の剪定がわかる本』NHK出版 (2017年第17刷)

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